Wizars World 《ウィザーズ ワールド》 作:ダンケ侍
それではどうぞ
侵入者が現れる少し前、本日は部室が使えないと告げられているにもかかわらずメディア部が使用している教室に人が居た。
しかし本来は部室が使えないというわけでは無い、部室が使えないというのは活動が無い日でも部室に来るとある少女が来ないように仕向けた部長 田所正明による真っ赤な嘘である。
なぜそんな嘘をついたのか、それは今回とある人物にとある頼み事をしていたところ本日結果を渡してくれるとのことで部室を空けたのである。
放課後からここに来ていた正明の元にノックの音がする、おそらくは待ち望んでいた人物が来たのであろう。
「はい、入って構いませんよ」
彼の返事を受けて入って来たのは栗色ポニーテールで学園の生徒とも勘違いされそうな顔立ちをした女性、澤山 美影である。
「全く、校内に呼び寄せるなんてやめてよね。手続きとか面倒なんだから」
「おや、学生と勘違いされて通されると思ったのですが」
「情報いらないみたいね」
「もちろん冗談ですとも」
どうだか、と言いながらかれの向かい側の椅子に座る彼女。一応彼女の名誉のために言っておくと既に成人してから二年立つ立派な女性軍人である。
しかし単なる学生である彼と軍人である彼女、一体どこに繋がりがあるのだろうか。
「これ、言われてた事件の資料だよ」
「これはこれは、最も役に立ちそうな情報をありがとうございます」
「これ本来外部の人に見せたら懲罰ものなんだから、大変なんだよ?」
彼女が見せた資料、それは三年前に起こったとあるホテルの大火災事件のものである。この事件は突発的に起こり火の回りが早かったらしく、多数の被害者を出す事となった事件である。
なぜ軍人である彼女がそのような資料を持っているか、美影は今の部隊に配属される前は特別警備隊というところに配属されておりたまたま事件が起きたホテルが彼女の配属された地域だったのである。故にそこで調査協力をしていたのだ。
「そんなリスクを負ってまで持って来て下さるなんてね」
「……一応私が関わった初めての事件だし、君の事も心配だからね」
「すいませんね、度々迷惑をおかけしまして」
「被害者の心配するのは当然だと思ってるから、別にいいよ」
正明はその三年前に起きた大火災事件の被害者である。それに巻き込まれた彼は原因、被害状況などの話を尋ねていく内に彼女と知り合いになった。
「私が真実が知りたいと思い始めたきっかけですからね〜、しつこく尋ねたものです」
「本当だよ、あまりに来るものだからその時新人だった私が君の相手する羽目になったんだから」
「私もあの時は必死だったんですよ、許して下さい」
「気持ちがよくわかるからいいんだけとさあ……」
当時毎日のように来ていた彼の相手をさせられていた彼女が深く肩入れしてしまったのか様々な情報を提供してしまったのがこの関係の始まりだそうだ。
「それが原因なのか今の部隊に回されたんだけどねえ〜、軍人失格だから当然かな」
「いやはやそれは……申し訳ないです」
「気にしてないよ、でも今更なんでまたそれ調べるわけ?」
「ブルーアースについてわかる事があるかもしれません」
「……それ本当?」
「私の記憶、推測が正しければですがね」
「ちょっと、それについて詳しく……」
彼女が言葉を言い終える前に外からドォォォォォォン!!という凄まじい音がした、おそらく学園内で発生した音だろうと推測した美影はすぐさま通信機を取り出し連絡をとる。
「こちら澤山、誰か応答願います!」
『美影さん⁉今日は出られないのでは⁉』
「現在学園内に居ます、何が起こったんですか?」
『アリーナに侵入者です!上空から突然現れた模様』
「何それ⁉私もすぐに向かいます!」
『了解!こちらは先に侵入者に当たります』
その連絡を聞いて彼女は通信を切る。
「何が起こってるんです?」
「悪いけど教えてる暇はない、明日にでも連絡あるでしょうからそっちを聞きなさい」
「……わかりました、お気をつけて」
「君も人の多いところに行きなさい、間違ってもこっちに来ない事」
「命を捨てる真似はしませんよ」
その言葉を聞いた彼女はすぐにその教室から出て行きアリーナへと向かった。
「あの人のためにも調べるとしますかね……」
正明も資料を纏めると言われた通りに人の多いだろう場所へと向かった。
