「◼️◼️◼️!!」
セイヴァーとヘクトールの間に割り込んできた英雄ーーヘラクレス。
理性は失われ、バーサーカーのクラスで現界。セイヴァーとキャスターのクー・フーリンが冬木で倒した紛い物ではなく、本物のヘラクレス。
「◼️◼️◼️◼️!!!!」
「ぐっ…おおおお!!」
荒削りの大理石で出来た斧剣を振るい、ギリギリ干将・莫耶で防ぐが吹き飛ばされるセイヴァー。
干将・莫耶は、空中で砕け散る。そのまま、黒髭の船から吹き飛ばされ、ドレイクの船まで飛ばされる。
「アステリオス!」
エウリュアレがアステリオスに指示を出す。
セイヴァーが甲板に叩きつけられるより早く、アステリオスがキャッチする。
「だい、じょうぶ?」
「すまない、大丈夫だ。それと、ナイス指示だった、エウリュアレ」
アステリオスの手から降り、痛む身体を無視し、戦場を見る。
ヘラクレスは相変わらず暴れているが、その狙いが聖杯を持つドレイクと黒髭に少しずつ絞られている様に見える。
そのお陰か、黒髭と一時共闘状態となり、ヘラクレス相手に押しきられず耐えきる事に成功している。
「◼️◼️◼️◼️◼️!!!!」
「一撃が……重い……」
ヘラクレスが振るう暴風のような一撃を盾で防ぐマシュ。その顔にははっきりとした苦悶の表情が浮かんでいる。
しかも、マシュが全力を振り絞り漸く、止められる一撃が凄まじい速さで、何度も行われる。
「少しはこっちを相手にしろっての!」
「神秘の薄い現代英霊じゃ攻撃が通らないみたいだね。こいつ」
マシュに攻撃している間に、ジャンヌ・オルタが魔術でメアリーがカトラスで斬りかかるが、鎧も着ていない上半身裸である筈のヘラクレスの肌に、傷一つ付かない。
攻撃が無意味な事を理解しているのか、ヘラクレスもジャンヌ・オルタとメアリーを羽虫のように片手で払うだけの攻撃しか行わない。
「本当に化け物ですわ……わたしのマスケット銃も効きません…形振り構わず、撤退した方が宜しいのでは?船長」
「馬鹿言うなでござる。折角の戦いを邪魔された挙句、まだオレの船員を傷付けた礼をしてねぇ。
そんなんで、逃げるとか大海賊の名が廃れるってんだよ……槍を向ける相手を間違えてるでござるよ、ヘクトール氏」
アンの提案をきっぱりと断り、自身の背後からくる槍を、背後も見ずに避ける黒髭。
「いやぁ、今ならイケると思ったんだけど……やっぱ隙ないわ。あんた」
ヘクトールが呆れるような表情でぼやく。しかし、槍を構えて黒髭の動きに対応できるようにしている。
「…仮にとは言え、共闘関係。そっちにはアン氏とメアリー氏を貸してあげるでござる。
だから、心底腹立つが手を貸せよ」
「何を言って…!」
ヘクトールが驚いた表情で後ろへ飛ぶ。先程まで彼がいた場所にセイヴァーがガラティーンを振り下ろしながら、現れる。
重そうにガラティーンを担ぎながら、セイヴァーは黒髭の隣に立つ。
「まさか、あんたが俺に協力を持ちかけるとはな」
「オレの船団を押し返す力量を認めてやるだけだ。全部終わったら、アン氏を傷付けた礼は支払ってもらうぜ」
拳銃と拳を構え、セイヴァーを横目で見つつ言う。
「それを果たしたければ、ここで死なない事だ黒髭」
会話を打ち切り、ヘクトールへと斬りかかるセイヴァー。
単純な振り下ろしを、槍で受け流しつつ、避けるヘクトール。重い剣を振り回しているセイヴァーの隙を見逃さず、蹴りを入れようとするが、セイヴァーの背後から黒髭が現れ、拳銃をヘクトールの額に合わす。
もちろん、即座に頭を逸らし避けるが、その時間があればセイヴァーが体勢を立て直すには十分だった。
勢い良く、振るわれる大剣に流石のヘクトールも防ぐ手段がなく、吹き飛ばされる。
「ゲホッ……簡単に連携を組むとかやるねぇ…」
視線や合図があった風には見えない。
黒髭もセイヴァーに合わせようと動いたわけではない。セイヴァーが黒髭の行動を、未来視のごとく予想しコンマ数秒のズレもなく動いただけだ。彼なら、こう動くだろうと踏まえて。
「……やっぱりお前さんは面白いぜ。無名の英雄」
だが、それでも連携するとバレてしまえば、この男に同じ手は通用しない。
はっきり分かるほど、雰囲気が変わる。その目は、黒髭とセイヴァーの動きに注視しているようだ。
