願いを込めて   作:マスターBT

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再び、遅くなり申し訳御座いません。
次から、小話を挟むかもしれませんが、レフ率いる連合軍との戦いを書こうと思っていますので、更新速度が上がると思います。


歩み寄る勇気

「はぁ!」

 

アレキサンダーの振るうスパタを、無名の剣で受け流し空いている左手でアレキサンダーの顔を狙い拳を放つ。

しかし、アレキサンダーは笑顔を浮かべたままその拳を簡単に避け、スパタを振るってくる。

セイヴァーはただ、その勢いを受け流して行く。攻撃に転じる訳でもなく、逃げる訳でもない。ましてや、何かに繋がる行動でもなかった。

今は、冷静さを取り戻したのだが、それ以前のツケが身体を支配している。

 

「(全身が痛い……狂化の代償か)」

 

即時治癒していたとはいえ、痛覚まで消していた訳ではない。

結果を得る為の、対価をその身に刻まれてしまった。オルガマリーが気絶している現状、余計な負担を掛けたくないセイヴァーは、自身に内蔵されている魔力で戦っている。しかし、此処に来るまでに全体の6割消費した。残りの4割を現界をする為と肉体回復に分けている為、戦闘に使える魔力はほとんどない。

 

「どうしたの?それじゃあ勝てないよ!」

 

スパムを振るう速度が上がる。それは、明らかにセイヴァーの行動が受け手になっているからだろう。

一度、力を込めスパムごとアレキサンダーを吹き飛ばすセイヴァー。英霊との絆と同様、彼が持っているもの。

緑色のキューブを取り出し、それに込められた魔力を解放する。

 

「数はあまり無いから使いたくなかったが、仕方ないか」

 

セイヴァーの魔力が回復していく。彼が取り出したのは、マナプリズムと呼ばれる魔力結晶だ。

回復した魔力した事で無名の剣から、突くことに特化した形状の槍を取り出す。

 

「神槍と言われる技術は無いが、本気で相手しようアレキサンダー」

 

「良いね!僕もこれで楽しめるよ」

 

距離を詰めようと、体勢を変えたアレキサンダーに向け、腰だめから勢いよく突きを放つ。

 

「はや!?」

 

慌てた声を出したものの、スパムで弾くアレキサンダー。

彼が弾き、再びセイヴァーの方を見るとそこには、槍を引き戻し第二射を放とうとしている姿だった。

槍の持ち主に比べれば、圧倒的に劣るスピードだが、それでも十分に早い。

 

「……ふぅ!」

 

二射、三射と次々に槍が放たれる。少しづつだが、確実に威力を増していくそれはアレキサンダーを防戦一方にしていく。

それでも仕留める事には、後一歩足りない。ましてや、幼いとはいえ大英雄に変わりはないアレキサンダーは、少しづつ槍の速度に慣れ始める。完全に力が足りない。

 

「…ならば、これはどうだ?」

 

アレキサンダーが槍を弾く。

その感触は恐ろしく軽い。セイヴァーはアレキサンダーが剣を弾くその瞬間に誤差なくてを手放したのだ。

 

「え…」

 

一瞬、呆けてしまうアレキサンダー。その隙を狙い、懐の奥深くまで入り込む。

セイヴァーの構えは、八極拳。そして、この間合いは必殺である。

 

「忘れていないか?」

 

この戦いが二騎だけであれば、必殺であった。

キャスターである諸葛亮の魔術支援を受けたアレキサンダーにセイヴァーの拳は通用しなかった。

僅かに、その身体を飛ばす事は出来たが、ダメージはほとんどない。

 

「先生!手を出さないでって頼んだじゃん!」

 

「こちらも準備が出来たからな。少しは、そこの馬鹿と戦わせてくれても良いだろう」

 

陣地作成により、魔力と地の利を手に入れた諸葛亮。その支援を受けるアレキサンダー。

セイヴァーにとっては、かなり辛い状況である。

 

「…あんたがミスするとは珍しいな。キャスター」

 

「なに?」

 

セイヴァーがニヤリと口角を上げる。その直後だった。

 

「ここより己の死は恐れず、生も求めず………不還七首(ただ、あやめるのみ)!」

 

その言葉と同時に、アレキサンダーの後方から、荊軻が暗殺宝具を放つ。

本来なら、キャスタークラスの魔術により、存在がバレるアサシンであるが、セイヴァーに集中しその対策しかしていなかった諸葛亮に彼女の気配遮断を見抜く事は出来ない。

 

「こんの!」

 

気合いで、不意を突かれた攻撃をどうにか避けるが、首元に僅かに掠る。

側からみれば避けたと思うだろう。しかし、彼女の短刀には掠るだけでも即死の猛毒が塗られている。

 

「……あー、熱中しすぎた。ごめんね先生」

 

「これは私の責任もある。………すみません。我が王よ」

 

「それは将来の僕に言うべき言葉だよ……でも、そうだね。このまま素直に消えるのも嫌だね」

 

雷がアレキサンダーに落ちる。宝具による神性強化。

人外の存在に近づく事により、荊軻の毒による消滅を遅らせる。

 

『ブルルル』

 

ブケファラスが、アレキサンダーの横に現れる。

 

「行こうか。我が愛馬よ」

 

ブケファラスに跨るアレキサンダー。

そして、馬上でスパタを構え、セイヴァーと視線を合わす。

 

