願いを込めて   作:マスターBT

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本当にいつ完結する事になるのか……
まぁ、暗いことは考えずマイペースにやっていきます。


オケアノスからの帰還

「…イアソン様……せめて最期の瞬間まで楽しい夢が見れてたらいいのだけれど」

 

魔神柱、フォルネウスと共に吹き飛んだイアソンに手向ける様に言葉を紡ぐメディアリリィ。

その身体はすでに戦闘の負荷に耐えることが出来ず、粒子へと崩壊を始めていた。

裏切りの魔女と罵られてもなお、男の側に居続けた少女の結末がこれであった。

 

『立香くん!消滅する前に早く質問を!』

 

ロマンが立香を急かす。

バイタルチェックも兼ねている彼だから分かる事だが、オルガマリーのバイタルは乱れている。

神代の魔術師との魔術合戦、セイヴァーへの魔力供給。

彼女がいくら、一流の魔術師でもその負担は大きすぎた。彼女が立てているのは、プライドと人一倍大きな使命感のお陰だ。

 

「アナタもレフの仲間だったのか!?」

 

立香の言葉にメディアは、目を伏せ口を開く。

 

「……それを口にする自由を私は剥奪されています。

魔術師としての私は彼に敗北していますから」

 

『魔術師として王女メディアが敗北した……!?それはつまりーー』

 

「えぇ。どうか覚悟を決めておきなさい。

遠い時代の最新にして最後の魔術師たち、アナタたちでは彼に敵わない。魔術師ではあの方には絶対に及ばないのです」

 

消えゆく身体を必死に持たせながらメディアは語る。

次代に、今も生きる者達に自分では成し得なかった希望を託すために。

 

「だからー星を集めなさい。いくつもの輝く星を。

どんな人間の欲望にも、どんな人々の獣性にも負けない、嵐の中でさえ消えない、宙を照らす輝く星をー」

 

希望は託した。黒幕のヒントを。

自分が知り得る事を託し、メディアは満足そうにしかし、悲しげに消えた。

彼女が持っていた聖杯のみが残った。

 

「消滅確認。聖杯の回収も完了しました」

 

「…えぇ、戦闘も終了したわね。もうじき、特異点の修復が始まるでしょう。お疲れ、マシュ、立香」

 

セイヴァーに支えられる形でオルガマリーが立香達の場所に合流する。

そして、マシュの頭を撫でて、立香の胸に拳を当てる。今の彼女が出来る最大の賛美だ。

 

「しょ、所長!?」

 

マシュは恥ずかしさから頬を染める。

 

「所長こそ、お疲れ様です!」

 

少し慌てながら、何故か敬礼しながら返答する立香。

それを何やってんだ…という目線で見るセイヴァー。

 

「「ウォォォォーー!!」」

 

勝鬨を上げる海賊達。

それぞれが勝利を分かち合っている間にどんどんその数を減らしていく。英霊ではない、ただの人間である彼らの方が消滅が早いようだ。

 

「風が止んだ…この海はもうすぐ終わるね。でも、これは良い終わりだ、アタシたちの海が戻って来る!」

 

「おお、バンバン消えてくじゃねーかオレら!

じゃあな、あんたら!!オレらはいずれ、縛り首だがあんたらはまともな人間だ!

これに懲りたら海賊なんぞに関わるなよー!」

 

海賊達の中で一風変わった奴がカルデア組に手を振りながら消える。

 

「はーっ!やっとここから帰れるわ!

さぁ、行きましょうオリオン!愛の逃避行へ!」

 

「ここ別れのいいシーンだろ?ちょっとは良いとこ見せようかと思わないの?

ああもういいや、なんか疲れた。じゃあな、お前さんら!あ、マシュちゃんにオルガマリーちゃん、お別れのチューもが!?」

 

「……その口、閉じようか?」

 

セイヴァーが木片を指で弾きとばし、オリオンの口にはめ込む。

その目はハイライトがなく、恐怖しか与えない。

 

「ダーリン、逝くわよ?」

 

「もが!?もがもがもが!?」

 

喋れないせいで、アルテミスにアイアンクローされながら、消えて逝くオリオンとアルテミス。

全く、最後までネタ時空の様なペアだ。

 

「う?きえ、る?」

 

「そうね。アステリオス、私達の役割は終わった様よ」

 

エウリュアレとアステリオスは互いに海風に当たって消える時間を待っていた。

優しくもゆったりとした時間は一騎のアサシンによって崩される。

 

「それ」

 

「きゃ!?」

 

エウリュアレの髪を引っ張るステンノ。

気配遮断スキルの無駄遣いである。

 

