願いを込めて   作:マスターBT

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チュチュン、遅くなりまちたでち。
紅閻魔ちゃんにハマっているマスターBTです。


幕間の物語 オルガマリーとセイヴァーとロマニ

カンッカンッと、人の少ないカルデアに通路を歩く足音が響く。

本来なら、カルデアはもっとこんな音が響いていたはずである。そう考えた足音の主、オルガマリーは立ち止まる。

 

「……レフの裏切りにもっと早く気づいていたら…」

 

IFを考えてもしかたない。そうは思っても、組織のトップとして時間があれば考えてしまう。

だから、彼女は自分の疲労が溜まっても、仕事に身を置いていたのだ。

仕事に追われていれば、考えずに済む。

一種の逃げではあるが、それを責める事が出来る人物はいない。だから、彼女は頭を振り再び歩き出す。

 

「……マリー」

 

「全く、心配なら声をかければ良いだろうに。だから、ヘタレと言われるんだロマン」

 

「うわっ!?」

 

オルガマリーを心配する様に曲がり角から、覗いていたロマンに声をかけるセイヴァー。

霊体化していた彼に気付けるわけもなく、情けない声を上げる。

 

「なにしてるの?」

 

ロマンの声はオルガマリーに聞こえており、振り返る。

当然、ロマンは固まる。その背を物理的に押すセイヴァー。

 

「うおっ」

 

「マスター。なにやら、不審なストーカーを見つけましたので、声をかけた次第です」

 

「ちょ!?セイヴァー、なに言ってるの!?」

 

にやりと笑みを浮かべるセイヴァー。

呆れる様な感じで頭に手を振れるオルガマリー。そのまま、ため息を吐きロマンを見る。

その視線は露骨になにか残念なものを見るようだ。

 

「僕にそんな趣味はないんだけどなぁ~…」

 

「ストーカーに向ける温情はないわ。で、私になにか用事かしら?」

 

「…マリー、あまり無理はしないでくれ」

 

「……」

 

ロマンの真剣な顔に黙ってしまうオルガマリー。

 

「君が所長として、責任を背負っているのは分かってる。

でも、マリスビリーを知ってる僕からすれば、今の君は痛々しいよ。最も、今の君にしてしまったのは僕にも責任はある」

 

前所長、マリスビリーの死からオルガマリーはよく言えば、全力で働いた。

悪く言えば、自分を殺しレフに依存しなければ、生きていけなくなった。今もなお、彼女は彼女自身の足で立ちきれていない。

そこまで、オルガマリーがボロボロになってしまったのは、カルデアに所属していたロマン達、職員にも原因はある。そうロマンは言いたいのだ。

もし、彼女が昔のままであれば、ロマンは何も言わなかったかもしれない。

セイヴァーが召喚され、オルガマリーにとっての負い目が一つ消え、少しずつ余裕が生まれ、本来のオルガマリーとしての顔が見れたから、その事実に気付けた。

 

「…えぇ、確かに私は無理をしていたのかもしれない。

だけど、それがなに?貴方に心配されることじゃないわ」

 

「全く、そういうところは変わらないね。

ここは魔境の時計塔じゃないんだ。だから、もっと肩の力を抜くんべきだと思うよ。セイヴァーだってそうだろう?」

 

ロマンの後ろに立っているセイヴァーに話を振る。

目を閉じて話を聞いていたセイヴァーは目を開き、オルガマリーを見る。

 

「俺はマスターの選択を尊重します。貴女が無理をすると言うのなら、貴女が死なない様にその無理に付き合います。外敵を殺すことも俺は出来ます。ですが、貴女が貴女を追い込む行為だけは俺にどうすることも出来ません」

 

オルガマリーを一番に動くセイヴァーが出来る事は主に外敵への対処。

彼女を尊重するからこそ、彼女自身の行為は止めきれない。

 

「…貴方だって無茶をするわ」

 

