Wizars World 《ウィザーズ ワールド》 作:ダンケ侍
ではどうぞ
都内某所、一人のブルーアースの構成員である男が連絡を受けていた。
「……また仕事か?」
『次のターゲットに一番近いのは貴様らなのでな、働いてもらうぞ』
「……その現場とやらはどこだ?」
『ふむ、セントラルタウンとやらの一つの建物だ、詳細なデータは後ほど送る』
「そうか……なら切るぞ」
『もう少し会話を楽しんでもバチは当たらんのだぞ?』
「話してるだけで胸糞悪い、おしまいだ」
そう言って彼は携帯端末の通話機能を切る、二人の中はとてもではないが良いものではないようだ。
彼は後に送られてきたメールの送付ファイルを開き、場所を確認する。
「セントラルタウン、セントラルタワーか。何とも安直な名前だな」
自身の仕事先を確認してから彼は相棒の少女に呼びかける。
「アリス、仕事だ。さっさと済ませるぞ」
「了解〜、またお偉いさんを襲撃するの?」
「何としても仕留めろとのことだ、建物は破壊しても構わないが民間人には被害を出すなだとよ」
民間人に手を出さないのは彼らのやり口である、彼らのの攻撃対象はあくまで魔法に関係するもの達でありそれ以外には極力被害を出させないとのこと。
だがそれでもどんな人も彼らがテロリストであるという認識には変わりない。
「ま、いつも通りなんでしょ?なら問題なし」
言いながら奥の部屋からカチューシャをつけた金髪ショートカットの少女が出てくる。彼女がアリスなのだろう。
「一々文句言ってたらキリがないよ、特にあたしらはさ」
「……まあいい、俺はすべて燃やし尽くすだけだ」
そう言って彼は仕事場に向かう準備をする。
「じゃ、くそみたいなお仕事行きますか、ラウス」
「ああ、クソッタレな今日限りの職場にな」
ラウスと呼ばれた彼はまるで焔のような赤色長髪を揺らしながら歩いて行く。
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セントラルタウン、夏休み真っ盛りである今日この日はやはりというべきだろうか学生達で賑わっている。
そんな中でも少々目立つ二人組、青柳 健人と井上 京花は歩いていた。
「……なんか視線多くね?」
「気のせいとでも思いなさい」
「それ認めてるよな、なんでなんだ?」
それはおそらく容姿のよいカップルが手をつないで歩いているからなのだろう、本来ならそこまで目立つものでもないだろうが仲睦まじく歩く姿にその(主に京花の)顔立ちや服のコーディネートなどが手伝って視線を集めているのだろう。
「まあいいや、今日はどうするよ」
「あなたとならいろいろ見て回るだけでもいいんだけど」
「それだと暇にならねえ?」
「あなたとだから暇じゃないの」
「そうですか、なら適当に歩き回るか」
「最初からそのつもりよ」
そしてこの会話も人々の目を集める要因なのであると彼らは気がついているのだろうか、周りからは(主に健人に)嫉妬混じりの羨望の視線が向けられている。
「とりあえず昼にあのファミレスは無しな」
「いつまで根に持ってるのよ……」
GWの時に行った炭酸の揃っていないあの店を彼はまだ許していないらしい、くだらない事を話しながら彼らは気の向くままに歩いて行く。
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ブルーアースの活動拠点、それは世界中の軍などが血眼になって探している。だがそんな彼らの努力虚しく場所の特定には至っていない。一説では特定の場所ではなく、各地を転々としているのではないかとされている。
そんな世界の何処かにあるブルーアースの拠点にダグラス・ヴォルテールはいた。
「あんたが参謀さんかよ?」
彼はいきなり連れて来られてわけがわからないため、そこにいたモニターを見ている藍色の髪に鋭い目をした少々鼻の高い人物に話しかける。
「ふむ、そう聞かれたらそうだと答えるが」
「ちっ、周りくどい。あんた誰だ?」
「この組織の参謀、そして実質組織を動かしている人間だが?」
「……それBOSSって言わねえ?」
「私に組織を率いるカリスマはない、それはまた別の人物の役目だ」
統率するものや行動を指示するものにはそれぞれの役割がある、それを両立できる人物などいないとどの組織にも総じて言える事だ。ゆえにそこに別々の適している人間が務めるべきだ、と彼は語る。
