Wizars World 《ウィザーズ ワールド》 作:ダンケ侍
ではどうぞ
6月25日 午前5時30分、星皇学園教師の剛田 鉄扇は本日の授業準備などを行っていた。彼の朝は早い、いつも午前5時には起床してその後授業のためにその日教える分の範囲の予習などを行う。この事は授業を円滑に進めるための彼なりの工夫である、つまらないと揶揄されがちの数学をいかにわかりやすく、いかに面白く教える事が出来るか、それを求める努力を彼は怠らない。事実彼の授業は評判が良いのだが。
そんな事しながら朝食を食べていると午前7時になる。この時間になるともはや恒例となった馬鹿同僚を起こすために電話をかける。多少の間が空いて相手が応じる。
「……ふぁい」
「フレンダ……いい加減自分で起きる努力をしないか」
電話に応じた相手はフレンダ・バンクス、彼女はいつもこのように鉄扇に起こしてもらっている。
「あ〜……いつもありがとうね〜」
「だったら自分で起きろ……切るぞ」
「は〜い」
そう言って電話を切る、二人はこの学園に同時期に着任した者同士である。だが歳は同じではない、鉄扇もフレンダもその魔法士としての実力を見込まれてこの学園に来たのだ。
星皇学園の教師は実力も求められる、故に教師免許をもつ実力者はよく勧誘される。二人も例に漏れず勧誘されたようだ。
「ほう?これは……」
今日の予定について見ていた鉄扇はそれを見てニヤッと笑う。そこには
魔法実習:内容:教師が生徒相手に模擬戦を行う。
と記してあった。
「これは面白い事になるな」
そう言って彼は砂糖とミルクのたっぷり入ったコーヒーを飲む。
「……やはり甘い物はいいな」
これは彼の人には言えない嗜好の一つであるらしい。
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午前8時、職員室で作業をしていた鉄扇の元にフレンダが眠そうな顔で出勤して来る。
「お早う〜鉄さん」
「……相変わらずだな、お前は」
彼女の挨拶にため息をつきながら返す鉄扇。
この学園には早朝の授業というものがない、故にこれよりもっと遅い時間に生徒は登校し、この時間に出勤する教師も珍しくない。
「今日生徒の相手か……面倒だなー」
「……ちゃんと予定は把握しているのか」
この女の教師らしからぬ発言は今に始まった事ではないのでスルー。それよりも彼女が予定を把握している事に驚く鉄扇。だが彼女の無駄なハイスペックは前からの事である、魔法士としても一流で教師としても人気がある。
「ま、わかってるなら話は早い。しっかり準備しておけよ」
「はいはい、わかってます」
「返事は一回でいい、……それからだな」
鉄扇はニヤッと笑みを浮かべると告げる。
「……能力フルで使用して構わないそうだ」
「……それは楽しみね〜」
この時二人共サディスティックな笑みを浮かべていた、このような所は似たもの同士なのだろう……
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アリーナでの合同実習は1-Bと1-Dの二つのクラス合同である。なぜ一つ空きかというとあみだくじで決まったからである、なんだこの学園。そこへ今回の担当である鉄扇とフレンダがやってくる。
「今回実習担当の剛田 鉄扇だ!あえて出席は取らんがいない奴がいる場合素直に申し出るように!」
以前素直に申し出なかった生徒は先生に呼び出されて、地獄とはあのような事を言うのかもしれない、と語った。
「今回は我々教師陣が君達と模擬戦を行う形になる!」
鉄扇の言葉に生徒達がにわかにざわつく、それでも鉄扇は続ける。
「あえて問う!俺とフレンダ先生、どちらかと戦いたい者はいるか⁉」
毎年こう言っているが自分から出てくる生徒はなかなかいない、だから今回もいないだろうと思っていた。
「はい!剛田先生と模擬戦希望するです!」
「わたしはフレンダ先生と模擬戦希望します」
だがその鉄扇の予想は外れる事となる、今回は希望する生徒が二人いた。前者は片山 翔子、後者は神条 礼奈、どちらもクラス代表女子である。
「鉄さん二人もでたわよ」
「ああ、今年の一年はやる気があるようだな」
そもそも今年の一年は少々異常な学年首席がいるのでおかしくないのかもしれない。それぞれクラスの相方に話しかけられていた。
「翔子さん大丈夫ですか?」
「最近試合してなかったからいい機会です」
「ですが相手はどこぞのエージェントのようなゴリマッチョですよ?」
「ゴードンお前数学の点数下げて欲しいのか?」
「無論冗談ですとも」
教師をどこぞのレッドフィールドさん扱いするとはなかなか胆力のある奴だ、と鉄扇は内心評価していた。なぜこれが評価対象になるのだろうか、彼も変わった人間のようだ。
「あまり無理はするなよ」
「ちょっとは無理させてもらうけどね」
「女子の学年一位の貴女のお相手は光栄ね」
健人ばかりが目立っているが、彼女も実力だけで言えば女子のトップである。
「油断はしませんよ〈四大元素使い《エレメンタルマスター》〉」
「ほう?あの人がか?」
「……その呼び方嫌いなんだけど」
実に中二的な名前だがこのような二つ名は高名な魔法士にしかつかない。故に彼女がかなりの実力者であることがわかる。
「それでは……試合開始だ!」
『ユニット!ON!』
鉄扇の合図にそれぞれがユニットを展開して試合が始まった。
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鉄扇は己の体ほどの大きさをした幅広大剣を展開する。重いであろうその剣を彼は片手で軽々と肩に担ぎ上げる。
(やはり見たとおりのパワーファイターでしょうか?まずは先手をとります!)
