願いを込めて   作:マスターBT

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………今回のサブタイで色々と察している方々がいらっしゃると思います。
思っていたより、ヴラド三世と兄貴の戦闘が長く書けませんでしたm(._.)m
何のために分けたんだよって状態です。
戦闘描写長く書けない病が治らない駄作者ですが楽しんでくれたら幸いです。


撤退

「はぁ!」

 

「ふん!」

 

金属音が鳴り響く。

ランサーの槍と、バーサークランサーの槍が高速で衝突し合う音だ。

彼らの周りはその衝撃で、地面の砂や石が飛んで行く。

ランサーのクラスは白兵戦において右に並ぶもののない性能を持つ。

一方はケルトの大英雄。もう一方は、真名は不明なものの身体を霧の様に変質させトリッキーな攻撃を組み込んで来ているとはいえ、槍でケルトの大英雄と互角にやり合う性能を持っている。

戦いが長引くのは必定だ。

 

「あんたは何処の英雄だ?俺と互角にやり合える王様はそうはいねぇと思うんだが」

 

そう言いながら、バーサークランサーの顔めがけて槍を振るう。

しかし、顔に届く前にバーサークランサーそのものが霧となり距離を取られる。

 

「余の真名を知りたいと?」

 

「ああ。だが、ある程度の察しはついている。

あんたはさっき、ジャンヌ・ダルクを見ながら血を頂くとか言ってたな。

そして、霧の様に身体を変化させるスキル。これは、まずもって普通の英霊が持つもんじゃねぇ。

以上を踏まえると、あんたはドラキュラの元になった『ヴラド三世』じゃないか?」

 

槍を肩に乗せながら言うランサー。

ランサーの言葉に眉を寄せ、不快感を表すバーサークランサー。

 

「その顔を見るあたり正解の様だな。ヴラド三世」

 

「…実に不快だ。今の余は確かに吸血鬼ードラキュラと言われるだろう。

だが、それを踏まえて余=ドラキュラというのが不快だ!」

 

バーサークランサーいや、ヴラド三世から殺気が溢れ出す。

彼の殺気、若しくは溢れ出る魔力により近くの石が杭となりランサーにに飛来する。

しかし、それは前の様に直前で曲がり当たらない。

 

「あんたの目的が分かった気がするぜ。だけどよ、それを成したいならこっちに付くのが正解だと思うぜ?」

 

「それが出来ぬ事ぐらい貴様も知っておろう。何より、その様な形で決着をつけるのは不本意だろうに」

 

「はっ!よく分かってんじゃねぇか!」

 

再び槍を構え、ヴラド三世へと駆け出して行くランサー。

その槍が心臓に届く時に、ヴラド三世の手から杭が飛び出しランサーを強襲する。

 

「うお!」

 

槍の肢の部分でギリギリ防ぐランサー。

杭と槍が衝突し激しい火花をたてる。

動きが止まったランサーに対し、ヴラド三世は蹴りを放ちそれをランサーは後ろに大きく飛び退く事で回避する。

 

「ちっ、軽くかすってたか」

 

しかし、完全には避けきれず横っ腹から少し血が出ていた。

 

「ふむ。今のでもダメか」

 

足から飛び出していた杭を戻し、呟くヴラド三世。

しかし、言葉とは裏腹に顔は全く残念がっていない。

寧ろ強敵と戦えている事に楽しさを覚えている様に見える。

 

「…宝具を使う?いや、幾ら俺の槍でも霧の様に霧散されたら狙いづらいか」

 

距離を取りながら戦術を組み立てるランサー。

彼の表情も己が全力を持って戦える相手に会えて嬉しそうに見える。

 

「宝具か。だが、余の宝具はあやつの妙な加護で当たらない可能性が大きいか」

 

ヴラド三世も同じ様に戦術を組み立てる。

ランサーの矢避けの加護には薄々勘付いている様だ。

 

「霧になる前に至近距離での宝具発動。これでいけるか?」

 

「距離が開いて当たらぬのであれば、距離を詰めて宝具を使う。

あやつを倒すにはそれしかないな」

 

奇しくも同じ戦術を組み立てる二人。

次の衝突で雌雄が決する。二人の間に緊張がはしる。

互いにこの一瞬で決まると相手の表情から悟ったからだ。

しかし、互いが攻撃に出ようとした瞬間ランサーの進路に炎が上がる。

 

「バーサークランサー!戻りなさい!…全く揃いも揃って役立たずなんだから…」

 

