そこには誰もいなかった。
アスファルトの道路にコンクリートの建物。
そこに生きる人々がいれば普通の街並みだ。
だが、そこには誰もいなかった。
いや……2つだけ、生きているものがいた。
一方はファンシー、という言葉が似合いそうな小動物。
もう一方はヒーロー、という言葉が似合う格好の人物。
ただし、小動物に武器を向けている姿をヒーローと呼ぶのなら。
「くきゅぅー、くきゅぅー」
小動物は血塗れの姿で『ヒーロー』に呼びかける。
しかし、ヒーローはヒールのごとく……
「まだだ、まだ足りない……」
返り血を浴びたヒーローは一人の男に姿を変えて闇夜に消える。
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コネクト=プリキュア
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朝、新しい民家の自室で少女は座っていた。
目の前にあるのは、少女の持ち物にしては重そうな位牌である。
「父さん、今日も頑張ってくるね」
パンっ、と手を合わせた少女はカバンを手に取り、一階の食堂へ向かう。
「おはよう、母さん、パパ!」
食堂には優しそうな青年とエプロン姿の女性がいた。
青年のほうは食事を終えたのか既にコーヒーカップを傾けている。
「おはよう、ミライ」
「今日も元気だね、ミライは」
明日原未来(アスハラミライ)、今日も彼女の一日がはじまる。
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「行ってきまーす!!」
「行ってらっしゃい」
今日も元気に家を出る娘に微笑んで見送る両親。
しかし、父親の心の中は複雑だった。
「僕はまだ『パパ』なのか……」
「サクヤさん……」
明日原家は一度、父親を亡くしている。
今の明日原の大黒柱は娘とは何の繋がりもないのだ。
「あの子は位牌を自分の部屋から出さないようだね。やっぱり僕は父親として認めてもらえないんだろうか……」
「大丈夫よ、サクヤさん。いつか、きっと……」
「キョウコ……うん、そうだね」
いつか、彼女の本当の父になるために。
いつか、本当の家族になることを信じて。
明日原今日子(アスハラキョウコ)、明日原咲冶(アスハラサクヤ)の一日もはじまる。
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「ツムグーっ、ごめーんっ!!」
閑静な住宅街に響く叫び声。
ミライが友達と合流したのは家を出て大分経ってのことだった。
「まったく、アンタまた人助けしてたの?」
「いやぁ、お婆ちゃんがすっごい荷物を……」
「はいはい、アンタの正義っぷりは分かってるわよ」
一本道紡(イッポンミチツムグ)、警備員を父に持つ彼女は自分の友人に父と近いものを感じていた。
彼女の人助けは今にはじまった事じゃない。
ひどい時は遅刻をしても誰かを助けるのだ。
家が近い彼女と登校するようになってからはマシになったものの、合流する前に人を助けるから遅刻寸前なのが現状である。
「まったく……いい加減にしてほしいわね?」
「ごめん、でも父さんのクセだから」
「あ、ごめ……」
「いいよ、これでも父さんのことは誇りに思ってるから」
明日原一作(アスハライッサク)、ミライの父親。
NSAS(ニホンスーツアクタースタジオ)の元エースだった男。
『ハイパー部隊』シリーズの主役枠、ファーストを担当していた。
しかし、彼の正義感は仕事で演じるだけでなく、実生活にもあった。
「よし、今日も頑張るぞー!!」
「そうね、頑張って居眠りだけはやめなさい」
明日原未来の正義は真面目な学生態度に繋がってなかった。
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「……ったく、頭が痛い」
公園のベンチで男は寝転がって呟いた。
片手にある財布の中身は軽い……だが、それ以上に頭の痛いことがあった。
しかし、男はグッと手を握り締める。
「誰かがやらなきゃならんよな」
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「あー、今日も終わったー!」
「さっきまで寝てただけあって清々しい声ね?」
ミライの声とは逆にツムグの声は重い。
何か凄い真剣に頼まれたのだ、先生から、ミライのことを。
だが正直に言って勘弁して欲しい。
興味のない事は極端にやる気のない彼女。
そんな彼女は興味のあることに全力を尽くすのだ。
それこそ、尽くしすぎて常にバッテリー不足だから授業中に眠るほどに……
「……っていないし」
「ツムグーっ、こっちこっちーっ!!」
「アンタ、どこ行って……なにこれ?」
ミライの足元にいたのはファンシー、という言葉が似合いそうな小動物だった。
ミライに向いて鳴いているのを見る限り、ぬいぐるみではなさそうだ。
「くきゅぅー、くきゅぅー」
「はっ、これはもしや!?」
「知ってるの、ミライ?」
「セイントファイターのセイントパートナー!!」
Q:セイントファイターとは?
A:アクションヒロインアニメ
「……んなわけないでしょ」
「でもでもでもー!!」
たしかに、こんなファンシーな小動物に心当たりはない。
だからって、そんなモンが現実にいるわけがない。
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「おい、ガキんちょ……」
結局、ミライが小動物の面倒を見ることになった。
そしてツムグと別れた時に、男は現れた。
黒い髪、黒い瞳、ダークブルーのジャケット。
とにかく暗いとしか言いようがない男だ。
ぶっちゃけ、不審人物と言っても正解っぽい男だ。
「え、あ……なん、ですか?」
「お前、さっき動物を拾っただろ?」
それを知っているなんてストーカー?
ミライの不安など知らずに男は話を進める。
「その動物、俺に渡してもらおうか?」
「な、この子を……どうするつもり?」
「詳しくは言えない。だが、どうしても渡してもらいたい」
ジリジリと詰め寄る暗い男。
「きゃーっ、痴漢よーっ、変態よーっ!!」
「……ったく、面倒な」
少女の叫び声で男は姿を消す。
叫んだのは別れたばかりのツムグだった。
「アンタ、こういう時には助けを呼びなさいよ!」
「ツムグ、どうして?」
「ペット大百科、古いのだけど持ってきたのよ」
「あ、ありがとう」
足元にいる動物を見る二人。
あの男はなぜ、この子を狙ったのだろう?
「ひょっとして凄い高級ペットとか?」
「うーん、どうなんだろ?」
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ツムグの声を聞いてやって来た警官。
その話を聞いて大騒ぎした家族と話を終え、ミライがベッドに入ったのは深夜だった。
「今日は大変だったなー」
「くきゅ?」
「キミって……何なん……」
明日原未来(アスハラミライ)、いつもと違った彼女の一日はこうして幕を閉じた。
プリキュアが出なかったでござる