願いを込めて   作:マスターBT

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戦力の追加です!



英霊召喚

「はぁ、はぁ、スパルタすぎません?」

 

立香がそう言って仰向けに倒れる。

呼吸は乱れまくり、顔色は血がしっかりと循環していないのか青白い。

 

「マスターから、スパルタで特訓しろと言われてるからな。

かの王様よりは良心的な特訓だ」

 

そう言ってセイヴァーは内心で、腕立て200回、後ろから自身が武器を持って追いかける1500メートル走×3回。

さらに、魔術の訓練でオドが切れかけるまで使用。無論、切れてしまえば体に影響を及ぼすのでそこは上手くさじ加減をしたのだが、幾ら何でもスパルタ過ぎたかと思う。

だが、この修行で立香は素人でありながら回復と瞬間強化そして、ガンドを習得した。

 

「今日はここまでだ。しっかり休んでおけ」

 

「は、はい」

 

「と、そういえばロマニから伝言だ。

昼過ぎに英霊召喚を行うから集まれだそうだ。後、三時間だが休んでおけ」

 

「絶対に…今、思い出したでしょ……」

 

質問には答えずに訓練室から出て行くセイヴァー。

完全に立香の言葉が図星だった。

最初は、きついメニューを与えれば根を上げるだろうと思っていたセイヴァーなのだが、立香はきつくすればするほどそれを乗り越えて行く人間だった。

そのせいで、楽しくなっていたのだ。立香を鍛える事が。

 

「はぁ、ゲホ!ここまで体を動かしたのっていつぶりだっけ?」

 

「先輩!大丈夫ですか?」

 

マシュがタオルとスポーツドリンクを持って立香のすぐ横に来る。

 

「ありがとうマシュ」

 

自分を慕ってくれる後輩に礼を言ってタオルとスポーツドリンクを受け取る立香。

 

「セイヴァーさんも、きついメニューを考えますね」

 

「そうだね。でも、オレを強くしようとしてくれるのは伝わって来る。

オレは素人でマシュやセイヴァー、オルガマリーさんに助けてもらわないと何にも出来ない人間だからさ」

 

立香は先日の冬木での戦いを思い出す。

セイヴァーは英霊としての力を遺憾なく発揮し、オルガマリーさんをしっかり守っていた。

オルガマリーさんもただ、守られているわけじゃなくてセイヴァーを助ける場面もあった。

マシュは自分が状況を飲み込めず、混乱している時でも戦ってくれたし、アサシンの攻撃を防いでくれた。

対して、自分は何をした?

キャスターと協力してアーチャーを追い詰めた。でも、詰めが甘くてセイヴァー達を危険に晒してしまった。

そんな自分が歯痒い。

 

「先輩は私の手を握ってくれました。あの事故の中、他人を思いやれる人は殆どいないと私は思います。

だから、先輩はその優しさが何よりの武器だと思いますよ」

 

「マシュ…」

 

マシュは立香に握ってもらった手をもう片方の手で包み、大切そうに自身の胸に当てる。

私は貴方の優しさでこの場にいると立香に証明するために。

 

「ありがとうマシュ。次の特異点からは指示を出すだけじゃなくて、支援が出来る。

だから、安心して戦って欲しいって、何様だオレ」

 

「ふふっ」

 

「ははっ」

 

二人揃って笑う。

このコンビも上手くやっていけるだろう。

 

「そういえば、セイヴァーって何者なんだろう?」

 

「所長のサーヴァントではないのですか?」

 

「そう意味じゃなくて、セイヴァーの教え方がすごい分かりやすかったんだよね。

まるで、オレにはこう教えた方が覚えると分かっていたみたいにさ」

 

立香の不思議な感覚はまだ続いていた。

それどころかセイヴァーと時間を共にする事が増えてからはより強く感じていた。

 

「二人は何処かであっているわけじゃないんですよね?」

 

