願いを込めて   作:マスターBT

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むぅ、日付を跨いでしまった。


足止め作戦開始

分担して、戦力を分けたは良いが、人力で動かしている小舟が大海原を移動するのは少々難しい。

いくら、サーヴァントといえど精神的な疲れは募っていく。

 

「セイヴァー、交代だ」

 

「任せた」

 

クー・フーリンとセイヴァーが一時間おきに交代して、もう3回目。

別れてから、3時間という時間が経過していた。それでも、休憩中のサーヴァントは、目を凝らし船を探し、オルガマリーとダヴィンチは、魔力とシバによる感知を続ける。

 

「なぁ、ほんとにこっちで合ってるんだよな?海の藻屑になるのは勘弁だぜ?」

 

『む。心配するなクー・フーリン。この天才に不可能はないさ』

 

「その割には、かなりの時間が経過してるんだけど……」

 

『はっはっは!いやぁ、私とした事が君達の移動速度を計算に入れるのを忘れていたよ』

 

ダヴィンチの気楽な声が通信から聞こえるが、現場の三人からしたら溜まったもんじゃない。

全員が溜息と、自分の幸運を呪っていた時だった。

 

『ふっ、ビンゴだ!捉えたよ!さすが、私』

 

「良いから進路を教えろ。自称天才」

 

『セイヴァー酷くないかい!?あと、30分ほどで君らの眼前に現れる』

 

目の前に現れてくれるとは好都合と、笑みを浮かべるクー・フーリン。

 

「こちらでも視認した。向こうには、アーチャーがいないから、俺たちの位置は悟られていないはずだが、キャスターの魔術は分からん。

どのタイミングで攻勢に出る?クー・フーリン」

 

「はっ、そんなの決まってるぜ、セイヴァー。間合いに入ったらだ」

 

槍を構え、跳躍する体勢になるクー・フーリン。

セイヴァーも弓を構えて、準備を整える。

 

「マスターはクー・フーリンの跳躍後、俺が抱えて連れて行きます」

 

「頼んだわよ。セイヴァー」

 

距離が少しずつ、縮まっていく。

彼らとアルゴノーツ船団との距離はあと、10分もすれば会敵する。そして、そこまで近づけばセイヴァーの間合いとクー・フーリンの間合いが重なる。

 

「行け、クー・フーリン」

 

弓を引き絞り、三発を同時に放つ。

それと同時に、船が大きく揺れ、クー・フーリンが跳躍する。弓はキャスターが展開した魔術防壁によって防がれるが、クー・フーリンが敵の船長の目の前に降りることに成功する。

 

「貰ったぁ!」

 

「うわぁぁ!?ヘラクレス!!」

 

イアソンが情けない声を上げると同時に、ヘラクレスがクー・フーリンに突撃する。

舌打ちとともに攻撃を中断し、クー・フーリンはヘラクレスの攻撃を回避する。

 

「行きますよ。マスター」

 

「えぇ。頼むわ」

 

ヘラクレスとクー・フーリンが戦いを始めると同時に、セイヴァーが飛び上がる。

着地地点は船の後方、ヘラクレスとクー・フーリンとは少し、離れた場所だ。

 

「よぉ、やっぱり来たか」

 

「今度こそ、その首、貰っていくぞ。ヘクトール」

 

日本刀をその手に握り、ヘクトールを睨みつけるセイヴァー。

対するヘクトールも最初から真剣な目で、槍を構える。

 

「あら、マスターが乗り込んでくるとは……しかも護衛のサーヴァントすら連れずに」

 

キャスター、在りし日のメディアの姿で現界している。

 

「キャスターね、貴女は私が相手します」

 

魔術回路を全開にし、メディアを睨みつけるオルガマリー。

マスターではサーヴァントには勝てない。これは揺るがない事実であり、現代の魔術師が神代のキャスターに挑むのはかなり分が悪い。

それでも、クー・フーリンがヘラクレスを。セイヴァーがヘクトールを、それぞれ抑えている時に邪魔をさせるわけにはいかない。

何より、オルガマリー自身が守られてばかりなのを拒否したからだ。

 

「現代の魔術師が勝てるとでも?」

 

「さぁ、どうでしょう。でも、負けると決まってる訳でもありませんよ?」

 

キャスターとオルガマリーの魔術戦が始まる。

 

「(私もどうにか足掻くから。早く勝負をつけなさい、セイヴァー!)」

 

オルガマリーがセイヴァーに内心で応援を送る。

その時、セイヴァーはヘクトールと斬り結んでいた。

 

「はぁ!」

 