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神上 礼奈は目の前で起きた出来事を理解出来なかった。
彼女は始業式であろうが関係なくアリーナで訓練をしようと言い出して来たイワン・ロバノフに付き添ってここにやって来た。やはり始業式という事もあってか自分達以外にこの時間アリーナで訓練をしている者はいなかった、ほとんど貸切状態だったので普段は出来ない広域魔法の練習やらそれに対応する練習やらをした。
異変が起こったのは二人が休憩していた時である、突然空から何かが落下してきたのだ。落ちた衝撃で凄まじい音、砂埃ですぐに何かは確認する事が出来ない。
砂埃が晴れてその場を確認する、そこにはスーツを着ておりサングラスをかけた男が立っていた。あの衝撃で人が生きているとはとても思えなかったがその男はしっかりと地に足をつけて立っている。
男はサングラスを外しこちらに向けてΠ446だか甲斐 透だかを名乗りながら刀を抜き、こちらに切っ先を向けて
「降伏は無駄だ、抵抗しろ」
と、言葉を発した。
礼奈はいきなりの事で何が何だか理解出来ない、ただ一つわかるのはこちらに対する敵意に満ちた気配であった。これを殺気と言うのだろうが戦場に立った事もない彼女はそれを知らない。
「そのセリフ、『抵抗は無駄だ、降伏しろ』ではないか?」
イワンが気丈にもそう言い返す、彼も刀に手をかけて警戒を怠らない。しかしその額には汗が浮かんでおり今の状況を危険だと感じているのがわかる。
「……なぜ、そう思う?」
「そっちが何を言っているのかわからんな」
「……まあいい、子どもを斬る趣味はない。道を開けろ、退かねば斬る」
男からの殺気が一層強く感じられた、二人の恐怖感もさらに増す。
そんな状態になってもイワンは彼女に話しかける。
「礼奈、君は下がった方がいい」
「あんたほっといて逃げろっての?」
「あいつは本気で殺すつもりかもしれん、二人して隙を見せるわけにはいかん」
「……どっちにしても無理、怖くて足がすくんでろくに動けそうにないよ」
そういう彼女の声も非常に弱々しく、震えていた。
「……仕方がない、か」
「……それは抵抗するという意思表示か?」
男が確認をとってくる、イワンはともかく礼奈この場所を動く事が出来ず彼女を見捨てる事も出来ない。どう切り抜けるかと考えているとアリーナの入り口が騒がしくなる。
入り口から出て来たのは見覚えの無い人々と見覚えのある教師達であった。
「そこの男!動くな!」
「学生がいるのか?、急いで校舎内に避難したまえ」
「え、ちょ、何この人たち⁉」
「事情は後だ早く避難するんだ二人共、彼らは軍人だ。安心してていい」
「先生……了解しました」
思いも寄らない援軍だったが渡りに船、その場を任せて校舎内へと退避しようとする。
「8人か……」
「抵抗するな、刀を置け」
「……舐められたものだな」
男は軍人からの警告を無視して刀を構える、投降する気が無いとみた彼らは即座に戦闘体制をとる。
「男を抑える!戦闘開始!」
彼らはそれぞれ近接戦闘を行う者、後方から援護する者へと半々に分かれる。そして半分は男の元へと向かって行き、もう半分は援護の用意をする。男はその様子に焦る事も無く刀を構えたままである。
「総員、かかれ!」
「……邪魔だ散れ」
男が近づかれる前に刀を振り上げる、すると向かって行った四人の体が斬り刻まれた。
「……なっ⁉」
「……嘘⁉」
「馬鹿な⁉」
あまりにも理解出来ない出来事に周りが驚きの声を漏らす。男はその場を動いてはいなかった、彼らも刀の届く距離にはいなかった、だが彼らの体は確かに斬られておりその場に倒れ伏す。声を上げる暇も無く。
男はなんとも思わずにすぐに構え直し再び振り抜く用意をする。
「ぜ、全体、攻撃始め!」
「……遅い」
操作系魔法で炎や水の弾丸を生み出して放とうとするがそれが届く前に刀は振り上げられるだろう、そうなるとおそらく先ほどの様に数人が見えない刃の餌食となってしまう。
「そんな事……させるかぁ!〈閃光〉起動!」
相手の謎の攻撃を防ぐべくイワンが自身の魔法を使い光の速さで接近する。刀を振り抜こうとしていたところで目の前に突然人が現れたために甲斐は魔法を中断し迎撃に移る。
刀と刀がぶつかり合う、イワンは甲斐の動きを一時的に止めるとすぐにその場を離れる。間髪入れずにそこへ炎や水の弾丸が降り注ぐ、男はそれを難なく躱した。
