願いを込めて   作:マスターBT

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サブタイ通りに悪役達に焦点を置きつつ、後半は私の趣味です


ロンドンで蠢く悪意達

もし、貴方が誰かを救いたいと思っていたとしよう。

だけど、その人物は決して救われない。まるで、世界がそう定めた様に。すでに完結した物語の中の、登場人物の様に。

その人物が死ぬ事が正道であり、選ばれた過程なのだとしたらそれを覆すのに、どれだけの力が必要になるのだろうか。

人の結末なんて定められたものではない?そんな言葉は出鱈目だ。仮にそうであったとしても、選択の余地なく死んだ者にそんな事は分からない。

奪われる時はあっさりと、簡単に奪われる。そこに、本人の選択なんてものは絡んでこない。

運が悪かった?間が悪かった?そんな言葉が生まれる時点で、論外だ。死ぬ奴は死んで、生き残る奴は生き残る。

 

「世界ってのは残酷だってのに。よくもまぁ、抗う気になるよね、セイヴァーの俺は」

 

だから、いっそ全てを諦めて世界なんて枠組みを壊してしまえばいい。

こんな世界を救う救世主の気が知れない。こんな、残酷で救いのない世界は作り変えてしまえ。今だけはアイツの考えも理解できる。

 

「…何をボソボソと喋ってるんだお前は」

 

「おっと、ごめんよマスター。いやぁ、霧に覆われたロンドンっのても中々に良くてね」

 

「拠点以外ではそう呼ぶなと告げた筈だぞ」

 

そう言って気難しい顔を更に歪めて、注意してくる我がマスター。

やれやれ、仕方ない。サーヴァントはサーヴァントらしくマスターに従いますかね。別に、呼び方でマスター殺しなんてする気ないし。

 

「へいへい。ゾォルケン、これで良いんだろ?」

 

「あぁ。そろそろ、Pとの会合だ。行くぞ、アヴェンジャー」

 

「俺をそう呼んでたら結局、意味ないと思うんだがねぇ…」

 

まっ、なんでもいいか。

アイツに正体がバレない様に、真名を教えてない俺の責任だしね。大業成就の為に、色々やってるから一応、味方の俺を放置してくれてるから、良いけど。真名バレたら流石にね。全力で殺してくる未来が見える。

 

「……せめて、カルデアを滅ぼしてくれるまでは味方でいてくれないと、俺の目的が果たせないし」

 

別に目的が果たせないならそれはそれで、次の機会を待つだけなんだけど。

俺、セイヴァーのやつがいないと中々呼ばれないんだよな。それにこの案件じゃないと無理だし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…悪巧みするのは結構だけど話が長いんだよなぁ」

 

マスターとPはそれぞれの意見の擦り合わせの為に、話し合いをしている。まぁ、時々おべっかを混ぜてる所為で話が長いんだけど。

その辺の難しい話に興味は全くない。生前の経験と、英霊としての勘から策なんて用意したところで、イレギュラーに破られると分かっている。

事前に打ち合わせをしたって、敵が予想外に宝具を撃ってきて、自陣が壊滅した。なんて、よくあることだろこの世界。

 

「ま、と言うわけだ。ここを通すわけにはいかないよ」

 

周囲にはバラバラになったPの作ったホムンクルスの山。

魔力の反応に釣られて来てみたけど、いやぁこれはめんどくさそうだ。まさか、カルデアのメンツが揃ってるとは。

彼女とセイヴァーが居ないのが救いかね。

 

「あぁ?邪魔すんなよ、お前の相手をしてるほど暇じゃねぇんだ、こっちは!!」

 

モードレッドが赤雷を纏って斬りかかってくる。

おぉ、怖い怖い。

怖いから俺は、霊核にダメージが入らない様に、致命傷を避けモードレッドの一撃を受けた。

そして、そのまま後ろへと倒れる。

 

「はっ、なんなのこいつ。偉そうに出てきた割には一撃で終わりじゃない」

 

