提督室を見学した一行は鎮守府の各施設を見て回っている。第一艦隊の旗艦『秘書艦』が身の回りの世話をするそうだ。
「にしても、段ボールをあんな無造作に置くなんてのは、ちょっと手荒い歓迎だな。」
着任した者はまず見ることになる光景だ、段ボールも一応『机+椅子』カテゴリに入る『家具』である。
「あれは後で片づけるわ、壁紙も新しくしたいし。」
「ただ、模様替えしようにも家具コインなんて物が要るからなぁ…、当分はあのままだな。」
雑談しながら歩いていると、工廠と呼ばれる場所に来た。中では軽巡洋艦夕張と工作艦明石、さらに多数の整備スタッフが働いている。小型の主砲を修復している、恐らく駆逐艦の兵装だ。
「吹雪ちゃんの主砲の修復は進んでいますか。」
大淀が確認に向かう、どうやらエントランスで会った駆逐艦娘の装備らしい。凄まじい損傷をしていてとても修復できそうにない。大淀と男性スタッフが話し始める。
「いやこれはとても直せそうにないよ、第一なんでこんな壊れ方したんだ普通は艦娘本体がボコボコになってるはずだ。」
「そう…ですか…。」
「こいつを廃棄して新しく造るしかないな、ただ、成功率は相変わらずでな…、暫くは艦隊には参加できないって伝えておいてくれ。」
「分かりました…。」
大淀が作業室から出てくる、少し目に涙を浮かべていた。
「さっきの話、聞こえてたわ、詳しく教えて。」
「今訊くことか?」
「知っておきたいの。各艦の情報は把握しないと何もできない。」
大淀から説明を受けた、先日、近海にて大規模な通商破壊戦が発生、艦隊が緊急出撃し防衛戦が展開された、このとき吹雪がこの戦闘に参加したが、敵の潜水艦が雷撃をかまし、空母が爆撃機を発進させすかさず吹雪が輸送タンカーを庇い、被弾してしまう。
戦闘は地上側の勝利で輸送船も被害なし、吹雪自体も小破程度の損傷で済んだが、爆撃を主砲でガードしてしまったために、使えなくなってしまったそうだ。
「大体の事は分かった、素直に通達しておけばいい、あんたが悩んでも仕方がない事よ。」
「おいおい、もう少し言い方があるだろ暁。」
「飾ったって事実は変わらないのよ、そんなことしたら余計傷つく。大体水上潜水混成部隊で輸送船狙う
深海勢力は様々な手段で地上勢力を叩き、一撃を加え迎撃させてはまた現れてを繰り返している。深海軍の作戦はどれも太平洋戦争の海戦や攻略作戦などを模倣したものばかりだ。だが、二度も同じ手を喰らうほど軍隊は馬鹿ではない。
「すまん、あんな提督だが許してやってくれ…。」
「いえ、分かってます、あの人がここに来た理由くらい。」
「戦争を利用した復讐だからな…、まあ俺たちのペースでやっていこうぜ。」
現時点では地上側は劣勢となっている、資源輸送航路のオリョール海域やカレー洋海域を制圧されたことでそれが決定的になった。復讐はそれを覆し勝利する必要がある。
「次に勝つのは俺たちだ。」