願いを込めて   作:マスターBT

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大変お待たせしました!!


VSジャック・ザ・リッパー

「…ってのが私が知ってる奴らの計画さ。これ以上は直接聞かないと分からないな」

 

 連れ戻ったヴィクター・フランケンシュタインの報告を纏めると以下の様になる。

 ・計画の主導者は3名。それぞれを『P』『B』『M』と呼称。

 ・人智を超えた魔術を行使する為、恐らく英霊。

 ・目的は魔霧を用いたブリテンの破壊、それによる人理崩壊を起こす。

 ・鍵となる英霊は未召喚。

 

「…ウー」

 

「なんだその微妙みたいな雰囲気は!俺が全力で命を賭けた情報だぞ。お前みたいに寝てた奴にそんな態度取られてもイタタタッ!」

 

「ウー!ゥゥ!」

 

「その寝かせてた奴は誰だってよ。はっ、確かにな」

 

 頬をつねられたヴィクターと主犯のフラン。仲良くやれている様で何よりだが、ヴィクターの頭部はフランの握力にいつか潰されるんじゃないだろうか。そんな事を考えながらセイヴァーは窓から外の様子を眺めていた。

 そんな彼に近づくサーヴァントが一騎。緑の髪に尻尾が特徴的なアーチャー、アタランテだ。

 

「セイヴァー、今良いか?」

 

「…ん、なんだ?」

 

 彼がアタランテを見ると彼女は暫く周囲を見た後に口を開く。

 

「ここでは話しづらい。屋根上でも良いか?」

 

「……見張りも兼ねて話を聞こう」

 

『マスター、少々アタランテと共に部屋を後にします。念話で内容は教えますので』

 

 セイヴァーの念話を受け、オルガマリーは彼にしか見えない角度で小さく頷く。それを視界の端で確認し聴覚を共有しながらセイヴァーは霊体化。

 それに続くようアタランテが霊体化し屋根上へと移動する。相変わらず魔霧が濃く、魔力感知もし辛いがこの状況なら魔術的な盗聴もされない。秘密の会話をするには向いていた。

 

「それでわざわざなんだ?」

 

「…ジャック・ザ・リッパーという英霊を知っているだろう。清姫のマスターは汝だ。。

彼女が独断で汝の側を離れるとは思えん。答えろ、何故私と彼女の因縁を知っている?」

 

 弓を構えないのはまだ仲間と思ってくれている証拠だろうか。しかし向けられる殺気は本物だ。

 それに対しセイヴァーは、困ったように眉を眉をひそめながら口を開く。

 

「悪いがただの直感だ。君と彼女の因縁なんて知らないとも。言っていなかったか?

 召喚が少々特例だった為に記憶が混濁してるんだ」

 

 清姫すら錯覚する嘘をつける男の言葉だ。アタランテは少し不思議そうにしながらもその言葉を受け入れた。

 

(すまないなアタランテ。まだ、俺の正体がバレる訳にはいかないんだ。この特異点には奴が来るから)

 

 その姿を見ながら真顔のまま内心で謝罪するセイヴァー。

 

「…そうか。それは失礼な事を聞いた。

 だが、それなら私を手伝って欲しい。私は今度こそ、あの子を救いたいんだ…」

 

「あのジャック・ザ・リッパーは既に殺しを行なっている。それにこの特異点が修復されればいずれ消えるぞ。

 それでも君はあの子を救うと?聖杯に呼ばれ、マスターを持たないはぐれサーヴァントが彼女だ。本能に逆らう事は出来まい。君はキャスタークラスのサーヴァントでもなければ魔術に理解が深い訳でもないからマスターになる事も出来ない。救いたいと思うのは勝手だが、俺たちの目的は人理修復。それを忘れられては困る」

 

 ジャック・ザ・リッパーは母に焦がれる子供達の魂。その集合体となった英霊。名の通り連続殺人鬼としての特性が付与されており、無作為に女性を襲い殺害する。さらにはぐれサーヴァントである為に魔力を確保する為に魂食いを行なっているこの特異点においては明らかに悪と呼べる側の存在だ。

 今のセイヴァーにはあの子を救うメリットを見出せない。むしろ、マスターであるオルガマリーの為に迅速に排除したいと考えている。

 

「……僅かの可能性でも良い。私を信じてくれ、必ず説得してみせる」

 

「……はぁ、何を言っても聞く気はないか。説得すると言うのなら俺もついて行く。だが、説得を手伝う訳じゃない。

 俺から見て可能性なしと判断したら即刻、ジャック・ザ・リッパーを殺す。これが最大限できる譲歩だ」

 

「そ…れは…」

 

