唐突に行われたバイドによるコロニー強襲。このタイミング攻撃を受けることを想像していなかった守備隊は碌な行動を起こすことなく壊滅した。そしてバイドの汚染によりコンピューターは暴走しコロニーの防衛システムは救援に駆けつけた友軍に向けて攻撃を始める。核パルスエンジンも点火して地球に向けて移動を始めた。それらのほとんどは地球からの迎撃兵器や異常が起きた際強制的に自爆するコロニーの自爆機能により破壊されていくが、ただ一つだけそれらの破壊を免れたコロニーがあった。
コロニーエバーグリーン、家族で移住した自分たちの新しい家だ。それが炎を纏いながら地球へと落ちていく。
脱出者なし、先ほどの無線ではそのように流れていた。
押し寄せる感情の波から心を守るために軍から支給された薬を首元に打ち込む。規定以上の摂取は最悪、命を落とすことになると軍医は言っていたがこの際どうでもよかった。するとさっきまでは表しようのない、激しく黒々とした何かが流れていたのにもかかわらず嘘のように静まる。
さぁ、奴らを滅ぼしに行こう。
これから自分の処遇がどうなるのか考えていると部屋の扉が開き、昨日やってきた高町とすぐに退出した金髪の女性、そして初めて見る茶髪の小柄な女性が入ってきた。
「あなたのことは高町一等空尉から話を聞いているのでまずは私たちのほうからさせてもらいます。私は八神はやて、機動六課の部隊長です。で、こっちの金髪の娘がフェイト・T・ハラオウン、管理局の執務官をしています」
「で、早速ですが早速本題に移らさせていただきます、あなたの言う「国連」は地球にある国連のことですか?」
質問に肯定し頷くと、彼女は苦虫を潰したような表情になった。
彼女は一体何故このようなことを聞いてくるのか、そこが理解できない。国連が地球の組織であることは子どもでも知っているはずだ。月面や火星にも国連の支部はあるがどうもそのような意味で言っているようには聞こえない。
「何やら考え込んでいるところで申し訳ないが貴女方の所属組織を尋ねたい。そもそも此処は一体何処なのか?あとは国連宇宙軍と早急に連絡を取りたい」
彼女たちの質問に答えているだけでは埒が明かないと思い、こちらから質問を投げかけた。
高町という女は自分のことを一尉(本当かどうかは分からないが……)と言っていた。あの言葉を信じるのであれば此処は何らかの軍事組織ということになるはずだが。
返答は少し間を空けてから来た。
「あぁ、私達は時空管理局……」
時空管理局、その全く聞き覚えのない単語が耳に入ってきたところで彼女たちが来る少し前に置かれた昼食のトレイからフォークを取り、八神を引き寄せて喉に押し当てる。
「「っ!はやてちゃん!!」」
「動くなっ!」
どのような組織なのかは分からないが国連が指定した組織以外にR戦闘機が運ばれたことは不味い。R戦闘機のパイロットは皆、指定された組織以外に回収されかけた場合は命に代えてでも機体データの保持、もしくは破壊をすることが義務付けられている。
宇宙空間に進出できていた組織のほとんどはその指定組織だったためそのようなことはないだろうと安心していたがそれが裏目に出た。
「救助していただいた恩をこのような形で返すことになって申し訳ないが、すぐにR戦闘機の場所にまで案内してもらおう」
この不明勢力を敵対勢力と暫定的に判断して、おそらく責任者の一人と思われる敵兵の一人を人質にする。階級が低い兵士であれば最悪切り捨てられるかもしれないが、何らかの部隊を率いている者となればそう簡単に切り捨てれないだろう。そう思っての行動だった。それに、R戦闘機がどこに置かれているか分からない以上、こいつらをこの場で殺すのは得策ではない。
これからどう行動するのかを頭の中で考えながら、ふと、この状況に違和感を感じた。
(なぜ、こいつらはこんなに冷静なんだ?)
八神という女を人質にした時の反応からこいつらはただの上司、部下という関係ではないはずだ。おそらく友人同士だろう。フォークといえど頸動脈を切り裂くぐらいのことは難なくできる。親しい者が命の危険に晒されているのに関わらず、こいつらは何故動揺していない?何故八神はこうも落ち着いている?