「我が臣下に不甲斐ない姿を見せるわけにはいかぬ。最期の疾走に付き合ってもらうぞセイヴァー!」

 

「これだから王様と言う奴は、厄介なんだ」

 

日本刀を取り出し迎え撃つ形を取るセイヴァー。

一瞬間を置き、ブケファラスが駆け出す。

 

「AAAALaLaLaLaLai!!!」

 

アレキサンダーの疾走。それは奇しくも諸葛亮の依り代とされ召喚されているロードエルメロイ二世が、臣下となる事を決めた日と姿こそ互いに逆であるが、同じであった。

アレキサンダーとセイヴァーが交差する。

そして、セイヴァーは肩を斬りつけられる。アレキサンダーは、満足そうな笑みを浮かべブケファラスと共に消滅した。

 

「……全く、偉そうに言っておきながらお前に執着していた様だな」

 

どこか此処ではない場所を見ている様な目で、セイヴァーに話しかけるキャスター。

それに対し、セイヴァーは言葉を発さずに携えた日本刀を再び、構える。

ふと、周りに気を配ると周囲が騒がしくなっている事に気付く。

 

「荊軻が来てるなら、当然来てるか」

 

少し、耳を澄ませばネロ皇帝の口上や藤丸立香が指示を出す声などが聞こえる。

 

「…全く、そうやって少し感情になるべきだな。どうせ、今の表情に気付いていないのだろう?」

 

キャスターに言われ、自分の顔に手を伸ばすセイヴァー。

そして気付く。自分が笑っている事に。それは、生前を知っているキャスターから歪ではあるが懐かしいものだった。

一瞬、驚いた顔になるがいつもの無表情に戻るセイヴァー。

 

「…セイヴァーよ。手助けは必要か?」

 

「大丈夫だ。荊軻、ネロ皇帝達の援護に行ってくれ」

 

「承知」

 

消え入る様に荊軻が消える。

この場には、セイヴァーとキャスターだけとなる。

日本刀を腰を落とし、突き出す様に構えるセイヴァーに対し、キャスターは煙草に火を付けただ立つ。

 

「沖田。力を借りるぞ」

 

一言呟き、一気に駆ける。

一瞬とはいかなくとも、キャスターとの距離を詰め、日本刀を一気に突き出す。

直後、硬い壁に金属が当たった様な甲高い音が響きセイヴァーの突きは、不自然なところで止まる。

 

「…」

 

「ふー、超えてみせろ。セイヴァー」

 

煙草を吹かしながら、セイヴァーを鋭く睨むキャスター。だが、それは敵意ではなく別の親愛の情を感じるものだった。

カチカチと、空間と衝突しているセイヴァーの刀が、込められた力により震える。

 

「……礼ぐらいは言おうキャスター。ありがとう、そしてさよならだ」

 

どんっ!と足を踏み込み、その力を全て刀への流す。八極拳の応用版だ。

直後、パキンと割れる音が響き、キャスターの霊核をセイヴァーの日本刀が貫く。

 

「……」

 

「……」

 

互いに言葉を発さない。キャスターの身体から日本刀を抜き、納刀するセイヴァー。

そのまま、キャスターに背を向け、オルガマリーの元へ行き、未だ気絶している彼女を背負う。

消えゆくキャスターも、セイヴァーも何も言わず、そのままこの駐屯地を去るセイヴァー。消えゆく僅かな時間、キャスターは煙草を吸う。

 

「やれやれ、馬鹿は死なないと治らんと言うが、死んでもなお馬鹿は馬鹿か。

まぁ、良い。その道を私達は、見守るだけだ」

 

澄み渡る青空を見上げ、笑みを浮かべてキャスターは消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……んっ…あれ?私は…」

 

「目を覚ましましたか。マスター?」

 

オルガマリーは目を覚ます。そして、セイヴァーに背負われている事実に顔を赤くする。

しかし、その後自身の魔力の消費量、所々に傷があるセイヴァーの姿。

そして何より自分が気絶する前の記憶。

 

「また、迷惑をかけちゃったのね」

 

「何のことでしょうかマスター?マスターが気絶してしまったのは、俺の注意が足りなかったからです。

マスターは、英霊を使役する立場、英霊はマスターを守る者。俺が俺の役目を果たせなかっただけです」

 

セイヴァーの声は震えている。オルガマリーも、それを察して言葉を発せなくなる。

 

「…俺はもう、この様な失態はしたくありません。ですから、マスター。

少しだけ、少しだけで良いですから、貴女を頼らせて貰って良いですか?」

 

キャスターに言われた言葉。まだ、他の誰かに頼ることは出来ない。

でも、オルガマリーには、頼ることを決めたセイヴァー。

それは彼からしたら、大きな一歩だ。

 

「……もう、ズルいわよセイヴァー」

 

セイヴァーに抱きつくオルガマリーの力が強まる。

 

「そう言われて私が否定できる訳がないじゃない…」

 

「ありがとうございます。マスター」

セイヴァーからオルガマリーの表情、オルガマリーからセイヴァーの表情は見えないが、笑みを浮かべていた。

 




MADを見て、やる気を出すのですが、そのせいか終局特異点で書きたい事ばかり頭によぎる。
このペースだと、終局特異点に行くのにどれだけかかるだろうか……

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