願いを込めて   作:マスターBT

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オルガマリーとセイヴァーの会話回です。
物語自体は全然進んでません。


溢れ落ちたもの

「……完全に私の負けね」

 

ジャンヌの一撃によりゆっくりとだが、確実にその身体を粒子へと変換しているマルタ。

その表情は妙に清々しい。最初はただ、黒ジャンヌを倒せるか試すのが目的だった。

しかし、立香の指示により自分と対等に戦うサーヴァント達に楽しさを見出していた。

聖女になる前の自分に舞い戻った様に戦えた。

 

「気分が良いから一つ教えてあげるわ。

そこの貴方は知っているだろうけど、竜の魔女が操る竜に貴女達は絶対勝てない」

 

セイヴァーに向けられた言葉に全員が振り向いてセイヴァーを見る。

それに対してセイヴァーは無言で頷く。

その表情から嘘では無いという事を全員が悟る。

 

「あまり時間が無いから続けるわ。リヨンに行きなさい。

そこに竜殺しがいるわ。それと、ごめんなさい。聖人に関しては分からないわ」

 

「構わない。自力で探すさ」

 

そう答えてキャンプ地から無言で離れていくセイヴァー。

その表情は何かを堪えている様に見えた。

 

「ッツ!」

 

少なくとも彼のマスターであるオルガマリーにはそう見えた。

 

「立香。後は任せます」

 

「え?」

 

返事は聞かずに森の奥へと姿を消したセイヴァーを追いかけるオルガマリー。

オルガマリーはセイヴァーを追い掛けた理由は分からない。

でも、あのままセイヴァーを一人にしたら彼が消えてしまうと思ったからだ。

森の中を走る。

セイヴァー!何処にいるの?お願い私を一人にしないで!

そう思いながら森の中を走る事、五分。

森の奥から月明かりが見えた。

 

「セイヴァー!」

 

そして、月明かりに照らされてオルガマリーに背を向けているセイヴァーが見えた。

オルガマリーには一瞬だったがセイヴァーが振り向いた時に彼が見たことのない悲しい表情を浮かべているのが確認できた。

 

「マスター……俺を追ってきたんですか…」

 

 

 

オルガマリーSIDE

 

「マスター……俺を追ってきたんですか…」

 

振り返ったその表情が、余りにも悲しそうだから私はセイヴァーに駆け寄って彼を抱きしめた。

理由は分からない。でも、今の彼は何処か存在が朧げに感じた。

消えて欲しくない。その一心で彼を抱きしめた。

 

「マ、マスター?」

 

「貴方が今何を悩んでいるか私には分かりません。

それでも私はセイヴァーのマスターです」

 

セイヴァーのマスター。

自分で言っておいて心臓が高鳴る。

理由は分からない。でも、セイヴァーは私に応えてくれた唯一のサーヴァントだから、何かあるなら支えてあげたい。

 

「マスター。この特異点に来てから俺は貴女の助けになっていますか?」

 

一瞬何を聞きたいのか分からなかった。

でも、セイヴァーは理由が分からないけど私を第一に動いてくれる。

だからきっと今の戦闘に参加できないのが歯痒いのだろうと私は思う。

抱きしめる力を強くしながら私は告げた。

 

「セイヴァー?貴方は、唯一私に応じてくれた英霊です。

……レフが裏切ってから私の心を支えているのは貴方です。だから、そんなに自分を卑下しないで」

 

本心を伝えた。

彼の辛い顔は見たくない。だって、英霊になる前にきっと苦しい生き方をしてきたから。

彼の笑顔を見れば分かる。本当の笑顔はあんなに歪じゃない。

それは彼の優しさに触れれば分かる。

 

「貴方は優しい。でも、何かを捨ててきてる。

今の状態が捨ててきたものに比べてとても小さいから嫌なのでしょう?」

 

腕の中のセイヴァーがピクリと震えた気がする。

分かりやすい。このサーヴァントは嘘が苦手だ。

 

