願いを込めて   作:マスターBT

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遅くなりました。
セプテムの筆の進まなさ加減が異常におかしいです。
もう、レフ戦に突入して良いかな(ヤケ)

Twitter始めました。
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続きを投稿しましたって連絡用、アンケート用。
あと、読者の皆さんと交流できたらなと思ってます。


ガリア遠征

「もうじき、ガリアに着くぞ。立香もそこで休むと良い」

 

ネロ皇帝から、客将になってくれと頼まれた次の日。

カルデア一行はガリア遠征軍に合流するため、移動していた。

無論、その道すがら敵兵に襲われたが、一方的だった為に割愛。

普段と変わらぬ、移動風景。

しかし、今日は少しだけ違いがあった。

 

「マスター。大丈夫ですか?」

 

「えぇ。これくらい大丈夫です」

 

立香達のすぐ後ろを歩く、セイヴァーとオルガマリー。

その二人の距離がいつもより近いのだ。

具体的に言えば、普段はオルガマリーの少し後ろを歩いているセイヴァーが、この移動中はずっと隣を歩いておりーー

 

「きゃっ!」

 

「おっと…気を付けてくださいマスター」

 

「ありがとう。セイヴァー」

 

こんな感じにオルガマリーが躓いて転びそうになれば、即座に支える。

そこまではいつも通りなのだが、僅かだが見つめ合う様な光景があるのだ。

 

「(先輩、所長とセイヴァーさん、何かあったんですか?)」

 

「(オレにも分かんないよマシュ)」

 

昨日のやりとり。

それがオルガマリーとセイヴァーの距離を縮めた。

何処か一定の距離感を保とうとしていたセイヴァーとそんな彼を信じているが故に距離を詰められなかったオルガマリー。

互いに弱さを見せたからだろうか。明らかに距離は縮まっていた。

 

『そろそろ、目的に着く様だよ』

 

「本当に便利だな魔術師殿。

そこの二人。仲良いのは良いが、あまりイチャつくでないぞ?

余の軍勢の中には独り身も多いからな」

 

「「?」」

 

ネロの言葉に二人揃って首をかしげる。

 

「自覚なしかよ…」

 

クー・フーリンの呟くは誰にも拾われず、虚空へと消えた。

 

 

 

 

ガリアに着き、遠征軍に合流を果たしたカルデア一行。

そこで二人の人物に挨拶をされた。

 

「遠路はるばるこんにちわ。

あたしはブーディカ。ガリア遠征軍の将軍を努めている」

 

ブーディカ。

古代ブリタニアの女王。

しかし、ローマに国と娘を奪われ、自身もローマへの叛逆で命を落とした。

そう。この時代のネロ皇帝に。

 

「あまねく強者、圧制者が集う巨大な悪逆が迫っている。

叛逆の時だ。さぁ、共に戦おう。比類なき圧制に抗う者よ」

 

スパルタクス。

ローマ軍相手に烏合の衆の奴隷達を率い、戦った叛逆の英雄。

最期は、大軍のローマによって殺された。

 

「…異様な光景だな」

 

「あれ?もしかして、君気付いてる?」

 

セイヴァーの呟きに、ブーディカが反応する。

 

「何も。ただ、これが貴方達の選んだ事と言うなら口は挟まない」

 

どちらの英雄もローマによって死んだ者達。

それがローマに力を貸しているのが気になったのだろう。

いや、彼は知っているのだ。とてつもなくお人好しの女王と、強大な敵に叛逆したい者を。

 

「んー、やっぱり何か知ってるね君。

まぁ、でも話は後にしよう。今は、休んだらどうだい?ネロ皇帝」

 

ブーディカがそう言うと、ネロ皇帝が頭を押さえながら動いている事が分かる。

 

「すまぬな、ブーディカ。この後のことは任せた」

 

頭を押さえながら近くのテントへと消えるネロ皇帝。

彼女は生まれつき頭痛持ちだ。しかしも、かなり強力な。

そのことにいち早く気が付いたブーディカが声をかけたのだ。

 

「敵、斥候部隊を確認!」

 

ガリア遠征軍の見張りを担当していた者が声を上げる。

その声にセイヴァーは無言で矢を取り出し、放つ。

矢の先端部分は刃が潰されており、当たっても貫くことはない。

3発放った矢が目的に当たる。

 

「ブーディカ」

 

「分かってるさ。斥候部隊の足止めをしている。直ちに追撃部隊を出して!」

 

ブーディカの指示により、追撃部隊が組まれ斥候部隊を追いかける。

その間、無言でセイヴァーが矢を撃ち続けていた。

遠距離から飛んでくる矢に敵斥候部隊は大混乱。

無事に追撃部隊により、処理された。

 

 

 

「ふふっ。そこっ!」

 

キィン!