「セイヴァーの言葉通りなら会ってないし、オレもセイヴァーにあった記憶は無い。

でも、不思議とセイヴァーを知っていると思うんだ」

 

直感とも言える既視感。

冬木であってからずっと感じているもの。

 

「私はどうもセイヴァーさんに避けられてる様でまだ、直接的な会話はしていないんですよ」

 

カルデアではマシュが姿を現わすと、何処かに行方をくらますセイヴァー。

マシュもコンタクトを取ろうと近づいて行くのだが……

 

「セイヴァーさん!」

 

「……」

 

声をかけたら無言で近くの部屋に逃げられ。

 

「あれ?セイヴァーさんは何処に?」

 

「……」

 

セイヴァーの行くところ行くところについていこうとしたら尾行がバレ、撒かれる。

その後も、後ろから忍び寄って驚かそうとしたり、オルガマリーが近くにいる時に声をかけようとしても全て回避される。

そんなことをここ数日、マシュは続けていたのだ。

 

「と言うことは、冬木でアドバイスされたのが最後?」

 

「はい…私は何か、セイヴァーさんの気に触ることでもしたのでしょうか?」

 

立香は考える。

セイヴァーがマシュを避けそうな要因を。

でも、セイヴァーの事をよくは知らない立香ではなんの予想もできない。

この場にオルガマリーがいれば、遠からずの回答ができただろう。

 

「オレにはわかんないな。次の特訓の時にそれとなく聞いてみるよ」

 

「い、いえ!先輩にそんな労力を支払わせるわけには」

 

「オレがやりたいからやるんだよ。それなら納得してくれる?」

 

「…分かりました先輩。では、よろしくお願いします」

 

マシュの言葉を聞いてスポーツドリンクを飲み干す立香。

そろそろ、汗を流して準備をしておきたい。

会話をしていると時間が過ぎるのは早く、セイヴァーから言われた時間まで後、一時間しか無い。

 

「そろそろ汗を流してくるよ。管制室で合流しようマシュ」

 

「はい!先輩をお待ちしていますね」

 

マシュが訓練室を出て行く。

立香も備え付きであるシャワー室に向かう。

ただ、立香は忘れていた。訓練室の時計は時間が30分ずれている事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「立香?何か、言い訳はある?」

 

「…ごめんなさい。オルガマリーさん」

 

見事に30分遅刻して現れた立香にオルガマリーの雷が落ちた。

ロマニとダヴィンチちゃんはシステムフェイトの調整で手が離せない……という名目で助けない。

英霊であるセイヴァーとマシュはシステムフェイトに干渉を起こさない様に別室で待機中。

この場において、オルガマリーを止められる者はいない。

 

「はぁ、訓練室の時間が遅れていたのはこちらの落ち度もあります。

ですので、今回は此処までにしておきますが、次遅れたら分かってますね?」

 

この時のオルガマリーの圧力は半端なかったと立香は後に語った。

 

「は、はい!以後、時間には細心の注意を払います」

 

「ロマニ、彼に聖晶石を渡して」

 

若干、呆れながらもロマニに指示を出すオルガマリー。

 

「立香君。これをシステムフェイトにある窪みにセットするんだ。

あとは自分の魔力を送り込んでくれれば英霊が召喚される」

 

ロマニが虹色の金平糖の様な形をした石を立香に手渡す。

聖晶石。特異点等で発見される魔力を蓄積させている石。並行世界のカルデアでは現金から生成する手段があるらしいが、此処とは関係のない話だ。

カルデアにも貯蓄があったのだが、レフの仕掛けた爆弾は貯蔵庫にも仕掛けられており大半の石は砕けて使い物にならなくなっていた。

セイヴァーが拾っていた物と、ダヴィンチちゃんが開発したカケラを集めて一つの石に出来る技術でどうにか三つの石が集まった。

 

