清姫SIDE
その光景が見えたのは偶然だった。エウリュアレさんと、ステンノさんに迫る海賊を燃やしたり、殴り飛ばしたりで排除していた時だった。
急に迫ってくる敵の数が増え、その隙間から僅かに見えた。
「ッッ!?皆さん!エウリュアレさんとステンノさんを任せます!」
全力の火球を作り、眼前の敵を吹き飛ばし、わたくしは駆け出した。
何があったのか即座に理解出来るほど、わたくしの頭は戦闘に慣れしたんでいない。
それでも、
「……きっと、ここで消えてもカルデアで再召喚出来ますから……って言ってもますたぁは、悲しむのでしょうね」
あと、2メートル。槍は、数秒で彼の背中を貫き、霊核を砕くだろう。
大丈夫。脚に自信は無いけど、サーヴァントとしての身体は生前のわたくしより全然強い。
まさか、生前愛した人を狂ったように、追いかけていた事がここに活きてくるなんて思わなかった。
海賊達の隙間を、駆け抜けながら最短で辿り着く道を馳ける。
そして、わたくしはヘクトールの槍に霊核を貫かれた。
わたくしにマシュさんの様な盾があれば。
わたくしにクー・フーリンさんの様な戦闘センスがあれば。
わたくしにジャンヌ・オルタさんの様な魔術による守りがあれば。
この身を盾にしなくても良かったかもしれない。
「ますたぁ………に、手を出させ……ません……」
それでも、わたくしはもう彼の傷付く姿を見たくない。
だから、残された僅かな時間で仕事をしよう。
「清姫!お前……」
「大丈夫です……ますたぁ……わたくしよりオルガマリーさんを……」
自分を貫くヘクトールの槍を、両手で掴む。
そして、変化のスキルを使い、わたくしの身体を半竜化し、力と頑丈さを底上げする。
「おいおい……冗談だろう?お嬢ちゃん」
反射的に槍を引き抜こうとしたヘクトール。
ふふっ、無駄ですよ。竜の力に真っ向から挑んで勝てるわけないじゃないですか。
「ますたぁ……それでは。わたくしは、一足先に……カルデアに戻ってますね…」
「……ああ。分かった……ありがとう、清姫」
その言葉だけでわたくしは、救われます。
では、サーヴァントとしての役目を果たしてきましょう。
「はぁぁぁぁ!!」
「くっ!?どこにこんな力が…!!」
槍をさらに自分に深々と刺さる様にして、ヘクトールを敵の海賊船にわたくしごと吹き飛ばす。
……ますたぁ、愛しています。とっても…
セイヴァーSIDE
清姫が俺を庇った。分かっている、俺が隙を見せたからだ。
清姫がヘクトール諸共、敵の海賊船に乗り込んで行く。ちらりと見えた清姫の顔は、カルデアで再び再召喚されるとはいえ、もう一度此処に来ることは出来ない。清姫のいう英霊は一度死んでしまうのに、彼女の顔は最近、漸くわかった、柔らかな笑顔だった。
「セイヴァー……清姫が……」
マスターが涙を堪えつつ話しかけてくる。
自分が原因だと思っているのだろう。誰よりも責任を背負ってしまう性格だからこそなのだろう。
「あいつは……あいつの役目を果たしに行ったんです。だから、サーヴァントだけど、マスターである俺には責任があります」
だから、俺は清姫の死は、サーヴァントとしての役目を果たしたのだと告げる。
慰める事すら今の俺に出来る余裕はない。
敵のサーヴァントは、強襲した清姫に付きっ切りになっている。
だから、手に黄色の短槍を取り出し、投擲する構えを取る。外せば、清姫の生死を賭けた行為を無駄にする。
「……また、会おう。清姫」
だから、俺は外せない。
短槍放つと同時に俺の左手から、令呪が失われた。
セイヴァーの放った短槍が敵のサーヴァントの一人、アン・ボニー目掛けて飛んでいた。
槍が回避不可能の距離になると同時に、清姫という英霊の霊基は完全に消滅した。だから、気づけた。
「槍!?!?」
「アン!避けて!!」
投擲に気づいたヘクトールと、メアリーが声をかけるが、間に合わない。
槍はセイヴァーの狙い通り、狙撃手のアン・ボニーの利き手を貫いた。
「うぐぅぅぅッッ……」
貫かれた痛みに、唸り声をあげるアン。
それと同時に彼ら目掛けて、弓矢が降り注ぐ。エウリュアレとセイヴァーの矢による同時攻撃だ。
「不味いぜ、船長。奇襲を仕掛けたのに、いつ間にかこっちが不利になっていやがる」
「これを覆すのはちと骨が折れるでござるなぁww
まぁ、でも俺の部下傷物にして、ただで帰すつもりなんざ、微塵もねぇが」
黒髭の目が真剣になる。
「悪いが、その言葉そのままそちらに返そう」
