Wizars World 《ウィザーズ ワールド》 作:ダンケ侍
ではどうぞ。
第2試合はあっさりと決着がついたらしい。健人と京花は控え室で先の戦いの疲れを癒していた。ちなみに能力のネタバレを防ぐため外の状況は会場の盛り上がりしか伝わっていない。
「……よしっと、もういけるかな」
「大丈夫なの?万全な状態で戦える?」
「おれは何時でも万全さ」
「そんなことが言えるなら大丈夫ね」
前衛で激しい打ち合いをしていたのでかなり心配していたが、大丈夫そうな彼の発言に安堵する。やがて入場開始のアナウンスがされる。
「それじゃ、優勝目指して」
「行きましょうか」
そう言って会場へと向かった。
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『さあ!残った試合は後一つ!早速入場してもらおう!』
会場が今日一番の盛り上がりを見せる。
『まずは!先ほどの激闘を制した1-Aより、青柳 健人と井上 京花夫妻だ!』
「「誰が夫婦だ!」」
実況の紹介に二人して同じタイミングで突っ込むので説得力が全くない。
『そして!1-Cを難なく降した、1-Bのブレイム・ゴードンと片山 翔子だ!』
「……僕らは普通だったな……」
「そっちの方がいいと思いますよ」
初めてのまとも実況に少々がっかりするブレイム。
「ルームメイトだからって手加減しないぜ、ブレイム」
「……ああ、いい試合にしよう青柳君」
『それでは早速!あの掛け声で試合開始だぁー!』
『ユニット!ON!』
その時健人の目は常時展開されているブレイムのユニットに向いていた。
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「さあ、行くですよ〜!」
「薙刀か……リーチで負けるな……」
片山 翔子の手にはユニットと思われる薙刀が握られていた。
「相手できる?」
「槍がいけたら問題ない!」
健人は前衛を務めるであろう翔子に向かうが……
「はあ!」
「な…………⁈」
まだ薙刀の距離ではないところで真空の刃で斬りつけられる、それを健人は急いで剣で防ぐ。
「初見だと大体やられてくれるんですが……」
「学年1位は伊達じゃないか……」
あっちはそんな事を言っているが、反射で体が動いて防ぐことができた健人は内心かなり焦っていた。
「攻撃範囲増大か……」
「私が動きを止めてみる、〈アクア・ライン〉!」
翔子の目の前に水流を起こす。
「なんのこれしき!」
翔子はこれを防ごうとする。
「もう一ついかがかしら⁈〈アクア・ソード〉」
京花は翔子の後ろに数個の水の刃を生み出す。全てを一人で防ぐのは見えていなければ不可能のはず……
「甘いですよ!」
「そんな……⁈」
後ろからの攻撃も見えていたかの様に正確に防がれる。
これが彼女の能力、攻撃範囲増大だけではなく己の視野を拡大することができ、360度すべてを視認できる。この能力で先ほどの試合も一人で無双していた。(ブレイム談)
「次はこちらからです!」
「させるか!〈アイス・エッジ〉!」
複数の氷の刃を生み出すが……
「させないよ」
同じく氷でできた弾丸に撃ち落とされる。
「なにっ⁈ええい!」
「健人と同じ能力……?」
翔子の攻撃を防ぎながら二人は驚く。
「正しくは違うな、僕が操作したのは空気だからね」
「空気の操作⁈」
「そんな能力聞いたこともないわ……」
世の中には様々な能力がありふれているが、中には特殊な能力を持った人間がいる。
例えば、対象の分解や再生が出来る能力を持つシスコン劣等生、触れた物のベクトルを変える能力をもつロリコン高校生、3秒間能力を受けるとその能力を無効に出来る能力を持つリア充中学生などがいる。悪意を感じるのは気のせいだ。
そんな者たちの特別な能力の事をEXスキルと呼称する事もある。彼の空気を操作する能力もその一つなのだろう。
「さっきのは空気中の温度を冷やして氷にして動かしたんだ」
