アンデルセンの口調難しいっすね……
「……魔本と言っても、サーヴァントの攻撃を受けてびくともしないなんておかしいわ。ああ、もう!ほんと肝心な時に頼りにならないわねロマニ!」
『えぇ!?そこで僕に当たるかい?霧の影響下じゃカルデア側から上手く探知できないのは事前に伝えておいたでしょう』
「分かってるわよ!ただの愚痴くらい好きに言わせてちょうだい。何か絡繰がある筈よ……考えなさいオルガマリー」
親指の爪を噛みながらオルガマリーは考える。
セイヴァーと離れ、ジキルから協力者として紹介された古書店へと向かったオルガマリーを含むカルデア一行。守りとして動きたくないもとい潜伏が得意なアサシンクラスのステンノをジキルの元へ置いてきて調査に来た。到着した古書店にいたいい声の子供から人々を眠らせている原因の魔本がいると伝えられ、戦闘を開始したのだが件の魔本は攻撃を受けても以前、無傷でそこに存在していた。
「ああもう、ぷかぷか浮かびやがって!本のくせに生意気な、落丁本か何かかテメェ!」
「俺のルーンすら効いてねぇな……弾かれるというか存在する次元が違うみたいに届いてねぇ」
戦闘向きの2騎の攻撃すら魔本には届いていない。
マシュや立香に焦りの表情が浮かび上がる。無理もない。漸く立ち直ったところに無敵とも言える存在が立ちはだかったのだ。鍍金が剥がれかけてしまう。
「浮かぶ……次元……もしかして藤丸!ジャンヌ・オルタにあの魔本を焼き尽くすぐらい大きくな炎で攻撃する様に指示を出して!」
「わ、分かりました!オルタ、お願い!」
「どうなっても知らないわよ!?」
魔力をセーブしながら戦っていたジャンヌ・オルタだがマスターの指示を受け、最大火力の火球を魔本に向けて放つ。放たれた火球が魔本を飲み込み、爆ぜる。しかし、変わらずに魔本はその場に存在した。
「ちょっと、全然元気じゃない!マスターちゃんの魔力を使ったのに、これじゃ意味ないわよ!」
「いいえ。意味はあったわ」
ジャンヌ・オルタの言葉に対して笑みを浮かべ返すオルガマリー。
「ほぅ。ただの肉体労働者ではなかったか。わざわざ俺が出てきたが必要はなかったか?」
「さっきの子……いけません外に出ては!」
マシュが注意を促すが彼はそれを片手で流し、言葉を発する。
「折角だ。お嬢さんの回答を聞かせてもらおうか。あぁ、心配するな間違っていれば訂正するし合っていたなら即座に戻るさ」
「貴方、相当な性格してるわね。まぁいいわ、魔本と呼ばれるアレは一種のサーヴァントよ。
霧から突然、サーヴァントが呼ばれる特異点だもの。本の様なサーヴァントが呼ばれていてもおかしくないわ」
チラリと視線を男に向ける。自信満々に話し出したくせに不安が隠せていない。根が小心者のオルガマリーらしい態度だ。
「気にせずに続けるといい」
「サーヴァントであるなら、何かしらの宝具を持っている筈。さっきのジャンヌ・オルタの攻撃の跡を見なさい。
あれだけの火球が爆ぜれば当然、周囲の有機物は焦げつきます。ですが、あの魔本の周囲だけは焦げが何一つついていません。あの魔本だけがこの世界とは別の理を有している可能性があり、先程の宝具である件を含めて考えれば魔本が傷つかない理由、それはアレが一種の固有結界であるからと私は考えました」
「固有結界?」
魔術に関して素人の立香が首を傾げる。固有結界、魔法に最も近い魔術とされ術者の心象世界で現実世界を塗りつぶす魔術。サーヴァントの中にはこれを宝具としている者達もいる。
「後で説明してあげるから今は……空間がズレてるとでも思ってて。それで本題だけど、アレが固有結界を持つサーヴァントであると仮定した場合、本の姿であり続ける事に意味があると思う……ここまでは推理出来たのだけど」
