願いを込めて   作:マスターBT

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戦闘描写?あいつはいい奴だったよ…
そして、相変わらずのムラのある更新速度だなぁ。


譲れない意地と想い

 魔術師だから気がつけた違和感。人理修復の中、セイヴァーと共に戦場に身を置く過程で浴びてきたこの身を突き刺す様な殺意とは違う害意。酷く懐かしくて、そんな感覚を感じた事が自分があの時計塔の魔術師であった事を思い出させる。

 清姫はこの粘り着く様な独特の害意に気が付いていない。だが、それは仕方ない。彼女は魔術など一欠片も学んでおらずただ、捨てられた悲しみに駆られ男を追いかけた伝承のみで英霊へと至った存在。この清姫は色々と例外ではあるが、その事実は変わらない。故に、その害意に抗うにはオルガマリーただ一人で成さなければならない。

 

「キャスターのサーヴァント相手に魔術勝負か。分が悪いなんて話じゃないわね」

 

 一画消えた令呪に触れ、オルガマリーは言葉とは裏腹に笑みを浮かべる。念話はできないが、自分から魔力が彼に流れて行くのを感じる。それはつまり、彼が戦闘を行なっているという事。何時如何なる時でも自分を案じ、寄り添い支えてくれた彼が戦っているのだ。その身を剣の筵にしても、黒き聖女の炎に焼かれても、レフと英霊二体を同時に相手取っても、大英雄と真っ向から戦うことになっても、膝を着き諦める事をせず、守り抜いてきたのだ。その背にずっと護られ続けるのを認めるほど、オルガマリーはプライドが低くない。

 

「……直接害を向けてこないのなら、時間稼ぎが目的。景色が分かりづらいのを利用した認識阻害の魔術が一番考えられるわね。催眠の類であれば例え、キャスタークラスの魔術であろうと私の術式がレジストを試みるはず。なら、ここら一帯を結界に見立てた認識阻害系ね」

 

「オルガマリーさん?」

 

 足を止めてぶつぶつ言葉を発しているオルガマリーを不信に思い、清姫が声を掛けるがオルガマリーには届いていない。既に彼女は、魔術師として圧倒的に格上の存在に挑むための準備を始めていたのだから。

 

「……素直に迷ってくれていれば良かったのですが」

 

 そんな二人を霧に紛れ、近くの建物から見下ろしていたパラケルスス。その顔は憂いを帯びながらも、自分に挑戦しようとする新たな原石への期待が隠しきれていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな魔術師同士の知略戦とは真反対の対決が行われている。青い炎とただの素手がぶつかり合う単純な肉弾戦。どこか英霊には、遠慮し勝つとしても相手を苦しめない意図があったセイヴァーが、その顔に怒りを浮かべてただ只管に拳を振るっていた。

 

「酷い顔じゃないか。救世主様?」

 

「黙れ…!」

 

 青い炎が一段と猛る。セイヴァーの怒りを体現するが如く、青い炎は燃え上がる。それに対し、アヴェンジャーは未だにヘラヘラとした軽薄な笑みを浮かべている。何度も、顔や腹部にセイヴァーの拳を受けているというのに余裕な態度は崩れていない。それはセイヴァーも分かっていた。怒りに任して攻撃しているが、理性を失った訳でも考える事を辞めた訳でもない。確かに何度も殴っているが、その全ての手応えが薄かった。攻撃が伝わる直前に、流されている様な液体を殴っている様な感覚だ。

 

「(あぁ……認める。こいつは俺より体術が優れている)」

 

 体術のみで英霊に至る者も少なくない。天賦の才能があれば、肉体のみで軍隊を相手取れる様な人外がいてもそう可笑しな話じゃない。だが、アヴェンジャーがその領域かと言われればセイヴァーは違うと言うだろう。アヴェンジャーが使う体術は、天賦の才能に裏打ちされたものではない。なら、ちゃんとした流派で学び時間をかけて習得したものか?いいや、それも違う。流派の様に綺麗なものじゃない。喧嘩屋の如く、我流や使えるものをなんでも使った果てにあるもの。

 戦いの中で自然と無駄が削ぎ落とされ、自身の経験に裏打ちされた技術。生き残る為に死に物狂いで、その身に落とし込んだ体術。それがアヴェンジャーの境地だ。

 

「ほらほら、どうした?借り物はやっぱり上手く扱えないか?」

 

 セイヴァーの連撃の隙間を縫う様に、アヴェンジャーの拳がセイヴァーの顎を捉える。たった一撃だけで、セイヴァーの上半身はのけ反り隙を晒す。そこに腰を落とした重い拳が放たれる。セイヴァーの体がくの字に曲がり、吹き飛んでいき近くの民家の壁を破壊する。

 

「……」

 

 アヴェンジャーが自分の拳を見ると、火傷を負っていた。吹き飛ばされる一瞬でセイヴァーが攻勢に出たのか?いや、出れるはずがない。アヴェンジャーの拳は的確に顎を捉え、上半身をのけ反らさせた。視覚的に見える訳がないし、仮に見えていたとしても脳震盪を起こして何がなんだか分からないはずだ。自分が狙った場所を的確に青い炎で守るなんて芸当が出来るわけがない。

