Wizars World 《ウィザーズ ワールド》 作:ダンケ侍
今回は戦闘無しです、裏でなんかこそこそやってます。
ではどうぞ
休校が宣言された次の日、学園の生徒は全員寮で室内待機を命じられた。特に用が無ければなるべく部屋からは出るなと言われている。青柳 健人はルームメイトのブレイム・ゴードンと共に、そんな言いつけをしっかりと守っていた。
「なんでテロリストが一つの学校を襲いに来るかねえ」
「ここが星皇だからでしょう、それだけで理由になると思いますが?」
「名門校なら他にもあんだろ」
「ここは日本一の超名門です、わかって言ってますね?」
「まあな、そうでも言ってねえとやってらんねえぜ」
いつものように生活をしていたら突然テロリストに狙われていると言われたのだ、このように冗談を言えるだけまだましというものだろう。
情報を公開した時の学生達の反応はそれはひどいものだった。言われた時には何を言っているのかが理解出来ない、しかし意味がわかった時彼らは混乱に陥った。一日経った今も混乱している学生は少なくないだろう、教師もその対応に追われているようだ。
「風紀委員の方でなんか無かったかよ?」
「現状は待機しろと命令が出ています、その様子ではそちらもですか?」
「ご明察、生徒は手を出すなだとよ。あの様子だったら知ってやがったよあの会長」
「徹さんも知っていたみたいでしたね、恐らくは生徒を不安がらせる事の無いようにと会長さんが考えたのでしょうがね……」
「これじゃ逆効果じゃねえかよ、おれらがそんなに信用ならねえってのかよ」
生徒会長 八重 一成としては生徒に不安を与えないために早期解決を目指していたのである、だが結果的に混乱は急速に広がり彼の判断は間違っていた事になる。
そして健人などが彼から信用されていないのだろうかと疑念を持つ事にもつながっている、様々な面からこの学園は崩壊の危機を迎えている。
「それで、あなたはそのまま指咥えて見ているんですか?」
「動くなって言われたからな、お前だってそうだろう」
「確かにそうですけど、抵抗の一つや二つ僕だってしたいですよ」
「……おれだってただ黙ってるわけじゃねえよ、だけどおれ達はただの学生なんだ。こんな危険な事に関わる必要はねえ」
「らしく無い返答ですね」
「なんとでも言え、こっちも命がかかってんだ」
二人が話していると固定電話の着信音が部屋に鳴り響く。
「内線か、おれが出る」
そう告げて健人は受話器をとる。
「はい、……徹さん、なんの用です?」
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ブルーアース日本活動拠点、作戦を終えた甲斐 透は自身の主へと戦果を報告するためにその部屋へと向かっていた。
「主、入ってもよろしいでしょうか」
「ん?いいよー入ってー」
「失礼致します」
その部屋に居たのは彼の主、胡長慶(こちょうけい)という人物である。長い髪を後ろで縛っており非常に中性的な容姿をしており女性に見えない事もないが立派な男である。
「お疲れ、どうだった?」
「言われた通り内部で騒動を起こして参りました、これでこの件を隠す事は出来ないでしょう。しかし首は一つも持ち帰る事は出来ませんでした」
「別にいいよ、僕じゃなくてトーマスが言ってた事だし。子どもとか斬りたくないでしょ?」
「正直気乗りはしませんでした」
「それに君の能力殺しに長けてないからね」
Π(パイ)446の能力とは刀を振ることで自身が指定した視界内の座標に斬撃を発生させるというものであり、最大四つまで発生させることが可能であるらしい。敵を近づけることなく攻撃出来るのでかなり便利な能力ではあるがそれゆえにデメリットも存在する。
この能力では敵に致命傷を与える事は決して出来ないようになっている、何故かはよくはわからないのだが決してこの斬撃で人を殺す事は出来ない。
そこで彼の戦闘スタイルとして斬撃で出来敵を動けなくしてから刀で叩き斬るか銃を用いて殺害するというやり方をとっている。
「敵のステルス能力者に気づくのが遅く一人取り逃がしました、私には見えるというのに」
「奇襲なら仕方ないでしょ、君はよく働いてくれているよ」
彼、Π446は胡長慶が直々に開発を依頼したアンドロイドである。優秀な部下を欲していた長慶が開発部にあえて感情を残すように注文した個体である、あえて感情を残した理由は「そうでないとつまらないから」だそうだ。制作コストは戦艦並らしい。
「でもこんな能力とかついたりステルスを見破れたりするなんて予想外だったけどね、戦艦並のコストでも戦艦より役に立ってくれるし」
「光栄です、次の作戦なのですが主も出向かれるので?」
