Xmas三部作   作:秋鹿

7 / 12
第3話 真実を告げる

気がつくとオビ=ワンは千泉室にいた。

いろいろなことがあったこの滝のある部屋だが、キラキラと光を反射し流れる水の音を聞いていると、徐々に心が落ちついてくるのがわかる。

(どうかしている、全く・・・。でも、あんな楽しそうなマスターの姿を見ていると、余りに差が激しくって・・・)

膝を抱えてうずくまったまま彼は途方に暮れた。

(このままこの世界にいることになったらどうしよう?マスター、心配してくれるかな・・・?)

しかしオビ=ワンの脳裏に思い浮かぶクワイ=ガンの表情は感情を欠き、何を考えているかわからない冷たい瞳をしていた。

深々と溜め息をついて顔を膝の間に埋める。

「オビ=ワン?」

不意にクワイ=ガンの声が聞こえて、少年は慌てて視線をあげた。

目前には若き彼の師が立っている。その蒼き双眸には理解と慈愛が浮かんでいるのを見て、オビ=ワンは涙が溢れそうになるのを堪え、目をしばたかせた。

クワイ=ガンはオビ=ワンの傍に腰を降ろし、少年の様子を見ながら口を開いた。

「君もここが好きかい?」

「・・・うん」

辛うじて聞こえるほどの小さな返答。

微笑を浮かべ、滝に目を向けながらクワイ=ガンは続けた。

「僕も好きだ。フォースに取り巻かれているような気がして心が落ちつくからさ」

それから少年を振り向き優しく訊ねる。

「何か心配事でもあるのか?」

「・・・どうして気にかけてくれるの?会ったばかりなのに」

「どうしてって言われてもね・・・君は他人に思えないんだ。そうだな・・・弟みたいな気がする」

クワイ=ガンはニッコリと笑った。だが、その笑みが少年の頑なな心を融かしていないと見るや、眉をひそめて静かに聞いた。

「君のマスターと上手くいっていないのかい?」

足元をじっと見つめながら、しかし、少年の気持ちは揺れ動いていた。

言葉に出す不安。でも言いたい。言ってみたい。"今"のこの人だったらわかってくれるような気がする。

オビ=ワンは想いを整理するかの如く、ゆっくりと話し始めた。

「彼はまだ僕を信用してくれていない気がするんだ。それは彼にもいろいろあって・・・僕も彼を裏切ったことがあって・・・そういった理由があるからなんだけど」

「君は彼を信用しているのかい?」

「信用してる・・・ううん、信用したい。だけど彼はいつも僕との間に壁を築いている。その壁を壊す勇気が僕にはないんだ」

「壊して、また、より強固な壁が出来てしまうことを恐れているんだね?」

「うん、恐れはダークサイドに繋がることだけど・・・」

クワイ=ガンは視線を宙にあげた。窓から降り注ぐ光の粉が滝の周りで煌いている。

彼は一瞬沈黙し、それから少年に元気づけるような笑みを見せた。

「過去に何があったとしても、君のようなパダワンを持つことは名誉だと思うんだけどな」

「本当にそう思う?」

オビ=ワンは恐々と聞き返す。青年はウインクでそれに答えた。

「勿論だよ。確かに精神的に脆い所はあるけれど、何より勇気があるし素直だしフォースも強い。君のフォースを辿ってここまで来れたぐらいだからね」

「ありがとう」

少年ははにかみながら礼を言った。

「何だったら僕が、君の代わりに君のマスターに言ってあげようか?」

さり気なくクワイ=ガンの口から出た言葉に、オビ=ワンは驚いて目を見張り、何も言葉が出なくなり、感極まってクワイ=ガンにぎゅっと抱きついた。

青年は驚いたような表情を見せたが、すぐに優しい眼ざしに変わり、少年の背中を宥める風に軽く数度叩いた。

しばらくして動揺した気持ちも落ちつき頭が冷静に働いてくると、オビ=ワンはついに決心した。

(本当のことを言おう。この人だったら理解してくれるはずだ)