ブーディカの剣とセイヴァーの日本刀がぶつかる。

すぐ近くではスパルタクスとマシュが戦っていた。

 

「はぁ、テストは分かるが俺が受ける意味はあったのか!」

 

鞘をブーディカの下顎目掛けて振り上げるセイヴァー。

狙いに気づいていたのか、距離を取られ避けられる。

 

「そりゃ、君の弓は凄かったよ?でも、君とそこの子はどうにもね。

こういう戦場で戦う人には見えなくて」

 

「……やっぱり、剣で語る系の女王だな」

 

セイヴァーに遠距離戦は不利だと考えたのか再度、距離を詰めてくるブーディカ。

しかし、セイヴァーは普通のサーヴァントではない。

 

「お前を行動不能にすれば良いんだよな?」

 

日本刀をしまい、背中に雷を纏った歯車を出現させる。

指先を電極にするように、ブーディカに向け、雷を放つ。

 

「ほんとに多彩だね!?」

 

攻撃方法が変わったセイヴァーに驚きつつも避けるブーディカ。

しかし、避けた彼女が視界に捉えてのは自身の盾目掛けて、真紅の槍を放つセイヴァーの姿だった。

カァァン!!

甲高い金属音が響き、ブーディカの手から盾が吹き飛ばされーー

 

「……流石だな勝利の女王は」

 

「皮肉のセンスもあるんだね」

 

セイヴァーの槍はブーディカの首に。

ブーディカの剣はセイヴァーの心臓に。

それぞれ、添えられていた。

 

「全く、あそこまでやって、決めきれないとはな」

 

槍をしまい、ブーディカに背を向け言うセイヴァー。

言葉のわりに悔しさは全く感じない表情をしているのが、オルガマリーには見えた。

 

「攻撃の瞬間力を緩めておいてよく言うよ」

 

「目的は貴女に認められることだ。

殺すことじゃない。その目的に合わせた行動をしただけだ」

 

「ふーん。まぁ、君がそう言うならそういうことにしといてあげる。

スパルタクスの方も終わったみたいだし、はりきって腕を振るうとしますか」

 

笑顔を浮かべて言うブーディカ。

彼女が歩いていく方向にはキッチンとして使える空間となっている。

 

「セイヴァー?どうして手を抜いたの?」

 

後ろからオルガマリーに話しかけられ、振り向くセイヴァー。

彼女の顔を見て固まる。セイヴァーには彼女が起こっている様に見えた。

 

「理由ですか?殺す事が目的ではないからです」

 

疑問には思いながらも質問に答える。

 

「そうですか………むぅ。私は貴方が勝つ事に期待してたのに…」

 

オルガマリーが拗ねたように言う。

微笑ましいものでも見たように、観測しているロマンとダヴィンチが笑う。

その日の食事は遠征先では到底食べる事が出来なさそうな、豪勢な食事だった。

 

「寝ないのか?藤丸立香」

 

「少し、話でもと思ってさ?ダメかな」

 

その日の夜、寝ずの番をしていたセイヴァーに立香が話しかけてきた。

最も英霊が寝る必要はないのだが。

少し面倒そうに立香を見た後、無言で座っていた場所を少し空ける。

そのスペースに座りながら立香は話を始める。

 

「セイヴァーってオルガマリーさんをすごく大切にしてるよね」

 

「マスターだからな。それ以外の理由がいるのか?」

 

「マシュがさ、セイヴァーに避けれてるって寂しそうにしてたんだ。

理由を教えてくれる?」

 

立香の質問に顔を渋くするセイヴァー。

明確な理由があって避けているのだが、それを素直に伝えるわけにはいかない。

 

「…俺は本来なら守護者として召喚される。

その説明はマスターから受けた筈だ」

 

ズブの素人である立香に対して、ダヴィンチとオルガマリーで魔術の講義が行われている。

セイヴァーは体術や実践的な魔術使用の練習を担当している。

その時に立香はセイヴァーの立場を説明されている。

 

「ああ。分かってる」

 

「守護者は、簡単に言えば掃除屋だ。

俺はこの手で数えきれない人の命を奪っている。

そんな俺が無色の彼女を穢す事なんて出来ない…」

 

セイヴァーの言葉には重みがあった。

それは立香を沈黙させるには十分すぎるものだった。

 

「まぁ、そういう訳だ。

マシュ・キリエライトに聞かれたらそう答えておいてくれ」

 

立香にはセイヴァーが辛い表情をしている様に見えた。

他の人から見たら、オルガマリー以外気づかないであろう表情の変化。

それを立香は感じ取れた。

まだ、目覚めていない才能なのかセイヴァーだからこそ理解出来てしまったかは分からない。

 

「……分かった。オレの方から伝えておくよ」

 

理解できたいや、してしまったからこそ立香は引き下がる。

 

「何を考えているかは知らないが、下手な同情はやめろ。

そんなのは、俺には必要ない。同情などされるべき、存在じゃない」

 

セイヴァーは口を開こうとする立香を手で制止する。

 

