オルガマリーSIDE
私は今、混乱している。
目を覚ました直後に、狙いすましたかの様に届く食事と着替え。
「目を覚ましたかマスター?食事は俺が。着替えに関しては、ロマニに話して女性スタッフに用意させました 」
どうやらセイヴァーが用意してくれたらしい。
手際が良過ぎじゃないかしら?
しかも、めちゃくちゃ美味しそうな料理ね。
「食事と着替えが終わりましたら、念話で呼んでください。ロマニに呼ばれていますので 」
「え、ええ。分かったわ。ロマニに宜しく伝えてくれる?」
「了解。マスター 」
一度礼をして、霊体化するセイヴァー。
なんというか仰々しいのよね彼。
三人称SIDE
「やぁ!よく来てくれたね。えーと、セイヴァー君!」
見目麗しい女性が部屋に入ったセイヴァーを迎える。
「…俺を呼んだロマニは何処に?」
「アレェ?私に関するツッコミはなしかい?
普通、こんなに美人を前にしたら何かリアクションを起こすんじゃないかい 」
女性の言葉に無言になるセイヴァー。
その様子を見て、女性も喋るのを止めた。場をなんとも言えない沈黙が支配する。
「ごめん!彼、もう来て……えーと、どういう状況?」
扉を開けて入って来たロマニが固まってしまうのも仕方がない事だった。
「えーと、君を呼んだのは理由があるんだ 」
あっという間に元の空気に戻る空間。
この二人が揃えば、なんというか色々と安定しなそうだと思うセイヴァー。
「俺の戦闘力を見るつもり?」
「正解!おおよそ万能であるこの私レオナルド・ダ・ヴィンチの出番って訳さ!」
胸を自信満々に張り、宣言するダヴィンチちゃん。
「……そうですか。じゃあ、早く始めよう。マスターの元に戻りたい 」
そして、それを当然の様にスルーするセイヴァー。
それも仕方がない。生前に知り合っている外側女性、中身男性の英霊の事など特に興味がないのだから。
「むぅ。彼は反応が無くてつまらないね 」
「あはは、じゃあ、シミュレーターを起動させるから中に入ってくれる?」
ロマニに言われて、シミュレーターの方へ向かうセイヴァー。
「君。私とも知り合ってるだろう?」
ダヴィンチちゃんの横を通る時に囁かれた言葉に動きを止めるセイヴァー。
万能は恐ろしいと内心で思う。
「さぁ?」
それだけ返し、シミュレーターの中に入るセイヴァー。
言葉を聞いてやっぱりつまらなそうに唇を尖らせるダヴィンチちゃん。
一連を見て、首を傾げているロマニ。
鋭いんだか、鈍いんだが分からない男である。
「それじゃあ、始めようか。まずは、小手調べといこう 」
セイヴァーの目の前に三体のスケルトンが現れる。
初めてこいつらを見たときは、焦ったと過去を思い出すセイヴァー。
「借りるぞ。エミヤ 」
小さな声で言うセイヴァー。ロマニとダヴィンチちゃんには聞き取れなかった。
もし聞き取ることが出来れば、彼の正体に気がつく条件になっていたかもしれない。
無論、彼もそれを理解しているから小声で言ったのだろうが。
セイヴァーの両手に干将・莫耶が出現する。
自然体で力を抜いて、スケルトンの動きに注視する。
弓矢を構えたスケルトンが矢を放つと同時に、サーヴァントの身体能力を存分に活かし矢を躱し、一振りで粉々にする。
「動きが遅い 」
干将・莫耶を消して、剣を振り下ろしにきたスケルトンの腕を破壊し剣を奪い、投げる事で槍を持ったスケルトンの頭を砕く。
片手を無くしたスケルトンを蹴り砕く。
「君、結構やるねぇ〜。じゃあ、これは如何かな?」
今度は、スケルトン10体と竜牙兵10体が現れる。
今度は素手のまま、剣を持ったスケルトンに近づき、剣を奪い砕く。
竜牙兵を五体纏めて相手するセイヴァー。
二刀の竜牙兵の両腕を砕き、弓矢を撃つ竜牙兵の攻撃の盾に使い、弓矢の竜牙兵に近づいていく。
背後から近づいてくる竜牙兵を奪った剣で斬り伏せていく。
ある程度の距離まで、近づいたら盾にした竜牙兵を弓矢の竜牙兵に向かって、投げ付け激突させたところを二体まとめて踏み砕く。