空気中の熱を奪うつまり冷やすとと液体になり、さらに冷やすと固体つまり氷になる。それを操作して弾丸として撃ち出したのだ。
「京花さ〜ん、おれ近づけない」
「弱音を吐かない、薙刀女は抑えてみるから」
「その呼び方やめてください!」
健人は先にブレイムを抑えに行く、翔子はそれを防ごうとするが
「〈アクア・ライン サークルシフト〉!」
「うわっ!」
翔子を囲い込む様に六つの水柱が生まれる。
「これじゃ動けないよ……」
薙刀はリーチが長い、だがそれ故に密着されると振り回す事が出来ない。今回はそこの弱点を突かれた形となる。
「1対1だぜブレイム!」
「くそっ!近づかれるとまずい……」
接近してくる健人に氷弾を撃ち込むが、全て打ち落とされる。
「〈氷掌烈破〉ぁ!」
「がああああ!」
健人の技をもろにくらってブレイムはアリーナの壁に叩きつけられる。
「ブレイム君!」
「貴女の相手はこっちよ!」
翔子が救援に向かおうとするが京花がそれを食い止める。
(……このままやられたふりをしますか……)
ブレイムがそう考えていると
「ほら、立てよ。狸寝入りはさせないぜ」
「⁈」
健人がそんな事を言ってきた。
「お前の右手見てみろよ」
「…………」
ブレイムが目だけを動かして見てみるとそこには
「な……⁈」
あったはずのユニットが無かった。
「お探しの物はそこにあるぜ」
「……どういうこと……?」
「なんで……ユニットが……壊れてるの?」
戦っていた二人もこちらであった出来事に驚きを隠せない。ブレイムの着けていたユニットと思われていたブレスレットが壊れていたのだ。
「ユニットが破損したら魔素に戻って自動修復がされる。そうだよな?京花」
「え、ええだからそんな風に壊れたりはしないはず……」
「……お前は今までどうやって魔法を使ってた?お前のユニットはどこにある」
「…………君という人は……」
ブレイムがそう呟くと続ける。
「……いつからです?」
「最初から怪しいとは思ってた。確信したのはさっきだ」
「…………気づいたのはユニットだけではなさそうですが?」
「なんか隠してるのは分かったよ。何かは知らねえけどな」
そうですか、とブレイムがそう嘆くと頭に指を指して
「僕のユニットはここですよ……」
と、とんでもない事を言った。
「んな…………」
「なによそれ…………」
「そんな…………」
その場にいた全員が絶句する。
「頭の中機械を埋め込まれて生まれた機械じかけの人造魔法士、それが僕の正体です」
彼はそう語る。
「だけど……それって……」
「違法ですよね……」
京花と翔子がそういう事を言うが
「そういう事を平然とやってのけるところに居たんですよ僕は」
地獄の日々を思い出しながらブレイムは語る。
「ルームメイトになったのだって奴等がそう仕込んだのでしょう、僕は君を、君たちを騙し続けていたんです」
ブレイムの告白に辺りが静寂に包まれる。しかしそれを健人が打ち破る。
「それはお前の意思か?」
「……そんな訳がないでしょう」
「そうか、だったらいいだろ」
「はい……?」
あまりの突発的な言葉にあっけをとられる面々。続けて健人が剣を構えて言う。
「そういう難しいことはお偉いさんに任せろよ。今はこの試合を楽しもうじゃないか」
「はあ……単純馬鹿ね……あなた」
健人の言葉に苦笑する京花。
「確かに過去に辛い事が多かったかもしれない……今も苦しんでいるんでしょうけど」
「ここで自分を騙す必要はないだろ?」
「……ですが命令を無視すれば……」
『その心配は無用ですよ〜』
実況席のほうからそんな声が聞こえてくる。
「会長さん?」
『あなたの研究所なら地図上から消滅してるでしょうから』
「は?」
会長の言葉に全員がついていけない。
『いやぁ、実は徹……風紀委員長の師匠に頼みごとをしまして……』
##########