「その聖晶石は三つで英霊召喚が行われる。今回は、立香君が召喚する」

 

「え、オルガマリーさんじゃないんですか?」

 

「私にはセイヴァーがいるわ。彼のクラスを無視した戦闘方法は、十分な戦力よ。

でも、立香は現在マシュしかいない。マシュも英霊だけど、戦闘慣れはしていないわ。

この先も、戦って行くならまずは貴方の強化と貴方が使う戦力の強化が最優先事項なの」

 

立香の後ろで手を組みながら説明するオルガマリー。

とは言ってもこの説明はセイヴァーがオルガマリーに伝えたもので、彼女自身のものではない。

彼女はこの先の特異点は自分でやるつもりだった。だが、セイヴァーに止められ、使える者は使った方が良いと悟らされ英霊召喚を譲ったのだ。

 

「…分かりました。確かに、現状はオレが一番弱いですものね」

 

渡された石をシステムフェイトの窪みにはめていく。

そしてシステムフェイトに魔力を流し込む。

システムフェイトが起動し、光の輪が三つできる。英霊が来た証だ。

オルガマリーはそれを見て少し悔しく思う。自分はセイヴァーが答えてくれるまで英霊は現れてくれなかった。

だけど、素人である立香には一回で現れてくれるとは。

分かっていても悔しいと思うオルガマリーだった。

光の輪が収束し、人型になる。

 

「よう。サーヴァント・ランサー、召喚に応じ参上した。

ま、気楽にやろうやマスター!」

 

立香の召喚に応じたのは、なんの因果か冬木で力を貸してくれたクー・フーリン。

今度はランサーで召喚された様だ。

 

「ランサーで呼べた。宜しく、クー・フーリン」

 

「宜しくなマスター。その口振りから言ってキャスターの俺を知ってるな?」

 

「世話になったよ。キャスターのクー・フーリンには」

 

「そうか。じゃあ、俺が呼ばれたのはその時の縁ってこったな」

 

豪快に笑うクー・フーリン。

立香は兄貴分とは彼の事を言うのだろうと思った。

 

「良くやったわ立香。ランサー、こちらの状況を説明するわ」

 

オルガマリーは説明した。

人類史が焼失し、自分達はそれを取り戻すための戦いをすると。

 

「なるほどな。良いぜ面白そうだ。この槍、あんたらに預けるぜ!」

 

面白そうってとは思ったが、オルガマリーは悪くないサーヴァントが味方になってくれたと思う。

 

「じゃあ、立香はしっかりと休んで。じきに次の特異点に行くことになるわ。

ランサーと親睦を深めておきなさい。じゃあ、私は仕事がありますので」

 

管制室の奥に歩き出すオルガマリー。

彼女のすぐ後ろにはいつの間にかセイヴァーが現れて連れ添って行った。

 

「ロマン、オルガマリーさんは何をしてるの?」

 

「うん?セイヴァーと一緒に、次の特異点への道を探してるのさ。

この場にいるより誰よりも熱心に探してるから、此処にいるメンバーも休まなくてねぇ」

 

ま、僕もその一人だけどねと言葉を続けるロマニ。

確かに、オルガマリーの顔には若干の疲れが現れていた。

 

「君は休むのが仕事だからね立香君。所長はこの組織のトップ。

状況が分かっているからこそ、何かしてないと落ち着けないんだよ彼女。根っこは小心者だから」

 

口を開いて聞く前にロマニに止められる立香。

こう言われてはもう立香が口を挟めることは何もない。

 

「分かりました。しっかりと休んできます」

 

「坊主。俺はどうすれば良い?」

 

「好きな空き部屋を使って良いらしいよ」

 

「了解した。戦いの時は呼んでくれ」

 

霊体化して消えるクー・フーリン。

立香を自室に戻った。マシュを連れ添って。

 

 

 

そして、冬木から二週間後、次の特異点が見つかった。

 

 

 

 




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