 

「過保護だな。お前は」

 

 その言葉は誰に言ったものか。アヴェンジャーはこの反撃が何者によって行われたのか察した様だ。未だに脳震盪が治らないのか倒れたままのセイヴァーへとゆっくり歩いて行く。何も焦る事などない。時間は自分を味方してくれている。セイヴァーを足止めし続ければマスターの思惑通りになる。カルデアのマスターだけでは、歴史通りになるだけ。それを乱す不安分子をこうして留めていれば結果は、手元にやってくる。

 

「焦る理由なんてない筈なのに」

 

 アヴェンジャーはセイヴァーの元へとたどり着いていた。本人が思っていたより速く。自分の何がこうさせたのか分からない。無意識のうちに歩く速度が上がり、倒れ伏すセイヴァーの無防備な首に手をかけていた。此処でセイヴァーを殺せば、不都合があるのは自分だ。

 

「ぐっ……がっ……」

 

 苦しそうに呻くセイヴァー。今度は青い炎が手を焼いてくる事はない。どんどん首を絞める力を上げていく。

 

「……何故だ……お前は!!俺と違うだろう!!此処で、俺如きに殺されてあの人を護れるのかよ!!」

 

 何を言っているんだ。言葉を発した瞬間、アヴェンジャーはそう思った。頭と心が一致していない。時間をかける、殺さないと考えている頭。憎い、殺したいと思う心。チグハグな状態に困惑するアヴェンジャーは、それでもセイヴァーの首を絞める事は辞めなかった。

 

「答えろ!セイヴァー!!お前は俺とは違う選択をした筈だ!!俺如きが、成せなかった事を成した筈だ。此処で死ぬなら、最初からあの人の召喚に応えてるんじゃねぇよ!!」

 

 アヴェンジャーの慟哭が霧のロンドンに木霊する。

 

「…うる……さいな……言われるまでも……ない!」

 

 セイヴァーがアヴェンジャーのガラ空きの腹部を蹴り上げる。蹴り飛ばされた事で拘束が無くなり、セイヴァーの呼吸が正常な物へと変わっていく。どうにも不安定なアヴェンジャーを横目で見ながらセイヴァーは立ち上がる。

 

「オレは俺の意思で、俺の願いの元あの人の召喚に応じた。その時から、あの人が生きて笑顔で居てくれる未来を得る為の覚悟はしている!無様を見せたのは、お前が心底気に食わなかったから、どうしても俺が殴り飛ばしたかっただけだ」

 

 青い炎がセイヴァーの両手から消えていく。その代わりに、金色に輝く聖剣がその手に握られる。その聖剣は、約束された勝利を齎らす物。数多の騎士の羨望を集め、人々のこうであって欲しいと云う願いの行き着く終着点。かの騎士王が、用いたとされる剣。

 その真名を──

 

「……エクスカリバー」

 

 自分如きにその聖剣を取り出すのかお前は。

 アヴェンジャーは、光輝く聖剣に完全に目を奪われている。例え、真名解放による宝具が使えなくてもただそこにあると云うだけで聖剣は聖剣足り得るのだ。しかし、セイヴァーとしてもこの聖剣を使う以上、長期戦は出来ない。抑止力による干渉が最も大きくなるのだ。加速度的に消費される魔力を感じながら、エクスカリバーをアヴェンジャーへと向ける。

 

「凌げるのなら凌いで見せろ」

 

 未だに固まるアヴェンジャーへと肉薄。聖剣を振り下ろす。

 

「ぐっ…!」

 

 動員できる魔力を腕にかき集め、振り下ろされたエクスカリバーを受け止める。しかし、それでもアヴェンジャーの両腕は耐えきれず出血し、凄まじい負荷がかかる。他に回す余力がない状態となったアヴェンジャーを蹴り飛ばし、吹き飛ぶその速度より速く接近。エクスカリバーを薙ぎ払う。今度は、アヴェンジャーが勢いよく吹き飛び民家の壁を破壊する。その場に留まる事はせず、勢いよく横へと跳躍。瞬間、今までいた場所に聖剣が振り下ろされた。

 アヴェンジャーから余裕が消え、焦りが生まれる。セイヴァーから固執が消え、冷静さが宿る。セイヴァーは、無表情のまま淡々とエクスカリバーを振るう。アヴェンジャーは、目を見開きながら必死にその剣戟を避ける。先ほどとは立場が逆転した様にアヴェンジャーが追い込まれていく。

 

「俺とて……死ねない!」

 

「それは此方も同じだ」

 

 やがてアヴェンジャーに限界が訪れる。エクスカリバーの攻撃を受けすぎた両腕が遂に動かなくなった。振われる剣がアヴェンジャーの首を斬り飛ばそうとした瞬間──

 

 落雷が落ちた

 

 




次回はオルガマリーの方に視点を向けて、ことの顛末を書いていきたいと思います。

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