その証拠に、セイヴァーや黒髭が攻めるために、動くとそれに反応するように、ヘクトールの体勢が変わる。
「チッ、厄介だ」
セイヴァーが思わずぼやく。背後のヘラクレスによる被害も大きくなってきている。
このまま、ヘクトールに時間をかけ過ぎれば、未来は一つ。
背後からやって来る災害に全滅するだけ。
「はっはは、ヘラクレスに勝てるわけがないだろう!ほら、何やってんだよヘクトール。
早く聖杯を奪えって」
軽薄そうな男の声が戦場に響く。
突如現れた船の船長、イアソンだ。側には、若い頃のメディアを控えさせている。
「(くそ、どうする……俺の宝具を使ったところで、勝ち目は薄い。しかも、こんなタイミングで使いたくない……)」
策を練るが、どう足掻いても勝てるビジョンが見えない。
何より、ヘラクレスが厄介すぎる。
「……意地とか張ってる場合じゃないでござるな。
セイヴァーとか言ったな。オレが隙を作ってあの怪物も相手してやる。そのうちに逃げな」
黒髭の言葉に思わず固まるセイヴァー。
まさか、この男が自らを犠牲にするとは、思っていなかったからだ。
「オレの勘が不思議なことに、お前らを生かせと言ってる。
不本意ではござるが、あのBBAもいるし?任せてやるのも一興ってやつでござる」
「ふざけている言葉だが、その提案はありがたく受け取る。黒髭」
セイヴァーは、返事とともに干将・莫耶を取り出し、ヘクトールへと投げつける。
2組、3組とその数を増やし、投げる。互いに引き合う性質がある二刀は、防戦の名手ヘクトールとはいえ、一瞬で突破できるものではない。そして、その隙があれば黒髭が宝具を発動させる余裕が生まれる。
「いくでござる!いくでござる!
大量の砲門が、操縦者なく、イアソンの乗る船とヘラクレス、ヘクトールを狙う。
そして、一斉にそれらが放たれる。
「私らごとやる気かい!?」
ヘラクレスと戦っていたドレイク達は、慌てて自分達の船へと飛び戻る。
セイヴァーも投擲を止め、船に飛び移る。砲撃は、ヘラクレスには全くと言っていいほど通用せず、ヘクトールは船上を走り回り回避、イアソンは無様な悲鳴を上げるが、メディアが魔術で防ぐ。
「ほら、逃げるでござるよBBA。不本意だが、ここはオレ達が押さえてやらぁ」
砲撃が終了後、かつての黒髭船団の船員が、ヘクトールやヘラクレスに群がっていく。
当然、英霊に敵うわけがなく、姿を散らしていくが、それでもこの数を即座に処理することはできない。
「あんた……分かったよ。んじゃ、頼んだよ。野郎ども!!全速力でここを離れるよ!」
ドレイクの指示により、船が加速していく。
黒髭達の船がどんどん小さくなっていく。敗走…そう呼べる戦いの結末だった。
「船長、柄にないことしたね?」
「デュフフ、そうでござるか?」
「そうですわね。わたし、ドレイクさんと協力して逃げるかと思ってましたわ」
黒髭の海賊団のサーヴァント、メアリー・リード、黒髭ことエドワード・ティーチ、アン・ボニー。
黒髭の宝具で呼び出した船員達の数ももう、数えるほどしか残っていない。それでも、後ろにもう見えなくなったドレイクの海賊船を方角を見て、黒髭は豪快に笑みを浮かべる。
「BBAと心中とか勘弁でござるww
どうせ、死ぬのなら美女二人と共に盛大に暴れる方が良いでござるよぉ」
不思議な縁で、組むことになった三騎。
まさか、死ぬときまで道を共にするとは思ってもいなかった。
「まさか、僕もお前みたいな奴と一緒に戦うとは思ってなかったよ」
「えぇ。こんな、下品でむさ苦しい方と運命を共にするとは」
黒髭の笑みがより濃くなる。それに釣られるように、アンとメアリーも笑う。
「「ただ、最高の海賊船に乗せてもらったお礼ぐらいはしなくちゃね(しますわ)」」
「デュフフ、美女に褒められる死は最高でござる。………あばよ」
黒髭の言葉を最期に、彼らが言葉を交わすことはない。
ヘラクレスとヘクトールを相手に、彼らはなす術もなく、その霊基を消滅させた。
そして、聖杯は、イアソンの手へと渡った。
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