今回、深夜テンションで書いたので駄文警報です。
空を覆い尽くさんとするワイバーンの群れにセイヴァーは軽く絶望する。
唯でさえ、自身の身体はファブニールによりダメージを受け、全力が出せないというのに英霊二騎に加え大量のワイバーンを同時に相手できる訳がない。
竜種において頼みの綱のジークフリートはバーサーカーの猛攻から宝具を使う暇は無いだろう。
セイヴァーの幸運はEX。某赤い弓兵や自害に定評のあるランサーなどに比べれば圧倒的に高い。
だが、彼の幸運は気まぐれなのだ。良い時は良いが、悪い時はとことん悪い。
今回の状況はそのステータスから発生したものだろう。
「…クソ。あと少しで此奴を倒せたのに」
セイヴァーは頭の中でこの状況を打破する策を考える。
無理だ。どんな策を用いてもこの状況は突破出来ない。いや、正確には一つだけある。
だが、それは唯の自殺。自分の役目を他者に押し付ける行為でしか無い。
「ああああ!」
思考に耽っていたせいだろう。
背後から近づくアサシンに気が付かずに不意を突かれる。
「くっ!」
慌てて、防ぐが力が足りず吹き飛ばされ、近くの民家に叩きつけられるセイヴァー。
首が少し斬られ血が出ている。
「ぐっ……どうすれば…」
セイヴァーが立ち上がろうとすると身体中に痛みが走る。
今までの無理が祟ったのだろう。
民家に叩きつけられたまま動けないセイヴァーに、ワイバーンの大群とアサシンが迫る。
ワイバーンはその鋭い牙でセイヴァーを食い千切ろうと、アサシンは狂気に支配されてもなお、首を斬り落とそうと迫る。
セイヴァーは如何にか、拳銃を取り出し放つ。
しかし、弱った身体は一発しか撃つことを認めなかった。
「ぐあ!」
引き金を引いた直後に、腕に激痛が走り拳銃を落とす。
最早、激痛に身体が支配され僅かに動くことすら出来ない。
「…すみません。マスター、俺は此処で限界のようです。
ですが、貴女を一人にはさせません」
動くことすらままならないセイヴァーが魔力を放出し始める。
獣ではなく、狂気に支配されたものでなければ気付く。宝具を発動させる予兆。
「…我が真名はーー」
其処まで口にした時、セイヴァーに迫るワイバーン達の頭上から大量の剣が降り注ぐ。
「諦めるのは君らしく無いだろう?」
ワイバーン達の頭蓋を砕いた剣達は消滅し、新たにアサシンに向かって剣が飛んでいく。
身動きが取れないセイヴァーの前に紅い外套を着た白髪の男が立った。
「アラヤの奴は、どうにも動けないらしい。
だが、現在起きてる状況は奴にとって好ましく無いらしい。
解決する為に事前に現れた君を援護するよう命じられた。まぁ、この特異点限定だがね」
生き残っているワイバーンとアサシンに向けて、投影した剣を次々飛ばしていく。
ワイバーンが次々と貫かれ落ちていく。アサシンはキャスターに支援され距離を取った。
「立ちたまえ。君は、彼女を救うべく守護者としての道を選んだのだろう。
ならば、最後まで諦めず戦え。それとも、君の覚悟はこの場で死を選び取る程甘いものだったのか?」
その男の叱責にセイヴァーは笑いながら、未だに激痛の走る身体に鞭を打ち立ち上がる。
ああ。この場で死すわけにはいかない。何故なら、彼女はまだ完全に生きるとは確定されていない。
それならば、まだ自分が消える訳にはいかない。
「ふっ。君はそうでなくてはな。
これを持っていろ。治癒の促進を早めてくれる 」
投げ渡された剣を受け取りながら、適当なところにしまうセイヴァー。
「私が道を開こう。君のマスターと合流するが良い。
場所はラ・シャリテだ。此処から少々離れているが、まぁ君なら大丈夫だろう」
捻れた剣を投影し、矢に番えたその男はセイヴァーにそう言う。
「ありがとう。エミヤ」
「なに。前回は醜いところを見せたからな。その詫びだ」
ニヒルな笑みを浮かべエミヤが矢を放つ。
そして、ワイバーンの生き残りとアサシン、キャスターの間で矢が爆ぜる。
