ごめんなさい!!(全力土下座)
「…藤丸立香、この特異点はお前が解決しろ」
オルガマリーを支えたまま、セイヴァーが口を開く。
その表情は、何かを悔やむような苛立ちを抱えている。
「なっ!?セイヴァー私は…」
「マスターの指示でもそれは聞けません。人理修復は大事ですが、俺はそんな事より貴女が大切なのです」
手でオルガマリーの口を塞ぐセイヴァー。
僅かでも良いから霧の侵入を防ぎたいようだ。モゴモゴと声にならない声を上げるオルガマリー。
「…オレがやるのか。分かった、とりあえず所長とセイヴァーあと、清姫は霧の影響を受けない所を見つけたら、そこで待機。
オレとオレのサーヴァント達で今回はやってみるよ」
不安という感情を押し込んで、笑みを浮かべ任せろという立香。
立香も対策は練っていた。だが、実際に彼らが動けないとなるとやはり不安はあるようだ。異常な状況に身を置いてるとは言え、彼は一般人。平凡なその身で受ける重圧は計り知れない。
『建物に相当数の生体反応を確認してる。この霧だから、生き残ったロンドン市民も外に出れないんだろうね』
「一刻も早く解決しなくちゃ」
「…はい。そうですね先輩、私達が聖杯を入手・破壊すればこの異常なロンドンの存在そのものが修正されます。
ですから、きっとこの霧で命を落としたはずの市民も、屋内で霧から逃れている市民のどちらも、すべて魔力の霧に関わる事象は完全に消えるでしょう。被害させ存在しない事になります。ですから…その…」
言葉につまり、もじもじするマシュ。
それを立香は疑問符を浮かべながら、他のサーヴァント達はニヤニヤしながら見ている。
「……」
オルガマリーはマシュの言葉に表情を暗くしたが、その事実に気づく人はいない。
ロマニの通信が入る直前に、セイヴァーが動いた。
「話はそこまでだ」
「この霧の中、よく気づいたな…」
ガチャリと金属音を響かせ、現れた金髪の鎧を纏った女性。
セイヴァーの言葉に剣を構える。それを見たセイヴァーは両手を上に上げ、女性と目を見る。
「俺たちはお前の敵じゃない。見ての通り、この霧でやられてる人がいる。
霧の無い安全圏に案内をして欲しい」
「…なんでオレの敵じゃないと言い切れる?」
「悪いが問答をする余裕はない。そちらの疑問は最もだ、だがこちらも急を要する。
………話を続けて、なんの罪もない人間が死んでも良いと言うのなら、話は別だが」
セイヴァーの言葉に、表情を不機嫌なものにしつつも、剣をしまう女性。
チッと舌打ちも聞こえる事から、苛立っているのだろう。
「分かった。連れてく、だが余計な動きを見せたら叩っ斬るからな!」
「ありがとう。礼はいずれすると約束する」
「……たくっ、なんだこいつ。調子狂うな、こっちだ来い」
背を向け、女性が歩き出す。
その歩みは遅めであり、この濃い霧の中でも見失う事は早々ないだろう。
「マスター、行きますよ?」
「えぇ。でも、あの騎士を信用しても大丈夫なの?」
「敵なら手を挙げ無防備な俺を斬っても良かったはず。奸計を巡らすのなら、俺との話を自分からは打ち切らないはず。
そして何より、こちらに命が危ない者がいると分かったからのあの反応。敵ではないと言えるでしょう」
「……貴方がそう判断するなら任せるわ」
少し苦しそうに笑顔を浮かべるオルガマリー。
霧による侵蝕を受けているのだろう。そんなマスターの前で、背を向けしゃがむセイヴァー。
「動くのも辛いでしょう。背負って行きます」
「お願いしますねセイヴァー」
弱ってるからだろう。いつもなら照れたりするオルガマリーも素直に、セイヴァーの背に体重を預ける。
いつもの無表情で淡々とセイヴァーは立ち上がる。
セイヴァーは考える。確かにこの霧は、ただの人間にはキツイ。だが、魔術師であるオルガマリーになぜここまで影響を及ぼしているのだろうか。
特異点にはなっているが、比較的近代のロンドン。神代の領域ではない、ただ魔力が濃い場所であればここまで弱るとは考えられない。
「……そうか。そういうことか!」
セイヴァーが気づくが早いか、その背後に白髪の子供が現れる。
その手にはナイフが握られている。
「忘れていたよ…此処には君が居た事を」
背中に背負っているオルガマリーに聞こえないように、小さく呟き飛び退く。
オルガマリーに被害が出ないように最小限で避けたが、それでも負担はあったようで背中で苦しそうな声を出す。
「へぇ、よく避けたね。でもー!」
両手が塞がっているセイヴァーを狙うべく、背を丸め地面を蹴ろうとした少女。
その目の前を赤い雷が通過し、霧の中へと姿を消す。
「あー、もぅ。邪魔しないでよ」
「ハッ、黙れ。アサシン風情が」
先導してくれていた女性が兜を被り、アサシンと称した英霊の邪魔をする。
立香達も臨戦体勢になり、周囲を警戒する。すると、その気配を察知したのか残念そうな声が霧の中から聞こえてくる。
「この人数は流石に嫌だなぁ…まっ、いっか。今度会ったら容赦なく解体するね」
「…気配とともに足音が遠ざかっていった。恐らく撤退したのだろう」
この中で耳が最も優れているアタランテが言う。
「マスター、黒のアサシン…いや、ジャック・ザ・リッパーは私に任せてくれ」
言うや否や単独行動のスキルを活かし、マスターである立香から離れていくアタランテ。
立香の制止は、全く聞こえていなかった。
「アタランテ…」
「ほっとけ。やりたい事があるやつにはやらせた方が良い。それより、とっとと行くぞ。
僅かとはいえ、戦闘した。他の余計な連中が来るかもしれないしな」
再び女性が歩き出す。その顔はなにかを考えているようだったが、初めて会う彼女の考えが読み取れるほど、立香は読心術に長けていない。
セイヴァーはアタランテが走って行った方向をしばらく見た後、再び歩き出す。
今度は余計な邪魔もなく、とある建物に到着する。
『ん?これは運が良いね。ちょうどそこが霊脈のある場所だよ』
ロマニの通信が入る。
魔力の宿った霧で探知がしづらい筈だが、ここまで近づけば流石に分かるのだろう。
女性はズカズカと建物に入って行く。そのまま、豪快に扉を開け部屋に入る。
「うわっ……びっくりしたもう戻ってきたの……って訳じゃなさそうだね。そちらの人達は?」
「情報とかはそっちで勝手にやってくれ。オレは見回りの続きをしてくる」
「あ、ちょっと……全く勝手なんだから。……まずはそちらの女性を寝かせよう。そこのソファを使って良いよ」
「ありがとう」
セイヴァーが部屋を出て行く女性とすれ違いに部屋へと入り、中にいた眼鏡をかけた男性の指示に従い、ソファにオルガマリーを寝かせる。
そのまま、簡単な治癒魔術の行使に移る。
「彼女が連れてきたって事で信用するけど、僕はヘンリー・ジキル。君たちは?」
柔和な笑顔を見せ、名乗るジキル。
その笑顔に安心しながら、立香達はこの特異点の情報をジキルから聞き出すのであった。
オルガマリーとセイヴァーが自由に動けないこの特異点で、立香が立ち向かうために。
ジャックちゃんとアタランテの絡みは、書きたいのです。
でも、それ以外の状況がこの特異点ものすごくややこしい……
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