SAO ~絆で紡がれし勇者たち~   作:SCAR And Vector

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 お待たせしました新連載!!

 心機一転頑張っていこうと思います!!



SAO -4人の剣士-
リズベットとの出会い 1


 薄暗い洞窟の中を、ソードスキルによる光芒が闇を照らした。

 

 相対するのは一人の男と、レベル23《リザードマン・ガード》。リザードマンが右手に持つ《湾刀(タルワール)》から放たれたソードスキルを、男は自身もソードスキルを発動させ、スカイブルーの軌跡を描きながら湾刀を上に弾き上げる。完璧なタイミングで武器防御(パリング)に成功し、リザードマンはその深緑の鱗で覆われた状態を大きく仰け反らせた。

 

 隙を生みだしてしまったリザードマンに情けをかける様子もなく、男はその剣を袈裟懸けに振り下ろした。

 残り数ドットだったリザードマンのHPは0になり、ポリゴンの隙間から青い光が漏れると共にその体を爆散させた。ガラスの様に煌めくポリゴンの欠片を浴びながら、男は右手の剣を左の腰に携えた鞘に納める。

 

 男はリザードマンからドロップされたアイテム表示を眺めながら、腰のポーチから回復ポーションを取り出し、一息に飲み干した。レモン風味の爽やかな味が咥内いっぱいに広がり、先の戦闘で僅かながら失われたHPが回復していくのを確認すると、男は洞窟の奥深くへと歩みを進める。

 

 それは、全百層からなるアインクラッドの下層部、第十二層。狂気のデスゲーム《ソードアート・オンライン》の正式サービス開始から、約三か月の月日が流れたある日の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 アインクラッド第十二層主街区《トゥアルフ》の大通り。第九層フロアボスのLAボーナスで手に入れた、鮮やかな紅色のラインが走る純白のロングコート《コートオブ・ホワイトナイト》を翻す片手剣士(ソードマン)の俺こと、《カナデ》は、ある評判の良い鍛冶屋を探していた。

 

「ん・・・?やっぱわかりにくいわ・・・これ・・・」

 

 アインクラッド攻略に大いに貢献してくれている情報屋、《鼠のアルゴ》から受け取った座標の書かれたメモとマップデータを見比べながら道なりに歩いていると、人目の少ない通りに一軒の鍛冶屋を発見した。

 

「ここだな・・・」

 

 自分の直感を信じ、カウンターに立つNPCに声をかける。あらかじめ設定されていたであろう定型文をそれとなく発すると、NPCは主人である鍛冶師を呼びに奥の工房へと姿を消した。

 カンカン、とハンマーが素材を叩く音がぴたりと止み、代わりにしゅわっという装備の装着音がなると、ベビーピンクの髪をしたそばかすの目立つ少女が現れた。

 

「お客さんね・・・ようこそ!リズベット武具店へ!」

 

 少女はキュッとエプロンを結びなおすと、ハツラツとした威勢の良い声で客の俺を出迎えた。

 

「知り合いに紹介されてここに来たんだけど・・・剣のメンテと強化、それに能力追加を依頼したいんだ」

 

 制作依頼を頼まれた少女はカウンターをタップし、商業専用のメニューを開く。その中から素材一覧表をこちらに飛ばし、申し訳なさそうに言った。

 

「すみません・・・見ての通り、鉱石素材の在庫がほぼほぼ枯渇していまして・・・知り合いの炭鉱夫から素材が届くのが三日後なんですよ・・・」

 

「三日後か・・・それじゃ間に合わないな・・・」

 

 思わず声に出してしまった呟きに、少女はぽかんと口を開けて目を見開く。

 

「え?何か急用でもあるんですか?」

 

「いやまぁ・・・二日後にフロア攻略があってな・・・それに参加する予定だったんだけど・・・」

 

 俺は腰に装備した剣を鞘ごと取り出し少女の目の前のカウンターにその剣を差し出した。

 

「これって・・・確か十層ボスのLAアイテムじゃない!!は、始めて見たわ・・・」

 

 恐らく鑑定スキルを所持しているであろう鍛冶師の少女は、差し出された剣のプロパティを眺めながら驚愕の声を漏らした。

 

「えっと・・・何々?・・・武器名《ソードオブ・アイスクリスタル》。攻撃力も現状トップクラスだけど、敏捷値に+10のボーナスぅ!?それに低確率で発生する浄化効果ですって!?こ、これ、バケモノ並みの高スペックじゃない!!」

 

「いや、実質そうでもないよ。耐久値見てみてごらん?」

 

 俺の言われた通りに少女は耐久値を確認すると、その意外な数値に先程までの興奮が沈められたようだ。

 

「なっ・・・耐久値たったこれだけ!?せいぜい八層で手に入る武器程度の耐久値しかないじゃない!!よくこんなので戦えるわね!?」

 

 散々な言われようの愛剣の柄を撫でながら、俺はトレード窓を開き今回の強化依頼で消費するであろうコルの見積もりを提示しながら交渉に乗り移った。

 