「……難しい話はわかんねえよ」
「貴様は私の指示に従って暴れていればよい、それが貴様の適している場所だ」
「そうかよ、それでなに見てやがる?」
ダグラスはその男が見ているモニターに目を向ける。
「……またお偉方の会議か、減らしても減らしても出て来やがる」
「我々の消した連中など少数に過ぎん、それに奴らを消したところで実働隊が残るだろう」
「それで世界一の日本から潰すのか?」
「その通りだ、奴らは我々の最大の障害となる」
「だったら軍を叩くのが先だろ?なんで学園に行けなんて命令をだした」
彼が以前より感じていた疑問を問う、なぜいきなり学園の生徒会長を殺せと命じられたのか。
「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、有名な諺だ」
「……それが何の関係があるんだ?」
「はあ、お前の知能の低さには呆れるな」
彼は額を抑えながら呆れる表情をする。
「うるせえ!いいから答えろ!」
「喚くなうるさい、あの学園をある方面から見れば軍に人材を提供する工場みたいなものだ」
「それが目的だからな」
「即ち、軍をいくら削ってもそこからいくらでも湧き出るだろう」
「それが面倒だから根本から断つと?」
「ようやく理解したか、その通りだ」
つまり供給源から潰す事で敵が疲弊するのを狙うと彼は言っているのだ。
「じゃあなんでまたお偉方を狙ってんだ?」
「奴らには定期的に仕事をやらせんとな」
「……あんなガキ共にかよ」
「貴様とてそんなに変わらんだろうが」
「うるせえ、お前の狙いがイマイチわかんねえよ」
「貴様ごときに理解されてはこちらの拠点はすでにばれておろうに」
一々一言が余計なやつだと内心ダグラスは感じていた、そこで聞いていなかった事がある事に気づき聞いてみる事にした。
「そういやてめえ名前聞いてねえな」
「ん?正宗達から聞いておらんのか?」
「知ってたら聞いてねえよ、答えろ」
「そうか、私はトーマス・ガランだ。名前で呼ぶ必要はない」
「ああ、そうかい。てめえはこの組織でなにするつもりだよ?」
「ふっ……さて、な」
彼はモニターを見つめて不適に笑いながら言うのであった、画面を覗くとそこには仕事を始める寸前の彼らの姿がある。
「ふっ……世界など我が手の内よ……」
画面の中でブルーアースの活動が始まった。
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セントラルタワー、今ここでは魔法士協会のお偉いさん達が最近のブルーアースの活動傾向について話し合っていた。
「いやあ、最近のテロリスト共にはほとほと手を焼かれますな」
「既に同士が何人を彼らの餌食となっておる」
「早く軍にも拠点を見つけて欲しいものです」
今回集まったのは三人程度、会議というのは名目であり本来は会議などではない。三人が食事ついでに話しているようなものだが会議と言えば経費で済むために名目として利用しているのだ。
「あのテロリスト共も最近調子づいているのか活動が活発化してますからなあ」
「だが所詮はテロリスト、世間からの支持など得られるはずもない」
彼らが話すように彼らのような立場の人間でもブルーアースはテロリスト認識であるようだ。
「そう言えば次の標的が星皇学園だとか、そんな妄言を吐く輩いるそうですな」
「はて?誰でしたかな?」
「確かモーガンとか言っていましたな」
「あいつか、星皇に近いとか言われて偉ぶっているのではないか?」
「だからあんな末席の部隊から出られんのさ」
「少しは媚びるということを覚えるべきですな」
魔法士協会の人間は軍事にも大きく影響を及ぼす、軍が動かせないのはこのような者が多数いるからというのも原因であろう。
「しかし明日は我が身ですな、今我々が襲われないとも限らない」
「以前はボディーガードが寝返ったという事例もありますからな」
「今回の連中は大丈夫ですよ、金さえ積めば言う事を聞く腕利きばかりなのでね」
その時部屋の外から激しい物音がした、まるで魔法を使ったかのような音である。
「どうした⁉何があった⁉」
「……てめえらの言った腕利きは全員片付けたぜ」
その言葉と共にドアが乱暴に開かれる、そこには焔のように赤い長髪を持った男と金髪ショートにカチューシャをつけた女が立っていた。