「纏めて来い。一体一体は面倒だ 」
言葉を理解するほどの知能を持ち合わせていないはずの、スケルトンと竜牙兵が一斉にセイヴァーに向かってくる。
それを見て、ニヤリと笑うセイヴァー。
彼は足元に落ちていたスケルトンや竜牙兵の武器を蹴り上げて、向かってくる竜牙兵とスケルトンの頭上から降り注ぐようにする。
狙い通り、落下してくる武器がスケルトンと竜牙兵を砕いていく。
残った僅かな竜牙兵達を、剣で砕いて終わった。
「終わり?」
「ダヴィンチちゃんの最高傑作を出してあげようじゃないか!」
「ちょっ「なんだい?君だって知りたいだろう?彼の力 」それはそうだけど… 」
セイヴァーの目の前に、キメラが出現する。
「この時代にキメラって。流石に、この剣じゃ無理だな 」
スケルトンから奪った剣を放り投げ、再び干将・莫耶をその手に出現させるセイヴァー。
ふぅーっと、息を吐き呼吸を整えるセイヴァー。
キメラは眼前の獲物を如何喰らうかを考える。セイヴァーはどの対処が一番良いか瞬時に頭の中で導き出す。
両者はほぼ同時に駆けだし、キメラはその手の爪で獲物を切り裂く為にセイヴァーの顔面に向けて振りかぶる。
セイヴァーは干将・莫耶で受け止めるのではなく、キメラの爪をいなし腹を蹴り上げる。
そのまま、キメラの顔を踏み台にして後ろに跳躍する。
キメラの吐き出す炎を四方八方に走り回り避けるセイヴァー。
もう一度、距離を詰めようとした瞬間、声が聞こえた。
「魔力を消費してる感覚があると思ったら、こういう事だったのね 」
「おや、所長。如何したんだい?」
「どうもこうもないわよ。如何して、私のサーヴァントが戦っているのかしら?しかも、キメラと 」
如何やら所長が魔力消費に気付き、ロマニとダヴィンチちゃんに文句を言いにきたようだ。
「何って、戦闘力のテストさ。キメラなのは、私が調子に乗ったからかな 」
「ああ!そんな事言ったら、マリーは… 」
「へぇ?セイヴァー!聞こえてる!」
「はい。マスター、聞こえていますよ 」
「遠慮はいらないわ。そのキメラを跡形もなく消しなさい 」
ガラス越しにオルガマリーはいい笑顔で言う。
ダヴィンチちゃんの言葉に、怒ってしまったのだろう。
「所長!?それは、困るよ。あのキメラは最高傑作で研究が終わっていないんだ 」
「あら?サーヴァントのテストで戦わせているのですから、跡形も無く消えても良いのでしょう?」
跡形も無くと言われ困るセイヴァー。
彼の持ちうる戦闘手段では、跡形も無くと言うのは無理があるのだ。
しかも、跡形も無くす事が前提で会話が広がっている。
「了解しましたマスター。しかし、魔力の消費が多くなりますよ?」
キメラの炎を避けながら、オルガマリーに問うセイヴァー。
「構いません 」
オルガマリーの返事を聞き、内心で笑うセイヴァー。
やはり彼女は変わらない。
キメラの背後に移動し、尻尾を切断する。
「ガァァァアア!」
尻尾を斬られた痛みに、悶えるキメラ。
そんなの知ったことかと言わんばかり、今度はキメラの顔に干将・莫耶を突き立て、距離を取るセイヴァー。
「テスラ。力を借りるぞ 」
彼の背後に、歯車の様なものが出現し帯電する。
帯電した電気を放出し、干将・莫耶に当てる。電気は流れた力のままキメラの体内を破壊していく。
これでもう勝負はついているが、彼のマスターのオーダーは、跡形も無く消すこと。
流す電力を跳ね上げる。
「ああっ!」
何処からか悲しげな声が聞こえるが無視するセイヴァー。
耐え切れなくなったキメラの身体は発火を始める。
電力をさらにあげると、キメラの身体は完全に炭となった。
「これでオーダーには答えました。マスター 」
「よくやったわ。セイヴァー 」
この瞬間、二人には見えない絆が生まれ始めた。
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