「そ、だってバロウズいるんだろ?ちょっと楽しめると思ったからさ、君はΙ(イオタ)と共に作戦遂行頼むよ」
「……また、あいつですか」
「彼女が気に食わないのかい?君と彼女似てるじゃないか」
Ιは失敗作とはいえ彼と同じ感情をもつアンドロイドである、その点では似ていると言えるだろう。
「似ているからこそわかる事もありまして……」
「ふーん?そうなの」
「はい、ところで参謀殿はどちらへ」
「トーマスはどっか行ったよ、なんでも作戦を一手進めるんだとさ」
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都内の会議場、ここで軍の上層部と魔法士協会の重役を交えての会議が行われていた。
軍と魔法士協会のつながりは深いものであり以前から情報の交換や緊急時の対応などについて話し合われていた。
「軍は一刻も早く星皇学園へと援軍を送っていただきたい、彼らは未来の魔法士であると同時に学生なのだ、我々で守っていかねばなんとするか!」
この発言をしたのは魔法士協会の会長鷲尾 孝典(わしお たかのり)、彼は以前より偏見の目で見られていた魔法士の社会的立場を偏見の目を取り除き現在の位置まで引き上げた人物である。
その功績から協会の会長に抜擢され、魔法士協会の良心とも呼ばれている。現に彼が会長に就任してから協会の腐敗した部分は少なくなったという。
「鷲尾殿の言うとおりです、軍でも緊急の部隊を編成しております。しかし私の全権を使ってもあまり動かす事は出来んのです……他の者もこちらにくる事が出来れば」
軍の上層部の一人が悔しそうに言う、緊急の招集ともあって協会、軍の両方があまり集まる事の出来ていないという現状である。
「仕方ないでしょう、彼らにも仕事がある。こちらでも融資で魔法士を集めて……」
孝典がここまで言ったところで会議場の扉が開かれた。
「どなたかな?まだ会議は終了していないが……」
「ご高説ありがとうございます、ですが貴方に生きていられると後々面倒なのですよ、故に……殺しに来ました」
そこに立っていたのはブルーアースの参謀トーマス・ガラン、しかし軍や魔法士協会でも彼の存在は知られていないため彼らが気づく事は出来ない。
彼の手には片手剣が握られており、その剣には血が滴っていた。
「何だと⁉貴様どういう……それよりボディーガードは何をしていた⁉」
「その辺で血だるまで転がってますよ、死なないように苦しめているだけですが」
扉の向こうから凄まじい血の匂いがするのをその場にいた全員が感じ取った、それと同時に彼の剣に滴る血の意味を理解した。
「貴様もブルーアースの手先か⁉」
「ただでは済まさんぞ!」
「おのれ……許してはおかん!」
その場にいる全員がユニットを解放し彼に向ける、この場にいるのはすべて手練れの魔法士でもあるのだ。
「抵抗しても無駄なんですけどねえ……では、遺言を残す余裕すら刈りとってやろう」
数時間後、その会議場から複数の斬殺された死体が見つかる事となる。
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「増援がこっちに送れない⁉どういうこった!」
星皇学園近くに設置された軍の緊急拠点、そこでモーガン・バロウズは澤山 美影から信じられない知らせを受けることとなった。
「部隊を編成していた人物が魔法士協会との会議に出席しておりまして、その方も亡くなられていたそうです」
「……つまり統率がとれなくなったからだめになったのか、他の部隊は⁉」
「それが……その襲撃事件を受けて安易には軍を動かせないという事らしいです」
「……⁉今がどういう状況かわかってんのかあいつら!」
バァン!!とモーガンは怒りに任せて机を強く叩いた。
「気持ちはわかります……ですが隊長が落ち着いてもらわないと全体の士気に関わります」
「……悪い、お前に当たっても仕方ないよな」
「私だっておかしいと思いますよ、だけど協会のトップが襲われて亡くなったんです、警戒する気持ちもわかります」
「元からこういう算段だったってわけかよ……」
学園を襲うような動きを見せた後に別の場所で協会トップと軍の高官を殺害という事件を起こしたのだ、学園強襲が実はブラフで本来の目的が軍の高官などであると思ってしまっても不思議ではないだろう。
二人は軍の高官を狙うと同時にこのような事を狙っていたのではないかと推測した。
「この戦力だけで守りきれってか?難易度高いミッションだ」
その時その部屋に携帯の着信音が鳴り響く。
「その味気ない着信音は隊長のですか?」
「うっせ、ってか徹からじゃねえか何の用だあいつ……」
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『フハハハハハハ!!いかにやつであろうとこれは止められまい!』
