Wizars World 《ウィザーズ ワールド》 作:ダンケ侍
ではどうぞ。
9月2日、夏の暑さが未だ残るこの日、星皇学園は長い夏休み期間を終え始業式を迎えた。そんな学園長のありがたーいお話やLHRでの宿題提出(この時数人が熱血指導された)などの今日の日程を終えた。
先生が教室から出て行った後、青柳 健人は大きく体を伸ばす。
「うーん、よく寝た〜」
この男一日中寝ていたようである。
「呆れた……あなた始業式中もずっと寝てたわけ?」
「当たり前だろ、始業式イコール睡眠時間なんだからな」
「その公式はあなたにしか当てはまらないから」
後ろから井上 京花が呆れた声で言うも彼は全く気に留める様子もない。意識を覚醒させた後、体を後ろに向けて彼女と話を続ける。
「先生に気づかれてないだけいいじゃねえか、手を煩わす事無かったんだしよ」
「もうその話はいいわよ、諦めたから」
「わかればよろしい」
「なんであなたが偉そうなわけ?」
他愛もないやり取りをしつつ帰り支度をする二人、そして今日の午後の予定について話し合う。
「今日生徒会活動あったっけか?」
「今日も別に活動はないわよ」
「最近なんも呼ばれないな、この後どうする?」
「そうね……アリーナとか空いてるかな?」
と、そこまで言った時京花のお腹から腹の虫の鳴き声が聞こえた。
「……ごめん」
「……そういや昼だったな、飯食いに行くか」
「うん……そうしましょ」
顔を恥ずかしさで真っ赤にしながら答える京花、二人はカフェテリアへと向かう事にした。
その道中彼女は思い出したかのように健人に話しかける。
「そういえば生徒会で思い出したけど聞きたい事があるの」
「聞きたい事?なんかあるのか?」
生徒会の事で何も思い当たる事のない彼は首を傾げる、彼の様子を見ながらかのは続ける。
「会長さん、なんか最近様子がおかしくない?」
「会長か?様子がおかしいってどんなふうにだ?」
「この前事件に巻き込まれた事の報告に行った時に思ったんだけど……」
彼らは夏休み中にブルーアースが起こしたとされる一つの事件に巻き込まれた。一つのニュースとなったそれに関わった彼らは学校側に黙っている訳にもいかずまずは生徒会長である八重 一成に報告したのである。彼女はその時の彼の反応が腑に落ちないようだ。
「あの時の様子が心ここに在らずというか、別の事を思い詰めてる気がしてね」
「よく見てるなお前、でも確かにあの会長なら『生かしておくか!』とかとか言いそうだよな」
「それどこの覇王様よ……」
八重 一成という人間は学園の生徒を第一に想う人間である。生徒の為ならば外国にある研究所だろうがその人脈を駆使して滅ぼすといった事すらやってのける人物だ。
そんな人が目の前の危険な目にあった生徒よりも優先すべき事があったのだろうか、と彼女は気になっているようだ。
「確かに偶々何か考えてる時だからとか言われたらそれまでなんだけど……最近の生徒会の雰囲気が重いのと関係あるのかもと思ってね」
「生徒会ってより会長と姉貴の間の空気だな」
二人が言うとおり最近の一成ともう一人の三年 青柳 香織の間の空気が少々重く感じられるようになっていた。何があったかは生徒会の誰も知らないが京花の言った事も含めると二人の間で何かあったと考える事も出来る。
「ま、おれたちが考えても仕方ないだろ」
「自分のお姉さんの事なのに気にならないの?」
「あいつならどうにかして丸く収めるよ、早く行こうぜおれも腹減ってきたからさ」
「……杞憂に終わるといいんだけど」
二人は腹の虫を収めるべくカフェテリアへと足早に向かう。
しかしこういった懸念はどうにも当たっているものである。
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本日活動が無いはずの生徒会室、そこには生徒会の三年である二人八重 一成と青柳 香織が居た。
「今日は活動が無いと言っておいたはずですが?」
「聞きたい事があって来たの、聞いたらすぐに帰るわ」
「やれやれ……またですか?」
「そっちがいつまでもはぐらかすから悪いんでしょ」
