Wizars World 《ウィザーズ ワールド》 作:ダンケ侍
ではどうぞ。
今回最初の合同演習は樹海の中から始まった。青柳 健人と井上 京花の二人は他の人達と同じく自律行動に移ったカメラを頼りに歩く。
「京花、足下気をつけろよ」
「うん、大丈夫。……やっぱり歩きにくいわね」
「だけど実践形式の訓練にはなる……か」
生徒会長八重 一成がどこまで考えてこの形式にしたかはわからないが、彼の事なので考えがあっての事なのだろうとは考えていた。
『そろそろだな……面白い事になりそうな組み合わせだ』
「あんまり怖い事言わないでくださいよ……」
二人は少々開けた場所にでる、そこに立っていたのは----
「……あたし、あんまり運命とか信じないんだけどな」
「今回ばかりは運命なんじゃね?」
「いきなりハードル高いわね……香織さん」
「悪いけど、今回ばかりはおふざけ無しでいくから」
健人・京花ペアの初戦の相手は健人姉である青柳 香織だった。
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場所は変わり今度は神条 礼奈とイワン・ロバノフのペアがカメラに追従して歩く。
「あんたメディア部に入ったんじゃ無いんでしょ?」
「まあ簡単に言えば、勝負に負けたのさ……」
「……元気だしなさいよ」
遠い目しているイワンを慰める少女、昨日の夜部屋でイワンが来てから態度が違うだのなんだの弄られていたのは内緒である。
『こちらもまた……神様でもいるんかね?』
「なんの事です?」
それからしばらく歩くと相手のカメラが見えた、そこに居たのは----
「……礼奈か」
「……兄貴が初戦の相手か」
「これはまたやり辛い相手だな……」
彼女の兄、神条 錬磨が立っていた。今ここ二箇所において二つの兄妹(姉弟)対決が始まる。
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剛田 鉄扇は画面を見ながらそれぞれの生徒に連絡を送る、純1年ペア対3年の兄妹(姉弟)対決はほぼ同時に始められて彼の興味を誘った。
「なんか運命感じるってのは同感だね、ワクワクしてしまう」
彼も二つの勝負が気になる様子だがそればかりにもかまけていられない。
「姉、または兄越えなるか注目だな」
鉄扇は他の画面にも目を通し指示を再開しながら、勝負の行方を見守っていた。
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錬磨と礼奈が睨み合う、相手はイワンの事を気にしていないのだろうか、そう思ったとき彼が口を開く。
「お前が礼奈のパートナーなんだな?」
「微力ながらパートナーを務めておりますよ、錬磨さん」
今度はイワンを睨みながら言うが彼には大して効いていないようだ。
「胆力はあるな……礼奈お前はこいつがパートナーがいいんだな?」
「……ええ、たとえ誰に言われても解消する気はないわ」
今度は礼奈に対して問うが彼女もまたはっきりと宣言する。
「……だったら俺を超えてみせろ」
「……兄貴?」
「俺は確かにシスコンだかなんだか言われてるよ、だが本人の意思を曲げるほど腐ってもねえ」
一呼吸おいて彼は続ける。
「だから俺を超えて、俺が心配しなくてもいいって事を証明してくれ。じゃねえと俺は安心できねえ」
「……兄貴」
「……その言葉しかと聞き届けました」
イワンが己のユニットを呼び出しつつ言う。
「貴方が卒業しようと私が彼女を守れるということを、証明させてもらう!」
「……真剣勝負させてもらうわよ、兄貴!」
「いいぜ、その覇気!かかって来いやあ!」
兄妹のユニットも展開され勝負が始まる。
「兄貴相手に数はアドにならないから気をつけて!」
「さすがにわかってんな!」
錬磨は己の能力を使うと自分の両脇にガトリングを生み出す。
「ぶちかます!!」
二つのガトリングをそれぞれに放ってくる、しかも二人がばらけるように撃っている。
彼は生成だけでなく魔法による遠隔操作で銃火器を操る事が可能だ。
「くっ……こちらも全力でいかねばなるまい、〈閃光〉!」
この試合展開はまずいとみた彼は光の速さで錬磨に接近して戦おうとするが……
「それがどうしたぁ!」
「くそ、勘のいい人だな……」
