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一面が海に覆われた特異点。オケアノス。
カルデア一行がレイシフト直後に目にした景色。
厳つい大砲に、多数の殺気だった男性、そして何よりトレードマークとして目立つドクロマーク。
誰がどう見ても海賊船である。
「……なんで海賊船なのよ。ロマニ」
『はは……まぁ、ほら移動に不便なくて良かったですね。所長』
通信機越しに乾いた笑みを浮かべつつ、オルガマリーのツッコミを流そうとするロマニ。
レイシフトしたサーヴァント達は殺気立ってる海賊に反応し、武器を構える。
「ねぇ、マスター。ここは私に任せてくれないかしら?」
一番、戦闘力の少ないステンノが立香に進言する。
当然、困惑するがサーヴァントを信じると決めている立香はステンノを見ながら頷く。
立香の反応に満足したのかこの中の誰よりも海賊に近い場所へと向かい、ゆっくりと歩いて行く。
「ちょ!?」
慌てるジャンヌ・オルタを右手で静止させるセイヴァー。その顔に若干の呆れが見て取れるため、おそらくステンノが何をするつもりか予測できているのだろう。
「ごめんなさいね?屈強な海賊さん達」
柔らかいそれこそ女神と呼べる笑みを浮かべて、海賊へ話しかけるステンノ。だが、立香とセイヴァーは察した。
絶対、目が笑っていないと。
「あぁ?………い、いえ、えーと」
ステンノの笑みに籠絡されたのか固まる海賊達。
セイヴァーはその様子を無言で見たあと、未だにロマニを説教しているオルガマリーの元へと向かう。
清姫もその後ろをついて行く。
「まったく、貴方はもう少しカルデアの重鎮になっているという自覚をですね…」
『ううっ…すみません所長』
きっと通信機越しでは情けない顔をしながら、頬でも掻いているのだろうと分かるロマンの情けない声に思わず、苦笑しつつオルガマリーに声をかけるセイヴァー。
「マスター、説教はそのあたりで。ロマニも悪気があった訳ではないのですから」
「うっ……セイヴァーがそう言うのなら」
気まずそうに目を伏せながら答えるオルガマリー。ふと、セイヴァーが海賊達の方を見る。
「「「「うぉぉぉぉ!ステンノ様ぁぁぁぁ!!」」」」
「ふふっ」
ステンノを崇拝する集団に早変わりした海賊達を目撃した。
女神だから何も間違っていないのだが、海賊達が狂信するような様子は、なんとも言い難い気分にさせる。
「女神って凄いのね…」
「オルガマリーさん。彼女が秀でてるだけです」
オルガマリーの呟きにそっと返事する清姫。
海賊達を誑かしたステンノが振り返り、立香へと話しかける。
「彼らから此処の状況を聞きましょうか。マスター」
「そうだね。ありがとう、ステンノ」
目の前で起きた狂信者達の騒ぎを何事もなかったように、受け止め返事を返す立香。
彼はかなり適応力が高いようだ。
幸運な事にいや、不運な事に?どちらにしろステンノの狂信者になった彼らから聞けたこの特異点の情報。
まず、彼らにもなにがなんだかよく分かっていないとのこと。次に、海賊島という島が存在しているということ。
目下の目標として、カルデア一行はこのまま、海賊船へ乗せてもらい、海賊島を目指すこととなった。
「野郎ども!ステンノ様のご意向に従い、海賊島へ向かうぞー!!」
「「「「アイアイサー!!」」」」
船長と思われる男の言葉に、船員達が声を揃えて返答する。
ゆっくりと船が動き出し、海風が優しくカルデア一行の肌を撫でる。
見渡す限りの青、そして穏やかな日差し。カルデアから出たことのないマシュだけではなく、全員の精神を癒す。
「やっぱり、海は良いねぇ。釣りでもしたい気分になるぜ」
「釣りですか?クー・フーリンさん、海で釣りをした経験が?」
「おう。盾の嬢ちゃん、今回の召喚は色々と例外らしくてな。本来なら持たない前の召喚の記憶がある。
と言っても、実感はねぇからちょっとばかし、不思議な気分だがな」
海を眺めつつ、豪快に笑うクー・フーリン。
釣りなどしたことのないマシュは当然、クー・フーリンの話に興味を持つ。
「私はしたことがないですから、やってみたいです」
「そうか?なら、坊主や他のサーヴァント達も呼んで釣り大会でもするか!