「そりゃ!」

 

セイヴァーが振るう刀をヘクトールは余裕で見切り、槍をカウンターの様に突き出す。

だが、見切られると分かっていた様にセイヴァーは、足の甲に乗せる用に取り出したナイフを槍を避けつつ、蹴り飛ばす。

それでもヘクトールは躱すが、その進路方向に刀が振るわれる。慌てて、ヘクトールは避けるが、皮一枚分避けれず、頬から血を流す。

 

「っとと、読まれたかこれは」

 

セイヴァーの攻撃が自身の回避先を読んで行われたことだと即座に察するヘクトール。

剣や槍は、ヘクトールが生きていた時代にも用いられていたものだが、刀というのは日本でしか作られていない。

その独特な振るい方は、生前の勘には頼れない。

 

「(だからと言って、そうなんども切り結べばあの英雄は慣れる)」

 

体勢を低くし、居合の形で刀を構え、ヘクトールへと接近する。

攻撃のコースが見え見えの構えに、僅かに眉をひそめるが、槍を居合が振り抜かれた場合、当たる地点で構える。

セイヴァーが、一瞬身体を捻り、居合斬りを放つ。だが、ヘクトールの手に衝撃はない。

 

「チッ、見切ったか」

 

「危ない危ない」

 

居合斬りをする直前に、鞘だけ残し、刀をしまい、振り抜いた手にアロンダイトを取り出し、振り下ろしたセイヴァー。

それをギリギリで見抜き、ヘクトールは槍を横にし、アロンダイトを防ぐ。

激しい火花が散り、彼らは切り結ぶ。

 

「おじさん、男と向き合う趣味はないんだけどねぇ〜」

 

不意に槍の力が抜け、セイヴァーが前のめりにヘクトールが横にズレる。

受け流しだ。セイヴァーの体勢が崩れたのを狙い、セイヴァーを蹴り飛ばすが、同時に黄色い短槍で軽く左手を斬られる。

 

「ゲホッ、浅いか」

 

「…傷が塞がらない。そういう宝具か」

 

蹴りによるダメージと塞がらない小さな傷。

短期的な目で見れば、セイヴァーが。長期的な目で見ればヘクトールが有効打を受けた。

 

「さて、どうしたもんかねこれは」

 

「ふぅ、やはり一筋縄ではいかないか。(マスター、もう少し頑張ってください)」

 

念話でオルガマリーにもう少し頑張ってくれと応援を送るセイヴァー。

 

「(頑張るけど……やっぱり神代の魔術師は辛いわ)このぉ!」

 

念話で焦りながら返答しつつ、ルーン魔術とガンドを使い、対抗するオルガマリー。

神代の魔術を高速詠唱で、簡単に使ってくるメディアに辟易としながら、事前に準備しておけば簡単に使えるルーン魔術と得意なガンドでメディアの僅かな隙を攻撃していく。

 

「現代の魔術師とはこんなもんですか」

 

またメディアが口を動かすと、背後に大量の魔法陣が現れ、多数の光弾が放たれる。

それを身体強化の魔術で自分の身体を強化し、走りながら避けるオルガマリー。

 

「馬鹿にするのも大概にしなさいっよ!」

 

右手に集めたガンドを連射していく。

一発、一発の威力はコンクリートだろうが砕く威力だが、メディアの前にある魔術障壁は貫通できない。

だが怯ませる事には成功する。その隙に、スタングレネードの様な光を発するルーン文字を刻んだ石を投擲する。

直後、凄まじい光がメディアの視界を包む。

 

「くっ、こんなので」

 

目を潰されたメディアがフラフラっと降りてくる。

それを待っていたオルガマリーは、身体強化の魔術を自分にかけ、メディアに近づき、空手の要領で拳を突き出す。

 

「がっ!」

 

魔術障壁も物理攻撃には意味をなさず、オルガマリーの拳がメディアの鳩尾に深々と当たる。

 

「きゃぁ!?」

 

だが、メディアも口から血を吐きつつ、魔術による光弾をオルガマリーに放つ。

避ける余力のなかったオルガマリーに直撃するが、魔力を編む時間が短く、今、オルガマリーが着ている魔術礼装でギリギリ防げる。

それでも、衝撃による痺れがオルガマリーを襲う。

 

「格闘戦なんて、魔術師らしくない……」

 

「今の魔術師は格闘術も学ぶんですよ。神代の魔術師さん?」

 

足止め作戦は始まったばかりである。




最後のメディアとオルガマリーのやり取り、どこを参考にしたかモロバレしそう。

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