神条 錬磨の強さ、それは何も能力や刀捌きだけではない。彼はなぜか幼い頃から自分を狙う視線や殺気などに非常に敏感なのである。それを駆使してきた彼はどのような不意打ちも通じず、予想外の攻撃にも早い対処をする事が出来る。これが風紀委員長高梨 徹とも互角に渡り合える強さの秘訣なのだ。
「〈重力弾〉!いっけえ!」
複数の小規模な重力弾がイワンと対峙している彼に向かう。
「そんな物食らわねえ!」
刀でイワンを弾き飛ばすとそのまま重力弾を迎撃する、彼は刀の使い方を怠っているわけではないのだ。
「どうした!真壁の力見せてみろ!」
「……これは師匠だけの力じゃない」
「ああん?何が言いてえ⁉」
「これは私と師匠と彼女の力だ!」
一度鍔迫り合いで負けても彼は怯む事なく錬磨に向かっていく。
「ちっ……しつこい野郎だ」
錬磨は片手にマグナムを呼び出しつつ応戦する。
「これは師匠の教え、彼女の助力により培われた力だ。ゆえに今の私に----」
彼にマグナムの弾が飛んでくる。
「断てぬ物など……あろうものかあ!」
音速を超えた速度で迫る銃弾を彼はその刀で斬って見せた。
「な……馬鹿な⁉」
「行くぞ!礼奈!」
「合点承知ってね!」
さすがの錬磨もこれには動揺したらしく一瞬動きが止まる、だが彼らにはその一瞬で充分であった。
「〈光刃一閃〉!」
「くそ、また光速移動かよ!」
光を纏ったイワンの刀の攻撃を防ぐが……
「背中、ガラ空きだよ兄貴」
「ちっ……情けねえな俺は」
「……これでわたしの成長も、見届けてよね」
「……全力でぶつけてこい!」
「うん……〈ダークバースト〉ォ!」
イワンの攻撃に対応していた彼はこの攻撃に反応が出来ずに闇に包み込まれた。
イワン・礼奈ペアの初戦勝利である。
「こりゃあ認めざるを得ねえな……」
「貴方との勝負とても学ばせてもらった」
「おう、徹と一成以外に負けんなよ」
「……その二人はよいのですか?」
「あいつら化け物だからな」
背中を地につけたまま、なんの躊躇いもなく彼は言い放つ、よほど負けたのだろうか。
「イワン、ちょっといいかな?」
「……私は少々席を外すとしようか」
二人で話したい事を察知したのか彼は離れていく、普段もあんな感じで理解してくれればよいのだが。
「……兄貴その、ありがとう」
「お前らが自分で示した結果だろ?俺は何もしてねえ」
「そうじゃなくて……いつも心配してくれてて」
「……兄として当然だろ」
「いつもは素直に言えなかったけど、私もちょっと暴走気味になっちゃう兄貴の事、好きだよ」
「礼奈……」
いつもは見せない自分の感情を表して恥ずかしげに顔を背けながらもお礼を述べる礼奈。
「あ、でも勘違いしないでね。これは家族愛としてって事だから」
「……わかってるよ、あいつの事好きなんだろ?異性として」
「ちょっと!いきなり何を言ってるのよ!」
「バレバレなんだよ、お前。わかりやす過ぎ」
「……当人は気づかないけどね」
彼には気づかれているつもりではなかったのだろうか、驚いた後事実に気がついて落ち込む礼奈。
「兄ちゃんは応援してやるからな〜」
そう言って彼女の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「ちょっと髪型が崩れるでしょー」
「へっ、じゃあな。出来るだけ勝ち抜けよ、俺が恥かいちまうからな」
彼はカメラのガイドに従い樹海を出て行くのだった。
「……いい人だったな」
「イワンにも礼を言わなきゃね」
「ん?私は何もしてないが?」
「言ってくれたでしょ?私が歩みよるのが大事だって」
「……さて、どうだったかな?」
「あ、ちょっと!待ちなさいよー」
勝ち抜けた二人は新たな相手を探しに樹海を再び歩きだした。
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場面は戻り健人・京花ペアと香織が正面から対峙する。
「いきなり高えハードルだな」
「……あたしはあんまり話すつもりはないよ」
彼女は自身のユニットである両手剣を構えて言う。
「貴方達の成長、直接あたしに見せなさい!」
「……京花、頼むぜ!」
「ええ、私も負けるつもりなんてないからね!」
姉と弟、姉貴分と妹分の勝負が静かに始まる。
「先手必勝ってね♪〈フロストランサー〉!」
二本の大きな氷の槍がそれぞれを襲う。
「京花、頼めるか⁉」
「問題ないわ!」
京花が水の盾を呼び出し氷の槍を反らすように防いで二人に当たらないようにする。
「ただ防ぐだけじゃないか……やるね」
「今度はこっちからだ!」