彼女の言うとおり彼に何度も聞きたい事があると言って話そうとしたのだがその度に他にやる事があるなどと言って躱されていたのだった。
「今日は何も無いはずでしょ、今度こそ聞かせてもらうわよ」
彼女の鬼気迫る様子に彼はやれやれといった表情をする。そしてついに折れたのか彼女の聞きたいについて答える事にした。
「わかりました……何を聞きたいのですか?」
「やっと観念したわね……合宿の時徹と何があったの?」
「……簡単に言えば意見の相違ですかね」
「簡単じゃなくて詳しく説明しなさい」
「はいはい、了解です」
彼の話した内容は樹海での高梨 徹との一騎打ちで言い合いになった時の事である。二人の意見は真っ向から食い違いそれが要因となって普段よりも激しい戦闘になってしまった事も話した。
「やっぱりね……カメラ壊した時からおかしいと思ったのよ」
「あれには私も驚きましたがね」
「それで、いつまで引きずってるわけ?」
「……そう見えない様にしてきたつもりなんですが」
「明らかに二人の会話量が減ってるのよ」
「ああ〜そういったところに影響してきますか」
二人は元々互いを親友と認め合っていた仲である、その二人の会話量が減ったとなれば気づく人は何かあったと勘ぐるかもしれない。
最も一成と一緒にいる時間が多い彼女だからこそ気になっていたのかもしれないが。
「それと、あたしも徹に賛成だから」
「……そうですか、ですが彼は負けた身です、私のやり方でやらせてもらいます」
「……なんでそんなに意固地になってるのよ」
今回の一成の独断は少々やり過ぎとも言えるだろう。さすがに教師陣には話を通してあるが周りからの助言を一切聞きいれず行動しているのである。
今回の件は軍人の元で訓練を受けていた一成の意見を優先するようになっていた。教師陣と言えども戦争屋とは全く別の道を歩んだ人々なのでこういった事には疎いのである。
「私はここでようやく受け入れられた、だからここにいる人々は全員傷つけたくない、危険に晒したくない……それが理由ですかね」
「受け入れられたってどうゆう……」
事、と彼女が続けようとした時一成の携帯から着信音が流れる。
「……少し失礼します」
彼女にそう告げて電話に出る一成、そして連絡を聞いた彼は途端に表情を険しくして携帯を収める。
「何かあったの?」
「逆です、これから何かあります」
少し焦った様子で彼は答える。
「ブルーアースの一部隊が進行しているようです」
「嘘……もう来たの?」
「嘘と信じたいところですがね、貴女も他の人がいるところへ行ってください」
「いや、だったらあたしも……」
「ダメだ‼」
彼は咎めるように大声をだした、いきなりという事もあって香織はビクッとする。
「君にも傷ついて欲しく無いんだ、頼む言うとおりにしてくれ」
「……でも」
「お願いだから……下がっていてくれ」
「……絶対無事でいてよね」
「わかってる、君も早く」
普段とは違う口調でそう言い残した彼は敵の到達予測地点へと向かった。
「あいつ……なんであんな目をするのよ……」
彼女を咎めてから出て行くまでの間、彼の目はとても怯えているように見えた。
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到達予測地点には既にモーガン・バロウズ率いる部隊と剛田 鉄扇、フレンダ・バンクスの二名の教師が到着していた。
「敵さん、結構な数でお出ましだぜ〜」
双眼鏡で眺めながらモーガンが告げる。
「白昼堂々よくもこんな所に仕掛けてくるものだ、結局のところテロリストってとこかい」
「ここも街の中心部とかにあるわけじゃないけどね」
この学園は都心部から少々離れた郊外の部分に建てられている。アリーナなどの施設のために広い敷地が必要だったこの学園はこの場所を選んだのである。
しかし、たとえそのような場所であろうと中心都市である、そこに真昼間から仕掛けてくるあたり相手も手段を選んでいないのであろうか。
「で、そちらの戦力とはお二方だけですか?」
「こっちも人材不足でね〜」
「そちらの戦力に期待してるという事にしていてくれ」
「そりゃご期待に添えるように頑張りますよ」
