相変わらずの戦闘描写ですが楽しんでいただけると嬉しいです。
「◼️◼️◼️◼️ーー!!」
「ちぃ!」
一撃でも直撃を喰らえば、全身がミンチに成りかねない攻撃を、身の軽さを用いて躱すクー・フーリン。
神の血をその身に宿す半人半神の英雄同士の戦いは、互いに目立った外傷がないという泥沼化を極めていた。
ヘラクレスの宝具である十二の試練を、通常時のゲイ・ボルグでは貫く事は出来ない。
だが、逆に言えばクー・フーリンが宝具を撃つだけの猶予が与えられれば、彼は真名を解放し、ヘラクレスの命を奪う事ができる。
「やれねぇこともねぇが、それを許す相手じゃないよな。ヘラクレス」
クー・フーリンが自身の命を奪う宝具を持っていると、自覚しているのかヘラクレスは、狂気に染まりながらもクー・フーリンに宝具を撃たせる暇を与えない。
さらに付け加えるのであれば、ゲイ・ボルグで殺したとしても、ヘラクレスの命のストックを何処まで消耗させられるのかは分からない。
死ぬ気で放ち、たった一つしか奪えず、クー・フーリンが殺されてはこの作戦が意味をなさない。
「◼️◼️◼️ーー!!」
クー・フーリンの突き出す槍を、荒削りの大理石の斧剣で弾くヘラクレス。
すでに、クー・フーリンへと叩き落とす体勢になっているヘラクレスに舌打ちをしつつ、クー・フーリンは飛び上がり、斧剣を回避すると同時にゲイ・ボルグを背中へと放つが、その巨体に似合わない俊敏さで躱される。
「重っ…!?」
引き戻したゲイ・ボルグで振り向きざまに落とされる斧剣を受け止めるクー・フーリン。
全身が悲鳴をあげる。
ヘラクレスのステータスは、基本的にA以上。狂化の恩恵を受けているとは言え、十分に化け物だ。
「◼️◼️!!」
その化け物が、スキルまで使用し、クー・フーリンを殺そうとしている。
このヘラクレスとまともに戦える英霊は、そう多くない。
現代の英霊では、神秘が足りずヘラクレスに傷を付ける事すら、叶わない。ヘラクレスと正面からやり合う事の出来る英霊は、ヘラクレスを上回る神秘や戦闘力を有している者か、圧倒的な手数に優れている者か。
前者をあげるのなら、英雄王ギルガメッシュが妥当だろう。後者は、セイヴァーやエミヤだろうか。
「はぁ!」
クー・フーリンはそのどちらでもない。神秘は色濃く宿しているが、ヘラクレスと大きく差があるかと言われればない。
手数も、ゲイ・ボルグとルーン魔術ぐらいだ。例に挙げた英霊達とは比べものにならない。
それでも、彼はヘラクレスと戦えている。それはなぜか。
「◼️◼️◼️ーー!!」
「はっ、甘いぜヘラクレス!」
それは単に彼の戦闘センスがずば抜けて高いからである。
自分の被害を最小限に抑えることや、戦闘時の勘の鋭さ、そして何より英霊としての自負の高さ。
生存能力の極めて高い彼は、災害のごとく武器を振るうヘラクレスとのタイマンを可能にしていた。
そして、時間を稼ぐ事が目的のこの作戦では、まさに打って付けの存在である。
斧剣を弾き、ヘラクレスへと肉薄。
ゲイ・ボルグを突き刺すと見せて、ヘラクレスの巨体を足場に動き回る。
「◼️◼️◼️◼️!!!!」
視界のチョロチョロと動き回るクー・フーリンにストレスが溜まったのか少し、大ぶりで斧剣を振るう。
ニヤリと笑みを浮かべながら、後方に大きく飛び、ゲイ・ボルグを構えるクー・フーリン。
「バーサーカーである事を利用して、悪いがこれも戦いだ。悪く思うな」
ゲイ・ボルグが真紅の魔力を纏う。
因果逆転の槍、その宝具の発動である。ヘラクレスは、狂気に犯された本能で危険を感じ取り、離れようとするが、
「何をやってるんだ!?早く倒すんだよ!!ヘラクレス」
イアソンの悲鳴に近い指示に、邪魔をされる。
自身を召喚した存在であるイアソンの指示に、本能的に従ってしまったヘラクレス。
その結果、ゲイ・ボルグから逃れることも防ぐことも叶わない半端な状態になってしまった。
「同情するぜ、ヘラクレス」
クー・フーリンの言葉と共に、真名解放したゲイ・ボルグがヘラクレスへと投擲される。
無理やり身体を動かし、ゲイ・ボルグを弾くが相手に命中するという事実を固定し放たれる槍は、複雑に動きながら自動でヘラクレスを狙う。
その結果、迎撃する準備も碌に出来なかったヘラクレスの背中を貫き、ゲイ・ボルグは持ち主であるクー・フーリンの元へと戻る。