ドイツ郊外の研究所、ブレイムとカティアがいた研究所にはいま血の匂いが充満していた。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」
「はい、また一つ」
一人の研究者であろう男ビームによって眉間を撃ち抜かれて絶命する。よく見ると所々に似たような死体が転がっている。これは一人の男によって生み出された光景であった。
「ったく俺今日休みなのによ〜徹の頼みじゃなきゃ断ってるぜこんなゴミ処理」
男はこれを人殺しとは思っていない。一つのゴミ処理としか認識していなかった。
「やめろ!やめてくれぇ!」
「ん〜人を道具の様に扱って自分は命乞いか、許すわけないだろ」
「⁈」
今度は悲鳴をあげる事なく絶命する。
「なんなんだ!お前は!ここは国から許可を得て……」
「これドイツ国家様からの御命令で〜す」
「なにっ!」
「お前らがやり過ぎるからこんな事になるんだよ」
そう言いながら彼は研究員の名札を確認する。
「お前が所長かぁ〜ヘェ〜」
「やめろ!来るな!」
「お前には他の連中より惨い死に方をしてもらおうかな」
そう言って彼は出していたビームガンを収納してプラズマ波動砲を作り出す。
「なぜ、そんな物が!」
「持ってるからだよ。さて、人の命で弄んだ罪は万死に値する」
先ほどまでとはうって変わって真面目な声で言う。
「罪を償いなよ?……地獄の業火に焼かれて消えろ」
彼は手に持つ波動砲のトリガーを押し、研究員ごとすべてを焼き払う。研究所はもはやその形をしてはいなかった。
「いやぁ〜スッキリしたなぁ。残りの休暇はこっちで過ごすか」
男は歩き出す。
「さてと、黒いビールとソーセージが俺を待ってるぞ〜っと」
この男の名は モーガン・バロウズ 高梨 徹の師匠にして、星皇の座に現在最も近い男である。
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『……というわけで貴方はもう自由の身ですよ』
さすがに具体的な内容はぼかして伝えた。
「研究所がなくなった…………」
つまり彼は命令を聞く必要は無く、彼女も無事解放された事を示す。
「いつの間に調べてたのか会長……」
『僕は全ての生徒の味方ですから』
平然と言ってのける一成に他の生徒は呆れる。
「これで心配は無くなったろ?」
「…………片山さん」
「ひゃ、はい?」
いきなり呼びかけられて翔子は驚くが気にせず続ける。
「先ほどまではすいませんでした……」
一度謝罪して
「今から本気で彼らを潰します」
「……はい!私も頑張るです!」
そう力強く宣言をする。
「あっちも本気みたいだぜ?」
「だったらこっちは本気の本気、でしょ?」
「違いねえ!」
再び二つのクラス代表がぶつかり合う。
「いきますよ!」
ブレイムが氷塊を作り出し健人に放つ。
「当たるかよ!」
「まだ終わりませんよ……」
ブレイムがその氷塊に奪った熱を戻す。水蒸気から奪った熱をいきなり戻すと……沸点を一気に超えて蒸発する。
「熱っ、熱いよこれ!」
ブレイムに向かっていた健人はもろに食らう。普通はひどい火傷だが健人は能力で冷やす。
「いつまでその盾は持つですか!」
「こっちも厳しいわね……」
翔子の攻撃を受け続ける京花も限界に近づいている。
「これで近づけますか⁈」
「やべえなこれは……」
氷の弾を撃ち、それを蒸発させる攻撃を繰り返すブレイムに近づけない健人。
「これで終わりです!」
バァン!と水の盾が割られる。
「⁈京花!」
「…………時間稼ぎ完了ね」
翔子の薙ぎ払いをしゃがんで躱し京花は
「私の勝ちよ!」
「ふぇ?」
そう宣言すると京花の後ろから巨大な波が出現する。
「ええ⁈」
「今までのは魔素を溜めるための時間稼ぎよ」
そう言って彼女は
「〈ポセイドン・ウェーブ〉‼」
「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
波を翔子にぶつけた。
「ってこっちにも来てますから!」
「危ない!これ危ないです!」