「俺はサーヴァントですから」

 

「……貴方だって、自分をよく追い込むわ」

 

「俺はこれしか知りませんでしたから」

 

「私は貴方の隣には立てないの?」

 

マスターとサーヴァントの在り方としては、あまり褒められたものではない事を言うオルガマリー。

英霊が感情も意思もあるとはいえ、基本は使い魔。

セイヴァーにマスターへの反乱を起こすという考えはないが、令呪で自害を命じれば逆らえない。契約した時点で対等ではない。

 

「……」

 

セイヴァーは何も言わない。ただ、黙ってオルガマリーを見るだけだ。

彼はオルガマリーを下に見ているわけではない。だが、対等とは見れてない。

自分の主人として、また自分の願いを叶えるため、セイヴァーはオルガマリーの影で良いと思っている。

その悲しいまでの献身と、自己の欲のなさ。この在り方をセイヴァーは変えられない。

 

「…もぅ、二人揃って本当に面倒くさいなぁ。ほら、もっと気を楽にしようよ」

 

セイヴァーとオルガマリーの空気が少し悪くなったのを察したロマンが話に割り込む。

 

「セイヴァー。君はもう少し優しい物言いをするんだ。マリーの心がガラスで出来てるぐらいは知ってるだろうに。

マリーもだ。セイヴァーの在り方はマスターとして君が一番、よく知ってるだろう。あまり、意地悪な質問はするんじゃないよ」

 

ほにゃっとした笑顔を浮かべるロマンにセイヴァーもオルガマリーも力が抜けていく。

 

「セイヴァーだってマリーが心配じゃない訳じゃないんだろう?」

 

「…そうですね。

心配です、無理をして倒れてしまわないか、身体を壊してしまわないか、精神を壊してしまわないか、色々と心配ですよ」

 

「ほら、そうやって素直に言えばいいんだよ」

 

ロマンの言葉と素直じゃないなぁっという視線から逃れるように顔を逸らすセイヴァー。

普段はセイヴァーに軍配が上がるが、ここではロマンに軍配が上がったようだ。

 

「さてと、マリー。珍しくセイヴァーが素直な事を言ったんだ。

マスターとして何か言うことはないのかな?」

 

「……分かったわ。無理はしない。

でも、私にも譲れないものがある。だから!」

 

オルガマリーが一歩前に踏み出し、セイヴァーとの距離を詰める。

セイヴァーは驚きながらも、目線を逸らさない。

 

「貴方も無理はしないで。いいえ、無理はしても良いわ。

でも、ちゃんと私の元に戻ってきて」

 

「……了解です。マスター、貴女との契約がある限り、俺は例え、数万の軍勢が相手でも貴女の元に戻ると誓いましょう」

 

「うんうん。丸く収まって良かったよ」

 

拍手をしながら頷くロマン。

彼を見るオルガマリーとセイヴァーの視線がどんどん冷えていく。

 

「な、なんだい…」

 

「「いや、なんだか自分のお陰で上手くいったって感じが腹立つ」」

 

「二人揃って酷いなぁ!?」

 

あまりの物言いに声を荒げるロマン。

オルガマリーはそれを見て、楽しげに笑みを浮かべ、セイヴァーも表情にはあまり出ないものの、その雰囲気は柔らかくなっている。

ロマニ・アーキマン。

彼はカルデアの職員として、確かに高い技能を持っているし人並み以上の才を持っている。

だけど、彼が最も優れているのは、その底抜けな優しさだ。

 

「セイヴァー、ロマンを捕まえなさい」

 

「了解」

 

「ちょ……なんでぇ!?」

 

とは言え、オルガマリーに命じられたセイヴァーに捕まり、二人から擽られたり頬を引っ張られたりする姿はなんともまぁ、情けなかった。

 

「ふ、ふひゃりとも……やめっやめてぇ〜」

 

ロマンの情けない悲鳴がカルデアに木霊した。

 




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