それと入れ替わる様にしてイワンが斬りかかって来たところを自身の刀で受け止めた。
「……退かねば斬ると言ったが」
「人がやられるところを見捨てるほど腐ってはいなくてね!」
イワンが自身の速さを活かして連撃を叩き込む、男はそれを涼しい顔で受け流す、大した攻撃でも無いかの様に。
この攻防の間にも教師と軍人の連合軍から魔法が飛んで来ているがイワンが密着する様に攻撃を繰り返しているためによく狙いが定まらない。
自分の相方が戦っている中、礼奈はその場に立ちすくんでいる事しか出来なかった。目の前で人が斬られて血を流している光景など彼女は見た事もない、例えイワンが向かって行ったとしても彼を援護する事も出来ないほどに恐怖していた。
(何で学校でこんな事になってるの?軍人って何?これじゃまるで----)
戦争みたいだ、彼女はそう思った。歯からかちかちと音が鳴るほど震えている彼女には今の状況は理解出来ない、今わかる事は……イワンが劣勢であるという事だ。
「お前もそこの娘の様に恐怖に震えておけばよいものを……」
「生憎殺気などは師匠の訓練で慣れていてね、そんなものでは止まらんよ」
「……ならばその人から殺し合いのすべを習っておくべきだった……な!」
刀の鍔迫り合いの最中に甲斐は力を抜いて相手をこちらに引き寄せる、そこへ無防備な体に膝蹴りを叩き込む。
「がはっ……!」
「馬鹿正直にユニットだけで勝てるとは思わん事だ」
さらに顔に頭突きをして相手を仰け反らせる、イワンの鼻から流血するが気にも止めず甲斐は刀を構える。そして、
「……まずは首一つ」
喉元へ向かって斬りかかる。
「まずい!やつを狙え!」
様々な魔法の弾丸はすべていなされ刀が振り抜かれようとした、がしかし
(……!体が重い⁉)
急に甲斐の体の重力が増して立ったままの体制も維持出来なくなり地面に伏す、その隙にイワンは距離をとって離れる。
「今だあ!攻撃を叩き込め!」
「……ちっ、面倒な事だ!」
甲斐は重力に逆らわず素早く横転しながら躱す、そのうち重力が元通りになりそこからの攻撃は刀ですべて防いだ。
「……ずっと震えていると思ったのだがな、存外やってくれる」
「礼奈、助けてくれて感謝する。だが大丈夫なのか?」
鼻血を拭いながら彼は問う。彼女は未だ目に見えてわかるほどに震えながら立っていた。
「だってあんたが居なくなる方が怖かったから……死んじゃうかもしれないと思ったから……」
「……ありがとう、悪いが今からも援護してくれないか?」
「……私だって魔法士よ、それくらいやってやる!」
「それにしては怖がっているようだが?だが……頼んだぞ!」
自身の感じる恐怖を押し殺して戦場に立つ、頼もしい相方の姿を確認したイワンは右手に刀、左手に鞘を構える。
「あなた方も、援護よろしくお願いします」
「すまない、君たち学生をこんな事に巻き込んでしまって……奴を引きつけてくれ」
「了解!」
返事と同時に甲斐の方へと向かう、既に強力な重力からは解放されている甲斐は慌てる事無く対処していく。
「……所詮は学生だと思っていたのだがな」
「手加減していたとでも?」
「そのつもりはない」
剣士二人が刀を打ち合わせる、甲斐が刀を弾きイワンをわずかに硬直させる。だがその間に礼奈や連合軍の遠距離攻撃魔法が飛んでくるためにとどめさすには至らない、そんな攻防が幾度か繰り返される。
「……埒が明かんな」
再びイワンに隙を作らせる、するとすぐさま攻撃が飛んでくるために下がって回避行動を取りながら懐に手を伸ばす。そしてその取り出した物をイワンへと向けられて----
カンッ、と音が鳴りそれが地面へと落とされた。すると甲斐は刀で目の前の何もない空間を斬ろうとする、しかしそれはキィン!と音をたてて空中で静止した。やがて甲斐の目の前に突然人が現れる。
「へぇーあなた私が見えるんだね」
「そのように出来ているからな」
「……成る程納得」
そこに現れたのは特別作戦部隊の副隊長、澤山 美影である。
彼女の能力はステルス化、それを利用して近づいて来たのだろう。
「美影さん⁉居られたのですか⁉」
「説明はあと!負傷者回収して離脱!まだ全員生きてる!」
「りょ、了解!ほら、君たちも来い」
「で、でもあの人一人で大丈夫なの⁉」
「あの人なら大丈夫だ!早く!」
「……わかりました」
軍人と一緒に学生が避難した事を確認した美影は自身のユニット、レイピアで先ほど弾いた物を示す。
