とりあえず、仲が良くなったって事だけ伝われば嬉しいです。
オルガマリーSIDE
夢を見ていると自覚出来るのは、初めての感覚だ。
人が見る夢は見ていると自覚した時に現実との差に気づき、自然と目が覚める。
だから、この様に自覚出来るのは難しい。
私は、これがサーヴァントと契約していると見るそのサーヴァントの過去なのだろうと結論づける。
「これで終わり」
声が聞こえた。
周りを見ようとして体が動かない事に気づく。
そして私は動いていないのに、景色が横に流れていく。
「...許せとは言わない。これは俺が選んだ事だ。
せめて安らかに死んでくれ」
視界に脳天を射抜かれた死体が映る。
思わず吐きそうになる。はっきりと死体を見るのは初めての経験だった。
改めて周りを見る。死体、死体、死体、死体、数えることすら億劫になる程の死体の数。
目を背けたくなる。でも、この体の主は目を反らす気配がない。
そして、転がっている死体の一つと目が合った。
「きゃぁぁ!!」
声を上げながら私は飛び起きた。
時計が目に入る。時刻は朝の五時半。
「はぁ、はぁ。い、今のはセイヴァーの過去?」
呼吸を整えながら、先ほど見た夢に関して考える。
一つ気になったことがある。死体の装備が現代的過ぎること。
もしかして、セイヴァーは……
そう考えた時に、凄い勢いで扉が開かれる。
「マスター!先ほどの悲鳴は!?」
私より明らかに、顔面蒼白なセイヴァーが飛び込んでくる。
何でセイヴァーが?と考えて、私は即座に答えを見つける。
そうだった。セイヴァーは私を心配して、隣の空き部屋で住んでるんだった。
「ごめんなさい、セイヴァー。ちょっと、悪夢を見ただけだから」
「…俺の過去を見たんですね?」
何で隠してる事が分かったの?
時計塔で表情を表に出さない様にする事は十分なほどに学んで来たのに。
「単に慣れてしまっただけです。人の表情は飽きるほど見てきましたから」
あ、またあの笑い方だ。
どうしてセイヴァーが見せる笑顔はこんなに私を安心させてくれると同時に悲しい気分にさせるの?
「ねぇ、セイヴァー。少し、話をしない?」
「話をですか?」
「ええ。だって、私まだ貴方についてなにも知っていないもの」
セイヴァーの戦い方は冬木で見せてもらった。
でもそれは英霊としての能力でセイヴァー本人に関しては何にも知らない。
それじゃ、この先作戦を立てて戦うときに色々不便な事がある。
だから話す。決して先ほどの夢が原因じゃないんだからね!
あれ?私は誰に言い訳をしているの?
「…分かりました」
そう言って今、私が座っているベットの近くにある椅子に座る。
セイヴァーの表情からは、嬉しいという感情が伝わってくる。
このサーヴァント、素直じゃないと気付く。
「セイヴァーの好きな事って何かしら?」
「そうですね。人の笑顔を見る事ですかね。いつ見ても、心が暖かくなる感覚が好きです」
…まるで、自分はその笑顔の中にいる事はないみたいな言い方。
「じゃあ嫌いな事は?」
「…人の信頼を裏切り、それを嘲笑する事」
完全にレフを連想する言葉ね。
やっぱり、レフを憎んでいるのねと苦笑する。
「聖杯に関しては?」
「便利なアイテムって認識ですね」
「知ってるの?聖杯を?」
もし、そうなら今はいないけど魔術協会が黙っていないわね。
「ちょっとばかり、縁がありましたので 」
「聖杯に縁があるって、相当変わった生き方をしていたのね。
もしかして、魔術師だったの?」
「周囲の助けがなければ、まともに魔術が行使できない素人です」
へぇ。セイヴァーはキャスターの適性もあったんだ。
でも、感じ的にキャスターで召喚していたら外れっぽいわね。
「では、マスターの好きな事は何ですか?」
今度はセイヴァーから質問してくる。
夢に関して聞きたかったけど、折角セイヴァーが質問してくれたからそっちを優先しよう。
「私の好きな事?魔術に関する知識を集めることかしら。
覚えておけば使える事もあるだろうし」
「凄いですね。分野の違う魔術は覚えるの大変でしょう?」
セイヴァーの表情からは心の底からそう言っているのが伝わる。
は、恥ずかしいわね。素直に言ってくれる人は初めてだったから。
「大変でも、成果が出れば嬉しいから頑張れます」
でも、私を評価してくれた人はいない。
表面上の言葉だけで、本当に評価してくれる人はいなかった。
私の努力は所詮、家のものだと言って評価をくれなかった……褒めてくれなかった。
そんなことを考えていたのが表情に出ていたのだろう。セイヴァーが近くやって来る。
「マスター。俺は、貴女の努力を実際に見た訳ではありません。
ですが、貴女のやってきた功績は正当な評価をされて当然だと思います。
少なくとも、俺はマスターのルーンに命を救われました」
私の目をしっかりと見てそう言ってくるセイヴァー。
「この場で今一度、礼を言います。
マスターの力で俺は命を救われました。ありがとうございます」
そう言って頭を下げるセイヴァー。
同時に暖かくなる私の心。この英霊は私を見てくれる。
アニムスフィア家のオルガマリーじゃなくて、ただのオルガマリーとして見てくれる。
「えーと、何か俺の言葉に不備がありましたか?
泣いてるようですが…」
「え?」
言われて顔に手を当てれば、湿った感覚がくる。
泣いてる?私を見てくれた事が嬉しかった?
「ご、ごめんなさいセイヴァー。ちょっと、嬉しくて…」
涙を拭ってセイヴァーに笑いかける。
「っつ!」
瞬間に赤くなるセイヴァーの顔。
どうかしたのかしら?風邪?でも、サーヴァントは体調を崩す事は無いだろうし。
「所長。良かったら、親睦を深めに一緒に食事は如何ですか?」
立香の声が聞こえる。
きっと、横にはマシュも一緒にいるのでしょうね。
「マスター。行きますか?」
「ええ。彼等ともしっかり話をしないとね」
セイヴァーはやっぱり信用できる良いサーヴァントだ。
触媒無しのゆるゆるのシステムフェイトでここまで相性が良いのが引けたのは、運命と言えるかもしれないわね。
余談であるが、朝食を食べに行ったらセイヴァーと一緒に部屋から出てきたことを立香とそれを聞きつけたロマニに盛大にからかわれる事になった。
ロマニには、次の特異点を見つける仕事量を二倍に、立香にはセイヴァーにスパルタな特訓を受ける事を命じた。
感想・批判お待ちしています。