黒ジャンヌの指示によりヴラド三世はランサーとの勝負を続けられなくなる。

鬱陶しそうに黒ジャンヌの方向に視線を向けるヴラド三世。

彼の目には、ダメージを負って立ち上がる事すらままならないバーサークアサシンの姿が映る。

 

「なんと無様な」

 

「チッ、横槍が入ったか。俺はマスターの守りに戻る。

あんたは、そこの黒いジャンヌに従う。この場はこれでどうだ?」

 

槍を片手で支える様に持ちながらランサーはヴラド三世に提案する。

 

「ここで決着はつけぬと?」

 

「白けた。このまま、あんたを倒しても楽しくねぇ」

 

「ハハッ、生粋の武人か。ならば、その提案を受けよう。

ランサーよ。オルレアンへと来るが良い。そこで、余との決着をつけよう」

 

その言葉に頷き、ランサーはマスターである立香の元へと戻って行く。

ヴラド三世もその身体を霧に変化させながら黒ジャンヌの元へと戻る。

 

「倒してこなかったんだね」

 

「勝手で悪いとは思うが、俺はあいつと一対一でなんの邪魔も無く決着をつけたい。

もし、それが嫌なら令呪でも使ってくれ」

 

「いや、使わないよ。オレは英霊を信じるとさっき決めたからね」

 

戻ってきたランサーを見て、笑いながら言う立香。

 

「その代わり、絶対に勝ってよ?」

 

「ハハッ!了解したぜマスター!」

 

それを恥ずかしそうに頭を掻きながら答えるランサー。

その姿を見ては敵を態と逃した事に関して言おうと思っていたオルガマリーも口を閉じる。

 

「戻ったぞ」

 

「何やってるのよ!敵を片付けてないなんて化物も所詮その程度なの?」

 

「…ふむ。それに関しては謝ろうマスター」

 

そうは言うがヴラド三世の顔からは黒ジャンヌに対しての呆れが伝わって来る。

彼の中で黒ジャンヌは愚鈍なマスターとして位置付けられた。

黒ジャンヌへ興味の失せた目でヴラド三世はバーサークアサシンを見る。

 

「あれ程、粋がっていてその樣とは笑わせてくれるなカーミラ」

 

感情のこもっていない絶対零度の視線をカーミラに向けるヴラド三世。

直前まで持っていた同胞という感情すらも捨てている様だ。

 

「……王様…」

 

「…あっちは大変ね。セイヴァー」

 

黒ジャンヌ陣営の会話を聞こえて、明らかに引いている表情のオルガマリーがセイヴァーに話しかける。

セイヴァーは内心でカーミラに手を合わせた。

 

「貴方達は、所詮化物。血を欲するだけの化物です。

下がりなさい。……やれますね?」

 

黒ジャンヌは背後に控えている三騎の英霊を見る。

 

「今度は三騎でくる気か」

 

セイヴァーはそう言って周りを見渡す。

マシュはカーミラとの戦闘により疲労が見られる。

ジャンヌは未だ、余裕があるものの攻撃能力に優れている訳ではない彼女では三騎と戦うには無理がある。

クー・フーリンはヴラド三世との戦いで疲れているのか表情が少々こわばっている。

自分は論外。立香とオルガマリーも唯の人間、サーヴァントと正面戦闘が出来る様な人外ではない。

状況では詰んでいる。奇跡的に救援でも来ない限り此処は突破できない。

そう結論付けた直後だった。セイヴァー達カルデア組と、黒ジャンヌ陣営の間にガラスで出来た薔薇が突き刺さったのは。

 

「ー優雅ではありません。この街の有様も、その戦い方も。

思想も、主義もよろしくないわ」

 

聞こえてきた言葉に口角を上げるセイヴァー。

その声は戦場には相応しくない高貴さを感じさせた。

 

「貴女はそんなに美しいのに、血と憎悪でその身を縛ろうとしている。

善であれ悪であれ、人間ってもっと軽やかにあるべきじゃないかしら?」

 

その言葉と共に一人の女性が姿をあらわす。

一目で戦士でない。その場にいる全員が察する事が出来る。

服装は、何処かドレスを思わせ頭には丸い大きな帽子をかぶっている。

そして何より、彼女の雰囲気が明るい。存在するだけで、周りに笑顔をくれる様な感じだ。

 

「ええ。そう、嬉しいわ。これが正義の味方と名乗りを上げる、というものなのね!

