次回で原作に突入します。
「君が、オルガの呼んだサーヴァントかね?」
「…レフ・ライノール 」
模擬戦から数日が過ぎた日、カルデアに一人の男が戻ってきた。
オルガマリーから、絶大な信頼を受けるカルデアのナンバー2レフ・ライノール。
「如何して初対面であるはずの、私をそんなに殺気を込めた目で見る?」
セイヴァーは自身の感情が殆どコントロール出来なくなっている。
もし、レフと二人っきりで会っていたら、その首を切り飛ばしていただろう。
今、それを抑えられているのは、この二人の近くでオロオロしているオルガマリーがいるからだろう。
「ちょ、ちょっと、セイヴァー?レフはいい人よ?」
「…申し訳ございませんマスター。無礼を承知で申し上げます。
俺は、この男が苦手です 」
ここで、嫌いと返さなかっただけ彼は褒めるに値する。
「如何いうことかしら?セイヴァー。納得のいく説明をお願いします 」
オルガマリーの目が座る。
彼女の一番信頼している人間を否定されたのだから当然である。
しかし、同時に彼女は一つ思っている事があった。
自分のサーヴァント、セイヴァーは意味も無くこの様な言葉を口にする事はない。
それも、自分の目を見ずにレフを睨んでいるのは違和感しか感じない。
「構わないよオルガ。人間、生きていればこの様に訳も分からずに否定される事もある 」
人当たりの良い笑みを浮かべ未だ、黙っているセイヴァーの代わりに答えるレフ。
ああ、気色が悪い。早く目の前から消えろと思うセイヴァー。
「帰ってきたばかりで、私も疲れている。少々、休ませてくれるか?」
「分かったわレフ。部屋でゆっくり休んでちょうだい 」
オルガマリーの返事を聞き、頷くレフ。
「…調子に乗るなよ?サーヴァント風情が 」
「…それはこちらのセリフだ。魔術師 」
二人が交差する瞬間、この様なやり取りがあった事にはオルガマリーは気づかなかった。
確実にサーヴァント、セイヴァーとレフ・ライノールとの間に埋まることの無い溝が存在する。
「説明をお願い?セイヴァー 」
「通路では流石に出来ないので、部屋で宜しいですか?」
「分かったわ。セイヴァー 」
オルガマリーが歩き出したその三歩後ろを歩くセイヴァー。
完全に主人と従者の姿である。
レフSIDE
「一体なんなんのだ!あのサーヴァントは!」
部屋に入り、イラつきに任せ吠える。
「まだ、計画までは一年あるというのに、あのサーヴァントによってオルガからの信頼を失ったら頓挫するぞ!」
それでは、『我らの王』のご命令を達成できない。
だが、あのサーヴァントを消すのは無理がある。完全に、オルガとの契約がなされている。
カルデアの電力を使って、現界を保っているというのなら管制室から、奴に回している電力をカットすれば話は早かったが、奴はオルガ自身の魔力で現界している。この方法では無理だ。
オルガ同様に、懐柔する事はあの態度を見れば不可能。
彼女を消して、供給源を無くしても私の立場がない。
「くそ。どの方法を使ってもデメリットの方が大きすぎる!」
ならば、計画を実行する日にオルガマリー諸共消すしかない。
其れ迄は、オルガマリーにとって頼りになる存在を演じ続けよう。
そうすれば、あのサーヴァントのデータを集める事も可能だ。
「如何足掻こうが、結末は変わらんよ。人類史は我らの王によって燃え尽きる 」
三人称SIDE
「サーヴァントとしての直感?」
「はい。マスター言う納得のいく答えという物では無いかもしれませんが、そうとしか言えないのです 」
「何故と聞いても宜しいですか?」
「身体が覚えているというものでしょう。記憶は、少々混濁しているのは前に伝えた通りです。
しかし、彼を見た時直感的に、彼を信用してはならないと思ったのです 」
嘘だと内心で、嘲笑するセイヴァー。
彼は知っているだけだ。レフという男がこれから起こす許すことのできない事件を。
だが、今伝えても彼女を混乱させると自身に言うセイヴァー。
そうでも、しないと彼の良心の叱責に、捨ててきた己に耐えきる事が出来なくなる。
「…私はレフを信頼しています。彼の力に私は何度も救われました 」
オルガマリーの言葉を聞き、自身は良くて軟禁、悪くて令呪を使い自害させられるだろうと判断するセイヴァー。
当然だ。レフとセイヴァーでは、彼女と過ごした月日が違いすぎる。
レフは年単位、セイヴァーはたかだか数日の付き合いしかない。
しかし、紡がれた言葉は彼の予想を大きく上回るものだった。
「ですが、セイヴァーの言葉を嘘だと言い切れるほどの確証は私にはありません。
何より、この数日の貴方の行動を見ていれば、私に得になる行動はしても、不利益な行動は行わないと判断できます。
よって、先ほどの言葉は自身のサーヴァントの忠言として心に留めておきます 」
オルガマリーの言葉に目を見開くセイヴァー。
「俺を信じて下さるのですか?」
「そう言ったのです。二度も言わせないで 」
「ありがとうございます。マスター 」
感極まり震えた声のセイヴァー。
それを見て、少し笑うオルガマリー。
穏やかで暖かい風景が此処には存在した。
そして月日が流れ、カルデアに一つの異常が発生した。
「カルデアスが灰色になるなんて!」
「人類は2017年で滅びます!」
人理を観測するカルデアスが灰色に染まった。
それが指し示すのは、人類の絶滅。
オルガマリーは全力で原因を探った。時計塔の五月蝿いお小言はセイヴァーが引き受けてくれた。
その結果、観測できない場所がある事が判明した。
「レイシフトの才能を持つ魔術師を調べなさい!
この観測できない時代を捜索するわ!」
「オルガ、レイシフトの才能はかなり希少だ。
今から調べたとしても、果たして間に合うかどうか… 」
「間に合う間に合わないの問題じゃないわ!間に合わせるの。
人類がこの先も存在するにはそれしか無いわ 」
そう言って彼女は時計塔に所属する魔術師の名のある家系にレイシフト適性があるか調べ始める。
トップから率先されて、動かれては下が断る訳にはいかない。
彼女の部下達も、全力でレイシフト適性のある魔術師を探す。
「ええ。その辺りは、現在調査中ですので。…はい。分かり次第報告します 」
何より、そのサーヴァントですらカルデアの為に動いているというのに自分達が動かないという選択肢は存在しなかった。
こうして、素人と魔術師を合わせ、48人の適性を持つ人間を発見することに成功した。
「急いで、招集状を!」
「了解です!」
運命の歯車は急速に回り出す。
その歯車の上に存在する人間など知ったことかと言わんばかりに。
「マスター。俺たちは?」
「私達もレイシフトします 」
本来、物語に関わることのなかった彼女とそのサーヴァント。
この二人の運命も加速していく。
人類史という規模の大きなものを賭けた戦いが始まるーー
そして
「えーと、『藤丸 立香殿 』オレへの招集状?」
世界を背負うマスターも舞台に上がる。
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