力で押し込まれると不利、そう考えた翔子は少々距離を詰めて直線の広範囲攻撃を繰り出す。
「距離を保てばなんとか……」
「まずは様子見といったところか……だが!」
その斬撃彼は肌の見えている左腕で受けた。
「…………はい?」
さすがの翔子もこれにはキョトンとしてしまう、しかもその腕には斬撃の跡がついているだけで大した損傷でもなかった。
「どうした?来ないならこっちから……だ!」
「な⁈早い⁉」
軽々と大剣を持ち上げると一息に接近してくるこの行動に翔子の反応は遅れて重い一撃をその薙刀で受け止める。
「ううう、重いです……」
「どうした?まだ始まったばかりだぞ?」
「はうあ⁉」
鉄扇は彼女の薙刀を弾いてバックステップする。
彼の能力は最大(反動無しで)3倍の身体能力増強と身体硬化である。先ほどのような武器による攻撃はほとんど通用しない、通称人間要塞の異名をもつ。
「行くぞ片山ぁ!〈天地震《てんちしん》〉!」
「うわああ、ゆ、揺れてます〜」
鉄扇が地面に拳を叩きつけると翔子の周辺の地盤が揺れる、男子が食い入るように見ていたのはきっと気のせい。その隙に彼は剣地面に刺して振り上げる。
「追撃だ!〈崩斬破《ほうざんは》〉!!!」
翔子に向けて地面が隆起していく、その攻撃は動けない彼女を襲った。
「わふぅぅぅぅぅぅぅぅ‼」
彼女は吹っ飛んで地面に叩きつけられる、もはや戦闘続行不能であった。
「まいりましたです……」
「はっはっはっ!すまんな、やり過ぎてしまった!」
(笑って済む話じゃねーよ)
それが生徒全員の総意だったと言う。
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こちらでも試合が始まる、フレンダの指にはそれぞれ四色に光る四つの指輪がつけられていた。
「さ、今回は特別に手加減はなしだから」
「……それってわたし瞬殺されません?」
「してあげようか?」
「いえ、結構です!」
そう言って重力弾を複数個生み出して発射する、対してフレンダも自身の魔法で迎撃準備に移る。
「重力弾!」
「じゃあまずは水からね、〈スプラッシュマーメイド〉!」
彼女の重力弾に対応出来る数の水流がすべて迎撃する、重力弾はそれらに押し負けて水流がすべて礼奈に降り注ぐ。
「そんな……こんなあっさり」
「次は地でいくわね、〈グランドオブノーム〉!」
「うわっ!次から次へと……」
今度はたくさんの三角錐の形をした岩の塔が出来上がる、これによって動きが制限される。
「こんなもん全部ぶっ壊してやる!〈重力砲〉‼」
巨大な重力の弾が岩の塔を壊しながら突き進む、それに対してフレンダは違う魔法を使う。
「今度は火ね、〈クリムゾンサラマンダー〉‼」
こちらも巨大な火球が重力砲とぶち当たる、両者は互いを消し合い再び二人は魔法を紡ぐ。
「〈重力鎌《グラビトンサイズ》〉!」
「最後は風よ、〈ストーム・ザ・シルフィ〉!」
風の刃と重力の刃がぶつかり合うがまたしても決着がつかない。
「本当に凄いですね、四大元素すべて扱うなんて……」
「まだ小手調べよ、これ」
「…………え?」
フレンダの言葉に間抜けな声をだす礼奈、そこでフレンダが嬉しげに言う。
「ここまで耐えた貴女にご褒美よ!」
「うわ!これ絶対嬉しくないパターンだ!」
「〈四大元素魔法《エレメンタルスペル》!」
礼奈に向けてまずは巨大な火球が迫る。
「まだ避けれる……あれ?」
火球を避けたさきには津波が発生している。
「ちょっと!これどうなってんの⁉」
津波を避けたら竜巻が接近。
「嘘でしょ⁈こんな馬鹿げた出力の魔法⁉」
竜巻までは避けたが隆起してきた地面までは避けられず打ち上げられる。
そして彼女の周囲にそれぞれの色をした魔法陣四つが出来上がる。
「……詰みだなー、これ」
「これで最後よ〈エレメンタルバスター〉!!!」
四色の波動に彼女は包まれたのだった。これがフレンダ・バンクスという教師の実力である。
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実習が終わり生徒全員がこの教師陣に逆らわない事を誓い、模擬戦を行った二人はさらなる精進を胸に誓ったという。
実習が終了した後フレンダは鉄扇に話しかける。
「鉄さ〜ん、お疲れさまですー」
「ああ、お疲れ。久しぶりにあんな大技を見たよ」
「ちょっとやり過ぎでしたかねー」
実際はちょっとどころではないのだが、彼らの発奮材料にもなったので悪いことばかりでもなかった。
「鉄さん今日飲みに行きません?」
「俺と飲んで何が楽しい?」
「いろいろ話が聞けるでしょ、先輩ー」
「悪いが冗談に付き合うほど暇ではない、あと俺は一人で飲むのがすきなんだ」
「もう〜つれない人ですねー」
「なんとでも言えばいい、さて戻るぞ」
そう言って彼は校舎に向けて歩きだす、彼の背中を見ながら彼女は呟く。
「……あながち冗談でもないんだけどなー」
そして彼女も校舎に向けて歩きだす、教師の一日はまだまだこれからだ。
ま、先生だから場数も違いますよね。ところで後書きに書くことがなくなった、なんか書いて欲しい事あれば受け付けます、一応。
また次回(・ω・)ノ