「…ちょっと黙ってろ。聖女擬き」

 

「はぁ!?私をあいつと一緒にしないでちょうだい!」

 

「あーもう、うるせぇなぁ!こいつはまだ、死んでねぇ。おい、なに死んだふりしてやがる」

 

げっ、バレてーら。

んだよ、油断して近づいて来てくれれば簡単に、一騎は殺せたんだけど。まぁ、良いか。

 

「死ぬほど痛い攻撃どーも」

 

「ヘラヘラと薄気味の悪いやつだな。おい、坊主。こいつはとっとと片付けた方が良いぞ。

魔力を回してくれ。宝具で決めてやる」

 

「おいおい、こっちは何もしてないよ?まぁ、そっちがその気なら仕方ない。

クー・フーリンを斬れ。モードレッド」

 

傷口を押さえながら立ち上がり、全身に魔力を流す。

ほんと、この宝具条件がめんどくさいし、大して強力じゃないんだよな。まぁ、それだけ俺の人生が薄っぺらで意味のないものだったんだろうけど。

自虐をしているうちに、目の前の光景は面白い事になっている。モードレッドがその剣を俺ではなくクー・フーリンへと向けている。

両者の顔は驚愕に染まっており、クー・フーリンは剣を振るうモードレッドから避ける事に専念している。

 

「ふぅ。さて、大人しく引き返すかしてくれるなら、このまま何事もなかった事にしてあげるよ」

 

『ちょ、ちょっと待ってくれ!!余りの事に言葉を失ってたけど、立香君。君の眼の前にいるのは、セイヴァーかい!?

霊基情報がほとんど同じなんだよ』

 

「やっぱり……似てると思ったけど。君は…」

 

「おいおい、腹立たしい勘違いを起こさないでくれよ。俺はあんな救世主様じゃあないぜ?

真名は教えてやらないけど、まぁこうして姿を見せている以上クラスぐらいは教えてあげよう。俺はアヴェンジャー。

復讐者のサーヴァントだ。まっ、どうせお前らに呼ばれる事は無いから、覚えなくても良いよ」

 

腕を大きく広げ、劇場の団員の様に派手に名乗りをあげる俺。

いやぁ、スッキリするもんだ。シェイクスピアの様にはいかないけど、本職と比べちゃいけないって俺は学んだ。

というか文系理系特化サーヴァントは、大抵ろくでなしだからね。

 

 

 

 

 

一方その頃。

アヴェンジャーというサーヴァントが召喚されている事を知らないセイヴァーは、霊薬作りの手伝いを終え、一休みしていた。

休むと言ってもマスターであるオルガマリーの治癒行為は続け、かつこの拠点が襲われぬ様に結界を作成するための準備に入っている。

これを休むと捉えるかはわからないが。

 

「やはりそろそろ、自前の魔力じゃキツイな。マナプリズムも無限ではない」

 

魔術道具を作りながら、砕け散ったマナプリズムを見る。

セイヴァーが召喚された時に自前で持ってきた物なのだが、どうやら宝具として認識されているらしく数に限りがある。

 

『ますたぁ、アタランテさんがジャックさんと、戦闘を始めました。どうします?』

 

清姫からの念話に僅かにため息が溢れる。

知っていたが、子供の事になると落ち着きがないなと思うセイヴァー。

 

「しばらく様子見を頼む。彼女がジャックを懐柔出来れば良し。無理なら、アタランテを撤退させてくれ」

 

『構いませんが…ますたぁ、ジャックさんを懐柔出来なければどうするおつもりですか?』

 

「……俺が殺す。彼女の宝具はマスターに有害だ。

魔霧は今、作っている霊薬と礼装で無効化出来るが、宝具を防ぐほどの性能はない」

 

セイヴァーという英霊は、オルガマリーに一番の重きを置いているが、救えるものは救いたいと思っている。

カルデアやオルレアンでの行動が主にそれを表している。

だが、同時に救えずその存在がオルガマリーに害を成すというのなら、殺す覚悟も備わっている。

 