兵士としての感が警鐘を鳴らすのと、八神がボソッと何かを呟くのは同時だった。人質を高町たちに押し飛ばし部屋から脱出する。部屋から出る直前に見た八神達はどういうからくりなのかは分からないが先ほどまでとは異なった服装になっていた。恐らく、あれがあったからこそあいつらは驚きこそすれど取り乱しはしなかったのだろう。
「しかしどうしたものか」
通路を駆けながらこれからどうするかを考える。自分が正体不明の「時空管理局」という組織の何処かの施設に囚われていて、外部と通信も取れず、R戦闘機の場所も分からない。そして武器はフォーク一つというほぼ徒手空拳の状態だ。
しかし、今ならまだ何が起きているかは敵にも伝わりきってはいないはずだ。それなら後ろから襲い掛かるなりして武装を奪えればまだどうにかなるかもしれない。そう考えて通路を曲がったところで敵兵と鉢合わせた、いや、待ち伏せされていた!?後方からも足音が聞こえてくる。恐らくこの服、もしくは自分自身に発信機か何かが取り付けられていたのだろう。
敵兵が機械化された杖のようなものを手にしていることから国連が把握していないカルト教団なのだろう。そうだとすればあの女たちが異様に若いのも納得できた。
R戦闘機のデータの破棄が困難な場合、次にパイロットが取るべき行動を思い出す。手元にあるフォークでもそれは十分実行できるものだ。このまま捕まっても待っているのは拷問により情報を吐かさせれた後に気狂いの奴らに遊ばれるのが精々だろう。そんな嬲り殺しに会うのはご免だ。黒い服を着た黒髪の青年が他の奴らよりも一歩前に出てきて投降しろと呼びかけているが、冗談ではない。
深く深呼吸をしてから強く握りしめたフォークを自分の頸動脈に突き刺した。
噴き出した血が周囲を染め上げ、最後の任務を終えようとしている。
黒髪の青年が慌てて近寄ってくるが今更どうにもならない。そして直ぐに考えるのも億劫になり、意識が無くなった。
(迂闊だった)
そう悔みながら、XV級艦船「クラウディア」の艦長、クロノ・ハラオウンは今まさに死のうとしている男の首元に手を抑えながらフィジカルヒールを唱える。傷そのものはみるみるうちに無くなり元通りになったが、失われた血液を元に戻すことは出来ない。そしてこの男から流れ出た血液の量は素人が見ても致死に値する量だった。これ以上血は流れないが、早急に手当てしなければ死ぬかもしれない。
「ぼさっとするな!すぐにこいつを医務室に連れて行け!!」
部下たちに半ば怒鳴りつけるような形で指示を飛ばす。今ここで彼に死んでしまうのは非常に困る。ここでパイロットがこちらを襲い掛かり、その上で自殺したということが上にばれればどうなるかは簡単に予想がつく。地球人は確かに危険な人々が多い。それでも鳴海市の人々のように優しい人々がいるのも確かだ。それになのはやはやての故郷を消し去りたいとは思わない。
(もし、このことが原因で取り返しのつかないことが起きたら…)
ギリッと奥歯を噛み締めながら男が運ばれていった方を見る、すると男と入れ替わるようにフェイトたちが入ってきた。
「クロノお兄ちゃんさっきの人担架で、って何これ、何があったの!?」
(まぁ、こうなるか)
通路が一面血で染まっていれば誰だってこういう反応になるだろう。なのはやはやても同じようなことを口にしている。
「例のパイロットが投降勧告に従わずにいきなり自害しようしたんだ、フィジカルヒールを即座に唱えたから何とか一命は取り留めたけど血が流れすぎた。もしかしたら駄目かもしれない」
暗く重い雰囲気が辺りに立ち込める。待ち伏せする際に念話でフェイト達とも話していたが誰も彼を傷つけるようなことはしていないはずだ。にもかかわらず彼は投降ではなく自害を選択した。何故だ?
「幸いにも局員は誰も負傷していない、後は彼が回復するのを待つしかないさ」
(カウンセリングを受けに行く局員は増えるだろうけどな)
と、心の中でつぎ足しながらなるべく気丈に振る舞う。
彼が余程特別な人間なのか、それとも地球の軍人は皆ああなのか、出来れば前者であって欲しいものだが。
「お兄ちゃん、休んだほうがいいんじゃない?」
残っていた部下に後で掃除するように伝えてから戻ろうとすると、後ろからフェイトが話しかけてきた。僕を気遣ってのことだろう。
「そうだな、そうするよフェイト、ありがとうな」
そうは言ったが休むつもりなど毛頭ない、片づけるべき事案が多すぎる。あの時あそこにいた局員への口合わせ、医療品を何に使ったかの改ざん、謎の戦闘機と思われる物のデータ収集、etc、時間も情報もなさすぎる。エンジンの故障などと嘘をつけば多少は稼げるがその後の追及は躱しようがない、どうするべきか…多分今日は徹夜になるだろう。そう考えながら通路を後にした。
こんなに遅れてしまって申し訳ございません、おそらく次話もここまでではないにしろ遅くなると思います。見てくれている皆さんには迷惑をおかけします、本当にすみません
早く魔改造ガジェットだしたいなぁ(願望)