教師陣の戦力が極端に少ない理由、それはごく単純な事。 慣れていないのである。
教師陣が得意としている魔法戦は「試合としての魔法戦」であり、これから行われようとしているものは「争いとしての魔法戦」なのである。
「 試合としての魔法戦」は対等の条件下での魔法戦であるが、「争いとしての魔法戦」は状況が目まぐるしく変化するもの、それに対応出来る教師が少ないのである。
それをふまえた上で今回は鉄扇との相性からフレンダ、そしてその鉄扇が選ばれた理由が----
「でも旦那にも期待しますよ、元少尉」
「……昔の話だ、今は軍と何の関係もない」
元軍人であるからという理由である、魔法大戦も生き残った猛者だそうだ。しかしその事を知っている者は少なく、生徒は誰一人として知らない。
「鉄さんなんで軍辞めたの?」
「今は関係ないだろう、それより徹と一成の到着はまだか?」
「さっき連絡いれたんだけどな、そろそろ着いてもよさそうですが」
「……来ないなら来ないでいい、俺たちで終わらせる」
「危ない目に遭わない方が安心ですからね」
「無理してでも来そうだけどね会長くん」
「最近のあいつは危ういからな、提案は受け入れたものの……。
まあいい、それを貸してくれ」
彼はモーガンから双眼鏡を借りて自身の目で敵戦力を確認する事にした。
そこに見えたのは数十人の部隊と思しき者たちが進行したいるのが確認出来た。
「移動が徒歩か、寂しい奴らだ」
「使い捨ての兵には予算は割けぬって事じゃないですか?」
「……使い捨て?」
不穏な言葉を聞いたフレンダご思わず聞き返す。
「あいつらは戦闘本能以外の感情を取り除かれたアンドロイドさ、戦う事だけを義務付けられた哀れな兵器だよ」
さらに二人は最近のブルーアースの作戦でこのようなアンドロイドがよく使われていることをモーガンから聞いた。
「なにそれ、魔法士殲滅のためにそんな事もやるわけ?」
「ある時を境に一気に増えたな、被害を出さないためにはいい手段なのかもしれんが……」
そこまで彼が言った時辺りに凄まじい音が響き渡った、各々が驚きながら音源を辿ると鉄扇が自身の剣を地面に叩きつける音だった。
「………………」
「ちょ、ちょっと鉄さんどうしたの?」
「おいおい旦那、どうしたよ」
「……すまん、なんでもない」
なんでもないわけがないのだがあまり立ち入らない方がよいと考えた二人は特に聞き返す事はしなかった。
「ま、戦闘には持ち込まんでくださいよ」
「生徒を守る為だ、わかってるよ」
迫る戦闘に備えモーガンは部隊に指示を出し、鉄扇とフレンダも準備を始める。
「……ったく、美影もいたらもう少し楽なんだけどな」
両軍がぶつかるまで残り僅かである。
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一成は走る、連絡を受けてから一早く敵の到達予測地点向かうために走っている。
「……ちょっと強く言い過ぎましたかね」
彼は先程の香織との会話を思い返していた、彼女は自分を手伝ってくれると言ってくれた。だが学園の生徒、そして彼にとって大事な彼女だからこそ危険な戦場には連れて行きたくはなかったのである。その思いが強かったので先のような強い言い方をしてしまった。
そんな事を思いながら彼は正門を抜ける。
「さっさと行って終わらせないと……」
「ところがどっこいそうは問屋が卸さねえぜ」
声のした方向に顔を向けると目の前に手甲が襲う、一成はユニットを出現させてなんとか防いだ。
「……また貴方ですか、普通に邪魔です」
「そう言うなよ、ちょっと遊ぼうぜ。げひゃ!」
襲って来た相手は夏休み前にも彼を殺しにきたダグラス・ヴォルテールだった。
「絶対にお断りです!」
一成は手甲を弾いて数発の魔力弾を生成し放つ、ダグラスはそれを難なくすべて打ち消した。一成はその間に距離をとって仕切り直す。
「あひゃ!つれないねえ、一緒に殺し合いを楽しもうや」
「残念ながらそんな趣味はありません、なぜまた出てきたんです?」
「前回は邪魔が入ったからな、今度はきっちり殺してやるよ」
「……面倒な人だ」