「行け!そして、君が望む未来を勝ち取れ!」
エミヤのその言葉を合図に、近くにあった馬小屋から馬を一頭拝借し、馬で駆け出すセイヴァー。
それを追おうとしたワイバーンやアサシン、キャスターの前に立ち塞がる様に立つエミヤ。
背中に投影された剣が眼前の敵に狙いを絞る。
「さて、守護者の先立ちとして彼の邪魔はさせんぞ」
その姿は数多の人間を救った正義の味方に相応しいものだった。
セイヴァーとエミヤが合流した時間。
新たにジャンヌ・ダルクをメンバーに加えたカルデア一行が情報収集の為にラ・シャリテを訪れようとしていた時だった。
因みに仮契約は立香がしている。
オルガマリー曰く、自身が契約するサーヴァントはセイヴァーだけと言うらしい。
「オルレアンに向かいながら、情報を集めましょう。
敵を知らずに行くのは愚の骨頂です」
この地に詳しいと云う事でジャンヌが指揮をとる。
順番的にはジャンヌを先頭にそのすぐ後ろを立香とマシュが居て、その後ろを腕を頭の後ろで組みながらランサー。
そして、彼等より一メートルぐらい後方をオルガマリーが思案顔で歩いている。
「オルガマリーさんは令呪を使わないのですか?」
ジャンヌが振り返ってオルガマリーにそう尋ねる。
「え?」
「いえ、マスターであれば令呪があるはずですよね?
それを使えばセイヴァーさんをこの場に瞬時に移動させられるんじゃないんですか?」
令呪はマスターが願えば、サーヴァントに魔法とも呼べる効果を付与できる。
どんなに距離が離れて居ても、マスターであるオルガマリーが令呪にセイヴァーをこの場所にと願えばセイヴァーは瞬時に現れる。
だが、彼女はそれを行なって居ない。
彼女が単純にパニックを起こしていたのも理由と一つだが、直感じみたもので今、令呪を使うとセイヴァーと二度と会えなくなるそんな確信が彼女の心の中を支配していた。
理由は分からない。もしかしたら、令呪から感じる魔力が不安定になっているせいかもしれない。
ジャンヌの言葉にオルガマリーが言葉を返せないでいると、強制的にロマンから通信が入る。
『良かった!繋がった様だね。時間が無いから手短に説明するよ。
現在、セイヴァーの意味消失をギリギリで支えている状況だ。だから、所長は絶対に令呪による転移なんて使わないでほしい。
その瞬間、こっちは捕捉できなくてセイヴァーは意味消失する!原因は、分からない。でも、令呪だけは使わないでくれ!』
「一体、セイヴァーさんに何が起きてるんですか?」
『ジシッ……もうもたない……とに…令呪……駄目……』
マシュの質問にロマンが答える事はなく、再び通信が途絶える。
「……えーと、どうやら私は後少しで貴女に酷な事を強いることになってた様ですね…すみません」
通信を聞いて、気まずそうに視線を彷徨わせながら、オルガマリーに謝るジャンヌ。
「い、いえ、貴女の言ってることは尤もです。私も自分の感じていた事を話さなかったのですから」
ジャンヌの言葉にオルガマリーも申し訳なさそうな態度をとる。
この二人、互いに謝ってどうするのだろうか。
「「ふふっ」」
二人が互いの態度を見て、同時に笑った。
互いに似た様な態度を示したのが鏡合わせのようで面白かったのだろう。
その光景を見て、立香は日本の日常生活でこういうのいっぱい見たっけなぁと場違いな事を思っていた。
そんな結構驚きの事実を突きつけられたのに、緩い空気のまま一行はラ・シャリテに向かう。
「ランサーさん 」
「ん?どうした嬢ちゃん?」
「私達、影薄くありません?」
「戦闘に成れば活躍できるさ」
この二人もやっぱり緩い会話をしている。
だが、後方の三人より周りに意識を割いていた為気付く。
これから向かうラ・シャリテから煙が昇っていることに。
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