「…話はそこまでだ。

雑魚エネミーが迫ってる。戦闘準備をしろ。

俺が付き合ってやる」

 

セイヴァーと立香の視界にスケルトン型のエネミーをとらえる。

 

「お前は司令塔だ。その目で敵を見ろ、その頭で先を思考しろ、どんな結果でも受け入れろ、お前は絶望するな。

そうすればお前を英霊は見捨てない。良いな?」

 

セイヴァーが魔力剣を展開し、構えて言う。

その言葉は立香に心構えを教えるように。どこか懐かしきものを見ているかのように。

 

「ああ分かった。なら、力を貸してくれセイヴァー」

 

立香の言葉に無言でスケルトンの群れに突撃するセイヴァー。

一番近くのスケルトンを吹き飛ばす。

そのまま、暴れるセイヴァー。

 

「下がって!セイヴァー!」

 

立香の言葉に従い、下がるとセイヴァーがいた場所にスケルトンの矢が刺さる。

下がった勢いを利用し、魔力剣を投げ弓矢のスケルトンの頭蓋を砕く。

武器が無くなった今を好機と判断したのか剣と槍を装備したスケルトンが一斉に襲いかかる。

セイヴァーは拳を胸の高さで構え、スケルトンに放ち砕いて行く。

 

「八極拳。習っておいて正解だったな」

 

暫く経つとスケルトンの群れは粉々になった。

唯、かなりの群れが押し寄せて来たので薄っすらと明るくなり始めた。

 

「セイヴァー」

 

「なんだ?」

 

疲れて近くの岩に寄りかかる立香が魔力剣を回収し、近くで腕を組んでいるセイヴァーに話しかける。

セイヴァーはあの問答の続きかと若干、うんざりした声を出す。

 

「オレはお前の事を勘違いしていた。

オルガマリーさんだけを第一に考えて、動いているだけだと思ってた。

でも、お前は優しいんだな。その行動は常に誰かの為に使われてる」

 

立香が口を開き、セイヴァーに言う。

 

「……やめろ。何も言うな藤丸立香」

 

だが、その言葉はセイヴァーにとって最も残酷で鋭利なものだった。

立香の言葉を聞き、彼は苦しそうに立香を止めた。

 

「せ、セイヴァー?」

 

その態度に立香は困惑する。

彼にとっては褒めるような認識で言った言葉。

それが、セイヴァーを苦しめているとは考えつかない。

 

「もう寝ろ。明日に差し支える」

 

無理やり会話を終わらせ、霊体化する事によりこの場から消えるセイヴァー。

 

「オレ、やらかした?」

 

そんな事を考えながら、立香は遠征軍の駐屯地へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

「……お前の言葉だけは……今の俺には耐えられない」

 

立香の耳にその言葉は聞こえず、時は進む。

運命は彼等の感情など考えずに盤上へと、役者を押し上げる。

まだ、覚醒しない救世主は壊れ歪んだ救世主の心を推し量る事など出来る筈がなかった。

割れた()は二度と元の形には戻らない。

歪んだ(感情)は正しく水を汲めない。

元に似せる事は可能だろう。

しかし、ソレは壊れた時点で元とは大きく違うものとなる。

並べて見れば分かるだろう。

壊れる前のものと壊れたもの。圧倒的な迄に後者が酷く見える。

 

「……あぁ。こんなにも辛いとはな…」

 

それを認識できるのは人間だけ。

時にそれは残酷だ。なにせ、自分がもう壊れたものだと改めて認識させられるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「連中が此処を攻めてきたら、適度に相手をして撤退しろセイバー。

バーサーカー同様、私に令呪を使わせるという面倒ごとは起こさないでくれ」

 

「ふむ。それが、マスターの意見だというのなら私は従おう」

 

ガリアの地を支配している連合ローマ。

そこでとある会話がされていた。

 

「英霊などという存在に頼るのもこれっきりだ。

全くもって反吐がでる行為だ。だが、奴を殺すには猫の手でも借りたい状況だ」

 

「………」

 

魔術師らしき風貌の男。いや、正体を隠すまでもないだろう。

レフ・ライノール・フラウロスは心底不快な表情を浮かべながら、目の前のふくよかなサーヴァントに言う。

 

「良いな。命令は絶対だ。お前はセイヴァーの手の内を可能な限り暴けばそれで良い」

 

そう残してレフ・ライノール・フラウロスは消える。

残されたサーヴァントは溜息を吐き誰もいない空間で口を開く。

 

「やれやれ、面倒。実に面倒だ。

折角の、ローマだというのにあんな奴に従わなければならないとは。

まぁ良い。私も皇帝だ。向こうが来るというのなら相手をしてやろう」

 

そう彼はガリア遠征軍の方を見た。

開戦の時は近い。

 

 

 

 




今回、立香君に悪気はありません。
ただ、未熟なだけです。

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