「さあ、死合おうや!」
ダグラスは一直線に彼に向かってきく、一成は自身の身体能力を反動無しのギリギリまて引き上げ立ち向かう。しかし身体能力を引き上げているにもかかわらずダグラスそれに平気な様子でついてくる、以前の戦闘の繰り返しの如く彼らは手甲とトンファーを打ち合っていく。
「げひゃひゃひゃ!どうした?前と全然変わらねえぞ!」
「くっ……うるさい!」
一成は距離をとる、すかさずダグラスが彼に接近するがその僅かな間に魔力を収束させる。
「おお?なんだ、なんだ」
「減らず口はそこまでです、〈デストラクトブレイカー〉!」
ダグラスに向かって収束砲を放った。
「はあ〜ん、大したもんだな」
そう言いながらも彼は手を交差させてその収束砲を打ち消しにかかる、多少の時間はかかったものの収束砲も彼の前には役に立たなかった。
「所詮は弾の集まりってね、……小賢しいぜ会長よお!」
彼が収束砲を消している間に後ろに回っていたのか背後にいた一成を蹴りつける。
「ちっ……!読まれたか」
「ははっ!面白い事してくれるねえ、ぎゃはっ!殺しがいがあるぜえ!」
ダグラスがそう言いながら再び向かってくる、その時学園の方向からドォォォォン!!と凄まじい音がした。
「なっ!あれは……アリーナの方向⁉」
「余所見してんじゃねえぜ会長!」
何があったのかと知りたかったが彼の目の前には敵がいる為すぐさま向かう事が出来ない。
「くそ、そこをどけえ!」
時を同じくして既に戦闘を開始していたモーガンの元に一つの連絡が入る。
「こちらモーガン!戦闘中だ、手短に頼む!」
『ア、アリーナに侵入者を確認しました!』
「はぁ⁉どっから出てきやがった⁉」
『それが、上空から出現したとの事!」
「なんだとぉ⁉待機組全員で迎撃!教師にも協力を頼め!」
『りょ、了解しました!』
急に現れた敵とあってか向こうも混乱に陥っている様子だ、しかしこちらも戦闘中なのでここを離れる事など出来ない。
「……こん畜生がぁ!」
すぐに救援に向かうべく戦闘を早く終わらせると彼は決意する。
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侵入者の連絡が入る少し前、星皇学園の上空、限りなく青い空に突然人一人分の裂け目が現れ、そこからサングラスをかけたスーツの男が現れる。
「……おいΙ(イオタ)、学園に出てきたのはいいがなぜ上空なのだ?」
『うるさい、他人だけの移動はいささか上手くいかんのだ』
通信機から返事をするのはΙ538、男をここまで移動させた張本人である。
彼女の能力〈テレポート〉、しかしそれを行うには少々過程を必要とする。まずは移動先の座標を指定。次に魔力を大量に消費し次元断層を開く。その次元断層の内部を移動し、指定した座標につながる出口がある、という工程が存在する。これはワープと言った方がわかりやすいかもしれない。
これは全身ユニットの彼女だから出来る能力である。
『それに、貴様なら平気であろうΠ(パイ)。いや、甲斐(かい)と呼んだ方がよかったか』
「……どちらでも構わん、それより主はなんとおっしゃっている」
『学園内部でかき回せ、殺害しても構わんが無理はしなくてよい、だそうだ』
「了解、ならば任務を開始する」
『次に連絡をつなげたら問答無用で連れ戻すからな』
「了解」
連絡を切ったΠと呼ばれた彼は裂け目から勢いよく飛び出す、普通の人間ならば間違いなく死ぬ様な高さだが彼は普通の人間ではない。
ドォォォォォォン!!と大きい音を立てて彼は学園内のアリーナと呼ばれる場所へと降り立つ。
砂煙が晴れた先にいたのは学園の生徒と思われる金髪の刀を持った少年と水色の髪を片側に縛った少女がいた。
「(気の毒だが……)」
彼は自身のユニットである刀を出現させ、鞘から抜き刀身の先を彼らに向けて名乗る。
「私はΠ446、主より特別に与えられた名は甲斐 透(とおる)」
Π、また甲斐と名乗ったアンドロイドはさらに続け……
「降伏は無駄だ、抵抗しろ」
完全抹殺を宣言した。
最後の台詞は誤植ではございませんので、あしからず。
出来るだけ早く更新したいと思います。
それでは