 セイヴァーの事情を知らない者からしたらどこが譲歩なのかとなるが、本来なら彼はオルガマリーが生き残る以外の寄り道はしたくないのだ。ここロンドンは魔霧のせいで人間には辛い環境となっている。ジキルと共に霊薬と魔道具を作り対処しているが、それとて完璧であるという保証はない。ここで、寄り道をすればするほどオルガマリーが死に近づく可能性が高まるのだ。

 それでも、アタランテの願いを受け入れようとするのは彼の優しさか後悔か。

 

「……分かった。それで構わない」

 

 覚悟を決めた様子でアタランテが頷く。

 

『マスター、よろしいですか?』

 

『良いも何も了承したじゃないセイヴァー……でも、私としてもアタランテが独断で動きすぎるのは避けたいところです。

 立香とマシュが動けるようになれば私達の方で特異点攻略を進めておきます』  

 

『清姫が残るので大丈夫だと思いますが、万が一の時は令呪を』

 

『えぇ。ムニエルに頼んでそっちの状況は確認してて貰うわ。私の方から連絡が取れなければ彼から届くから。

 とは言え、この魔霧の状況的に一瞬の連絡になると思うけど』

 

『了解しました。では、ご武運をマスター』

 

『貴方もねセイヴァー』

 

 聴覚を共有していた為話は簡単に通った。

 またマスターと離れての行動になってしまうな…っと内心でぼやく。しかし、この特異点にアタランテが来た時点である程度予想していた。

 

「マスターから許可は得た。アタランテ、いくぞ」

 

「早いな!?というか、私の行動を伝えたのか?」

 

「伝えるなとは言われてないからな」

 

「くっ…汝の性格がよく分かったよ。しかし、今はそれに感謝しよう。最速で行く、ついてこれるか?」

 

「流石に並走は期待しないでくれ」

 

「どうかな。汝は中々に変なサーヴァントだからな」

 

 その言葉と共アタランテで駆け出す。霧で見通しが悪いというのに中々の速度だ。

 流石はアーチャークラスで目が良く、敏捷の高いサーヴァントと言えるだろう。セイヴァーも後を追いかける。他のサーヴァントの力を借りても良いが、そうすると彼の目が追いつかない。故に素のステータスのまま脚に強化の魔術をかけてアタランテの後方を走る。しかし、ロンドンを二人で調べるには流石に広すぎる。アタランテは索敵に優れたアーチャーという訳ではない。戦場をその脚で駆け巡るタイプなのだ。

 

「くそっ、何処にいる!」

 

 時間だけが過ぎていき、アタランテが焦り出す。こうなると見つかるものも見つけられない。背後でセイヴァーが千里眼のスキルを獲得し行使する。C+なのでそこまで一気には見渡せないが、今よりは効率が良くなる。

 

「見つけた」

 

「どっちだ!?」

 

「こっちだ」

 

 セイヴァーが捉えた光景は今まさに、女性を襲おうとしているところだった。狭い室内を必死に女性は逃げているが、ジャックが本気になればすぐに捕まるだろう。しかし、まるで狩をする様に殺さない。理由はすぐに分かった。

 

「…既に食った後か」

 

 口元とナイフが血で汚れている。ある程度の距離まで詰めたらセイヴァーは立ち止まる。

 

「この先真っ直ぐだ。行け、アタランテ!!被害者が出てる」

 

 弓を取り出し、構える。錬鉄の英霊は弓を構えた時点ですでに的当たると分かるという。

 ならば、彼の経験を憑依、模倣する事で擬似的に再現できる。弓を引き絞り、狙いを定める。女性とジャックのちょうど間。意識さえ、逸らすことができれアタランテが間に合う。

 

「ーーふっ」

 

 矢が当たる光景を見たセイヴァーは手を離す。深い霧の中を超え、その矢は僅かにズレたが目的の位置へと到達した。

 

「キャ!?今度は何!?」

 

「……邪魔が来たね。でも、貴女を食べるより良さそう!」

 

 矢により意識が逸れ、ジャックは自分に近づいてくるサーヴァントの気配に気がつく。

 窓を破り、アタランテが部屋に入る。彼女は女性を持ち上げて隣の部屋へと移動させる。この部屋は魔霧が入ってしまうから。

 

「あはは、また来たの?」

 

「もうやめるんだ!これ以上、誰かを殺すのは」

 

「やだよ。だって、わたしたちは帰りたいんだから」

 

 ナイフを構えアタランテに斬りかかるジャック。それを弓で受け止め、アタランテは弾き飛ばす。その勢いでジャックは部屋の外へ飛び出していき、それをアタランテは追いかける。

 此処で逃せば次はない。

 

「もう一人、近くにいるけど一緒に戦わないの?」

 

「…あぁ。彼は見届け人だからな」

 

「ふぅん。まぁ、来ないなら良いや」

 

 殺人を止めたいと願うアタランテの気持ちは果たして届くのか。

 子供の幸福を願う狩人と、愛を貰えなかった悲しき殺人鬼の戦いが幕を開ける。




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