願いを込めて   作:マスターBT

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誰だよ…早ければすぐ投稿できるとか言ったの……私ですね。すみません!



セプテムからの帰還

数で言えば、1対5でかなり有利に進められるはずの勝負。だが、圧倒的な魔力のアルテラにわずかに押されているのが現状だ。

クー・フーリンの槍はアルテラの剣に弾かれ、ジャンヌ・オルタの炎は聖杯の力もありアルテラの対魔力の高さに防がれる。

ネロの剣は力そのものが違いすぎるため、押し負けそれを援護するためブーディカの攻撃はほとんどアルテラを捉えない。

清姫は宣言通り、遊撃に専念している。アルテラにあまりダメージは与えていないが、彼女の攻撃で初動を潰されているアルテラにとっては鬱陶しいことだろう。

唯一、救われているのは、攻撃に専念しているため宝具を撃つ余裕がアルテラにはないことだろう。

 

「…どうすれば隙を作れる?」

 

立香は考える。アルテラに隙を発生させ、そこでトドメの一撃を放てる策を。

ただ攻撃していても、アルテラには通用しないことは現状を見ればわかる。

意識外からの攻撃が可能ならば隙が作れるかもしれない。しかし、それが思いつかない。

 

「はぁぁ!」

 

クー・フーリンの槍がアルテラへと迫る。軽い身のこなしでそれを避け、剣を背後から奇襲しようとしたジャンヌ・オルタへと振るうアルテラ。ネロがその攻撃コースに剣を挟み、ジャンヌ・オルタを守る。力で劣るネロは支えきれず吹き飛ぶが、ブーディカがそれを支える。

追撃の構えをとったアルテラの膝を、清姫が攻撃しアルテラは態勢をわずかに崩す。

攻めきれない。いや、こちらがわずかに不利なイタチごっこがずっと繰り返される。いずれ、限界がくる。

それは立香自身が理解している。カルデアから魔力供給を受けているとは言え、自分も魔力をサーヴァント達に供給している。

自分の魔力が尽きれば、サーヴァント達も戦えない。焦りの感情が少しずつ立香を支配する。

 

「(落ち着け……焦っても策は出てこない。よく見るんだ。アルテラに何か癖の様なものがないか。そして、考えろ。

それがマスターである俺の役目だろ。藤丸立香!)」

 

立香はアルテラを注視する。その時だった。

攻撃を避けたアルテラの視線が、立香と交差した。

英霊達と戦いながら、アルテラは立香の動きすら気にしているという事実に驚く。

 

「しっかりとオレを見た……オレが動いて無理やりってのも不可能だな」

 

令呪によるブースト……カルデアの令呪は残っている。

しかし、宝具を開帳しても攻めきれない未来しか見えない。

不意をつく……不意をつく……そう考える立香の脳裏に一つ策が浮かんだ。

策というよりは賭けと呼べる策を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルテラSIDE

 

何やらカルデアのマスターが盾を持っている娘と話している。

だが、私にはどうでもいいことだ。私は破壊する。それが、私の存在意義であり、果たさなければならない使命だ。

……頭にノイズが走る。見知らぬ場所で見知らぬ人間と話をしている光景が脳裏に浮かぶ。

きっと大切なことなのだろう。でも、この私には関係ない。

目の前の皇帝を弾き飛ばす。

何度目だろうか。こうして、吹き飛ばすのは。何度目だろうか。英霊達が私に武器を向けてくるのは。

なぜ、諦めない。お前らが攻撃しても私には及ばない。そんな攻撃、私には通用しない。

しかし、こいつらの目から闘志は無くならない。いや、それどころか強くなっている。

私は知っている?どんな状況でも諦めないこの目を。

 

「どうしたアルテラよ!もう疲れたか?余はまだ、止まらぬぞ!」

 

かなりボロボロな皇帝が私を見ながら言う。

壊れない。こいつらはなぜ、壊れない。

瞬間、かなり濃密な魔力の反応を感知する。この方向はカルデアのマスターの場所か。

視線を向けると、右手を前に向け力を溜めている。

令呪か。鬱陶しいな。破壊する。

私を囲むサーヴァントと皇帝を魔力放出で無理やり突破し、カルデアのマスターへと斬りかかる。

 

「させません!」

 

盾の娘が私の一撃を弾く。

しまった。彼女の存在を忘れていた。

弾かれ、体勢を崩した私をカルデアのマスターが手を向けてくる。

 

「ありがとうマシュ!ガンド!!!」

 

ただの魔術と楽観視していた。

こいつの魔術は私を硬直させた。対魔力の高い私を魔術で止めたのだ。

 

「ネロ皇帝!」

 

「門を開け! 独唱の幕を開けよ!

