願いを込めて   作:マスターBT

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四月までにオルレアンが終わる気がしない!
どうぞ、無計画駄作者と罵ってください。



復活と意外な増援と

『グギャアアア!!』

 

上空から突如と響く獣の声。

それは、マルセイユにいる人間を恐怖に染めるには十分過ぎた。

街の近くに巨大な影が写り、その直後に黒い竜が降りた。

 

「ファヴニール。お前は、俺を追ってきたのか?」

 

視線を合わせた直後に感じた怒り。

セイヴァーはその怒りをレフが感じているものと同じだと直感した。

そして、ジャンヌとこの街で見つけたもう一人の聖人、ゲオルギウスを見る。

 

「呪いの解除はどれ位かかる?」

 

「…二人で協力すれば一分程度で可能だと思います」

 

「だが、その間この街の人はどうする?

私はこの街の市長から住民を守る様に頼まれている」

 

ゲオルギウスの発言にジャンヌが言葉を詰まらす。

 

「では、私の出番ですね?」

 

マリー・アントワネットが三人の前に立つ。

その顔は覚悟を決めている。

 

「マリー…」

 

「私はフランスを愛しています。国もそこに住まう人々も。

ですから、この場で人が死なずに済むのなら私は喜んで戦います」

 

ジャンヌの悲しそうな声もマリー・アントワネットの覚悟を揺るがす事は出来ない。

何故なら彼女は既に死ぬ覚悟を持って同行してきているのだから。

 

「それにあの竜は殺せないのでしょ?

時間を稼ぎます。その間に逃げて体勢を整えて下さい」

 

彼女から感じる魔力量が上がる。

宝具発動の兆し。

 

「待ちなさい。これを持って」

 

オルガマリーが、ファヴニールへの恐怖に打ち勝ちマリー・アントワネットに持っていた宝石を手渡す。

その宝石はかなりの魔力を秘めていた。

 

「これを使って。一時的でも貴女の魔力を底上げ出来る筈です。

一分。それまで持ちこたえて」

 

「ですが」

 

「セイヴァーが必ず貴女を助けます」

 

オルガマリーがセイヴァーを見る。

その目にはセイヴァーへの強い信頼が溢れている。

セイヴァーはその目を見て、無言で頷く。

 

「ジャンヌとゲオルギウスはセイヴァーの呪いを解いて!

マリー王妃は私と一緒に時間を稼ぎます」

 

オルガマリーの言葉に一瞬、セイヴァーが表情を変えたが現状はそれが最適と理解し、口を閉じる。

 

「ジャンヌ、ゲオルギウス。解呪を頼む。出来るだけ早く」

 

その代わり、二人を急かす。

それを見て、ジャンヌが笑いをこぼす。

 

「分かりました。ゲオルギウス、やりますよ」

 

「了解した。どうやら急いだ方が良いようですね」

 

セイヴァーを囲むように立った二人が洗礼詠唱を開始する。

 

愛すべき輝きは永遠に(クリスタル・パレス)

 

マリー・アントワネットがそう口にした直後に宝石が砕け散る。

そして周りの景色が絢爛かつ優美な宮殿へと変わっていく。

ライダーとしての彼女が持つ結界宝具。

その効果は自身と仲間の強化。これによりファヴニールとの圧倒的な差を僅かに縮める。

 

『グギャアアア!』

 

しかし、宮殿も荒狂う災害の如く暴れるファヴニールにより壊されていく。

長くは持たないだろう。

 

「…死ぬ覚悟は決めていたんですけど、私も少し抗ってみますね。

アマデウスとの約束もありますし」

 

ガラスの馬に跨った彼女は縦横無尽に走りながら、光弾をファヴニールに向けて放つ。

しかし、光弾は漆黒の鱗を前に掻き消えていくばかりで何の効力も発揮しない。

だがファヴニールの標的をセイヴァーから、マリー・アントワネットへと狙いを変える事に成功する。

 

『ガァァア!』

 

振り下ろされる爪をギリギリで避けるマリー・アントワネット。

振り下ろされた地面が砕け散った事から直撃すればサーヴァントといえど、即死は間逃れない。

ファヴニールの隙間を縫うように動き回るマリー・アントワネット。

その速度に動作が大きいファヴニールは捉えきれない。

しかし、少しづつだが確実に宮殿が破壊されていく。

破壊が進む毎にマリー・アントワネットの動きが鈍っていく。

そして鈍れば幾ら大振りでも、当たり始める。

 

「きゃあ!もう少しだけもってください」

 

ガラスの馬にヒビが入り始める。

振り下ろされる爪や尻尾が完全に避けきれずダメージが蓄積し始めたからだ。

マリー・アントワネット自身には当たっていないがそれも時間の問題だ。

 

「くぅ…強化の魔術にも限界がきたわね」

 

ガラスの馬に強化の魔術をかけていたオルガマリーだったが、その馬の状態が魔術をかけても意味を成さないものに成りつつあった。

そして遂にガラスの馬が限界を迎えた。

 

「きゃあぁ!」

 

地面を転がるマリー・アントワネット。

そこに近づいていくファヴニール。

 

「やめなさい!」

 

オルガマリーがガンドを連射する。

しかし、全く意に介さずファヴニールは動く。

トドメを刺そうとした直後に、ファヴニールに黒い手が絡みつく。

そして、巨大なギロチンがファヴニールに落とされる。

 

「君の首を落とすのは僕だ。こんなところで、獣にやられないでくれ」

 

地面に倒れていたマリー・アントワネットの前に本来、敵であるはずのバーサークアサシン。

真名シャルル=アンリ・サンソンがその身を盾にする様に立つ。

 

「貴方は…敵の筈では?」

 