『…分かりました。話は変わりますが、ますたぁ。この特異点を解決したら、何か食べたい物はありますか?』

 

急な質問にセイヴァーは首を傾げるが、ただの見張りは暇なのだろうと思い質問に対する答えを考える。

 

「そうだな……なんでも良いぞ。清姫が作る料理は美味いから」

 

だが、これといって思い浮かばなかった。

きっとどんなに難しい料理でも、手間がかかる料理でも、簡単すぎる料理でも清姫は喜んで作ってくれる。

そんな確信が彼の中であるから、特に思い浮かばなかった。だって、彼女の料理は美味いのだから。

 

『ッッ……もぅ、褒めてもなにも出ませんよますたぁ?

でも、そうですね。貴方がそう言うのなら腕によりをかけて誠心誠意作らせて貰いますね。だから、背負いすぎないで下さいまし』

 

そう言って清姫との念話が途切れる。

全く、してやられたと思うセイヴァー。清姫はセイヴァーの内側に燻る苦悶を見抜いていた。

今は敵でも、セイヴァーの記憶の中には味方であったジャックが色濃く残されている。だから、殺すと宣言した時、手が僅かに震えていた。

 

「…んっ……セイヴァー?」

 

「ッッ、マスター!」

 

眠っていたオルガマリーが目を覚ます。

目を開けたばかりで、中々揃わない焦点をセイヴァーに合わせるオルガマリー。漸く見えた表情は、彼女の予想通り安堵に満ちた表情だった。ただ、それ故に夢の光景がオルガマリーの脳内にチラつく。

 

「身体に不審点はありませんか?」

 

「え、えぇ。大丈夫です。此処は?」

 

キョロキョロと辺りを見渡すオルガマリー。

その様子を見て、此処に至るまでの説明をするセイヴァー。

 

「なるほど……とりあえずカルデアに戻ったら、立香の身体を調べてみる事にして。

セイヴァー、一体何を作っているの?」

 

オルガマリーの視線がセイヴァーの手元へ行く。

そこには、紙に包まれた薬のような物と、首飾りの様な物があった。片方は、ジキルと共に作った霊薬。

もう片方はセイヴァーが作った対魔霧用の礼装である。

 

「こちらは、霊薬です。一つで1日ほどこの魔霧が薄いところであれば活動できます。

しかし、あまりにも濃すぎる場所だと保って三時間ですのでこちらの礼装を作りました。俺の宝具であるマナプリズムを数個ほど組み合わせ、空気中の魔力を吸収する事が出来ます。先ほどの霊薬とは別で、こちらは濃い場所でなければ使えませんので、基本的にはこの二つを組み合わせて使って貰えればと……マスター?」

 

説明が終わり、オルガマリーを見ると難しい顔をしていたので声をかけるセイヴァー。

その声にハッとした様に瞬きを数回し、微笑むオルガマリー。

 

「凄いのねセイヴァー。やっぱり、特殊クラスだと色々出来るのかしら」

 

「…英霊にも得意不得意はありますし、そのクラスじゃなくても真似事なら出来ることもありましょう」

 

「そういう事にしておきましょうか」

 

目を逸らしたセイヴァーに優しく笑うオルガマリー。

夢の事は気になるし、彼女の脳裏には色濃く残っているが彼女はそれを尋ねる気は無い様だ。

元よりセイヴァーが話してくれるまで待つと決めているため、彼女は愚直に己のサーヴァントを信じる。

 

『ますたぁ、アタランテさんとジャックさんが双方撤退。いかがなさいます?』

 

「…マスター、我々も動きましょう。ちょうど単独行動中のアタランテがいる様です。そちらに合流しましょう」

 

「分かりました。ではさっそく」

 

薬をセイヴァーが持ってきた水で流し込み、首飾りを身につけるオルガマリー。

首飾りを身につける時に少しだけ嬉しそうにしていたのは、カルデアの観測班だけの秘密である。

 

 




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