……約2名を巻き込みつつ。
「これでこっちが優勢だぜ?」
「……諦めませんよ僕は」
そう言って手に氷塊を作り出し。
「折角全力で戦えるのでね!」
と、健人向かって突撃をする。
「いいぜ!来いよ!」
健人も剣に氷の魔力を溜める。そして二人が激突して、
「これでどうです⁈」
「…………!」
その一撃を、健人は寸前で避ける。
「な⁈」
「そんな何回も正面から打ち合えないよ……」
そう言って、ガラ空きのブレイムに
「〈氷牙絶翔《ひょうがぜっしょう》〉!」
必殺の一撃を打ち込んだ。
「……それはひどくありません?」
「熱湯かなり熱くてさ……」
そんな会話があったとかなかったとか。
『きまったぁぁぁぁぁぁ!優勝したのは……1-A代表!青柳 健人と井上京花組だぁぁぁぁぁぁ!』
『おおおおおおおおお!』
会場は最高の盛り上がりをみせる。
「勝ったわね……」
「ああ、お疲れさん京花」
「あなたもね、健人」
二人はようやく終わったと思ったが……
『優勝した二人にはトロフィーの授与が行われるぞぉー!』
「…………まだ休めそうにないな……」
「そうね…………」
まだまだ終わりそうにないイベントに二人は揃ってため息をもらした。
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「すいません〜私が彼女の相手を出来ていたら……」
「いえ、此方こそすいません。」
二人は自分達の控え室に戻ってくるが……
「あれ?どなたでしょうか?」
「ん?誰かいるのかい?」
そう言って彼が部屋を覗くと
「あ…………」
「カティ……」
彼が護ろうとした女性がいた。
(ふむ……私はお邪魔なご様子ですね……)
素早くそう判断した翔子は、
「では私は先に帰りますのでお二人でごゆっくり〜」
「えっ⁈片山さん⁈」
そそくさと彼女は逃げ帰る。そして部屋には二人だけとなる。
「カティ……なんでここに?」
彼女を昔の愛称で呼ぶ。
「……風紀委員長が、今後の事について二人で話せって……」
彼は研究所の命令でここに来ていた。しかしその束縛が無くなったので無理に通う必要はないが……
「ここは貴女の夢だったのでしょう?」
「……!覚えてたの?そんな昔の話」
「もちろんですよ、あの時の事は全て覚えています」
彼は話を戻して続ける。
「僕は残りますよ、彼らには恩を返さなくちゃいけない。それに……」
「…………?」
「……貴女と……一緒に居たいので……」
「……⁈……そ、それは……」
「僕と……一緒に居てくれませんか?今まで離れていた分も……一緒に……」
「……………………」
彼女は考える様な素ぶりをしたあと、
「……私からもその、……お願いします……」
「⁈」
「もう……寂しいのは嫌だから……」
その言葉を聞いた彼は彼女を抱きしめた。
「もう……絶対に離しませんよ……」
「……うん…………」
ここで一つの呪いが終わった。
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次の日の朝、青柳 健人が起きてリビングに向かうといつかの朝と同じ様なメニューが並んでいた。
「……こういうところは素だったんだな」
「ええ、料理は元々好きだったので」
「喋り方も元々は敬語なのか?」
「いつからかは忘れましたけどね」
それにと言って彼は続ける。
「朝食が大事と言ってくれたのは両親なので……」
「そうか……だったらそのご両親に感謝しつつ食べるか」
「なんの感謝ですか?」
「お前と会わせてくれた事とか?」
「……なんですかそれ?」
「だめかな?」
ブレイムは笑みを浮かべて言う。
「いえ、ありがとうございます。健人」
「……やっと名前で呼びやがったな」
前と変わったルームメイトを見て健人は満足していた。
これでひと区切りですかね。今回は能力紹介無しです。
また次からやります。
瀬古 透矢様、能力の引用許可ありがとうございました。
また次回(・ω・)ノ