「そ こ で、隠れた名鍛冶師の君に折り入っての依頼なんだ。聞けば君は数少ない鍛冶師プレイヤーの中でも、最前線でも存分に戦える業物を打てる指折りの鍛冶師だそうじゃないか」

 

 少女はゲンキンにも提示されたコルの額に目を輝かせながら、照れ臭そうにこう言った。

 

「確かに、そこまで武器作成のスキルを上げてるプレイヤーは少ないけど・・・それなら、もっと大規模でガチガチの鍛冶屋に頼めば、素材不足で足止め食らうこともなかったでしょ?」

 

 さすがに珍しく女性鍛冶師がアインクラッドに存在するからということでどんなもんかと半ば好奇心で来ました、とは口が裂けても言ってはいけないことは、高校受験を間近に控えたがきんちょの俺にもわかる。

 

「いや・・・他の鍛冶師はバンバン呼び込みやってて・・・予約いっぱいなんだよね・・・」

 

 前者よりはマシだが、これも中々に失礼だな。と心の中で一人ツッコミを入れる。内心「それってうちがマイナーな店ってこと!?」等とどやされながら追い払われるかと思ったが、少女は少し怪訝な表情を浮かべると、少し溜息をついた。

 

「ちょいと失礼なこと言われたような気もするけど・・・まぁいいわ。それで?いつの間にか脱線しちゃってたけど、強化の依頼で良いのかしら?」

 

「ああ、よろしく頼むよ」

 

「それで・・・鉱石素材の方なんだけど・・・どうするの?持ち込みの鉱石があればすぐにでも強化に取り掛かるけど・・・」

 

 こんな時に素材不足で何もできない自分が不甲斐無いのだろう。少女は申し訳なさそうにそう言った。

 

「じゃあ、こうしよう。これから一緒に取りに行こう」

 

「はぁ!!?」

 

 俺の最善の判断(と思われる)に少女は唖然とした。

 

「しょうがないだろう?鉱石なければ何も出来ないんだしさ。それにお互いレベリングも並行してできるし」

 

 ぺらぺらとまくし立てる俺を遮り、少女は唖然とした表情から馬鹿馬鹿しいものを見たかのようにはぁと呆れた。

 

「アタシの親友に、アンタみたいなナンパプレイヤーとコンビ組んでる女の子がいるけど、何というか・・・アンタとあの子の将来が不安だわ・・・」

 

 額に手を当てながら唸る鍛冶師は、俺にわざわざ「アンタの方はこれからの評判的な意味でね」と一言付け加えられた。俺はその言葉に多少傷つきながらもパーティー申請のウィンドウを飛ばす。

 

 鍛冶師はその申請に承諾ボタンを押すと、カウンター前に《準備中》と書かれた板をかけ、装備フィギュアを操作しメイスを腰に装備した。

 

「男がか弱いレディーを守るのは当然でしょ?」と言い放ち、鍛冶師はバシンと俺の背中を引っぱたいた。幸いここは圏内で、《アンチクリミナル・コード》が働くので直接的なダメージは受けなかったが、紫色の障壁越しに伝わる衝撃は、流石日ごろ思いハンマーを握っているだけあってそこそこに強いものだった。

 

 それなりに筋力値も上がっているんだろうな。等と思いながらも、俺は彼女に握手を求めた。

 

「俺は《カナデ》。今回だけの暫定パーティーだけど、よろしくな!」

 

「アタシは《リズベット》。リズ、でいいわ。さっきか弱いレディーなんて言ったけど、私はアンタみたいなナンパ野郎に手取足取り守られる程弱いとは思っちゃいないからね」

 

 リズは腰のメイスをガシャンと鳴らし、右腕に力こぶを作って見せた。ダメージディーラーとして活躍してくれるだろうと期待しつつも、互いに握手を交わす。

 

「ハハハハハ・・・なんかすっげー喧嘩売られてるような気もするけど、よろしく頼むよ、リズ」

 

 お互い年頃なので、思わず異性と手を握ってしまった――ただの握手だが――為に顔を赤く染めたが、ごほんとワザとらしく咳をして空気を改めると、さっそく転移門へと足を運んだ。

 

 人混みの中を少々強引に突破し、転移広場に立つと、互いのスキル構成を把握しあった上で戦闘の流れを決める。最後に各種装備・回復ポッドの補充確認を終えると、意を決して転移を開始する。

 身体が青白い光に包まれ、転移が始まると俺は目を閉じ、これからの戦闘に備え心を落ち着かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 これがこのデスゲームから多くのプレイヤーを開放したことで英雄と称えられた四人の内の一人。後に《白の剣士》《白竜》と言われ賞賛された剣士と、多くのフロントランナーを陰から支えた鍛冶師の出会いであった。

 

 

 

 

 

 

 




 なんかオリxリズな雰囲気出てますけど、断固そのようなことには成りません。
 リズベットはキリトが好き(になる)。

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