我が才を見よ! 万雷の喝采を聞け! しかして讃えよ! 黄金の劇場を! 童女謳う華の帝政!(ラウス・セント・クラウディウス)

 

皇帝のその言葉とともに黄金の劇場が姿を現わす。

薔薇が散る黄金の劇場。固有結界だろうか。私の力が弱くなるのを感じた。

だが、そんな事はこの劇場を見て、脳裏の遥か遠くへと消えた。

 

「……」

 

「これが余の劇場だ。ゆくぞ、アルテラ!」

 

皇帝が剣を構え、向かってくる。

あぁ……これは無理だ。私には破壊できない。

破壊の対象を美しいと思ってしまった私ではーー

 

「はぁぁあ!」

 

薔薇の皇帝が私を一閃する。

直後、世界は光包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…はぁ…はぁ…終わったのか?」

 

立香が息を荒くしながら、アルテラを見る。

アルテラはネロの一撃を受け、霊格に深刻なダメージを負ったのだろう。その身体を、エーテルへと変換している。

しかし、立香にはどこかアルテラが笑っているように見える。

 

「……軍神の剣でも破壊されないものがある…か。

ふふっ……それは少し嬉しいな。皇帝よ、縁があればまた見せてくれ……」

 

アルテラが消える。

とても嬉しいそうにそして、満足そうにアルテラは消えた。

 

「…あぁ。縁があればまた見せよう。何度でも、余はそなたに世界の美しさを見せてやるとも」

 

アルテラが消えた場所に聖杯が残される。

マシュが盾の裏側へと聖杯を入れる。これで彼らのミッションは終わりだ。

 

「……やりきった様だな。藤丸立香」

 

セイヴァーがオルガマリーを抱え、現れる。

オルガマリーの顔色はあまり良くないものの、動ける程度には魔力が回復した様だ。

 

「うん?セイヴァーにオルガマリーも!

なんだか薄くなってないか!?立香やマシュ達まで……」

 

ネロがセイヴァー達の様子を見て困惑した表情を浮かべる。

カルデアとは伝えていたが、消えることまではネロに伝わっていない。

 

「…お別れの時間ね。ネロ」

 

オルガマリーが寂しそうに笑いながらネロに手を出す。

 

「余はやはり勘が鋭い様だな……ありがとうオルガマリー。

そなた達が力を貸してくれたおかげでローマは存続できた」

 

差し出された手を握り返し、ネロが笑う。

一時の間とはいえ、ネロとオルガマリーはしっかりと絆を結んでいた。だから、互いに少し寂しいし残念だと思っている。

 

「立香よ。アルテラの時の最後の賭け、中々に男らしかったぞ。

マシュも立香を支えてやれ。立香はそれだけで頑張れる人間だ」

 

ネロが立香とマシュを見ながら言う。彼女の目には、粗が目立つがいずれ信頼し隣を歩調を合わせ歩くことが出来るコンビに成長するのが想像できた。もっとも、今は互いに探りながらだが。

 

「協力してくれてありがとう。ネロ」

 

「寂しいですが、お別れです。ネロさん」

 

「良い。別れは必定だ。どんなに別れたくないと願ってもいずれはくる。

だから、悔いのない様に生きるのが一番良い」

 

ネロは立香達に別れを告げ、セイヴァーを見る。

その顔はなんと言葉を告げるか迷っている風にも見えた。

 

「……ネロ皇帝、無理に言わなくても良いぞ。俺は気にしない」

 

「いや……そうではなくてだな……そなたには言いたいことが多くてな。

だが、最後に伝えるべきはこれだろうな」

 

セイヴァーが疑問符を浮かべる中、ネロは満足げに頷き口を開く。

 

「素直になれ。そなたの優しさは酷く分かりづらい」

 

思わず、がくりとバランスを崩すセイヴァー。

 

「最後に言うべきことがそれか……」

 

雰囲気から呆れていることが伝わってくる。

 

「うむ!他にも言いたいことはあるが、そなたならいずれ気づくだろうと思ってな」

 

満面の笑みを浮かべるネロに言葉を失うセイヴァー。

ため息を一つ零し、セイヴァーは口を開く。

 

「ご忠告痛み入るよネロ皇帝。頭の片隅ぐらいには覚えておくさ」

 

ここまで会話をし、本格的にカルデア一行の帰還が早くなる。

 

「私もいるんだけどね……まぁ、でも私は言いたいことは言ってあるし。

縁があったらまたよろしくね」

 

消えかかるブーディカが笑う。

 

「ブーディカ…」

 

「そんな顔しないでよネロ。……あんたと一緒に戦って騒いでとても楽しかったよ。じゃあね。ネロ」

 

「……余も…楽しかったぞ…ブーディカ!」

 

笑いながらブーディカが消える。

 

「礼を言うぞ。カルデアの諸君。

ありがとう、そなた達の働きに、全霊の感謝と薔薇を捧げる!」

 

カルデア一行の身体が光に包まれる。

眩い光を放ち、彼らはローマから消えた。客将達も座に戻っただろう。

荒野に一人、薔薇の皇帝が残された。

 

「……静かだ……寂しくなんてないぞっ……余は皇帝だからな!……あぁ、寂しくなんてないっ…」

 

「ネロ皇帝!ネロ皇帝ー!」

 

空を見上げるネロ皇帝を呼ぶ声がする。

ローマの兵士達だ。戦が終わり、皇帝を迎えに来たのだろう。

 

「……余の勝利だ!ローマに戻るぞ!」

 

声がした方に顔を向けたネロの顔にはもう、涙はなく薔薇の様な笑みがあった。

 

 

 

セプテム編 完結




セプテム編完結です。
次回は多分、英霊召喚か誰かの話を書いて、その次からオケアノスに入ると思います。
テストとレポートに追われていますが、合間を見つけて書くのでしばらくお待ちください。

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