第1話 Friedenende(平和の終焉)
『まもなく、2番線のホームに快速、東京方面行き電車が参ります、黄色い線の内側にお下がり下さい、まもなく、2番線のホームに…』
「はぁ…。」
つまらない日常だ、平和なのは確かにいい、しかし、刺激が足りない、そう日々思う。
こうやって日曜日の朝から余り行かない所に行く事でせめてもの退屈しのぎならないかと一人で行く、まだ16だ、これからの進路を考えたり、次のテスト対策をしたり、やるべき事は沢山ある、しかし、つまらない。
もっと、人生を変えるような、自分の価値が変わるような、そんな事が起きないかを常日頃考える、当然ながらそんな事は起きない、起きて、勉強して、少し遊んで寝て、また起きて、週2回の休みに勉強と遊び、他には何も無い。
プシュッ
渇いた唇に炭酸飲料を押し当てる、お気に入りのジュースだ、炭酸とカフェインが他の飲料より強いのがウリの清涼飲料水だ。
電車が来た、少しでも非日常を味わう為に遠くへ向かう、もちろん日帰りで。
シュゥゥゥ
東京から帰ってきた、ついた後は暫く楽しめるのだが、こんなんじゃ刺激が足りない、直ぐに覚めて、現実に引き戻される、進路先、定期考査、嫌な事ばかりが頭に浮かんできて楽しみを阻害する。
「はぁ…」
ポンッ
「縞峰、お前最近ため息ばかりだな、幸せが逃げちまうぞ。」
クラスメイトの宗本は気さくなヤツだ、俺の親友でもある、スポーツ万能だが、成績は余り良くない、何故明るく過ごせるのか俺には分からない。
「なんだ、また黄昏てんのか、俺から見たらお前の方がつまらないヤツだな。」
そう言うのは嶋田一希、他クラスの学年主席だ、腐れ縁で昔からの知り合いだ。
「総てが充実してるお前らには分からないさ。」
「んなこたぁない、いいか?縞峰、確かに俺は運動の成績は少しいい、でもな?学習面はかなり悪い、しかし、物は考えようだ、この生活を楽しめるか楽しめないか、俺達の違いはそれだけさ、要は人生まだまだ、明るく楽しんで生きようぜ?」
宗本の言ってる事も一理ある、しかし、俺には少々難し過ぎた、毎日生きる事に楽しみも、感謝も覚えない、嶋田の言う通り、つまらない人間なのかもしれない。
なんだかんだ言って高校生活が1年を過ぎようとしていた、相変わらず飽きるような日常、しかし、今日は一味違った。
長野に来てるのだ、俺には贅沢な旅館に泊まり、明日はあちこち観光しに行こう、お気に入りの飲料を部屋に据え付けてある冷蔵庫に二三本放り込み、リュックにガイドマップや財布を詰め込んだ。
そして、親の横で眠りについた。
「ん〜、よく寝たな、しかし、寒いな暖房がしっかり……」
部屋を見渡すと親はいない、それだけじゃない、風景が一変していた、コンクリートむき出しの部屋に布団とリュックだけがあった。
割れて蜘蛛の巣が走ってる窓から外を見るとそこには長野でも、地元でもない、俺の知らない世界が広がっていた、荒れ果てた土地に廃墟群、人形の鉄塊に血が飛び散った痕、異形の化け物、俺の知ってる平和な世界は無くなっていた。
「なんだよコレ…冗談キツイぜ。」
どうせドッキリか何かだろう、そう思いながらも顔は引きつっていた。
とりあえず建物の外に出る、荒れ果ててるが昨日と同じ旅館だ、足元に落ちてる看板に宿泊先の旅館の名前が書かれている。
辺りを見渡せば謎の鉄塊だらけだった、廃墟に鉄塊、血痕、壮絶な戦争が起きたとしか思えない光景だった。
「なぁ?ドッキリなんだろ?なぁ!」
声を張り上げるが一向に返事は来ない。
まさかとは思うがそのまさかが的中したとは考えにくい、余り現実的じゃない考えだった。
「おいおい、洒落にならないぜ…。」
とりあえず歩く事にした、ドッキリなんだ、これは、何時かは終わりがあるハズだ。
数十分は歩いたが人の気配も何も無い。
「クソ、思ったより重いな。」
さっき血だまりの中からハンドガンを見つけた、弾も20発ほどあったので、まさかと思い、念のため護身用に持っていく。
もう歩き疲れて休憩しようと思っていた時に聞き慣れない轟音が聞こえた
ガガガガガガ!!
バキッ!!
銃の発砲音のようにも聞こえた、しかし、こんな音をたてれるのは迫撃砲のような巨砲だけの筈、それにしては異様な連射音だった。
「クソっ!一体なんなんだよ!?」
急いで音のする方に向かった、歩き疲れて、ヘトヘトだったがいち早く人に逢いたかった。
しかし、そんな淡い期待も簡単に打ち砕かれた。
目の前に広がるのは異形のバケモノとそれに抗う鋼鉄の巨人。
眼前に広がる常識を逸脱した光景を目にして初めて自分は認めた、コレはドッキリでもなんでもない、現実だと。
「は、はは、遂に起きちまった…。」
こんな世界冗談じゃない、直ぐに死んでしまう、そこら辺のモブ見たいに、もうこうなったらヤケクソだ、やるしかない。
そこら辺に居た小さいヤツに向かって発砲する。
バアンッ!
グシャッ
鈍い音を立てて相手の腕は吹き飛んだ。
勿論、周りのヤツもコチラに気付き寄って来た。
「コッチだ!来い!纏めて潰してやる!」
相手は数が多い、上半身は人型だが人間なんかより遥かに動きが速い、多分捕まれば即死。
そう考えながらもしっかりと間合いをとって攻撃する。
ダアンッ!ダアンッ!
何体か倒れるが明らかに数が多すぎる、勝てない、敵は何故か攻撃には怯まずに追ってきた。
死ぬ
そう察した、つまらない人生だった、俺なんて所詮現実逃避しただけの人間だったのかもしれない。
実力も何も無いただのクズだったのだ。
死を覚悟していたその時であった、白い巨体が銀色に鈍く光る刀を振り回して総ての敵を薙ぎ払った。
気を失う直前、最後に見たのはその機体から降りるパイロット、そして声が頭の中で反芻した。
「大丈夫か!?まだ死ぬには貴様は速い!生きろ!」
気が付けばベットに横になっていた。