 

「クワイ=ガン?」

「何?」

「実は僕、未来から来たんだ。30標準年後の未来から」

沈黙が漂った。驚愕の感情がフォースを通して伝わってくる。それからそれが平穏に変わると、クワイ=ガンは微笑みを浮かべた。

「未来?本当に? ―― そうか、今日は偉大なるあのジェダイ・マスターの生まれた日か。何があっても不思議じゃないな」

しばらく言い淀み逡巡した後、オビ=ワンはようやく言葉を出した。

「それで ―― 30標準年後の未来では ―― 僕のマスターは君、いや貴方なんだ、クワイ=ガン」

先ほどより長い沈黙が辺りを支配した。そして、驚愕の度合いも更に大きかった。

(突拍子もないことを言ってるってわかってる。でも、彼だったら ―― "今"の彼だったら ―― )

オビ=ワンは半ば祈るような気持ちでクワイ=ガンの言葉を待っていた。

それはようやく、本当にようやく返ってきた。

「30標準年・・・長いな。その間、僕に何があったんだろうな」

呆然と考え込むような声が聞こえ、しかし、その口調が急に明るいものになった。

「でも、もし今の僕がパダワンを取るとしたら、君を選ぶよ」

「本当?」

オビ=ワンは嬉しさの余り、勢い良く顔を上げて青年の顔を見つめた。

「約束しよう」

ニッコリとクワイ=ガンは笑みを浮かべた。

 

「そうだ、ちょっと待っていてごらん」

クワイ=ガンは言い置くと、少年にウインクしてその場を離れた。

しばらくして戻ってきた彼の手には美しい宝石が握られていた。彼は跪くとオビ=ワンの両手にそれをそっと乗せた。

「これは僕のニ番目に大切にしている宝物なんだ。一番大切にしている宝物は、僕が君の年ぐらいの頃に河原で拾った石なのだが、これは本当に大切だから・・・すまない。でも、このクリスタルを君にあげよう」

途端に少年の顔が明るく輝く。

「ありがとう」

「どういたしまして」

彼が元気になったことを心より喜びながらクワイ=ガンは微笑んだ。

 

若干渋々ながら、ついにオビ=ワンが切り出した。

「そろそろ戻らないと。"マスター"が心配しているだろうから」

「そうだね」

「本当にありがとう。貴方に会えて良かった」

少年は感謝の念でクワイ=ガンを見つめた。クワイ=ガンもじっと見つめ返し、悪戯っぽい瞳でこう言った。

「また後で会おう、未来のパダワン」

「また後で会いましょう、未来のマスター」

オビ=ワンも悪戯っぽくニッコリ笑い、そして、名残惜しそうに歩き去った。

 

先ほど ―― 随分といろいろなことがあったので、ついさっき起こったこととは到底思えないが ―― 先ほど彼が突然振って湧いたと思われる通路に、オビ=ワンは立っていた。

ここに来れば何か起こると思っていた訳ではない。

だけど、今は無性に帰りたかった。30標準年後に。彼がいるべき世界に。彼の師がいる世界にっ!!

そう強く念じた時、空間が歪み、オビ=ワンの姿は消えていた。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「クワイ=ガン、こんな所でどうしたんだ?」

メイスに声をかけられるまで、クワイ=ガンは自分がぼーっと突っ立っていたことに気づかなかった。

「あれ?今誰かを見送っていたような気がしたんだが・・・」

自分が今まで何をし、誰と話をしていたのか、全く記憶にない。過去を捻り出そうとしたが無理だった。

そんな様子を見て褐色の悪友がニヤリと茶化した。

「昼間っから寝ぼけている場合じゃないぞ?」

「おかしいな。まぁ、いいか」

「よし、次の悪戯を計画するぞ。今度は ――」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。