「ふふっ、随分とその子が気に入ってるのね、(エウリュアレ)

(エウリュアレ)(ステンノ)の気配に気付けないなんて」

 

「なっ!?」

 

エウリュアレとステンノは同一の存在。

いくら、ステンノがアサシンクラスで呼ばれてるとはいえ、その気配遮断を見抜けないエウリュアレではないはずなのだ。

それでも気付けなかった。それは、アステリオスと共にいる事に気が緩んでいたからだろう。

顔を赤くして、ワナワナと震えるエウリュアレ。

 

「えうりゅあれ、さむい?」

 

その震えをあらぬ方向へ勘違いするアステリオス。

 

「あー、もう。全く、貴方は」

 

力が抜けていくエウリュアレ。

その口角は勝手に上がり、笑みを作っている。

 

「大丈夫よ。アステリオス、あら貴方もうかなり薄くなってるわね」

 

霊核の差だろうか。

エウリュアレより、早く消えそうなアステリオス。

 

「ほんとだ、わかれは、かなしい」

 

「…ここまで付き合って私を守ってくれた褒美をあげるわ。ほら、なんでも良いのよ?」

 

エウリュアレの言葉にう?と首を傾げるアステリオス。

そして、しばらくして首を横に振る。

 

「ぼくは、もう、じゅうぶん、えうりゅあれから、もらった。

たのしい、おもいでも、ぼくがかいぶつのときには、よばれなかった、なまえもよんでくれた」

 

心底から嬉しそうに笑うアステリオス。

彼にとってエウリュアレから貰った楽しいひと時は何もにも変わらない大切な『宝物』なのだ。

だから、今更褒美なんて必要ない。

 

「ぼくは、えうりゅあれが、だいすき、だ!」

 

むしろ、貰ってばかりだと思っているアステリオス。

だから今の自分が出来る精一杯の礼をして、消えていった。

 

「大好き、だそうよ?(エウリュアレ)

 

「……改めて言われなくても分かってるわよ」

 

ステンノ追い打ちに、しゃがみこむエウリュアレ。

顔を隠してはいるが、耳は赤い。

 

「もっと弄ってたいけど時間が足りなそうね」

 

「……ほんと、(ステンノ)って悪趣味ね」

 

同じ存在なのだから、エウリュアレにもステンノの側面はあるのだから、盛大なブーメラン発言である。

 

「散々言われて慣れてると思うのだけれど」

 

「そうね。でも、きっと違うのよ。これはきっと、そういうのじゃないのよ」

 

「そう?」

 

「そうよ」

 

顔を見合わせて笑うエウリュアレとステンノ。

久しぶりに会えた姉妹。少しばかりの歓談をする。

エウリュアレは、アステリオスに関する話を。ステンノは、カルデアに関しての事を。

 

「…今度は駄メデューサも一緒に旅をしてみたいものね」

 

エウリュアレが最後に零す。

 

「そうね。うちのマスターに期待しましょう」

 

「「またね、(ステンノ)/(エウリュアレ)

 

海風が吹くと同時にエウリュアレは消えていた。

 

「…何故だろうな。私も戦っていた筈なのだが、全然記憶にない気がする」

 

「メタいですよ。アタランテさん……あれ?オレはなんでこんな事言ったんだ?」

 

あまりのぼやきに思わず突っ込んでしまう立香。

 

「む?……まぁいい。また、私を呼んでくれ。力を見せてやろう」

 

「はい。お願いします。アタランテさん」

 

アタランテが消える。

 

「や、僕もこれで失礼するよ」

 

ダビデが手を上げながら立香達の前に現れる。

その後、魔神柱を巡る話を繰り広げる。

 

『七十二柱の魔神は召喚術の始まりにして頂点だ!

それがあんな醜悪な怪物であるはずがない!だって、ソロモン王だぞ!?』

 

ソロモン王と大ファンであるロマニが珍しく、声を荒げながら力説する。

かなりの思入れがあるようだ。

 

『全能の指輪を所持し、エルサレムの神殿を作り、イスラエルを最も繁栄させた王なんだよ!?

そんな人物が……人類を滅ぼす事を企んだりするもんか!』

 

「んー、ソロモンはそういうコトするよ?

