SAO ~絆で紡がれし勇者たち~   作:SCAR And Vector

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情報屋 1

 俺の住む32層のマンションにアルゴがやってきたのは突然の事だった。鬼気迫る表情のアルゴを取り敢えず中へ招き、一体どういう事かと状況の説明を要求する。

 

 アルゴの説明を聞き、取り敢えずアルゴに命の危険が迫ってはいない事は確認できた。

 

 どうやら、とあるエクストラスキル習得クエストの情報を掴んだアルゴが、その情報を嗅ぎつけたとあるプレイヤーに陰湿に狙われているらしい。まだレアな情報だと対価の金銭を要求するが、そのプレイヤーはびた一文も払わないとその要求を拒否。商売にならないとアルゴは突っぱねたが、厄介なそのプレイヤーはアルゴは嘘の情報しか流さないとの虚言を言いふらす様で、アルゴの情報屋としての株が大暴落との事だった。

 

 当然、どんな個人的な情報も金を積めば売ってしまうアルゴに不信感を抱いている民衆は大激怒。アルゴの情報屋としての腕前を理解している者を除いて、アルゴは迫害を受ける様になって居た。

 

 さらにはそのプレイヤーからストーカー行為を受けているらしく、それもあって情報収集にも影響が出ているとアルゴは言った。

 

「オレっちみんなから嘘つきと罵られるわ、そいつからはストーキングされるは嫌んなってきたヨ...」

 

 つい先程、その問題のプレイヤーの気配を察知したアルゴは、持ち前の俊足を活かして撒いた後に俺の所へやって来たらしい。確かに、アルゴも女性なのでストーカーという人種は恐ろしいのであろう。見ればアルゴの肩は小刻みに震えていた。

 

 俺はあまり気の利いた言葉が見つけられず、取り敢えず落ち着かせるために茶を出した。その後、今日はもう遅いとアルゴに寝室のベッドを使わせ、俺はソファーで寝ようと準備する。

 

「ごめん、うち1人用でベッドが一つしかないからそっち使ってくれ」

 

 アルゴを泊まらせる準備をし、俺は野営用の枕やブランケットをソファーにアクティベートする。その後、落ち着きを取り戻したアルゴに入浴を勧め、アルゴはその言葉に甘えると言ってバスルームへ入って行った。

 

 俺はその間する事も無く途方に暮れソファーに腰掛けていた。だが、なんだかそんな雰囲気になっていると錯覚したのか心臓が酷く音を立てて鼓動する。

 

 別に俺とアルゴはそう言った関係では無いのだが、女の子のシャワーを待つこの状況に否が応でも意識せざるを得なかった。

 

 変に感覚が研ぎ澄まされ、アルゴがシャワーを浴びる音が耳に入ってくる。俺はあらゆる煩悩を捨てようと必死になるが、それは全く効果が無かった。

 

 ようやく上がってきたアルゴは、ソファーに腰掛ける俺の隣にちょこんと座るといきなりごめんナ、と謝った。

 

「どうしたんだよ。アルゴらしくないじゃないか。いつも俺に付き纏ってたんだから、今更気にしないよ」

 

 そう言って俺はアルゴの頭をそっと撫でた。猫の様に目を細めるアルゴを何処か愛おしく思い、その金褐色の髪を撫でる。

 

「カーくんが居てくれてよかった...キー坊は攻略詰めで音信不通だし、アーちゃんはなにかと頼みにくいし...」

 

「おいそれ俺に迷惑かけるのはどうでもいいって事かよ」

 

「ニャハハ、違うよ」

 

 少しずつ会話の中で笑顔になったアルゴは、いつもの調子を取り戻したらしい。ここ最近俺に付き纏って居たのはそう言った批難の目から逃れる為であったようで、心配をかけまいと平静を保っていたが、それも限界に達し、家同然となって居た俺の家に気付けば駆け込んでいたとアルゴは言った。

 

 俺はそれを聞いて彼女の心の強さに尊敬すると共に、心の限界を突破し自分ではどうしようもなくなった今、彼女が真っ先に俺を頼ってくれた事に素直に嬉しさを感じていた。

 

「うちで良ければ、何日でも居ていいからな」

 

 俺は気付けば彼女を助けてあげたいと願う様になっていた。少しでも彼女の助けになればと部屋を提供する事を約束し、俺は彼女を寝室のベッドに寝かせた。

 

 おやすみと声を掛け、寝室を出ようと身を翻した時、アルゴが俺の裾を引っ張った。

 

「行かないでクレ」

 

 俺はそう訴えるアルゴを見て言葉を失った。

 

 ーーーなんだ!?そういう展開なのか!?行っちゃうのか!?

