Wizars World 《ウィザーズ ワールド》 作:ダンケ侍
ではどうぞ
敗北者ルーム、先ほど敗戦が決まった福原 尚輝とミリアム・ブランのペア、青柳 健人と井上 京花のペアがここに戻ってくる。
「あー、なんか運悪かったな」
「これが……絶望か……」
「それは言うな」
レイノルズ・マッケイが健人を慰める、絶妙なタイミングで生徒会長が来てしまったのだからそれを絶望と言ってしまっても仕方ないだろう。
「京花もお疲れさま……」
「……礼奈もお疲れのようね」
「徹さんと戦って負けた……」
「……お互い大変だったわね」
神条 礼奈も京花に言葉をかけるが彼女自身も非常に疲れている様子だった。
「2年が1年に負けるとはどういう事かな?」
「申し開きのしようもないです……」
「戦局を見誤りました……」
青柳 香織が自分の事を棚に上げて尚輝とミリアムに説教する、最も彼女は二対一というハンデがあったが。
「後残るはあいつらか……」
「化け物お二人だね」
「良い画が撮れそうですよー」
強者二人がぶつかるとあってこの場の期待も高まっているようだ。
「カメラを全て向かわせるとするか」
「僕も手伝いますよ」
「……私も……」
「おお、悪いなゴードン、クルシュマン、一人ではなかなか大変なのだよ」
ブレイムとカティアが剛田 鉄扇に協力を申し出る、複数のカメラを一人で操作しなければならなかったのでこの申し出はありがたい。
「さぁて、どう転がるかな?」
教師である彼もこの勝負は楽しみなようだ。
GPSの反応を調べる、彼らが衝突するのはまもなくだ。
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八重 一成は樹海を歩く、決着をつけるべき親友と戦うために。
彼とは入学して以来の仲である、彼らはタイプこそ違ったがそれが幸いしてか非常に馬があった。彼らには強くなりたい理由がそれぞれあった、そんな時折良くしてモーガン・バロウズと知り合う事になる。
徹は戦い方、一成は格闘術を彼から学んだ。もちろん楽なものではなかった、それでも彼らは理由のために自身を鍛え続けた。
その二人がいまこの樹海で出会う。
「……後は貴方だけの様子ですね」
「お前とは最後に戦いたかったからね、天命に感謝だよ」
「ですが少し疲れ気味では?大丈夫なんですか?」
「お前こそ服が乱れてるぞ?戦い方を教えてやるとか啖呵きったくせに」
二人は軽い言葉で言い合いながらも手や足をせわしなく動かしている、どうやら一刻も早く戦いたいようだ。
『おい、もう始めてもいいんだぞ……』
そう鉄扇が言ったその瞬間、二人はその場を蹴る。
「決着をつけるぞ!一成!」
「白黒つけましょう!徹!」
『ユニット!ON!』
同時にそう叫びながら。
徹は得意のハンドガン二丁、一成はトンファーを手に接近する。
「前回戦ったのはいつでしたっけ⁈」
「去年の文化祭じゃないかな⁉あれから忙しいかったからね!」
徹が連射するハンドガンの弾を一成はトンファーで弾く。
「今度はこれだ!」
徹は距離をとる、そしてマシンガンを持ちそれを撃つ。だがその弾丸はあらぬ方向へと飛び……それらは全てカメラを撃ち抜いた。
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カメラの画面が全て撃ち抜かれ、集音機能も破壊されたために鉄扇は一時焦ってしまう。
「徹がこんなミスをしただと⁉」
「良い画が撮れるかと思ったのに⁉」
「強者の戦い方が学べるチャンスなのに……」
「委員長の本気みたかったなー」
それぞれが最強同士の戦いを楽しみにしていたのてがっかりしているようだ。
「GPSは機能している……予備のカメラを出すが、間に合うか?」
「とりあえず出してみましょう、価値はあります」
「うむ……」
鉄扇はどこか納得のいかない表情をする、あの高梨 徹がこんなミスをするはずがない。だが現にカメラは全部----
「待て……全部?」
全部破壊されるなど考えてみればおかしい、カメラ全部で8機はあったのだ。それらを全て誤射で撃ち抜くだろうか。逆に考えればカメラをわざと全て撃ち抜いた、という事になる。
「なにが目的なんだ……?」
教師は風紀委員長の意図がわからず、
「徹……まさか……」
香織は一つ心当たりがある、心当たりというには弱いかもしれないが一成がブルーアースの件を伝えた時に彼は渋い表情をしていた。それと関係があるのかもしれないと思ったのだ。
あの件はまだ公にはなっていない、学内で知るのは一成、香織、徹、その他教師陣のはずなのでここで鉄扇に伝えるのはまずいだろう。