「そんな物騒なもの、持ってちゃダメなんじゃないかな?」
それは拳銃、それもおそらくユニットなどでは無く実弾が入っているものだろう。
「魔法に舞台が移っても殺傷力は折り紙付きだからな」
「完全に殺す為に用意してたってわけ?」
「魔法戦の最中こんなものを使うとは誰も思わんだろう」
「おかげさまで学生が一人死ぬところだったわよ」
確かに戦いの主戦力は魔法に取って代わられた、だがそれは決して銃火器などの兵器が完全に無力になったわけでは無い。
魔法士と真っ正面から戦いあっても勝ち目が無いだけであり不意をついた攻撃などでは殺傷力が高い事もあり有効な攻撃手段となりえる。現に戦争などでは奇襲で使われる事もある、だがその場合魔法士に感づかれてしまい成功はあまりしない。
「ま、折角だから私と遊ばない?」
「それはそれは魅力的な提案だな、だが……」
彼は首筋の通信機のスイッチをONにする。
「タイムアウトだ」
後ろの景色が裂けて真っ黒な次元断層が露わになる、その中から現れたΙ〈イオタ〉により襟を引っ張られる形でその中へと入っていく甲斐。
「……そ、二度と現れないでよね」
「それは私の知るところではない」
そう言い残し次元断層への入り口は閉まった。
「……とりあえず隊長に連絡、あとの事はそれからだ」
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「他の事を気にする暇があんのか会長よお!」
「ぐうううう!!」
正門付近の一成とダグラスの戦闘は未だ続いていた、しかし一成は学園の方で何があったのかとその事ばかりが気になり戦いに集中出来ておらず防戦一方となっていた。一成に焦りが出て来て正常な判断能力を失っているのも原因の一つだろう。
「どうした⁉俺を倒して様子見に行かねえのかよ⁉ぎゃはっ!」
「うるさい!そこをどけ!道を開けろ!」
「それは出来ない相談……んあ?」
一成の攻撃を弾いて距離をとった後、ダグラスは唐突に動きを止めた。
「あー……残念だがお前との遊びも終わりみたいだな」
「……何だと?」
「撤退命令ってやつだ、一回やそこらでここが落ちるとは俺らも思ってないからな。また遊ぼうや」
「な……⁉どういう事だ!」
ダグラスはそのまま彼の言葉に答える事無くその場を離脱した。
「……どういう事かはわからないけど、今はこっちが優先だ」
一成はそのまま学園へと戻り何が起こったかを確認しに行く、彼を待つのは自身の決意を砕かれたという現実である。
戦闘用に改造を施されたアンドロイドをすべてジャンクに変えたモーガンは美影からの連絡を受けていた。
「なんでお前いんの?」
『たまたま学園内にいまして、異変と思い駆けつけました』
「……まあいいや。で、そっちはどうなったんだ?」
『侵入者一人が現れました。数人が負傷しましたが死人は出ておりません、学生の協力もあり撃退しました』
「そうかい、わかった。詳しい事情は後から聞くからな?」
『はい、ではお待ちしております』
最悪の事態にはならずとりあえずは安堵したモーガン、そこに協力してくれた教師であるフレンダから声をかけられる。
「あっちはどうだったの?」
「とりあえずは最悪の事態は回避、お宅の生徒も全員無事だそうだ」
「そう……なら良かった。って鉄さんどこ行くの?」
見れば鉄扇は今にもここを離れようとして別のところへと向かおうとしていた。
「生徒の安全を自分の目で確認したい、……それとこの光景は不快だ、後処理は任せた」
「了解しましたぜ、旦那」
モーガンの返事を聞くとすぐにこの場所から離れて行く鉄扇、よほど不快感を示すものでもあったのだろうか。
「……やっぱりアンドロイド関係かな?」
「かもな、こいつらの扱いにキレてたみたいだし……おい、こっちに車両を回してくれ!」
「はい!了解しました!」
「……これもまだ第一波ってとこなんだろうな」
ブルーアースの襲撃は終了した、だが彼らはすぐにまたこの学園を襲ってくるだろうとモーガンは確信している。
星皇学園とブルーアースの戦いの一回目はここに終わった。
そしてその後すぐに生徒が全員集められる事となり、学園長の口からこの学園に危険が迫っている事、それに伴い無期限の休校が告げられた。
危機は未だ去らず、彼らに普通の生活が戻るのはいつになるのであろうか……。
今回で美影さんを結構掘り下げる事が出来てたらいいなと思う私、これからどう展開させたものか……。
また次回。