 

 危ない思考が脳内を駆け巡り、俺の意識を混乱させる。だが俺は平静を装い、アルゴの言葉の意味を尋ねた。

 

「1人じゃ淋しいかラ、今晩はオレっちと一緒に寝てくれないカ?」

 

 そう訴える彼女に、俺は簡単に屈された。俺とアルゴは添い寝する形でベッドに潜る。

 

 それからは地獄の始まりだ。理性との闘いを繰り広げると共に、アルゴを慰め無ければならないのだから。

 

 俺はどうにか彼女が眠りにつけるように努力した。あの手この手で手法の限りを尽くし、その頑張りの甲斐あってかアルゴは深い眠りに誘われ、小さく寝息を立てて眠りについた。

 

 しかし俺はこの晩は一睡もする事が出来なかったのだった。

 

 

 

 翌朝、俺は眠れず気怠い体を起こし朝食を摂るために食材を手に取った。料理スキルを持ってなくとも作れる簡単な料理を作り、それをテーブルに並べて今もベッドですやすやと寝息をたてるアルゴを起こしに向かう。

 

 寝ぼけまなこで無防備なアルゴを意識しない様に平静を装いつつ、アルゴが席に着くのを待つ。

 

 アルゴが着席したのを見届け、俺達は合唱して朝食を食べ始める。

 

 俺の住むこのマンションには調理器具が備え付けてある。料理スキルを取得していない為に作れるレシピは少ないが、それでもバリエーションとしては豊富な為、料理初心者プレイヤーにとっては大層豪華なメニューである。

 

 別に朝を食べなくても支障は出ないが、そこは気分だ気分、と自分を騙し込みジャム乗せパンを頬張る。洋風な朝食メニューに優雅さを感じると共に、俺はスープを啜った。

 

 アルゴも久方ぶりに立派な朝食を摂ったようで喜んでくれて何よりだ。簡単なレシピだが、血盟騎士団のシェフ、カルアの気持ちがわかった気がした。料理を作る事が大事なのでは無く、作った料理を食べて喜んでくれる人の笑顔のために料理を作る。大事な事に気が付いて、俺は少し笑みが溢れてしまった。

 

 簡単な朝食を食べ終え、俺達は今後の予定について話し合った。

 

「俺が最前線を確認するから、アルゴはここに居てくれ」

 

「ンー、情報屋が最前線に居ないってのには思うところあるけど、今の状況じゃ仕方ないしナ」

 

「ん。助かる」

 

 食後のコーヒーを飲み干し、俺はマンションの暗証番号をアルゴに伝えて自宅を出た。

 

 外出するとき家から出ないように念を押し、扉をロックする。

 

「よし、やるか」

 

 完全にロックされたのをドアノブを回して確認して、己に気合を入れる。攻略にも、事件解決にも、気合を入れなければ何事も始まらない。

 

 寝不足な頭を叩き起こして、俺はまずリンドにメッセージを送った。実働部隊隊長という大幹部に昇格したばかりで忙しいだろうが、リンドからすぐ返信が来た。

 

『おはようございます。今日、少し話もしたいので一緒に攻略をしませんか』

 

『おはよう。わかった、すぐに行くから転移門で待っていてくれ』

 

 たったこれだけのやりとり。俺は待ち合わせの転移門へ向かい、そこでポーション類の買い溜めを行った。転移門に来て5分たらず、リンドからのインスタントメッセージで到着した旨を受け、俺はリンドと合流した。

 

「おはよう、カナデくん」

 

「おはよう、リンドさん」

 

 少しリンドの買い物に付き合って、早速フィールドに出る。取り敢えず今日の目標はフィールドボス攻略に関する情報を集めること。手当たり次第にクエストを消化して行く。

 

「そういえば、話って?」

 

 隣で歩くリンドの質問に、俺は頬を掻いて眉をしかめた。話とはもちろんアルゴの事なのだが、いかんせん内容が内容だけに伝えにくい。

 

 どうにか最善を尽くして、アルゴの事情や事件の状況を説明する。下手くそな説明だったが、リンドは理解せてくれたようで解決案をいくつか出してくれた。

 

「うーん、難しい問題だね。攻略組からでは無く中層プレイヤーからと言うのが厄介だな」

 

「俺達は攻略組はアルゴの扱い方が分かっているからそんな事は無いんだけど、今回は中層の厄介者らしいしな。アルゴの調べじゃ虚言癖持ちらしく、その人をよく思っていない連中も多いってさ」

 

「でも、それなら彼の方が虐げられるんじゃないか?嘘つきの大ホラ吹きだって」

 

「確かにそうだけど、実際アルゴに様な情報を売り買いする人間を嫌う人も多いからな。商売上仕方ないんだろうけど」

 

 俺とリンドは器用にmobを屠りながら会話する。

 

「出来れば血盟騎士団の本部で匿ってもらいたいけど、アルゴが集団ニガテだからな!」

 

 右手の剣を振り下ろし、クエスト対象mobを斬り伏せる。鍛え抜かれた『セイクリッドロングソード』の刀身が赤褐色の獣毛に覆われた身体をバターの様にすうっと斬り裂き、クエストmob《デミコボルド・ランサー》をポリゴンのカケラに爆散させた。

 

「と言うことは、今はカナデくんがアルゴさんを保護しているのかい?」

 

「ああ、一時的だけど」

 

 リンドはコボルド槍兵の突きを盾で受け止め、俺がそこに支援で飛び込み下段から剣を振り上げ槍を弾く。

 

 そして空いたスペースにリンドが飛び込み、曲剣単発ソードスキル《リーバー》を放つ。HPは全て削りきれなかったが、リンドがちくっと剣先で小突いただけでコボルド槍兵は爆散した。

 

「ん〜、どうにかならないかなぁ」

 

 右手の剣をぱちんと金属音を鳴らし背中の鞘に納刀する。

 

「あ、そうだ。カナデくん、こう言うのはどうだい?」

 

 突如降りてきた閃きに、リンドは少しニヤけて見せた。

 

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