「うっせえ!耳元で高笑いしてんじゃねえよ!」
ブルーアースの作戦領域星皇学園周辺中央部、数十体のアンドロイド兵を従えたダグラス・ヴォルテールは通信機から聞こえてくるうっとおしい高笑いの主に対して怒鳴る。
『これは失敬、つい癖でな』
「せめて通信機外してくれや」
『まあよかろう、援軍という憂いは無くなった。今が攻め潰す好機だ』
「んで俺に兵持たせたのはなんでだよ」
『今回の陽動はお前にやってもらうだけだ』
「ああそうかい……ま、俺は好きにやらせてもらうけどな」
彼の見つめる先には今まで二度打ち合って来た相手、八重 一成が立っている。その周りには特別作戦部隊の軍人が数人ほどいる、援軍がなくなったので一箇所にあまり多くの人間を割くことが出来ないのだろう。
『ふむまあ方法は何でも構わん、そこで注目を集めておけ』
「暴れるだけなら得意だぜえ!お前ら、食らいつくせ!」
その声を合図に彼の後ろにいた兵達が雪崩れるようにして進軍する、数で圧倒的不利な学園側も必死の抵抗を行う。
だがダグラスの目的は一成ただ一人、それ以外の敵には目もくれず一直線に彼に攻撃を仕掛ける。
「さあ!遊んでやるぜ会長さんよお!」
「……私がこの状況を引き起こした、ならこの失敗を取り返さなければならない……必ず!」
二人の三度目となる激突が始まる。
ところ変わって学園周辺東部、ここにΙ538の能力により胡長慶、Π446(甲斐 透)とΙ自身が現れる。
「……お一人でいいのですか?」
「大丈夫、僕の能力知ってるでしょ?バロウズなら止めとくからあの二人よろしくね〜」
「了解しました」
それだけを告げると長慶は足早にモーガンの元へと走り出した、しかし彼がモーガンがどこにいるかなど知るわけがないので勘だけを頼りに探すようだ。
「ではさっさと済ませるぞ、こんなつまらん任務」
「待て」
目的の人物を探そうとするΙを甲斐が引き止める。
「何か用か?私は気が乗らんのだ」
「貴様は何故この組織にいるのだ?」
彼はいきなり彼女に対して妙な質問をぶつけてくる。
「……何が言いたい?」
「率直に言うとお前はこの組織の活動に向いていない、だから聞いている」
「私が忠誠を誓うのはマスターのみ、マスターのために活動している。これで満足か?」
「……まあいいだろう」
腑に落ちない甲斐だったがこれ以上は意味がないと判断し自分に与えられた仕事をこなす事に集中する事にした。
さらに場所は変わり学園周辺西部、今まで別行動を行っていたラウスとアリスの二人は本隊との合流も兼ねてこの作戦に参加していた。
「学校か……」
「アリス、どうかしたか?」
「いや、普通なら来年から私も通うことが出来たのかなってさ」
「……もう後戻りは出来ねえさ」
「そうだね、わかってるよ。言っただけだから」
もう選ぶ事の出来ない道への思いを捨て去り魔法士撲滅の決意を新たにする。そんな彼らの前に独立部隊の人間数人が立ち塞がる。
「これ以上は行かせん!ユニット解放!」
「……俺らの前に立つってんなら」
相手がユニット解放するところをゆっくりと眺めながら彼も自身の二本の剣を両手に出現させる。
「全員残らず焼き尽くす!!」
二本の剣を一閃、剣から炎の波動を発動させ彼らに向けて薙ぎ払う。
「な、この威力……ぐああああああ!」
一人、二人は防ぐ事が出来たもののほとんどがその攻撃に耐えきれずに倒れ伏す。
「……あっけないもんだな、俺一人でこんなもんか」
「これなら私いらなかったかな〜」
「まあいい、首を……アリス下がれ!」
「へ?ってなんか降ってきてる⁉」
二人が油断していたところに突然氷の刃が降り注ぐ、二人は後ろに下がりこれを回避。それを見たラウスは顔をしかめる、なぜならこの氷の魔力を一度どこかで見た事があるからである。
そしてその主であろう人物が彼らの前に現れる、彼の予想通りその顔は一度見た事がある顔であった。
「またてめえかよ……」
「青柳 健人、華麗に参上ってな」
一度叩きのめした者の顔がそこにはあった、その隣には知らない女子生徒の姿もある。
「あら〜貴方達ビビって引っ込んでるかと思ったのに」
「学園の危機に素知らぬ顔ではいれないわよ」
「……もう一度叩きのめしてやる必要があるみてえだな」
「前と同じようにいくと思うなよ?」
「今更一人二人有象無象が増えたところで何が出来る」
「何言ってんの、一人二人とか……一つだけ言ってやる」
「あ?」
その時学園側から大勢の怒声が聞こえてきた。
「お前ら、あんま星皇舐めんなよ?」
名前付きキャラが一場面ですぐに消えちゃった、何というキャラの無駄遣い。これも布石と思って下さい(汗)
次回戦闘開始、ではまた。