舞台はコルサント、ジェダイ聖堂。
マスター・ヨーダからの呼び出しを受け、部屋に向かったオビ=ワン。そこで触れたホロ・プロジェクターにより、彼は思いもかけない場所に飛ばされ ―― といった話です。
ほのぼの系です。
第1話 若かりし師匠
今日は、遥かなる昔に誕生し、偉大なる足跡を残したジェダイ・マスターの生まれた日。
そして、毎年その日には、奇跡や不思議なことが起きるという言い伝えがある ――
(とんでもない)
とオビ=ワン・ケノービは聖堂の通路を歩きながら思った。
(そんな言い伝えのある日なのに、僕はマスター・ヨーダに呼ばれている)
思わず溜め息の一つや二つ、つきたくなる。
しかし、思い当たる節があった。メリダ/ダーンの一件以来、クワイ=ガン・ジンと再びマスターとパダワンの関係になったものの、師弟の間はまだギクシャクしていた。お互い思ったことを相手に素直に言えずにいる。
(きっとそのことでマスター・ヨーダ直々に忠告をされるんだろうな。パダワンの心構えとか・・・)
そういろいろと考えているうちに、いつしかヨーダの部屋の前に立っていた。
唾を飲み込み深呼吸をすると、軽くドアをノックする。
返事はない。
「マスター・ヨーダ」
声をかけてから壁に嵌め込まれているタッチパネルに触れると、すんなりとドアは横に開いた。
「マスター・ヨーダ?」
もう一回問いかけてから部屋に足を踏み入れる。
しかし、彼に対する回答はなかった。
「マスター・ヨーダ。オビ=ワン・ケノービです」
今度は先ほどより大きめの声で言ってみる。
ヨーダ用の小さなテーブルと椅子が置かれ、全体的に落ち着いた雰囲気で纏められてはいるものの、肝心の本人の姿がどこにも見えない。辺りを見回していると、ふとその視線が止まった。
こじんまりとしたテーブルの上に、何やら変わった小さな機械が置いてあった。一見ホロ・プロジェクターのように見える。
興味を惹かれてオビ=ワンは周囲を見回した。誰もいない。彼はそっとテーブルに近づくと軽くその機械に触れた。
不意にホロ・プロジェクターが作動し、機械の上に色鮮やかな光の渦が舞い踊った。
驚いて心臓が飛び跳ねる。勝手に動いてしまった。止めた方がいいんじゃないか?
しかし、湧き上がる好奇心には勝てず、オビ=ワンは少しその巨大な光の渦に顔を近づけた。
「うわっ!?」
と叫ぶ間もなく、少年は渦に吸い込まれていた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ゴンッ
「痛・・・っ」
オビ=ワンはまるで高い所から落ちたかのように尻餅をついた。痛むお尻をさすりつつ辺りを見渡す。
何時の間にかどこかの通路にいた。聖堂の通路には間違いないのだが、ここが何階か、この通路がどこに繋がっているのか全く判断はつかない。
(何があったんだ?)
少年は体を起こして立ち上がると途方に暮れた。
突然、右横の部屋のドアが開き、中から飛び出てきた人影が彼に思いっきりぶつかった。
「いたっ!!」
再びオビ=ワンは尻餅をつき叫び声をあげた。
「あ、すまない」
人物は慌てて彼に声をかけて、手を差し伸べてオビ=ワンが立ちあがるのを手伝った。
「おい、急がないと捕まるぞ?」
同じく部屋から飛び出したのだろう、もう一人が焦りながら言う。
「わかってる」
ぶつかった者はそう答えると、オビ=ワンに顔を向けて
「君もここから逃げた方がいい。巻き添えになりたくなかったらね」
と悪戯っぽい笑みで言った。
「どういう・・・?」
オビ=ワンが戸惑いながら訊ねようとした矢先
「お前達っ!!」
再び部屋のドアが開いて、中から一人のジェダイ・マスターが駆け出してきた。
「しまったっ」
二人は異口同音に叫ぶと通路を走り出した。オビ=ワンも訳がわからないまま後に続く。
「こらーーっ!!」
背後からジェダイ・マスターの怒鳴り声が聞こえ、オビ=ワンは思わず振り向いて、吹き出した。
かのジェダイ・マスターは髪のない頭に、それこそ髪のように海草を被って通路に立っていたからだ。まるで水槽に入っていた海草と水を上からかけられたみたいに。
前方を走る二人 ―― 後ろから見るとまだパダワンのようだ、三つ編が右の肩付近で軽やかに揺れている ―― もクスクスと笑い声を漏らしていた。
彼らは滝の音が響く千泉室まで全速力で走ってくると、ようやく立ち止まり息を整え始めた。
「見たか?あの顔」
「お前も人が悪いよ」
そう言いあって、二人は座り込んでお腹を抱えて笑っている。
それから、オビ=ワンにぶつかった方が涙を拭いながら彼に視線を向けた。うっすら茶色がかった短い金髪の、蒼い目をした長身の青年だ。年はオビ=ワンより幾つか年上だろう。
「先ほどはすまなかったね。怪我はなかったかい?」
「うん、大丈夫。僕こそ通路にぼーっと立っていたから」
不意に青年はオビ=ワンに怪訝そうな顔を見せた。
「初めて見る顔だね。名前は?」
「オビ=ワン・ケノービだよ」
「そうか、僕はクワイ=ガン・ジンだ。それでこっちが、メイス・ウィンドウさ」
オビ=ワンは口をポカンと開けて、一瞬呆気に取られて目の前の人物をまじまじと見つめ、それからもう一人に恐々と視線を向けた。
褐色の肌で黒い髪を持つ青年はニヤリと笑い返した。
(髪があるっーーーー!!!)
と心の中で大絶叫した後、
(いや、違~~うっ!!そんなことじゃない。ここは一体どこなんだっ?何が起きたんだ???)
オビ=ワンの頭は混乱を極めた。もうすぐ頭が破裂するんじゃないかと思ったその時
「大丈夫かい?オビ=ワン」
とクワイ=ガンの心配そうな顔が視界に飛び込んだ。
「大丈夫で・・・だよ」
条件反射的に丁寧語で答えそうになる。そして、慌てて話題を逸らすために訊ねた。
「き、君達、さっき何かしたの?」
「あぁ、あれ?」
と言って二人は再びクスクス笑いを漏らした。
「いや、メイスがね、生物学の授業を教えてくれている偉大なるジェダイ・マスターに、髪がないのは可哀想だろうって言い始めて」
「彼はまだ若いんだ。髪があった方が若々しさが出るだろうと思ってね。それに髪のある彼が想像できなかったから、どんな感じか知りたかったのさ」
「僕も想像できなかった。だから、研究のために部屋に置いてあった惑星モン・カラマリの貴重な海草を、フォースで飛ばして試してみたって訳だ」
「結構似合っていたぜ?あの"髪"」
二人は激しく笑い始めた。
(僕にとっては、マスター・ウィンドウの髪のある姿を想像できないのと同じってことかな?でもマスター・ウィンドウもきっと将来の自分の姿を知っていたら・・・笑いことじゃないと思うよ)
そう思うとオビ=ワンにも笑いが込み上げてきた。二人につられるように彼も笑いの輪に加わった。