二人の氷を纏った刃同士がぶつかり合う、しかし二本の長剣と一本の両手剣の鍔迫り合いでは両手剣に軍配が上がる。
「攻撃が軽いわよ、健!」
「そりゃ、両手剣には負けるっての!」
彼は言いながらも次の行動をとる。
「飛んでけ!〈アイスエッジ〉!」
ユニットと擬似ユニットの並列使用により多量の氷の刃を彼女の周りに生み出す。
「本当多いわね……だけど、数だけ居たってね!」
速度強化を使う彼女は重い両手剣とは思えないスピードで氷の刃を砕いていく。
「〈アクアライン・ツイン〉!」
その間にも京花が二つの水流をぶつけようとする。
「まだ甘いわよ、〈フリーズロック〉!」
その二つの水流はぶつかる前に氷に変えられてしまう、香織の攻撃はまだ終わらない。
「使わせてもらうからね、〈フリーズブレイク〉!」
「上手く攻撃を利用された⁉」
先ほど凍らせた水流が砕かれ氷のつぶてとなって飛んでくる、二人がその対応に追われてる間に香織が仕掛ける。
「よそ見してたらやられるよ!」
「ちっ!やっぱ速え!」
「〈氷掌烈破〉ぁ!」
「ぐわああああああああ!!」
「健人⁉」
普段彼の使っている技でふっ飛ばされる、そして彼女は京花に告げる。
「さ、あとは京ちゃん一人だけよ」
「……過信は禁物ではないですか?」
「まだあいつが戦えたとしても戻ってくる前に終わらせてあげる」
「だったら私は……耐え忍ぶだけです!」
香織が両手剣を構えて接近してくる、近距離の対応法が少ない彼女が不利に思えるがまだ諦めてはいないようだ。
「いきますよ……〈スネイクストリーム〉!」
「危ない!……今のは痛そうね……」
京花の出した水圧カッターのような攻撃は香織を捉える事は出来ない。
「まだ慣れてないか……」
「やってくれるね、〈フロストランサー〉!」
香織が再び氷の槍を出現させる、しかしその数は先ほどまでの比ではない。
「……何本作れるんですか?」
「これが限界の十五本よ、受け取りなさい!」
合図と共に十五本の槍が飛んでくる、最初の数本は受け流す事が出来たが段々とその余裕がなくなってくる。
「後……少し……」
「希望が見えたところ悪いけど……〈氷刃絶破《ひょうじんぜっぱ》〉!」
「しまっ…………!」
剣に纏わせた氷の刃で彼女を斬る、京花は近くの木に叩きつけられる。
「く……げほっ!」
「さて、そろそろチェックメイトかな?」
苦しげに顔を歪ませる彼女にそう言う香織。
「……香織さん知ってますか?」
「お喋りには付き合わないわよ」
彼女がとどめをさそうとするが……
「一番負ける要素があるのはですね----」
「----勝ちを確信した時なんだってよ」
「な、健人⁉」
「お返しだあ!〈氷掌烈破〉!!」
「ぐうううううううう!」
彼の攻撃を両手剣でなんとか受け止める、彼女が京花に気をとられている間にすでに接近していたのだ。
「頼むぜ京花!〈フリーズバインド〉!」
「しまった……足が……」
彼がレイノルズとの戦いの時に見せた拘束技で香織を捕らえる、だが今度とどめをさすのは彼ではない。
「これで詰めです!〈ドラゴニックバイト〉!!」
巨大な水龍が大口を開けて香織に迫る。
「……また大袈裟な技じゃない」
「香織さんこういうの好きでしょ?」
「……ま、そうかな……」
水龍はそのまま香織を呑み込む、この試合は健人・京花ペアの勝利に終わった。
「あーあ、愛の前では勝てないのかー」
「……なに言ってんだよ姉貴」
「やっぱ油断してたのかな?自分では本気のつもりだったけど」
やはり勝負とは一瞬の気の緩みが負けにつながるということなのだろうか、香織は寝そべりながら言う。やがて立ち上がりながら言う。
「ま、あたしに勝ったんだからイッセーと徹以外に負けんじゃないよ」
「なんでその二人はいいんですか?」
「だってあいつら化け物だし」
「……なぜかデジャビュを感じる」
「じゃ、後頑張りなよ?」
彼女はそう言ってカメラの先導に従い樹海を去った。
「……しかし疲れたな」
「これで戦ってない人と当たるとかだったら……」
『それは無いそうだぞ一成が言うには』
「そりゃ、助かった……」
『まあ他の奴らが初戦終わったら言うから休んどけ』
「そうさせてもらいますね……」
すでに疲れきった二人はその場で休んでから樹海を歩くことにした。
3年がいきなり二人敗北はやり過ぎとも思ったけど化け物二人いるからいいよね、次は誰と誰が出会うかな?
また次回(・ω・)ノ