徐々に声量が下がっていくオルガマリー。魔術師である彼女ではこれ以上の推察を行うには情報が足りてなかった。彼女は確かに優れた魔術師ではあるが決して全てを知り尽くしている訳でも0から産み出す者でもない。故にこの先の答えは彼の出番だ。
「上出来だ。では、この俺が最後の答えを教えるとしようか」
「貴方は一体……」
マシュの呟きにニヤリとした笑みを浮かべその名を告げる。
「俺か?俺はキャスターのサーヴァント、ハンス・クリスチャン・アンデルセンだ!まさか、本当にただの少年と思っていた訳じゃないだろうな。この状況で呑気に本を読む少年がいる訳がないだろう」
無駄な一言が多いサーヴァントである。モードレッド辺りは青筋を浮かべている。これ以上、煽りがあったのなら斬りかかっていたかもしれない。しかし、自分が居なくても魔本の正体に辿り着こうとしていたオルガマリーの頑張りに免じて必要以上の煽りを口にする事はなかった。
「本である事に気が付いたのは中々だ。しかし、その先は俺の様な作家でなければ気づかないだろうよ。アレは本ではあるが題名がない。題名がない本は実体が持てない。固有結界であり続ける無限の魔力は実体がないからこそだろう。聞こえるか!お前に名前を付けてやるぞ魔本、いいやーーー
アンデルセンの名付けと共に魔本が光り輝く。周囲の魔力を得ながらその形を得ていく。
光が収まると、魔本がいた場所には銀髪の髪の可愛らしい幼な子が驚いた様子で立っていた。
「なるほど……姿を持っていなかったからこその無限……流石は歴史に名を残す作家という訳ね」
「ふん!実体を得たから今度は向こうから来るぞ。つまり俺は無力だ。任せるぞ、肉体労働者達」
「……ナーサリー……ライム……いいえ、ちがうわ。それは名前じゃない。名前は、
「ん?おや?」
「何か……アンデルセンさんの予想とは些か違うようですが……しかし、先輩、これは」
「結果良ければ良し!みんな、お願い!」
少々予想とは違う展開になっている様だが、魔本は実体化している。それを確認した立香は自身のサーヴァント達に指示を出す。
サーヴァント達が武器を構える中、ナーサリー・ライムは困惑した表情で呟く。
「ありす、どこ?ここには……ありすがいない……ねぇ、お兄さんたち、ひとりぼっちの
どこかの時代、どこかの場所できっと彼女は愛されていたのだろう。座に登録される英霊が、題名なき本が覚えていられるほどに。
愛してくれた存在が居ないという残酷な現実は、どれほどの痛みを彼女に与えているのだろうか。
「……見るに忍びないな。悪いが早々に倒してやってくれ」
この口の悪い作家が何の悪口をなく、と同情するぐらいには痛いのだろう。結果だけ言うのなら、魔本ナーサリー・ライムは撃破された。形を得たとはいえ、本は本だ。無敵のカラクリも破られては歴戦の英霊達に勝ち筋はない。
「今度は会えると良いわね」
消えゆくナーサリー・ライムにそっとオルガマリーは祈った。憐憫か、同情か。何にしろ愛を知った本の悲しげな表情に愛を与えられなかった彼女は何かを感じずにはいられなかったのだろう。何故だか、無性にセイヴァーに会いたくなるオルガマリーだった。
ナーサリー・ライムとオルガマリーを契約させようかと思いましたが、契約しちゃうとロンドンの人達が二度の起きない眠りについちゃうのと、オルガマリー自身はセイヴァー以外と契約する気も無さそうなのでこんな形に。しんみりとした感じにしたかったので戦闘シーンは省きました。見たかった人がいましたら申し訳ないです。第四特異点、再履修中なので更新遅いかもですがよろしくお願いします。
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