おーい、あんたら釣り道具を貸してくれ」
マシュの言葉に内心、釣りをしたかったクー・フーリンの行動は早かった。
海賊達から釣り道具を借り、暇そうにしてるサーヴァント達を無理やり巻き込み、釣り大会を始めた。
もちろん、立香やオルガマリーも参加させられている。
「えーと、確かこうしてっと…」
意外にも慣れた手つきで、釣りを行う立香。
「先輩、ここでどうするんでしたっけ?」
「ん?釣り針に餌を付けて……あれ、どうするんだっけ?」
「坊主。その付け方だと、途中で餌外れるぞ」
マシュが立香に質問して、立香の解答の不足部分をクー・フーリンが補う。
後輩と生徒、教師の様な光景が出来上がっていた。
「あーもう!これの何が楽しいのよ!?」
「ジャンヌ・オルタさん、騒ぐかわたくしの釣り糸に自分の釣り糸を絡ませる事しか出来ないんですか?あー、また絡まった…」
「う、うっさいわね!苦手なのよ。ただ、待つだけってのは」
ジャンヌ・オルタに振り回され、まともに釣りが出来ない清姫。
気のせいでなければ、その顔に青筋が浮かんでいる。
「特異点に来てまで釣りをする事になるなんて……」
「マスター、たまには息抜きが必要ですよ」
「そのセリフ、セイヴァーには言われたくないわ」
「フォウ、フォフォウ!」
文句を言いながらも、釣りをしているオルガマリーと、その横でそんな彼女を手伝うセイヴァー。
そして、オルガマリーの言葉をまるで肯定している様になくフォウ君。
すぐ横で騒いでいるジャンヌ・オルタ達とは違い、穏やかな時間を過ごしている。
「船長さん。少しだけ、ゆっくりと船を動かしてくれる?」
「へい。ステンノ様」
好きなように過ごしている彼らを少しだけ優しい笑みを浮かべてみるステンノは船長へと指示を出す。
彼らの行く道は困難に満ち溢れているんだ。少しだけ、自分が優しくても問題はないだろう。
そんな彼女らしくはない思考をしつつ、ステンノは彼らを見守るのだった。
楽しい時間はすぐに終わる。
その言葉の通り、目的地である海賊島に到着する。
「ここが、海賊島ね」
オルガマリーが先に降りる。本来なら、セイヴァーがオルガマリーより先に降りるのだが、釣りの片付けをしていた為遅れてしまった。
それが彼らにとっての不幸だろう。
「「「「ヒャッハー!女だ、食料だ!!」」」」
島の茂みから海賊達が現れる。言葉の通り、オルガマリーなどの女性陣をいやらしい視線で見ている。
全員、武器を持った海賊達だ。それでも、彼らは勝てないだろう。
カルデア側には歴戦の英雄が揃い踏みだ。ただの海賊に負けるはずがない。
そして、なによりもーー
「…海賊ども。その鬱陶しい視線をやめろ」
オルガマリーの
彼らの敗北は一瞬だった。オルガマリーの前に現れたセイヴァーが放った電撃により残さず、地に伏した。
「マスター、お怪我はありませんか?」
「大丈夫です。貴方が守ってくれましたから」
そう言って笑うオルガマリー。クー・フーリンあたりは、セイヴァーの行動を過保護だなと常々思っているが、オルガマリーの笑みが感謝がセイヴァーを支えていると理解しているから、何も言わない。
味方が一瞬で気絶させられ、唯一残された海賊にセイヴァーが剣を向ける。
「島に一番、詳しい奴は誰だ?」
「ひぇ、そ、そ、それなら姐御じゃねぇかと思いやす」
「その姐御とやらの場所まで案内しろ。良いな?」
左手に僅かに、電気を流し逆らえば同じ目に合わせると暗に告げるセイヴァー。
「りょ、了解したしたぜ!こっちです。こっち!」
脅しという先ほどの、ステンノよりはまだ優しい方法で海賊を下僕化させる。
狂信者にされるよりはマシだろうと、セイヴァーは内心で思う。
碌な目に合わない海賊を案内役にして、島の森へと向かっていく。
道中、獣道のような荒い道を通りことになるが、いつも通りセイヴァーがオルガマリーを支える。
「ほら、マスター。私を背負えるっていう褒美をあげてるんだから、しっかり歩きなさい」
「オレの知ってるマスターとサーヴァントの関係じゃないような…」
「あら?か弱い私に歩けというの…酷いマスターね」
ステンノを背負いながら歩く立香。まぁ、見た目が幼女のステンノを歩かせるのもなんだかと思ってしまう立香は逆らえず背負う。
アサシンクラスとはいえ、人間に比べれば強いサーヴァントを。
「もうじき、森を抜けますぜ。その先が、隠れ家っす」
『そういえば、聞いてなかったけど君らの姐御ってのは誰なんだい?』
通信機越しから、海賊に話しかけるロマニ。
その言葉に待ってましたと言わんばかり、食いつく海賊。
「よく聞いてくれたぜ!このまま、聞かれないかとヒヤヒヤしたぞ。
俺らの姐御はあの天下のフランシス・ドレイク様だ!」
漫画やアニメなら背景にドーンと大きなエフェクトでも付きそうな勢いで宣言する海賊。
そして、すでにここは森を抜けている。当然、彼女にも聞こえるだろう。
「なんだい、人の名前を豪勢に呼んでくれて。誰か来てるのかい?」
酒が入ってるであろうジョッキを片手に現れる顔に傷のある綺麗な女性。
彼女がこの特異点の鍵を握るフランシス・ドレイクーー星を開拓する海賊女王だ。
今回の話は、少しカルデアのサーヴァント達がどんな関係に落ち着いているか表してみました。
オケアノスは、個人的に好きなシーンが多いので、そこにどういった感じで所長とセイヴァーを絡ましていこうか悩み中です。
一応、この作品は第1部の完結まで書き上げるつもりです。1.5部やこれから来る2部まで書くかは、書き終えた時の気分だと思います。ですので、1部を書き終わるまで、私は消滅しないので気長に待っていただけるとありがたいです。
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