願いを込めて   作:マスターBT

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サブタイがネタバレだって?すまない……思いつかなかったんだ……


大英雄、撃破

「うぉぉぉぉ!!」

 

立香は雄叫びをあげながら、全力疾走する。

エウリュアレを背負いながらの疾走だ。物凄く疲れるが、

 

「◼️◼️◼️ーー!!!」

 

自分の後ろを走るヘラクレスの斧剣にミンチにされる恐怖が、彼の足を動かせさせる。

セイヴァー達と別れ、新たに仲間となってくれた、アタランテとダビデ。

彼らの助力もあり、ヘラクレスを引き剥がすことに成功。あとは、ダビデ共に現界した彼の宝具、『契約の箱』にヘラクレスを触れされることで立香とロマニが考えた作戦は成功する。

ただ、この作戦の最も大事な部分。ヘラクレスを誘導する係は、英霊ではなく立香が務める。

 

「◼️◼️◼️!!?」

 

ヘラクレスが立ち止まり、自分へと降り注ぐ弓矢を弾き落とす。

人間である立香が、囮を務めているのは、ヘラクレスの足止めを行うのに英霊が全力を出さなばならないこと。

それと、なりより彼自身が強く望んだからだ。

 

「はぁ、はぁ…」

 

もともと一般人の立香に押し寄せるプレッシャーは半端ないが、瞬間強化の魔術でヘラクレスが止まっているうちに僅かでも加速する。

思い出すのはセイヴァーとの訓練。自分を苛め抜くスパルタ訓練だ。

そのお陰で、身体はそれなりに作られている。

 

「来たわよ!マスター」

 

立香が駆け抜けた森の木々が勢いよく吹き飛ぶ。

根元から抜けた木々や大木が、上空へと散り砂埃を立てながら落下する。その中央に赤く光る目があった。

 

「◼️◼️◼️ーー!!!」

 

「ほんと、化け物だなっ!」

 

ヘラクレスが遠吠えと同時に立香へと迫る。

平原は先ほどの森より、障害物が圧倒的に少ない。故に、速度の差が如実に現れる。

スタートダッシュで生み出した差が確実に縮まって行く。

 

「もっと走りなさい!」

 

「これでも……全力だよ!」

 

エウリュアレの悲鳴に近い指示が立香に出るが、それに応えてる余力はない。

すでに強化に使えるほどの魔力はなく、純粋な身体能力で走っている。

 

「いかせ、ない!」

 

ヘラクレスと立香の間に、アステリオスが割り込む。

その力はヘラクレスと互角。二刀の斧と、斧剣が勢いよくぶつかり火花を散らす。

 

「適度に戦って、撤退するのよ!アステリオス」

 

「わかった、えうりゅあれを、たのむ、ますたー」

 

ニッ!っと笑うアステリオス。その顔に満足そうに頷くエウリュアレ。

 

「了解!」

 

立香はヘラクレスを押しとどめるアステリオスに、怪物としての姿ではなく、英霊としての彼を見る。

 

「◼️◼️ーー!!」

 

「じかん、かせぐ!」

 

ヘラクレスの様な武技はアステリオスにはない。彼は反英雄。

それも武勇に秀でたものではなく、怪物としての英雄。そして、怪物であるが故に英雄に倒される宿命を持つ。

だが、忘れてはならない。怪物は、時として英雄すら食らう存在でいることを。

 

「おおおっ!」

 

自身のスキルと、ヘラクレスをも凌ぐ圧倒的な怪力。

それを自分の名前を呼んでくれる女神と、マスターを守るために遺憾なく発揮する。

 

「◼️◼️ー!?」

 

その結果、数多の伝説を持つヘラクレスすら、鍔迫り合いの末に弾きとばすことに成功する。

着地をし、体勢を整えるヘラクレスにアステリオスは追撃を仕掛ける。

左右から挟み込む様にして振るわれる斧を、ヘラクレスは斧剣と自らの手で掴み防ぐ。この時に、自分のを手を切らぬ様に刃では無い部分を掴むヘラクレスの狂気に侵されてなお、揺るがぬ武技に驚かずにはいられない。

 

「ぐ、ぐぅぅぅ!」

 

全力で斧を閉じようとするが、ヘラクレスもそれを簡単に許してはくれない。

そして、ここでアステリオスに武技がないデメリットが生じる。余りにも、全力になりすぎた。

 

「うわっ!?」

 

「◼️◼️◼️ーー!!」

 

ヘラクレスが受け止めていた力を受け流し、アステリオスの体勢を崩す。

急に力が逃がされたことで、アステリオスが前のめりになる。そこをヘラクレスは、蹴り飛ばす。

アステリオスは吹き飛び、受け身を取ることすらできず、地面を数回跳ねる。

 

「う、ぐ…」

 

いくら身体が頑丈とはいえ、流石のアステリオスもこれは堪えた様ですぐには立てない。

どうやら蹴りは鳩尾に入ったらしく、かなり苦しそうだ。

その大きな隙を見逃すヘラクレスではない。アステリオスへと飛びかかり、その斧剣で轢き潰そうとする

 

「さぁ、ダーリン、愛を放つわよ!『月女神の愛矢恋矢(トライスター・アモーレ・ミオ)!』」

 

「悠長だなお前!?」

 

