しょうがないね。ネタが出てきたのだから。
「少しは休んだらどうだ?」
セイヴァーがコーヒーを机の上に置く。
「前の様な事が起きない様にしないとね。所長達が行っている間は僕が、この場の最高責任者だから」
置かれたコーヒーに口をつける事なく、端末で操作を続けるロマン。
それを見て、セイヴァーはロマンの首根っこを掴み無理やり意識をそらす。
「ぐえっ!?」
「差し入れにクッキーも焼いてきたんだが、その様子だといらないようだな?」
「え!クッキーだって!?食べたい」
見事にクッキーに釣られるロマン。
勿論、セイヴァーはこうなると理解した上でクッキーを焼いてきたのだが。
「俺がファヴニールの目の前に、強制移動させられた事を悔やんでるのか?」
クッキーを食べ始めて数分後、セイヴァーがロマンに質問する。
元々、レイシフトしなければならないオルガマリーの代わりに、仕事を引き受ける事が多いロマンだったのだが、オルレアンから帰還してからは特に仕事を引き受けている。
その具合は、今まで少し睡眠時間が足りていなかったオルガマリーが、暇なんだけど何をしようとセイヴァーに聞いて来るレベルだ。
帰還した時も、泣きながらセイヴァーに突撃した程だ。セイヴァーが避けた為地面と熱い接吻をしたが。
「……そうだね。あのレイシフトだって僕がもっとよく調べれば転移軸がずれている事に気付けたかもしれない。
サーヴァントの探知だって、今回のジャンヌ・オルタは索敵範囲が広くてこっちが索敵しても、意味がなかった。
その失敗を取り返そうと思ってね」
コーヒーに視線を落としながらロマンが答える。
それを見て、悲しい顔を一瞬浮かべるセイヴァー。しかし、次の瞬間には戻っていた。
「貴方には言ったが、所詮俺は戦力の一つだ。
しかも、既に命の無いな。だから、俺が潰れた所で兵器を一つ失った程度だ。気に病む事では無い」
「それは出来ないよ。立香君もマリーも絶対にそんな事は思ってない。
だって、君が二人を生かす為にどれだけの無茶をしているか知っている。
君は今も誰かを気遣って、立ち直らせようとしている。自分の事なんて、捨て石の様にしてね」
セイヴァーの言葉に顔を上げ、喋り始めたロマンの顔は何処か怒っている様に見える。
「君の自己評価が低いのは知ってる。だけど、そうやって自分を粗末に扱うのはやめてくれ。
みんなが悲しむよ。君を兵器の様になんて見れない。何処の兵器がこうやってクッキーを焼いてくれるんだい?」
そう言って柔らかい笑みを浮かべるロマン。
セイヴァーはそれを見て口角を上げる。
「そうだ。貴方はそれで良い。そうやって、みんなの疲れた心を癒してほしい。
貴方はそうして、帰るべき場所になってくれ。みんなが迷子にならない様に」
セイヴァーが何時もよりかなり柔らかい口調で言う。
それがロマンには何処か言い様のない悲しみが含まれている事に薄っすらと感じられた。
「適度に休めよ。マスターの負担を軽くしたいのも分かるが、やり過ぎて暇になってる。
俺の部屋に来て、お茶会をやるのは良いが、茶葉が切れる。菓子もな。
ロマンが働きすぎると言う愚痴は聞き飽きた」
何時もの口調に戻り、コーヒーを飲むセイヴァー。
「君としては本望なんじゃないかい?でも、そうだね。少し休む事にするよ。
話し相手になってくれる?一人は寂しからさ」
「ああ。元よりそのつもりで来てるんだ。ほら追加だ」
机の上のクッキーが補充される。
先ほどのクッキーがチョコレートクッキーなら、今度はスタンダードな普通のクッキーだ。
「料理が上手なんだね。セイヴァー」
「ああ。作れる様になれとお節介なオカンがいたからな。
基本的な物は大体作れるぞ。ただ、激辛麻婆とかはやめてくれ。作るだけで死にかける」
「ハハッ、どんな料理なのそれ?でも、僕は甘い物が好きだからいらないかな」
「クッキーだけでなく、ケーキとかも作れるぞ。
子供の世話をする事もあったからな」
「今度、食べるのが楽しみだね。じゃあ、今度はーー」
二人は暫く話し続けた。
それはそれは色んな話をした。
食べ物の話から、ロマンの失敗談、ダヴィンチちゃんに振り回された事。
話は尽きなかった。どちらが話題を振っても盛り上がった。
そして、何時もは静かな管制室に笑い声が聞こえていると人がまた一人また一人と増える。
いつの間にか管制室は、カルデアのスタッフ達全員が集まっていた。
「それでな、そいつがよーー」
「はぁ、やっぱり疲れるわよね。本職じゃないしーー」
至る所から声がする。
ただ、この人達が凄いところはしっかりと仕事をしながら盛り上がっている事だ。
勿論、非番じゃ無い人達も混ざっている。
その人達は仕事をしながら混ざっているのだ。
更には、
『そうそう。あの時の立香君指揮とれたよな』
通信機越しに会話している奴まで現れた。
「あはは、みんな色々と溜まってたんだね」
「とはいえ、これは予想外だな」
ずっと話していた二人もこの光景に驚いている。
でも、二人とも笑っているから良い事なのだろう。
「うわっ、なにこの人集り」
「みなさんなにをしてるんですか?」
騒ぎに釣られて、立香とマシュも現れる。
「お、二人もこっち来て話そうぜ!特異点の事とか聞かせてくれよ」
職員の一人がそう言って二人を輪の中に連れ込む。
一瞬で二人が飲み込まれ、話が始まった。
立香とマシュが来た事で更に盛り上がる。もはや、祭りの様だ。
「ドクター!貴方もこっちに来てくださいよー」
呼ばれて声の方向を見るロマン。
そこには何故か、男性職員と腕相撲をしている立香の姿があった。
「うわぁ、腕相撲やらされるよアレ…」
ロマンが若干、引いているとセイヴァーが後ろから背中を叩き、前でに押し出される。
直後に近くの職員がロマンの両腕を掴み、連行する。
「セ、セイヴァー!?」
「派手に負けて来い。ロマン、俺は一旦席を外す」
セイヴァーが連行されるロマンを見ながら、管制室の外に出る。
そこにはオルガマリーが立っていた。
「混ざらないんですか?マスター」
「こういう時に、上司が入ると駄目でしょ?
今日は大目に見るわ。その代わり、セイヴァー?」
「何でしょうか?」
少し、照れながらセイヴァーをしっかりと見るオルガマリー。
「あのクッキー私にも頂戴?」
「はい。分かりました。それと、俺で良ければ話に付き合いますよ?」
本当は混ざりたいオルガマリーの心中を察していた。
その事に気付かれたオルガマリーは恥ずかしそうに髪の先端をくるくると指で弄りながら、無言でコクっと頷いた。
「では、部屋で待っていてください。持っていきますから」
「いえ、一緒に行きましょう。道中も話をしたいので」
セイヴァーとオルガマリーは話しながらキッチンへと向かう。
この日は管制室からも、オルガマリーの自室からも声が途絶える事がなかった。
実は、シリアスや戦闘よりこういうほのぼのとした話が大好きです。
こういった話をニヤニヤしながら見たいんです。
前にそれで友人から引かれた事がありましたが…
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現在は圧倒的な邪ンヌ人気ですね。
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