「な、貴様何者だ⁉」
「テンプレ乙〜」
「名乗るつもりはねえ」
男は剣を構える。
「てめえらはどうせ燃えるんだからな」
直後、部屋の中を爆炎が覆い尽くした。
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健人と京花が街をぶらぶらしていると突然近くのビルのとある部屋が爆発し、火災が発生した。
「なんだあ⁉急に爆発発生で街が混乱している⁉」
「誰に何を説明してるのあんた⁉」
いつもの平和な日常を過ごしていた人々はこの事態にひどく混乱した模様で我先に、とその場から逃げ出していた。
「爆発とかなんかのテロかよ……今度の標的日本か?」
「それよりどうする?警察は動いてるようだけど手がまるで足りてないわよ」
ここは中心都市なのですぐに警察が動けるようにしているのだろう、だが今回の一般人達のパニック酷く人手が足りないようだ。
「手伝うしかねえだろ!」
「だったらさっさと行動よ!」
彼らもまだ学生ではあるが星皇学園の生徒、実力のある魔法士である彼らは夏休み前に緊急時のための対応を教えられていた。その時に避難誘導も含められていたのだ。
「なんだ君たちは⁉早く逃げないか⁉」
「自分達は星皇学園の生徒です、避難誘導手伝います!」
「あの学園の……?確かに許可は出ていたな、わかったここを頼む!」
避難誘導をしていた人はそう言うと別の場所へと向かった。
「学生に任せるなんて世も末ね」
「仕方ねえだろ?ほら、さっさとやる!」
「言われなくても!」
彼らはそこにいた人に代わって避難誘導を行う、成果がでているのか先ほどよりもパニックは緩和されているようだ。だがそれでも混乱状態には変わりない。
その時健人はそのビルから出てくる人影を見つけた。
「あいつに話を聞かせてもらう!」
「ちょ、健人⁉なにする気⁉」
だが健人はその言葉を聞く前にそこへと向かってしまう。
「ああもう!なにしてるのよあの馬鹿!」
彼はこの時、無謀と勇気の違いをわかっていなかったのかもしれない。
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仕事を終えたラウスは後処理をアリスに任せて先に外へと出ていた。
「くだらねえ、ただの屑の集まりじゃねえか」
自分が殺した相手の会話を思い出しそう毒づくラウス、ボディーガードも腕利きと言っていたが彼にとっては大した相手にはならなかった。
「報告しなきゃならんな、どうせ監視してるんだろうが……」
「そこのお前、ちょっと止まれや」
「……あ?」
彼が声のした方を向くとそこには同じくらいの年の青髪の少年、青柳 健人が立っていた。無論ラウスは名前を知らないが。
「……なんの用だよ」
「ビルから出てきた割には慌てていなかったからな、話聞かせろよ」
「ふざけるな、なんで警察でもない雑魚に話さなきゃならねえ」
「だったら警察に案内するからついて来いよ」
「……うるせえ野郎だ」
彼は二つの長剣を出現させる、それを健人に向ける。
「邪魔だから寝てろ」
作戦通りに死なない程度の威力で彼を無力化しようとする、だがその一撃は同じく二つの長剣によって防がれていた。
「ちょい、いきなりは危ねえだ……ろ!」
「……んだと?」
彼の一撃は弾き返される、加減をしたのは威力だけで速度などは並の魔法士では捉えることは不可能なはず。だが相手はそれを受け止めた挙句弾き返した。
「……上等だ、遊んでやる」
「遊ばれてやるつもりはねえよ」
健人とて合宿で強くなった身、そう簡単に負ける事はない。そう思っていた。
「てめえなんで俺の前に立つ?」
「……?そりゃ怪しいやつを見逃す程愚かじゃねえからな」
「それだけか?」
「あん?他に何かあんのか?」
「……くくっ、おめでたい野郎だな」
「……一体なに……」
その時彼は普段嗅いだ事のない、いや正しくはこのような嗅いだ事のある、だが普通よりも濃く強い臭いを感じた。
(血の臭い?)
それらは自身の目の前に立つ少年からしてくる臭いだった。
「俺はなあ、安っぽい勇気で命を捨てるような奴が……たまらなく大嫌いなんだよ!!」
彼の雰囲気がその叫びによって変わる、そしてその言葉によりこの戦闘が何を意味しているかを理解する。
それは殺し合いという名の戦闘だ。
(あ……れ……?)