しかし、その攻撃は中断される。

オリオンの宝具が、ヘラクレスへと放たれたからだ。ヘラクレスの身体を容易に貫く事の出来る宝具。

それは流石のヘラクレスも全力で回避するしかない。だが、すでに跳躍していたヘラクレスにその余裕はない。

だから、彼は斧剣を勢いよく向かってくる矢に叩きつける。

 

「おいおい、宝具だぞ!?宝具!」

 

オリオンがヘラクレスの防ぎ方に驚く。だが、それと同時に視界に映る光景にニヤリと笑う。

地に伏せていたアステリオスが、斧を手に取りながら立ち上がっていた。

眼前には、オリオンの宝具を防ぎ、立ち止まっているヘラクレスがいる。この好機をアステリオスが見逃すはずがなかった。

 

「やれぇぇ!!」

 

珍しく腹の底から声を出すオリオン。その声にさらにやる気が出たアステリオス。

 

「はぁぁぁ!!」

 

アステリオスの一撃が、ヘラクレスのガラ空きの胴体に突き刺さる。

そのダメージで僅かに怯んだヘラクレスにオリオンの宝具がその心臓を貫く。結果として、ヘラクレスは再び死亡する。

 

「時間稼ぎならこれで十分だろう。行くぞ」

 

「あぁーん、待ってよダーリン!」

 

大英雄を倒したという達成感はなく、即座に持ち場を離れるオリオン。

アステリオスも、落とした斧を拾いその後を追いかける。

その数分後、ヘラクレスは再び、動き出す。

 

「◼️◼️ーー!!」

 

己の勘に従い、エウリュアレの方へと駆け出す。

20分ほど凄まじいスピードで走れば、彼の視界に再び立香を捉えることができる。

 

「来た!」

 

それを確認した立香は、洞窟内部へと走り込む。

露骨に誘われている。そう、ヘラクレスの直感が告げるが、彼には彼の目的がある。

故に、急に彼は洞窟へと入る。デコボコした道を立香がエウリュアレを抱えながら、走るのが見える。

すでに息は絶え絶え、足も震えている。それでも、彼はその身に走れと命令を送る。

 

「マスター、止まれば追いつかれるわ。飛び越えるわよ」

 

「触れたら死ぬのに!?」

 

「やるしかないわ。大丈夫よ、私を信じなさい」

 

ぐぅぅぅと内心で唸る立香。

こうなりゃヤケだ。やらなきゃ、どうせ死ぬ。それなら、やってやる。そう覚悟を決める。

 

「いい顔よマスター。タイミングは任せなさい」

 

「お願い…しますよ。女神様!」

 

「えぇ。……3、2、1今よ!」

 

「ウォォォリャァァア!!」

 

立香は合図とともに、全身の力を振り絞り跳躍する。

エウリュアレを抱えたその身体は、宙に浮かび、しっかりと契約の箱を飛び越える。

 

「!」

 

ヘラクレスも後少しで、その箱に触れるというところで立ち止まる。

脅威を理解しているからだ。だが、ここに来た時点でチェックメイトだ。

 

「アステリオスさん!」

 

「いく、ぞ!」

 

「僕もやれるだけやろうか」

 

ダビデがもう一つの宝具である香炉を取り出す。そこから出る煙がヘラクレスへと纏わりつく。

 

「神の業火だ。君に耐えられるかな?『燔祭の火焔(サクリファイス)』」

 

凄まじい炎がヘラクレスの身体を焼く。

 

「◼️◼️!?」

 

自らの身体を焼く炎を消そうとするヘラクレス。だが、さらなる追撃が彼を襲う。

アステリオスの斧に足を置いたマシュが盾を構えながら、撃ち出され、勢いよくヘラクレスへと追突する。

 

「はぁぁぁぁ!」

 

「◼️◼️ーー!?」

 

よろめいたヘラクレス。後方へ大きくバランスを崩す。

そして、彼の後ろには契約の箱。小学生でも分かる簡単なことだ。彼の身体が契約の箱へ触れる。

眩しい光の後、その場所にヘラクレスはいない。

 

「ヘラクレスを倒しました……死んだと言うよりは消えたと言う方が適切でしょうか。

大丈夫ですかマスター?」

 

「うん、死ぬかと思ったけどね。マシュもナイスだよ、最後の突撃格好良かった」

 

「そ、そうですか…」

 

立香の言葉に顔を赤らめるマシュ。

 

「おつ、かれ、ますたー。えうりゅあれも」

 

アステリオスが近づいてきて話しかける。立香は笑顔でアステリオスに手を振り、エウリュアレは土埃に塗れたアステリオスを見てギョッとする。

 

「適度に戦いなさいって言ったのに……貴方が汚れたら私まで汚れちゃうじゃないの」

 

「う、ごめん、えうりゅあれ」

 

「で、でも!貴方のおかげでこうしていられるから…ありがとう、アステリオス」

 

照れ臭そうに小声で礼を言うエウリュアレ。

それを面白げに見る何もしていないステンノ。

 

「うん!」

 

お礼を言われ、嬉しそうに笑うアステリオス。その素直な反応がまたエウリュアレには心地よく微笑む。

強敵を倒したことで和やかな空気が一同に流れるが、ロマンの通信がそれを遮った。

 

『ごめんよ!でも、急いでくれ!所長たちが危ない。魔神柱反応だ!!』

 

収束へと向かう特異点。

ついに、その繋ぎ目である魔神柱が現れた。

 




次回、いよいよ魔神柱戦(になるといいな)

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