貴女が誰かは知っています。貴女の強さ、恐ろしさも知っています。

正直に告白してしまうと、今まで一番怖いと震えています」

 

彼女の宣言は本当だろう。

その表情からは恐怖を感じている事が分かる。

そして、足を見れば確かに震えている。

 

「それでもー貴女がこの国を侵すのなら、私はドレスを破ってでも貴女に戦いを挑みます!」

 

「貴女は!」

 

彼女の言葉に黒ジャンヌの後ろにいた青い帽子を被っている女性よりの格好をしているサーヴァントが反応する。

その表情は驚愕に染まっている。それはまるで、今の状態で最も会いたく無い人間に会った様に。

 

「まぁ。私の真名をご存じなのね。知り合いかしら?素敵な女騎士さん?」

 

「セイバー。彼女は何者?」

 

「……」

 

バーサークセイバーは沈黙する。

知っている。でも、今の自分が口にして良いのか迷っている様だ。

 

「答えなさい」

 

沈黙するバーサークセイバーに対し、黒ジャンヌが威圧をかけながら命令する。

マスターである黒ジャンヌに強く命令されれば、逆らえない。

そして、狂気に支配された心も言いたがっている。

 

「この殺戮の熱に浮かされた精神でもわかる。

彼女の美しさは、私の目に焼き付いていますからね。

ヴェルサイユの華と謳われた少女。彼女はマリー・アントワネット」

 

「マリー・アントワネット王妃!」

 

騎士の言葉にマシュが声を上げる。

マリー・アントワネットはフランスの王妃。

決して、血生臭い戦場を生きた訳ではない。それでも、彼女は英霊として姿を現した。

何故なら彼女はフランスをその民を愛している。彼女を戦場に立たせているのはそれが理由。

 

「はい!ありがとう。私の名前を呼んでくれて!

そして、その名前がある限りどんなに愚かだろうと私は私の役割を演じます。

国を荒らす竜の魔女さん?貴女はこの私の前で、まだ狼藉を働くほど邪悪なのですか?」

 

先ほど、恐ろしいとそういった相手に決意の篭った目で今度は足の震えもなく質問する。

その姿はこの場の英霊、全てを魅了または感心させた。

 

「……黙りなさい。貴女如きがこの戦いに関わる権利はありません」

 

一瞬の間を置き黒ジャンヌが答える。

 

「あら、どうして?」

 

「…貴女に我々の憎悪が理解出来ると?」

 

不快を露わにした表情で答える黒ジャンヌ。

しかし、何処か歯切れが悪い。

 

「そうね。わからないわね。理由も不明、真意も透明。

何もかも消息不明。日曜日に出掛ける少女の様でしてよ?」

 

「っつ!」

 

その言葉は黒ジャンヌにオルガマリーの言葉を思い出させた。

自分はこの憎悪をぶつけている。だが、それは何の意味がある?

憎悪の果てに何がある?

自身の内から湧き出した疑問に答える術を持たない黒ジャンヌはそれを放棄した。

……だが、確実に黒ジャンヌに何かが蓄積している。

 

「その顔は何かがあったようね。

でも、私にはそれは分からない。貴女は世界の敵でしょう?

では、先ず貴女が殺めた人々への鎮魂が必要不可欠。お待たせしました。アマデウス」

 

「任せたまえ。宝具『死神の為の葬送曲(レクイエム・フォー・デス)』」

 

マリー・アントワネットの言葉に反応して現れた男が宝具を発動させる。

それは何とも言い難い音楽だった。

だが、黒ジャンヌ陣営のサーヴァント達はまるで圧がかけられた様に動きが鈍くなる。

 

「逃げるなら今です!マスター」

 

「了解よセイヴァー。立香、逃げるわよ」

 

「了解!マシュ、ジャンヌ!」

 

カルデア陣営は敵の動きが鈍ったのを見て逃走を開始する。

 

「それでは御機嫌よう皆様。オ・ルヴォワール!」

 

そう挨拶してカルデア陣営を追う様に、マリー・アントワネットとアマデウスも逃げた。

リヨンでの一戦は、大きな被害を出さずに終結した。

 

 




もう最終戦に流れるBGMなんて聞かないで書くぞ!そうすれば戦闘だって長くかける!

さて、話は変わりますが宝具の英名募集を打ち切りたいと思います。
あまりたくさん出ても作者が選びきれないという何とも自己的な理由ですが。
考えてくださった皆様方ありがとう御座います。
宝具名は小説内での発表としますので楽しみに待っていてください。
それと、大学の準備等がありまして投稿が遅くなります。そして、四月以降は更に遅くなる可能性があります。
三月中にオルレアンは終わらせたいところです。
長くなりましたが、感想・批判お待ちしています。
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