あいつ、基本的に残酷で悪趣味でろくでなしだから」

 

そんなロマニの勢いを華麗に受け流し、サラッと実の息子に対して雑な言葉を並べるダビデ。

 

『そんな、ひどい!もう何も信じられないっ!』

 

「ハハハ。ごめんごめん。僕はソロモンとはあまり関わってなかったからね。

まぁでも、あいつは愚か者だったけど、正直者だった」

 

少しばかり、立香達の中での人物像が変わる。

 

「それじゃ僕はここで。後は君たちに任せるけど、何かあったら呼んでくれ」

 

手を振りながら消えるダビデ。

 

『………はぁ。結局、魔神についてはまだ確定情報は出ないのか』

 

「分からなくても私達のやる事は変わらないわ……」

 

『そうだけど……』

 

ロマニは口を閉じる。

 

「では、カルデアを代表しまして……ドレイク船長貴女に礼を。

今回、貴女の助けがなければ私達は何も出来ませんでした」

 

セイヴァーの助けも借りず、頭を下げるオルガマリー。

心配そうに側で立っているセイヴァーにドレイクは笑いそうになるが、真剣な顔つきを維持して答える。

 

「いいってことさね。結局、アタシは大した事は出来なかったしさ。

サーヴァントってやつになってたら、もうちょい色々出来たんだがねぇ……まっ、無理な注文だな。

アタシみたいな海賊が英雄扱いされる筈もないさ」

 

「船長は立派な英雄ですよ」

 

立香の言葉に、一瞬顔を赤らめるドレイク船長。

 

「星の開拓者として貴女は英雄になれるでしょう。でも、その粗野な態度は私、気に入りませんけど」

 

「ハッハハッ!あんたらとの記憶が無くなるのは残念だが、楽しめたから良いとしよう。

これほど、面白可笑しい旅は初めてだったからさ」

 

豪快に笑っていたドレイクの表情がまじめな顔に変わる。

どうやら別れの時間が来たようだ。

 

「さ。行きな。

海の人間にとっちゃ、別れはいつだって唐突だ。砲弾で吹っ飛ばされて、海にかっさわられて、挙句に行き先を見失って死んでいく。

だから、アタシ達は、そんな恐怖をいつだって笑って誤魔化すのさ」

 

笑みを浮かべるドレイク。

 

「えぇ。さようなら、私には出来ない自由な生き方の蛮族さん」

 

最後になってもドレイクに対する感情は良くなっていない。

だが、その生き方には尊敬の念がある。自分には縁のない生き方だと理解しているが。

 

「船長、ありがとうございます。約束、守れなくてすみません」

 

「ハハッ、良いって言っただろう!」

 

礼を述べながら、約束が守れなかった事に対する謝罪をする立香。

その背中をバシバシと叩くドレイク船長。

 

「はい、さようなら。自由の海を渡り歩く船長。

私の望みを報告したかったのですが……まだ、自覚できていないようです」

 

「そうさな。でも、願いを持たない人間はいない。

あんたの願いはきっと、最後に分かるさ。だから、それまで精一杯生きるんだ」

 

カルデア組の帰還が始まる。

少ない時間を使い切ったようだ。

 

「時代を救った報酬は、そうだねぇーーアンタらの旅の終わりにアタシとの旅は楽しかったって、思い出してくれればそれでいいさ!」

 

ドレイクの笑顔とともにカルデア組は帰還する。

オケアノスの海に残ったドレイクを晴天の青空が見送った。

 

 

 

 

 

 

「ますたぁ!」

 

「うおっ!?」

 

帰還した瞬間に、カルデアに再召喚された清姫がセイヴァーに抱き着く。

セイヴァーもびっくりしつつも、清姫をしっかり支える。

 

「ーー帰還お待ちしておりました」

 

「…あぁ。ただいま、清姫」

 

一安心した様子のセイヴァーと清姫。

実はこの二騎サーヴァントがマスターをしているという、異例中の異例。カルデアの再召喚もちゃんと行われるか不安だったのだ。

ドサっと言う音に振り向くセイヴァー。

 

「マスター!?」

 

慌てて駆け寄るセイヴァー。

典型的な魔力不足と精神的疲労の蓄積。それを理解したセイヴァーは、オルガマリーを抱き上げる。

 

「清姫」

 

「大丈夫ですよ。簡単な栄養食でも作っておきますね」

 

「ありがとう」

 

オルガマリーの自室まで運び、身体を横にさせる。

机の上には、何かしらの書類。どうやら、作戦前の疲労もあるようだ。

 

「無理はなさらないでくださいマスター。それと、お疲れ様です。

今回も貴女のお陰で俺は戦えました」

 

セイヴァーはオルガマリーを心配しながら、頭を撫でる。

部屋が暗いのと、セイヴァーの注意力が散漫になってるから気づくことはなかった。

ーーオルガマリーの耳が真っ赤になってる事にーー

 

 

オケアノス編完結

 




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