ロープを伝い、現れるのは、セイヴァー、ジャンヌ・オルタ、ドレイク、マシュ、そしてマシュに担がれながら、藤丸立香。
ジャンヌ・オルタは、アン・ボニーとメアリー・リードに。ドレイクとマシュ、藤丸立香が黒髭に。
「…やれやれ、そんな目をしてるやつと戦うと大概、ろくな事にならないんだがねぇ…」
「清姫の敵討ちだ。ヘクトール」
セイヴァーがヘクトールの前に立つ。
その目には闘志が宿り燃え滾っている。しかし、酷く冷静な態度。
「(早くきてくれないと、首が飛ぶのはおじさんの方だねこれは…)」
槍を構えなおし、セイヴァーの動きを注視するヘクトール。
セイヴァーの武器は、干将・莫耶。それと、いつのまにか回収していた黄色の短槍を背中に担いでいる。
「(マスター、少々魔力を食いますが、いざとなれば渡したアレを使って回復して下さい)」
「(えぇ。分かったわ。存分に借りを返してきて。セイヴァー)」
念話でオルガマリーに確認を取るセイヴァー。
既に他のところでは戦闘が始まっている。ジャンヌ・オルタはやや優勢、ドレイクとマシュと藤丸立香のところは、僅かに劣勢と言ったところだ。
そして、セイヴァーとヘクトールの戦いも唐突に始まる。
先に仕掛けたのはセイヴァー。体勢を低くし、ヘクトールの斜め下から、二刀を斬りあげる様に振るう。
ヘクトールは、それを槍の肢で防ぎ、体勢の低いセイヴァーの顔を狙い、膝蹴りを放つが、それはセイヴァーが後方に飛んだ事により、不発に終わる。
「おいおい、さっきまで違う武器を持ってただろうお前さん」
後方に飛んだセイヴァーが手に持っていたのは、弓矢。矢を番え、力一杯に引き絞り放つ。
槍を回す様に使い、弓矢を弾くヘクトール。着地してもなお、飛んでくる矢に距離を詰めようとしたヘクトールを狙い、今度は真紅の槍がヘクトールの心臓めがけて放たれる。遠距離だと思っていた相手が、突如自分の間合いに詰め寄ってきたのに困惑しつつ、槍を右手の籠手で弾くが、本来守られているはずの槍に触れた籠手から血が出る。
「おおっと…」
「流石は防戦に優れてるだけはあるな、ヘクトール」
セイヴァーの使った真紅の槍は、魔力を打ち消す効果がある。英霊の鎧等は魔力で編まれている為、この槍の効果をモロに受ける。
しかし、それを掠っただけで判断したヘクトールは、身体を大きくズラし、槍を避ける。
だが、身体を大きくズラした事により、槍で戦うには少々不便な間合いになってしまった。
セイヴァーはその間合いに入ってきたヘクトールに、干将・莫耶を投擲し、自身も両手に籠手を装備し、詰め寄る。
「避ければ二刀に。避けなければ、お前の拳にってか?あまり、見縊るなよ!」
槍を自分の身体に沿って回す様に担ぎ、干将・莫耶を弾き飛ばし、セイヴァーの拳を脚で防ぐ。
しかし、セイヴァーは距離を離さない。槍を上手く使えない超至近距離戦に持ち込む。だが、それだけでやられては、ヘクトールは大英雄として名を残していない。槍を地面に突き刺し、セイヴァーとの格闘戦に応じる。
「ハァ!」
セイヴァーが放つ拳を、下から弾く様に狙いをズラさせ、ヘクトールはセイヴァーの鳩尾を狙い、膝蹴りを放つ。
だが、それを読んでいたセイヴァーが一手先を行き、ヘクトールの脚を踏みつける。これにより膝蹴りは不発に終わるが、セイヴァーの顔面にヘクトールの頭突きが当たる。
「ぐっ…」
「詰めが甘いぜ」
怯んだところを、ヘクトールは狙い、拳の勢いを加速させる。その全てが、人体の急所、正中線を中心に狙われている。
頭突きにより、軽い脳震盪を起こしかけているが、セイヴァーは柔術の要領でそれらを捌き躱す。両者ともに埒があかないと判断したのか、ほぼ同時に間合いを広げる。この時、ヘクトールは槍を回収し、密かに自身に迫っていた干将・莫耶を弾き砕いている。
「「はぁ…はぁ…」」
両者僅かに息切れを起こしている。ヘクトールは終始相手のペースに乗せられて、流れに逆らっていたために。セイヴァーは、大英雄と自分の力量差に精神をすり減らした為の疲労だ。
だが、彼らの戦いに水を差す存在が現れる。
「◼️◼️◼️◼️◼️!!」
「やれやれ、君が不甲斐ないから私が直接来ることになったでないか。ヘクトール」
もう一隻の船と、災害が現れた。
ヘクトールのとの決着の前に、災害ヘラクレスが来てしまいました。
暑いですが、皆さん、お身体には気をつけてくださいね。
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