願いを込めて   作:マスターBT

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顔合わせ

「それで?君は何者なのかな?いい加減教えてくれると嬉しいのだけど… 」

 

カルデアにある一室で本来なら自分の仕事じゃ無いのにと内心でぼやきながら召喚されたサーヴァントと向かい合っているロマ二・アーキマン。

医術部門のトップである彼がサーヴァントと向かい合っているのには理由がある。

所長がサーヴァントを召喚した直後に気絶してしまったからだ。

所長とそれなりの関係があり、医者である事もあり人のなりを見抜くのが上手い。

もう一つ理由があるのなら、このカルデアにおいてナンバー2のレフが出張に出ていて不在であるから。

だから、彼が引き受けている。

 

「……何者と言われても未来の英霊としか答える事が出来ない 」

 

この返事を聞くのは、何度目だろうか?

はぁ、と溜息を吐くロマ二。この英霊は何を聞いても無言か、貴方達を混乱させるだけとしか答えない。

 

「もう疲れた……じゃあ、最後に一つだけ教えてくれる?」

 

「何をですか?」

 

「どうして、マリーいや君のマスターを大切そうに見るんだい?」

 

「…サーヴァントである以上、マスターを気にかけるのは普通だと思うけど?」

 

彼は目線を逸らして答えた。

一つやり取りをしていて、ロマ二は気が付いた事があった。

この英霊は嘘を吐くのが苦手である事。

 

「明らかに、召喚されたばかりのサーヴァントがする目じゃなかったよ。

よほどの死線を潜り抜けた絆が無ければあんな目はしないと思うんだよ」

 

「相変わらず、変な所で鋭い………生前に彼女と面識があるからだ」

 

ロマ二には、最初の言葉は聞き取れなかった。

だけど、後半の内容には驚いた。

マリーと縁のあるサーヴァント!?だから、未来の英霊と言っていたのか。

 

「面識がある事は、マスターには黙っていて欲しい 」

 

「どうして?生前に関係があったんだろう?」

 

「彼女は優しすぎるから。俺と関係があった事が分かれば、有用な駒の一つとして俺を扱えなくなる。

それでは、俺が英霊になった意味が無い」

 

そう言った彼の顔はすごく優しく悲壮感の漂うものだとロマニは思った。

色々と気になることはあるけど、彼を信じても良いだろう。

だって、彼はマリーを裏切る事だけは絶対にしないとロマニは確信を持って判断した。

 

「分かった。彼女には絶対に告げないと約束するよ」

 

「マスターの元に戻っても良いかい?」

 

「良いよ。そんなに心配している顔をされたら、断る僕が悪者みたいになるしね」

 

ホニャッと柔らかい笑みを浮かべるロマ二。

やっぱり彼の周りにはマイナスイオンの様なものがあるのかも知れない。

 

 

 

 

 

サーヴァントSIDE

 

霊体化した状態で、マスターが眠っている部屋に到着する。

 

「スースー」

 

マスターが寝てる横に立ち、霊体化を解く。

 

「気持ちよさそうに寝ている事で」

 

手を伸ばそうとして止める。

……俺に触れる権利は無いな。

どうしようも無かった事だと、周りからは励まされた。

それでも、俺は悔やんでいた。

だって俺は彼女を見たときにーー

 

「……んっ、あれ?私はサーヴァントを呼んで……」

 

「目を覚ましましたか?マスター」

 

目を覚ました彼女を見て、涙腺が緩むのを感じた。

泣くのは早すぎるぞ俺。

 

「貴方が私の召喚に応じたサーヴァントね?」

 

「はい。クラスは、セイヴァーです」

 

俺は貴女のサーヴァントです。だから、安心して下さい。

不安な顔をしながら、俺に質問する彼女にそういう気持ちを込めて優しく笑う様に心がけて笑う。

大丈夫。守護者になってから笑うことがめっきり無くなったけど彼女の前なら笑える。

 

「ッッッ!そう。私、サーヴァントを召喚できたんだ…」

 

握り拳を作って喜ぶ彼女。

その姿を見て、俺は再び笑う。

 

「ちょっ!何が可笑しいの!?」

 

どうやら彼女の琴線に触れてしまった様だ。

無言を貫き通していると、まぁ良いわと彼女は一息吐いた。

 

「そう言えば、貴方の真名はなんて言うのかしら?」

 

「……正規の聖杯戦争で無いためか、記憶が混濁しているので真名は教える事が出来ません」

 

嘘を吐く。

ここで、真名を告げる事は容易い。でも、告げた所で意味はないし余計な混乱を与えるだけだ。

 

「それって、戦ったりする事は可能なの?」

 

「問題ありません。そういった記憶はしっかりと存在しているので」

 

暫くは、戦闘なんてしないだろうしこれくらいの理由で良いだろう。

 

「そう。なら良いわ、じゃあ呼ぶ時はセイヴァーで良いかしら?」

 

「構いませんよ。マスター」

 

「じゃあ、付いてきてくれる?カルデアを案内するわ」

 

そう言って、立ち上がろうとする彼女。

しかし、暫く寝ていた人間が急に立ち上がってまともに立てるだろうか?

答えは否。

案の定、ふらついて倒れかけた彼女の腰に右手を回し左手で彼女の手を掴む。

 

「あまり、ご無理をしない方が良いのではマスター?」

 

「え、ええ。ありがとうセイヴァー」

 

顔を赤くして俯く彼女。

 

「案内は明日でも構いません。俺を召喚して魔力を大量に消費しているのです。ゆっくりと休んで下さい」

 

彼女をベットに寝かせて、毛布をかける。

 

「そ、そうね。お言葉に甘えて休ませて貰うわね」

 

「霊体化しているので、用があったらいつでも呼んでください」

 

もう一度、優しく笑う事を意識して笑う。

彼女が毛布で顔を隠したのを確認して霊体化した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オルガマリーSIDE

 

「(うぅ~、なんでこんなに顔が熱いのかしら)」

 

自分が呼び出したサーヴァントが笑いかけただけじゃない。

……でも、どうしてセイヴァーはあんなに悲しそうに笑うのだろう?

私が内心、穏やかじゃないのに気が付いて、笑ってくれたんだろうけど、あんな笑顔は初めて見た。

嬉しさと、悲しみそして後悔が混ざった笑い方。

それでいて、此方を安心させてくれる優しさ。

 

「……色々と矛盾しているわ」

 

おそらく近くで霊体化しているセイヴァーに気づかれぬ様に呟く。

何か目的を隠している素ぶりは感じれたけど、信用はしても良さそうね。

自分でも分からない妙な安心感に身を任せて眠った。

 




感想・批判お待ちしています。

…所長って可愛いよね?
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