Wizars World 《ウィザーズ ワールド》 作:ダンケ侍
2199年4月8日 星皇学園入学式
雲一つない空の下、日本の国花とも呼ばれる桜が咲き誇り新入生を祝うには絶好の天気……
「だと良かったんだけどな……」
青い空など全く見えず、連日の雨によりほとんど散ってしまった桜の木、とても入学式とは思えない様子の中新入生 青柳 健人《あおやぎ けんと》は歩きながらボヤく。
「今にも雨が降りそうじゃねえか、今年の新入生は呪われてんのか?」
自身が新入生であることを棚にあげて愚痴をこぼす。現在午前7時半、入学式の開始は午前9時である。彼は、入学式で新入生代表として挨拶をしなければならないので打ち合わせのために早く学校へ向かわなくてはならなかった。彼は、入学試験の成績がトップであったために新入生挨拶を任せられたのである。機嫌が悪いのはそれが原因なのだろう。
「首席だからって全員が模範生と思うなってんだよ、もっとましなやつがいるだろうに……」
とは言うが、この学校で首席になるのは簡単ではない。この学校の入学試験は筆記試験ともう一つ、実技試験がある。実技試験というのはもっぱら戦闘技能を試されるものだが、首席になるためには両方の試験で高成績を収めなければならない。故に彼以外の人選などお偉いさんは考えるはずもない。
「さて、確か生徒会の人間が迎えに来てくれるはずなんだが……」
「お待ちしておりましたよ、青柳健人君」
声のした方へ顔を向けると、いかにも人畜無害そうな男が立っていた。
「初めまして、私は八重 一成《やえ かずなり》と申します」
「こちらこそ初めまして、青柳健人です」
第一印象は大事なので無難に挨拶を返す。
「生徒会の方ですか?」
「ええ、これでも生徒会長をやっております」
「生徒会長?」
この学園で生徒会長の肩書きは他校のそれとは違う意味を持つ。この学園は完全な実力主義である。
その学園の生徒をまとめるには生半可な実力では出来ないことである。つまり、目の前の男は学園最強ということになるが……、彼はとてもそのようには見えなかった。
(見た目で判断しちゃいけないんだろうが……)
それにしても、である。
「なぜ会長さん自ら出迎えしてんですか?こういうのは、下の人間の役目なんじゃ……」
「やはりトップが自分から動いた方が印象がいいと思いまして」
「言ったら意味ないですけど……本音は?」
「単なる人材不足です」
本当に本音を言われたので、健人は思わずため息をついてしまう。
「失礼ですね。私一人ではご不満ですか?女性の方がそんなに良かったですか?」
「だれもそんなこと言ってねーよ!」
思わず敬語も忘れてつっこんでしまう。
「冗談ですよ、さっさとあのハゲのところに挨拶しにいきましょう」
「おい、会長それでいいのか⁈」
「対面するときだけ愛想良くしてればいいんですよこういうのは」
「はあ、もういいです……」
早くも本日2回目のため息、彼はこの時点で不安しか感じなかった。
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入学式会場は、学園内にある記念講堂で行われる。何の記念で建てられたかは知らないが。
会場は、入学試験に合格した将来有望な若手魔法士達、その父兄と思われる人々、在校生や来賓客などで埋めつくされている。二人はというとステージの舞台袖に待機していた。
「やっぱ、注目されてるから人が多いですね。生徒会も警備とかしてるんですか?」
「それは、我々の管轄ではありません。そのような実力の伴う仕事は風紀委員の役目です」
「なるほど、ジャッジメントですか」
「どこの星で風紀委員をそんな読み方するんですか?」
しかし、通じるやつにのみ通じればいいと思っていた健人が質問に答える事はなかった。
「ところで、新入生挨拶に原稿とかいらないんですか?考えて来なくていいと聞いてきたんですが」
「ええ、必要ありませんよ。新入生挨拶はアドリブでやるのが伝統ですから」
「どんな伝統ですか⁈無計画なんて失敗する要素しかないじゃないですか!」
「私もびっくりしましたよ、いきなりアドリブで挨拶しろだなんてね。失敗するかと思いました」
「まさに今のおれ⁈」
舞台袖で一人の青年が困惑しつつ、ハゲ……もとい学園長の挨拶が始まった。
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一時間半後、学園長挨拶が終わって……
「いや、長すぎだろ!」
健人が突っ込む通り学園長の挨拶は長すぎた。あまりにも長い挨拶に船を漕いでいるがちらほら見受けられる。そして、生徒会長挨拶の時間になりつつある。
「何だって偉い人の話はこんなに長いんですかね?」
「偉いから自身を過剰にアピールしたがるんですよ。さらに偉くなるためにね」
「そうなんですかねえ?会長はすぐに切り上げてくださいよ?」
「私の挨拶は短くて嬉しいと生徒に好評です」
そう言って彼は、ステージ中央へと歩き出した。その姿は堂々としており先ほどと同じ人物とはとても思えなかった。
「仮にも生徒のトップといったところか、挨拶どうすっかなぁ」
急にアドリブと言われても対応出来ないのが人間の性である。挨拶というと丁寧に小難しい言葉を並べなければならない、という気がしてしまいうまく考えがまとまらない。彼が考えているうちに会長挨拶がおわり、彼の出番が迫っていた。
「やはりかなり緊張してらっしゃるようで」
「入試の方がまだましですよ、慣れてないですからこんな事」
「……そうですね、少しは先輩らしい事してみますか。少々よろしいですか?」
一成の言葉に健人は耳を傾ける。
「挨拶だからなんだとか小難しいことは必要ありません。自分のこの学園に対する期待、どのような学園の生活にしたいか、など自分の想いを素直に言葉にすればいいだけのことですよ」
「……なんか告白するときのアドバイスみたいですね。」
「それはまた別の機会に」
一成のアドバイスが終わると新入生挨拶のアナウンスがされた。
「……へっ、いいタイミングで出番じゃないか」
「その様子なら大丈夫そうですね」
「ええ、学園生活が最高に楽しくなりそうな挨拶が思いつきました」
「ではいってらっしゃい後輩君」
「いってきますよ、先輩」
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学園のブレザーの制服をしっかりと着た青髪短髪の男がステージ中央へと立つ。
「皆さん初めまして、私は新入生代表 青柳 健人と申します。長い挨拶はこりごりでしょうし、私自身もあまり話せることもないので手短にいこうと思います」
一旦言葉を切り、再び話を始める。
「私を含む新入生の皆さんは実技の試験を受けたと思います。確かに筆記試験もありましたが、主な評価点は実技の点です。つまり新入生代表は新入生の中でも最も実力がある、という風にもとれます」
会場がにわかにざわつき始める、壇上の男はニヤリと笑みを浮かべて続ける。
「しかし、入学時点でそんなに実力差もないでしょう。不満な人だっていると思います。だから-----」
壇上の男、青柳 健人は-----
「-----おれが気に入らねえ奴は、いつでもかかって来い。相手になってやる」
-----笑みを浮かべながら、大胆に宣戦布告をした。
次の話あたりに、魔法の詳しい説明をしようと思います。