「ええ。でも、あの竜は魔女でも御しきれない存在。

僕が首を落とすべき、貴女を殺すというならそれを妨害する迄の事です」

 

ギロチンが砕け散る。

ファヴニールの視線はサンソンに向いている。

 

「僕を狙うのか。それなら、もう一度壁を作らせて貰おう。

死は明日への希望なり(ラモール・エスポワール)

 

再び黒い手が絡みつく。

しかし、今度は押さえきれず振り切られる。

それにより宝具が不発する。

 

『グァァァァァア!!』

 

ファヴニールが炎を吐き出す。

炎は広範囲でダメージが抜けず、倒れたままのマリー・アントワネットも巻き込む。

 

「マリー!」

 

「サンソン!?」

 

炎が向かってくる中、サンソンは動かずに手に持っていた剣をマリー・アントワネットの前に突き刺し、その前に自身が手を広げ立つ。

灼熱の高温がサンソンを焼く。

 

「ぐぅぅぅ…」

 

苦痛に顔を歪ませる。

狂化が付与されていても、サンソンがマリー・アントワネットに向ける感情は揺るがない。

その身を盾にするほど、彼は彼女を想っていた。

そして、サンソンが身を盾にしマリー・アントワネットが決死で稼いだ時間が状況を変えた。

 

『ガァ!?』

 

ファヴニールの悲鳴が聞こえ、炎が止まる。

サンソンは背中を広範囲で火傷した様だ。

 

「前とは違う一撃に怯んだか?

マリー、時間稼ぎありがとう。サンソン、助かった」

 

ファヴニールの首の真下。

バルムンクを持ったセイヴァーが立っていた。

ファヴニールの首は僅かに斬られ、血が出ていた。

 

「呪いが解除されれば、この武器でダメージが入る様だな」

 

『グルァァア!』

 

怒り狂った様に咆哮する。

 

「こっちも散々、苦渋を舐めさせられたんだ。

少しは対価を貰っていくぞ」

 

セイヴァーは今までの、苛立ちをぶつける様にバルムンクを振るう。

決定的では無いがファヴニールの鱗を傷つけていく。

 

「マリー。此方に手当てします。

アサシンも来てください」

 

ジャンヌが近くの物陰に、マリー・アントワネットとサンソンを連れていく。

マリー・アントワネットは擦り傷が大半なので、オルガマリーの魔術でどうにかなる。

しかし、サンソンの火傷はかなり大きい。

 

「馬が砕けて、宝具が一つ使えなくなってしまったわ」

 

苦笑しながら告げるマリー・アントワネット。

 

「うぐっ……スキルを使ってもこれ以上は…」

 

医術のスキルを用いて、火傷を治そうとするサンソンだが余り回復しない。

 

「はぁ!」

 

振り下ろされた爪を剣で弾くセイヴァー。

倒す事は出来ないものの、倒される事はない。

しかし、セイヴァーの表情に余り余裕は無い。災害に一人の人間が抗っている様なものだ。

時間は稼げてもいずれ決壊する。

ガキィンと金属音が響き、セイヴァーが宙に浮く。

爪による攻撃を防いだものの、堪えきれず吹き飛ばされた様だ。

セイヴァーは宙で体勢を立て直し、弓矢を取り出す。

口を大きく開け、セイヴァーを喰らおうとするファヴニール。

 

「硬い鱗に覆われていない所を攻撃したらどうなる?」

 

ファヴニールの口に矢を放つ。

直後、口内で弓が爆ぜる。

弓矢に込めた神秘を放出させた様だ。

 

『グァァァ…』

 

流石にダメージを負ったのか苦しそうな声を出すファヴニール。

だがその目に宿る闘志が薄まることはない。

 

『グルルル』

 

何かに呼ばれる様に首を向けるファヴニール。

その方角にはオルレアンがある。

 

『ガァァァアア!』

 

セイヴァーを睨みつけ、その巨体を空へと消えるファヴニール。

突如の離脱で思考が追いつかないが、ファヴニールは宮殿を破壊し街から出て行った。

 

「一体何が?」

 

「おそらく魔女が強制命令でも使ったのでしょう。

あの竜は魔女が使役しているわけではないですが、譲り受けたものだから」

 

サンソンが剣を杖代わりに立ちながら言う。

その表情は火傷により苦痛に歪んでいる。

立ち上がったサンソンに剣を向けるセイヴァー。

 

「何が目的だ?」

 

「僕はマリーの首を落としたいだけだ。

痛みどころか快楽を与えてね」

 

「…そうか。だが、それをさせる訳にはいかない。

死んで困る約束事が彼女にはあるからな」

 

剣を構えるセイヴァー。

対するサンソンに動きはない。

火傷で動けないのか、それともこうなる事が分かっていたのか彼の表情は諦めの色を濃くしている。

 

「君に腕をやられて初めて気が付いたよ。

今の僕ではマリーに快楽を与えることなんて到底出来ない。

だから、ここで殺すと良い。自害するほど体力がないからね」

 

「サンソン…」

 

マリー・アントワネットが悲しそうに声を出す。

全てを愛す博愛主義者である彼女には今まで、敵であったサンソンも愛すべき対象なのだ。

 

「叶うのなら、マリーと共に戦える日を待ってる」

 

「カルデアのマスターに期待してくれ。

助かった。ありがとう、シャルル=アンリサンソン」

 

最後に礼を述べ剣がサンソンの霊格を貫く。

元々弱っていたサンソンはその身体を魔力の粒子へと変換した。

 

「サンソン。貴方に斬られる訳にはいきませんが、次会えたらアマデウスも一緒にお茶でも飲みましょう」

 

粒子が完全に消滅する前に、マリー・アントワネットが言う。

消えゆく英霊の少しは癒しになると祈って。

 

 

 




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