「…はい。詳しい話は」

 

「分かってます。待ってますから」

 

「…ありがとうございます…俺はたった一つの目的の為に俺の身を案じてくれる人たちの声を無視し世界に死後を売り渡しました。

そして、その時が来るまで守護者として世界が敵と定めた人達を殺しました」

 

あの夢で見た光景だろう。

あれはセイヴァーが守護者として歩んだ道だったんだ。

 

「今回の召喚は俺の目的に必要です。今の状況は俺が殺してきた人間、生前俺を心配してくれた人達に顔が合わせられません」

 

抱きしめているから顔は分からない。

声が震えているから若しかしたら泣いてるのかもしれない。

だからセイヴァーの頭を撫でた。

 

「気安く大丈夫と言う事は私には出来ません。

でも、貴方は貴方が今出来る事を全力でやれば良いと思います。

今の私達はみんなそんな感じよ」

 

私だって、ロマンだって、マシュだって、立香だって、恐らくダヴィンチもみんな今やれる事を全力でやってる。

セイヴァーは何処と無く他の英霊達に比べて妙に手慣れた様子はあるけど、きっと私達とやる事は変わらない。

 

「だからねセイヴァー?貴方にどんな事情があれ周りに頼るのも一つの手だと思うわよ」

 

頭を撫でながら優しく伝える。

暫くの間、セイヴァーが落ち着くまで頭を撫で続けた。

 

「…マスター。ありがとうございます。もう少ししたら戻りますので」

 

セイヴァーが私をゆっくり離しながら言う。

その表情は先程とは違い、消えてしまう儚さは感じない。

 

「分かったわ。先に戻ってるわね」

 

セイヴァーに背を向けて歩き出す。

 

「………ありがとう。オルガマリー所長」

 

森の中に入る直前にセイヴァーが何かを呟いたけど私には聞き取れなかった。

理由はセイヴァーを抱きしめていたことに遅れながら羞恥が押し寄せていたから。

 

「う〜、何やってるのよ……私は……でも、セイヴァーの身体暖かかったな…」

 

熱くなった頬の熱を冷ます様に頭を振る。

ただ、サーヴァントを抱きしめただけ!ええ、他意は無いわ。

 

「オルガマリーさん?顔が赤いですよ。どうかしたんですか?」

 

「ッツ!」

 

「なんで!?」

 

キャンプ地に戻って顔が赤いと言われて羞恥心に駆られて立香を平手打ちしてしまった。

立香本人は見ただけで分かる顔にハテナを浮かべている。

 

「ご、ごめんなさい。タイミングの問題です。それでは」

 

これ以上誰かに赤い顔を見られたくなくて自分のテントへと逃げた。

 

「うふふっ。何やら面白そうな気配」

 

「ま、マリー?そんなに目をキラキラさしてどうしたんですか?」

 

一目散に逃げた私にはこんな会話がされていたなんて知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

セイヴァーSIDE

 

マスターが森に戻ったのを見届けて月を見上げる。

 

「今、やれる事を全力で、か。人理修復が簡単にいく訳無いよな。

俺はそんな事すら忘れていたのか」

 

自分の愚かさに嘲笑する。

ああ、馬鹿だ俺は。生前の俺はどんな気概で挑んだ?

大半は忘れているいや歪んでしまった。

だが、今でも覚えている事は全力で臨んでいた事。

そして、仲間を頼った事。

 

「…マスターに心配をかけたか。ああ、俺も情けない」

 

俺が今、一番心配をかけたくない存在のマスター。

彼女に心配をかけてしまうとは、これから先は無くそう。

 

「何があろうとマスターは守りきるこれが一番の目的だ。

そして、もう一つは…」

 

目的を頭の中で反芻する。

マスターを守りきる。そして、その過程で達成したい事。

 

「レフをこの世から殺し尽くす事」

 

きっとこの時の俺はセイヴァーと云う言葉が嘘だと思うほど憎悪に満ちた目をしていただろう。

 




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