願いを込めて   作:マスターBT

48 / 82
今年はこれで最後になります。



英霊召喚③

セイヴァーSIDE

 

目を閉じればいつでも浮かぶ。血と臓物が広がる戦場。地獄とも呼べるそれを生み出す己。

死に際に誰かの名前を言うものがいた、家族や恋人共に写る写真を持つものもいた。

憎しみを込めた瞳で俺を見る人間もいた。

守護者となった俺は、その全てを殺した。アラヤに使役され人類の決定的な絶滅を回避した。

全ては、いずれ巡る希望を掴むために。

 

「……お前はそれでいいのか?自分の希望(欲望)のために数多の人間を殺して」

 

影の様な自分が問いかけてくる。

 

「…それが俺の選んだ選択だ。

例え、数千、数万の人間を殺そうが、かつて大切に思えていた人間を殺すことになろうとも俺はこの選択を突き進む」

 

なぜならーー

 

「そうだろうな。そうしなければ、お前はお前自身に殺される。

だが、お前の真実を知った時に彼女はどう思うのだろうな?」

 

こいつの言う通りだ。今更、俺がこの在り方を否定したらオレは俺が許せない。

影であるこいつは俺が目をそらしている現実をいつも容易く突いてくる。

 

「……」

 

「なぜ答えない?いや、もう答えは出ているのだろう。いくら、お前が優しく笑おうが、声をかけようが迫り来る脅威から彼女を救っても、お前の真実が露見すれば拒絶されるだろうよ」

 

「彼女がそんなことを」

 

「する訳がないと?なぜ、そんなことが言える?ろくに会話もせず大切な者を失ったお前が……その失った者の感情を理解できると?」

 

否定したかった。だが、俺は言葉が出てこない。

俺は何より俺が信じられない。彼女を信じている俺が信じられないのだ。

理性はこいつの言葉を否定する。

感情はこいつの言葉を肯定する。

頭と心が一致しない。いつからだったか?いつから、俺の頭と心は一致しなくなった……もう思い出せない。

幾度か忘れたか、戦場をアラヤに命じられ渡り歩いていた時、いつのまにか目を閉じる俺の前にこいつは現れる様になっていた。

その度にこいつは、正論を俺にいう。俺の心を折ろうとしているか分からないが、何度も何度も正論を向けてきた。

……だが、俺にもう折れる心などない。

 

「…確かに俺は彼女と関わった時間は多くない。だが、だからこそこれから理解していける。

お前の様に俺は諦観した思考を持つ気などない。だから、消えろ」

 

俺がはっきり、拒絶を露わにすると意識が急浮上し始める。

いつものことだ。こいつが俺の返答に返す言葉が無いのだろう。

 

「……持たないじゃないだろう。お前は、持てないのだろうが……」

 

最後にあいつがなにかを言っていたが、俺には聞き取れなかった。

意識が浮上していく。さて、今日は召喚をする日だったか。

誰が来るだろうか?

そんなことを考え、自分を蝕む黒い思考を置き去りにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

立香SIDE

 

「…ふぅ、今度は誰がオレの召喚に応えてくれるかな?マシュ」

 

若干の緊張を隠すためにマシュに話しかける。

時間になれば別室に移動してしまうが、まだ時間に余裕はある。

 

「そうですね…きっと、先輩の召喚に応じてくれる方ですから良い人ばっかりだと思いますよ」

 

コーヒーを片手にマシュは返事を返してくれる。

 

「あー、緊張する…」

 

「大丈夫ですよ先輩。先輩なやれます」

 

マシュがオレを応援しようと握りこぶしを作って応援してくれる。

正直、可愛い。なにこの後輩、可愛すぎるんだけど。

 

「立香君、時間になったよ。準備は出来てるかい?」

 

Dr.ロマンが呼びに来る。

用意された聖晶石を掴む。いっつも思うけど、これ金平糖みたいだよなぁ。

こっそり同じサイズの金平糖が混ざってても気づけない自信がある。

 

「先輩、私はこれで失礼します。召喚、頑張ってくださいね」

 

「うん。マシュの負担を軽くできるように頑張るよ」

 

召喚サークルに聖晶石をセットしていく。

今回の召喚はオルガマリー所長も見ている。失敗したら怒られるだろうなぁ…

 

「それじゃ始めるよ」

 

システムフェイトに自身の魔力を流す。

カルデアからの魔力供給があるとはいえ、自分の魔力がないと英霊が混乱する可能性があるから自分の魔力を流すらしい。

 

「んっ、随分と反応が高いわね。高位の英霊かしら?」

 

優秀な魔術師であるオルガマリー所長には起動した時点である程度予測が出来るようだ。

オレにはさっぱり分かんない。

サークルの魔力が集まり、人の姿を成していく。良かった、とりあえず礼装ではないようだ。

 

「ふふ。女神を現界させようだなんて、面白くて哀れな人ね。

あなた、お名前は?」

 

「えっと、藤丸 立香です」

 

「ふふっ。女神を前にしても怯まないのね。よろしくね、私弱いわよ」

 

ローマで見た神性の高いサーヴァントだ。

確かあの時言ってたよな。エウリュアレとメデューサを呼んでからって。早く呼びすぎたみたいだ。

 

「ごめんよ。まだ、エウリュアレとメデューサを呼べてないんだ…」

 

オレの言葉に目を丸くする。見た目も相まって少し可愛い。

 

「……ふふっ、なら早く呼んでね?その代わり、私が貴方に加護を与えてあげる。

私はステンノ。弱い女神だけどよろしく。マスター」

 

微笑むステンノにオレは手を差し出す。

 

「オレは藤丸 立香。よろしく」

 

新しい英霊とオレは契約した。次の特異点への準備は出来た。

次の特異点はどんな場所だろうか。そこで、オレはちゃんと戦えるだろうか…

そんな不安を僅かに抱えながら、オレはステンノにカルデアを案内した。

 




皆さん良いお年を

感想・批判お待ちしています
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。