Xmas三部作   作:秋鹿

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第2話 過去への旅行

一頻り笑い終えると、疑問に思っていたことがオビ=ワンの口から突いて出た。

「君達は何歳なの?」

「僕とメイスは同い年なんだ。今年で18標準歳になる。君は?」

「僕は13標準歳だよ」

「13標準歳か・・・その頃はまだまだ純真だったな」

腕を組みながらクワイ=ガンは考え深げに遠い目をした。すぐにメイスが茶化す。

「お前に純真な頃なんてあったのか?」

「辛うじてね」

プッと吹き出しつつオビ=ワンは声を出した。

「仲がいいんだね」

「腐れ縁ってやつかな。気づいたら一緒に行動してたよ」

「こいつは見た目に寄らず悪戯好きなんだ。俺はこいつの悪戯を止めるストッパーの役目をはたしているのさ」

メイスが俺の苦労もわかってくれと言わんばかりに、大げさに溜め息をついて言った。

「とか言いながら、けしかけるのはどこのどいつだ?」

「たまにはそういうこともある」

メイスは腕を組んで胸をそらせて答えた。

髪はあるものの、あの鋭い眼光は時折り顔を覗かている。またクワイ=ガンも"今"ほど落ちつきはないが、あの悪戯っぽい表情は健在だ。

二人が言いあう姿を横から眺めながら、オビ=ワンは考え込んだ。

(彼らが18標準歳ってことは、"今"から30標準年前ってことになる。僕は過去に迷い込んでしまったんだろうか・・・?でも何故?)

 

「誰かっ!!誰か、お願い、助けてっ!!」

突如、悲鳴が辺りに響き渡った。

三人は瞬時に話をやめ、真剣な表情で声の出所を探った。

「あっちだ」

クワイ=ガンは言い捨て、滝の奥の方へと駆け出した。

滝の奥、池のほとりでは一人の少女がおろおろしていた。

それを目ざとく見つけメイスが声をかけた。

「どうした?何があった?アディ」

その名前でオビ=ワンは驚愕し少女に視線を向けた時、その先にある池の中ほどで激しい水飛沫が上がっているのに気づいた。

(誰か溺れているんだ)

と思った時にはもう池に飛び込んでいた。

勝手知ったる池。彼は友人のバントとともにこの池で良く泳いでいたのだ。

小気味良く水をかき、オビ=ワンは溺れている少年に近づいた。

(背後から近づかないと)

と心に言い聞かせ後ろに回ろうとしたその時、少年がオビ=ワンに気づきパニックになってしがみついてきた。

しがみつかれてオビ=ワンは少年もろとも水面下に沈んだ。

口から泡が勢い良く飛び出る。

オビ=ワンも焦りながら、それでも必死に心を落ちつかせてフォースに手を伸ばした。そして、同じように少年をなだめようとする。それは働いているようには見えなかったが、突然、水底の方から強い力が沸き起こり二人を押し上げた。

(今のは?)

酸素を素早く取り入れるとオビ=ワンは小年の背後に回り、後ろから彼を抱えたまま陸に向かって泳ぎ始めた。

//大丈夫か?オビ=ワン//

フォースでクワイ=ガンの声が聞こえる。

//大丈夫//

きっと先ほどの力はクワイ=ガンやメイスが手助けしてくれたに違いない。彼は心の中で感謝した。

ようやく陸に辿りつくと少年を二人に手渡す。クワイ=ガンとメイスは少年のチェックを行い、オビ=ワンは疲れた体を水から持ち上げると、傍の木に寄りかかった。

少年は水を飲んでぐったりとしていたが意識はあった。連絡してあったのだろう。すぐに聖堂の治療者達が駆けより浮遊寝台(フロート・ガーニィ)に乗せて少年を運んでいった。それを心配そうに見つめていた褐色の肌を持つ幼い少女は、クワイ=ガンやメイス、オビ=ワンの方にしきりにお礼を言い何度もお辞儀をすると、少年の後をついていった。

「良くやったな、オビ=ワン」

クワイ=ガンが近づいてきて飛びっきりの笑顔を見せた。

オビ=ワンも、彼の笑みを見ることができたことに喜びながらニッコリと微笑み返した。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

シャワーを借りて服を乾かした後、オビ=ワンは千泉室に向かった。

約束通りクワイ=ガンとメイスはそこで彼を待っていてくれた。

待ち構えていたように、褐色の肌を持つ鋭い眼光の青年が切りだす。

「あの少年は水を飲んだだけで、命に別状はないそうだ」

「・・・良かった」

「君の素早い行動のおかげさ」

クワイ=ガンも微笑んで言う。

「当たり前のことだよ」

オビ=ワンは頬を染めた。

ここにいるクワイ=ガンは"今"のクワイ=ガンではないことなど重々承知している。

だけど、やっぱり嬉しい。

どうしてもニヤニヤしてしまう顔を真顔に保とうと堪えている少年の傍らで、メイスが口を開いた。

「そろそろ、お腹が減ったと思わないか?」

「いいね、食堂に行こう」

クワイ=ガンは振り向くと優しく訊ねた。

「オビ=ワン?君も一緒にどうだ?」

「いいよ」

少年は嬉しさを隠しきれなかった。

 