「とりあえず、一つ。貰い受けたぜ」
心臓は確かに貫いた。だが、ヘラクレスは再び動き出す。
十二の試練で命にストックのある彼を、殺しきる事は出来なかった様だ。だが、再生するまでに時間をかけすぎた。
イアソンの船に突如として、大量の矢が降り注ぐ。
「うわぁぁぁ!?!?」
イアソンの情けない悲鳴が響き渡る。
「おっと、時間稼ぎはここまでか。じゃあ、俺は失礼するぜ。ヘラクレス」
クー・フーリンが船から飛び降りる。
メディア戦闘中。ヘクトールはイアソンの位置からでは、どうなっているのか分からない。
「ヘラクレス!何をやっている!?この矢を止めて来い!!」
結果として、この様な指示を出してしまうイアソンを誰が責められるだろうか。
心臓の再生が終わったヘラクレスは、僅かに溜息を吐く様な素振りをした後、イアソンの指示に従い矢の大元へと向かう。
結果として、これが大英雄の死へと繋がるのだが、それを知る者はいない。
時間は少し戻り、刀を振るい、ヘクトールと戦うセイヴァー。
しかし、時間をかけ過ぎてヘクトールは完全に刀の間合いと戦い方を覚えてしまった。
それでも、ヘクトールには、小さな傷が多く付いている。セイヴァーによる、治すことの出来ない傷だ。
対して、セイヴァーは血を流す傷や、打撲の痕など目立った外傷が多い。
「……やれやれ、その傷でよく保つね君」
「保たせるだけの理由があるからな」
もう何度目になろうかという刀と槍の鍔迫り合い。
セイヴァーの持つ刀の所々は欠けており、使い手諸共ボロボロである。
ヘクトールが、セイヴァーを弾き、自身の間合いを作る。素早く突き出される槍を、経験則と記憶から引きずり出し避けるセイヴァー。
その間合いを詰める事はせず、刀を持つ手とは反対に、拳銃を取り出し放つ。軽く体勢を変えるだけで、避けられるがその隙間を縫って今度はセイヴァーが自分の距離へとヘクトールを押し込む。
切り上げと同時に、蹴りを繰り出すという体術と剣術の織り交ぜられた攻撃を放つが、受け止められ躱される。
「とっとと……そこ!」
軽い言葉と共に放たれる重く鋭い槍。
刀で、受け流すが同時にパキンっと言う音ともに、完全に折れてしまう。
「ッツ!?」
「これで終わりだ、名も無き英霊くん」
ヘクトールの槍がセイヴァーのガラ空きとなった胴体めがけて突き出される。
ズブリっと言う肉を裂く音ともに、セイヴァーの腹へと刺さるヘクトールの槍。
「ゴフッ」
口から血を吐くセイヴァー。
だが、ヘクトールに勝利の表情は無い。
「……似た者同士だ。あんたらは…」
ヘクトールの槍を力強く握り、足を踏むセイヴァー。本来なら、こんな抵抗何の意味もない。
このまま、槍を引き抜かれ、トドメの一撃を放たれるだけだ。
だが、今回は違う。セイヴァーの正面、ヘクトールの背面に広がる青空から、無数の矢が降り注ぐ。
セイヴァーはヘクトールの身体が盾になる為、何の弊害も無いが、ヘクトールはセイヴァーに槍を掴まれ、足を踏まれた事で回避することも弾くことも出来ない。
結果、彼の背中には弓矢が突き刺さる。
「ぐっ……おじさんもヤキが回ったかね……こういった謀略なんて良くあるってのに…」
セイヴァーが槍を離し、足を退かすとフラフラと離れるヘクトール。
槍を腹に刺したまま、薙刀を取り出しヘクトールへと向ける。
「こんな…幕引きだが……悪く思うなよヘクトール」
「
良いぜ、認めてやる……お前の勝ちだぜ。セイヴァー」
その言葉に返事をすることなく、セイヴァーは薙刀をヘクトールの霊核へと突き刺す。
どこか満足げに不敵な笑みを浮かべたまま、ヘクトールは姿を消した。当然、彼の槍も消え、セイヴァーの傷口から血が流れる。
それを治癒の魔術で自己回復しながら、セイヴァーは薙刀をヘクトールが居た場所へと突き立てる。
「清姫……お前は望んで居ないかもしれなかったが……仇討ちは果たしたぞ」
そのまま、ゆっくりと消えていく薙刀を見つめながら、セイヴァーは自分の傷を癒す。
足止め作戦は成功した。あとは、あちら側に任せるだけだ。
「」の最後に謎の空間が空く現象ですが、おそらく私が普段書くのに使っているiPadに原因があるかもしれません。
もし、気づいた人がいましたら、教えてください。修正しに向かいますので。
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