「なにについて話すつもりなのよ……」
香織は言い得ぬ不安を感じて見えなくなった画面を見つめる、無論そこには何も映らない。
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全てのカメラを破壊した徹はマシンガンを収める。
「……なんのつもりですか?」
「お前の本音が聞きたかった、それにはあれは邪魔だったからね」
「本音?なんのです?」
「この訓練、ブルーアースが来た事に関係あるのかい?」
徹はいつもよりも鋭い声で彼に問う、彼もいつもの飄々とした口調ではなく真面目に答える。
「……念のために自衛は出来た方がいいですからね」
「これでどうにかなるのかい?」
「しないよりはましかと」
二人の間には親友という気軽さがまるでない、意見を反対お偉いさんの会議であるかのような印象を受ける。
「念のために、と言ったね」
「ええ」
「本当にお前だけで相手できると思ってるのか?」
「出来るか出来ないかではなく、やるんですよ」
「……それは違うよ」
徹は今にも消え入りそうな声で反論する。
「君一人で相手できる相手じゃないだろ!」
「貴方が協力してくれるでしょう」
「もっといるじゃないか!頼りに出来る人間はさ!」
「軍人の訓練を受けたのは私と貴方だけでしょう」
モーガンから受けた訓練は軍人が受けるそれといえた、彼らが学年の中でも飛び抜けて強い理由でもある。
「それとも貴方は他の生徒を危険に晒せとでも?」
「既にテロの対象なら危険に変わりないだろ!」
「だったら生徒を進んで危険に晒せと?冗談じゃない!!」
徹の言葉をそのようにとらえた彼はいつになく憤る。
「生徒は本当の戦闘を知らない!そんな危険に晒せますか⁉出来るわけがないだろ!」
あまりの怒りにいつもの口調ではなくなってしまう。
「何も死にに行けと命令しようとしているわけじゃない!だけど僕らと先生だけで止められると思ってるのか⁉」
「軍だっている!だからやらなければならないだろ!」
「なんでお前は自己犠牲の手段しか考えない⁉」
「自己犠牲で構わない……」
彼は決意したかのようにトンファーを強く握り締めて言う。
「自己犠牲で皆が無事なら!それでも構わない!」
「この……わからずやが‼」
徹は大剣を呼び出して彼と真っ正面からぶつかり合う。
「お前は間違ってるよ一成!もっと皆の協力を仰ぐべきだ!」
「そうすれば混乱が広がり、今までの生活は維持出来なくなる!」
「テロが急に起きたってそうなるじゃないか⁉」
「それを未然に防ぐのが我々だ!」
さすがに接近戦では分が悪いと思ったのか徹はハンドガンを持ち直す。
「それにだっていずれ限界がやってくる!」
「それでもやるしかないだろ⁉」
「お前がここを大事だと思ってるのはよく知ってる!だけどその考えはエゴだよ!」
「だったらそのエゴを貫き通すまでだ!」
「お前は生徒を下にしか見ていないのか⁉」
「……今のは看過出来ないな、徹」
徹のハンドガンを魔力弾で応戦する一成、だが徹の台詞によってその動きが一時止まる。
「生徒を大切にするのが間違っているのか⁉」
「そのやり方が問題なんだよ君は!」
「……もういいよ」
「おい!一成!」
「……formation set」
「一成!」
彼に必死に呼びかけるが全く聞く耳を持たない、彼は魔法陣を展開する。
「同調してくれなければ力ずくだ」
「くそっ!」
「逃がさないよ徹……〈ペンタブレイカー〉!!」
魔法陣から五本の収束砲が放たれる、それをシールドで耐えていた徹だったが最後までは持ってくれなかった。
「ぐああああああああ!!」
彼は木にぶつかりそのまま木に寄りかかる形となる。
「……私のやり方に従ってもらいます」
「……一成」
いつもの口調に戻った彼は意地を通す。
「今回の試合はノーカンです、今度まともな試合をやりましょう」
そのまま彼は樹海を出て行く、場所がわかっているかのような足取りである。
「…………僕では何も出来ないのか」
徹は彼を止められなかった事を後悔する。
「僕一人では誰も救えないのか……」
皆川 咲良の一件も自分一人では解決できなかった。
「僕の声は誰にも届かないのか……」
彼は己の無力さを嘆く事しか出来ない。
「僕のこの力は何のためにある?」
自分が手に入れたこの力は何なのか、誰に問うかもわからずに言う。
「教えてくれよ、僕はどうすればいいんだ…………華菜」
彼の呟きを聞き届けるものなどそこには誰もいなかった。
今回は正式な決着はついていません、徹の最後の嘆きは後に語ってくれるでしょう。
また次回(・ω・)ノシ