食堂は賑わっていた。

彼らは空いている席を見つけては腰をおろし、運んできた料理を食べ始めた。

お腹が減っていたオビ=ワンは噛むのももどかしいほどに食べ物を口に頬張り、クワイ=ガンとメイスはそんな様子を微笑ましそうに眺めていた。

料理をパクつきながら少年は辺りを見渡す。するとどこかで見たことのあるようなジェダイ達がちらほら確認できた。

(あの人は ―― 今はジェダイ・マスターのはずだ。そして、あの小さな少年は先日ジェダイ・ナイトになった・・・)

そう気づいてしまうと、自分は過去にいるのだということが否が応でも頭から離れなくなった。

何故自分だけ?そして、どうしてここに?時間を遡った自分がこの場にいては不都合が生じるのでは?

そして ―― 無事に未来に帰れるのだろうか・・・?

考えれば考えるほど謎だらけで、オビ=ワンは途方に暮れた。

自分だけがこの空間に取り残されている気もして、周りの景色に見覚えがあるだけに余計に寂しさも覚えた。

手が止まり俯いてしまった少年に不審を抱き、クワイ=ガンとメイスは不思議そうな視線を交わす。

そして

「オビ・・・」

クワイ=ガンが話しかけたその時

「ハァイ、クワイ=ガン、メイス」

急に朗らかな声が飛び込んできて、呼ばれた二人は見あげて微笑を浮かべた。

「やぁ、タール」

(タール!?)

少年はその名前に勢い良く顔をあげた。

褐色の肌を持つ女性は"今"より髪は短いものの、やはり美しかった。

何よりもその瞳。琥珀色の瞳孔に緑色の縦縞が入った双眸には感情が窺えて、活き活きとしていた。

彼女は同じ席に座り、瞳を輝かせながら小首を傾げてオビ=ワンを見た。

「あら、君は?どこかで会ったかしら?」

「彼はオビ=ワン・ケノービ。つい先ほど知り合ったばかりなんだ」

クワイ=ガンが代わりに答える。

ニヤリと悪戯っぽく笑って肩を竦めつつタールは言った。

「クワイ=ガン達と知り合うなんて不幸ね。きっと君も、クワイ=ガンやメイスと共にマスター達に怒られる回数が増えるわよ?」

「そんなに悪戯が多いの?」

"今"のクワイ=ガンからは想像できないっ!!オビ=ワンは思わず訊ねていた。

タールはニッコリと微笑む。

「勿論よ。何度マスター・ヨーダに呼び出しを食らったことか。ねぇ?クワイ=ガン」

「マスター・ヨーダの話し相手になってあげたと言って欲しいな」

すかさずクワイ=ガンが悪戯っぽい笑みで切り返した。隣りでメイスがクスクス笑いを漏らしている。

皆が仲良さそうにみえた。その中でオビ=ワンは逆に疎外感を感じていた。

自分だけが取り残されているようなそんな気持ち ――

そんな彼の複雑な思いを遮るかの如くタールが訊ねた。

「ねぇ、オビ=ワン。貴方もパダワンよね?マスターは誰なの?私達の知ってる人?」

「僕のマスター?」

と聞き返し、彼は言い淀んだ。

彼のマスターである、"今"のクワイ=ガンはメリダ/ダーンの一件後、彼と心を通わせるようなことはなくなった。

それは自分のせいだ。わかっている。だけど ――

もう一度やり直したい。またクワイ=ガンからいろいろと教えを受けたい。クワイ=ガンのパダワンとしてっ!!

それは ―― 無理なのだろうか?

クワイ=ガンの心は頑なに閉ざされたままだった。そして、彼が何を考えているかなど、今のオビ=ワンには全くわからなかった。

少年は無理矢理笑顔を繕うと、震える声を宥めながら言葉を続けた。

「彼の名前は訳があって言えないけど、フォースが強くて、ライトセーバーを持たせたら右に出る者がいなくって、それに・・・僕のことを理解してくれる優しい人なんだ」

最後の言葉は願望に近かった。

「まぁ、良かったわね。クワイ=ガン?メイス?貴方達もマスターになったら、そうパダワンから言われるようにならないと」

額面通り受け取ったタールは微笑み、視線を転じると二人を茶化した。

「それなのに、何故そんなに哀しそうな顔をしているんだ?オビ=ワン」

しかし、クワイ=ガンは気づいていた。少年の内部にある深い哀しみに。

「え・・・?」

「何か悩みでもあるのか?」

「そ、そんなことは・・・」

「オビ=ワン?」

皆が怪訝そうに彼の顔を見ている。

何故だろう?と思って不意に気づいた。涙だ。知らぬ間に涙が零れ落ち頬を伝っている。

急にオビ=ワンは恥かしくなった。

「ぼ、僕・・・ごめんなさいっ!!」

言い放つと彼は逃げるように食堂から走り去った。

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