電車と車を乗り継いで、海沿いを走っている。しばらくすると地上側の基地が見えてきた。着任先の呉鎮守府だ。ここにいた前提督が作戦中、旗艦の艦娘と共に轟沈し戦死したため基地機能が完全停止していたのだ。レイもよく父親の仕事を見るために訪れていたから、前提督のこともよく知っていた。あの事件のあと彼は親友の裏切りに心を痛め同時に完全に裏切り者を仕留められなかったことをとても悔やんでいた。
「またここに来ることになるとはね…。」
悲しみと痛みに染まったこの地を
「旗艦が轟沈したらなんで司令官も死ぬの?」
「もともと旗艦は艦隊の司令官及び司令長官が乗り、指揮を執る艦だ、それが轟沈したらほぼ確実に司令官は死ぬことになる。艦娘を用いるときも、なぜかこうなるのだ。出撃時に旗艦と謎のシンクロ状態になる。シンクロ状態の原理は艦娘の設計者にもわからないそうだ。このことの対策として、旗艦が大破したらすぐに撤退するよう命令が出ているんだ。」
大破艦が出たら即撤退が提督の常識だ、少しの焦りや慢心が
「難しいわね、艦隊運用は。でもなんで進撃したのだろう?」
「その提督は旗艦大破状態でも無理やり進撃させたらしい、何があったのかはもうわからんが。」
「ブラック提督だなぁ…。」
助手席でコウスケが呟く。艦娘轟沈はそれを禁忌とする提督がいるほど重大な事なのだ。
「
今からやろうとすることを振り返る。
「ブラック提督だなぁ…。」
またコウスケが呟く。少し笑い声を含んでいた。
「否定はしないわよ…。」
「コウスケ、お前はさっきからそれしか言っていないな。」
「ナイスツッコミだなぁ…。」
雑談をしていると到着までの時間が短く感じられた、荷物を手に三人が施設に入る。すると、二人の女性が迎えてくれた。一人は初期艦として着任した駆逐艦吹雪だ、解説によると元気いっぱいで正義感が強い娘とのことだ。もう一人は軽巡洋艦大淀だ、丸い眼鏡をかけ羽ペンと本を持った知的な女性だ。
「新しく着任した暁レイよ。」
「副司令の長門コウスケだ。宜しく頼む。」
「駆逐艦吹雪です、宜しくお願いします司令官、副司令官」
「軽巡大淀です、これからは宜しくお願いします。」
着任メンバーのうち二人と艦娘二人が挨拶をする。
「…リュウジ、どうしたんだ?」
動こうとしない彼に尋ねる。
「…あ、ああ、戦術教官、吹雪リュウジだ…。」
「あれ?、まぁいいか…。」
なぜか訓練の気迫が感じられないが気にしないことにした。
「提督室はこちらです、どうぞ。」
大淀がレイとコウスケを案内しに退出する。リュウジは三人が去ったことを確認して。「今はあの事は話さないでくれよ」と言った。何の事かは彼女は知らなかった。