それを理解した途端彼の体は震えていた。
(やべえ、震えが止まらねえ。これが殺気ってやつなのか?)
彼が行ってきたのは試合、今から行われるのは殺し合い。そこにはかなりの差が存在している。そしてラウスから発せられる殺気も恐怖の原因だろう。
「震えてるじゃねえか、所詮てめえもただの屑らしい……な!」
「⁉くそっ!」
彼の一撃を何とか防ぐ健人、だがその足では踏ん張りが効かず吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。
「魔法士なら殺してもいいだろう、死ね」
淡々と言葉を告げ、彼は剣に熱を纏わせ斬りつける。
「……まだ抗うつもりか」
「生憎、おれは老後に病死すると決めてるんでな」
だがその一撃は届かない、健人はラウス攻撃を今現在の精一杯の力で防いだ。
「死の恐怖に怯えたと思ったんだがな」
「こんなもん自己暗示だ、これは試合だと自分に暗示をかけた応急処置だよ」
「ならそれごとてめえのくだらん正義感を砕いてやる」
彼は自身の剣に熱と炎の魔力を纏わせる。
「命を投げ捨てるようなくだらん事が出来ないように命ごと消してやる!!」
「それには及ばねえよ!」
彼も剣に冷気と氷の魔力を纏わせる、そのまま二人がぶつかろうとした時、一人の介入者が現れる。
「ラウス!早く戻るわよ!」
後処理を終えたアリスの姿がそこにはあった。
「ちっ、今回の勝負は預けといてやる……」
「なっ⁉待ちやがれ!」
「そんな状態で追えるなら来てみろ」
無論そのような状態で追跡する事も出来ず彼はそこにいる事しか出来なかった、やがて二人が去ると緊張の糸が途切れたようにその場に座り込んだ。
「やべっ、立てねえなこれ。安っぽい勇気か……」
確かに彼はこれを殺し合いとは思っておらず、ただの試合と変わらないと思っていた。自分は実力があるから、そんな慢心もあったのかもしれない。
「健人⁉無事⁉」
「……ああ、何とかな」
しばらくして京花がこちらにやってくる。
「大丈夫⁉怪我はない⁉」
「何とかオールオッケー、心配かけたな」
「本当よ!なんで一人で危険な事をするのよ!死んでたらどうするつもりだったの⁉」
「……おれはなにもわかってなかったよ、悪い」
今回の件は完全に健人の責任である、彼は京花に頭を下げる。
「本当……無事でよかった。警察の人が話を聞きたいって呼んでるわ」
「わかった、すぐに行こう」
恐らく目撃者は彼一人であろう、そんな彼に事情聴取は当然だ。
その時彼はあの男の言葉を思い出す。
(命を投げ捨てるようなくだらん事、か)
とても人の命を奪うテロリストのセリフとは思えない、彼は奇妙な感覚を憶えていた。
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仕事を終えた二人は誰にも気づかれないように帰路についていた。
「まさか人が来るなんて思わなかったよ」
「どうせただの屑だ、何度来ても変わらん」
「顔がばれてると思わないの?」
「俺たちを確保出来るとでも?」
魔法士協会のボディーガードを難なく倒す事の出来る二人なら恐らく軍を導入しなければいけないだろう。
「でも屑とか言ってる割には説教してたじゃん?」
「……気に食わなかっただけだ」
「珍しく熱くなってたみたいだし」
「……黙れ」
「あらら、怖い怖い」
彼女はおどけた声で彼をからかう、だが次の言葉は真面目な表情で言う。
「……後悔してたりする?」
「……何を今更」
彼は一つ間を空けると続ける。
「前にも言った、俺は後悔なんてしちゃいねえ、あんな事をした連中を許さねえってな」
「……そうだね、今はやれる事をやるだけだよね」
「ああ、今はただ駆け抜けるだけの事だ……」
彼らは歩いて行く、それが誰かの不幸を招くものだとしても。
青の少年は世界の裏へ足を踏み入れ、赤の少年は世界の絶望のために進んで行く。
ちょっとした裏話、ラウスは健人の対称になるキャラのつもりです。今回シリアスなら次はコメディ?さてどうだろう。
都合により今回新キャラ三人の紹介は後々、また会いましょう(・ω・)ノシ