目の前に広がっていたのは赤い森だった。
元々の色でも、紅葉でもない、赤く揺らめく……
ヒーローは森を前に足を止めていた。
ただし、守るべきものを守れなかった者をヒーローと呼ぶのなら。
この世界に投げ出された自分を救ってくれたのは小さな命だった。
生きる気力のなかった自分に目的を与えてくれたのは優しい世界だった。
故郷と同族を捨てても守りたいと願ったのは愛しき未来だった。
だが、それが燃えている。
だが、それが守れないでいる。
だが、それが、それが、それが……
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「……なんか悲しい夢を見たような」
いつものような健やかな寝起きとは違う、そんな朝だった。
もしかしたら昨日のせいかもしれない。
勉強机の上に乗ったカゴの中では不思議動物が眠っている。
「名前、考えてあげなきゃ」
そんなことを思いながらも彼女は制服に着替え、位牌の前に座る。
「父さん、今日も頑張ってくるね」
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「そりゃ、大変だったわね?」
「うん、『ミライがはじめてワガママを言ってくれたー!今夜はお赤飯だー!』って」
「……あ、うん、本当に大変だ」
今日は珍しく人助けもしないでツムグと合流したミライ。
義理の父は優しい男なのだが、たまに暴走するのだ。
自分を大切に思っている、というのは分かるのだが。
「よし、今日も頑張るぞー!!」
「そうね、その意気で居眠りだけはやめなさい」
その意気で起きていられたのは授業開始後10分だけであった。
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「ちっ、面倒なことになったな」
暗い男は喫煙スペースで苦い顔をしていた。
彼は喫煙者ではない。
だが、こうでもしなければ職務質問にかかりそうで困るのだ。
「……ったく、あのガキのせいで」
思い出すのは昨日の少女二人。
ようやく目的のものを見つけたのはいいが、社会的に面倒な連中に守られているのだ。
昨日から青い制服のアンチクショウが増えている気がする。
男はカードと携帯電話を取り出して決心した。
「今日の夕方……使うか」
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「あー、今日も終わったー!」
「あのさ、そろそろ怒るよ、本気で」
でも本当に怒れるわけではない。
態度のきつい自分と友人をやっていける人間など滅多にいないのだ。
そして、純粋で正義感の強い彼女について行けるのも自分しかいない。
口に出さなくても互いに親友と言える仲の二人。
「今日は寄り道は無理みたいね?」
「うん、あの子が心配だから。ツムグも見に来ない?」
「ええ、そうね……あら?」
異変に気付いたのはツムグのほうが先だった。
閑静な住宅街抜けて商店街を歩き、再び住宅街に入る。
そろそろ商店街のはずなのに人の気配がしないのだ。
いや……1つだけ、気配がした。
そう、それは昨日見たばかりの男だった。
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「昨日ぶりだな、ガキんちょ?」
「ガキじゃないわ、明日原未来って名前があるの!」
「ちょっと、ミライ!!」
躊躇いもなく本名を明かす友人に呆れるツムグ。
しかし男の目的は彼女ではなかった。
「昨日の動物、渡してもらえるかな?」
「どうするつもりか教えてくれなきゃ渡せないわよ」
「アレはお前の家にいるのか?」
「こっちの質問に答えなさいよ!」
「くきゅぅー?」
「そう、くきゅぅー……って!?」
そこにいたのは話題の中にいた小動物だった。
何も分かっていないかのような愛嬌のある表情をしている。
「手間が省けたな」
「だめ、渡さない!!」
近寄る男の前に立ちふさがるミライ。
傍から見れば悪の手先と正義のヒロインだ。
男はそれほど大柄ではない、もしかしたら義父より小さいかもしれない。
しかし、その眼は少女でも分かる。
明らかに敵意と殺意を持っている、そんな眼だ。
「ちょっと、ミライ!!」
ツムグの声でミライは動物の変化に気付く。
その小柄な体が光を放っているのだ。
最初は淡かったその光は、徐々に閃光と呼べる光になっていく。
「この光……本当に、セイントパートナー!?」
アニメの中だけだと思っていた英雄。
その力が現実にあるのだとしたら?
その力はいつだってヒロインのピンチに目覚めるもの。
「そうだ、私は……!!」
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「ぐぎゅああああああああああっ!!」
人気のない商店街に響く咆哮。
それは雄雄しくあり、獰猛な声でもあった。
そう、誰も予想など出来ないだろう。
あの小動物が、こんなバケモノになるなど、と。
「ちょ、なんなのこれ?」
「あれが、あの子なの!?」
「だから渡せといったんだ……ネルル!!」
「ねーるるー!」
男の声に飛び出す小さな影。
それは妖精と言っても過言ではない、愛らしい動物だった。
「な、なに、もうわけ分からない……」
「よ、妖精!?」
「コルル、クルル、二人を頼む!」
「ぷぎゅあっ!?」
「何なの、説明してよ!!」
ゴーストタウン、豹変した動物、急に現れた三匹の妖精。
そのうちの一匹はミライの顔にぶつかった。
少女には理解できない出来事のオンパレードだ。
「……ったく、お前たちの見つけた動物はファンシーマだ」
「ふぁんしー、ま?」
「ファンシーマは妖精の国、コネクティア王国の住人だ」
「あんなのが妖精なの!?」
ツムグの言いたいことも分かる。だが事実なのだ。
妖精の国に比べ、人間の国は汚れている。
その汚れが王国で最も純真なファンシーマを凶暴化させたのだ。
そして、それを追って人間の国にやってきた者がいるのも事実である。
「説明は終わりだ、コルル、クルル」
「はやく逃げるコルー!」
「にげないとあぶないでくるー!」
妖精たちに手を引かれて離れていくミライとツムグ。
羽賀根森人(ハガネモリヒト)は懐から携帯電話とカードを取り出した。
その隣には妖精のネルルがいる。
「ごめん、救ってやれなくて……ガルディオ・バレルコネクト!!」
携帯電話のスリットにカードを走らせる。
するとネルルが携帯電話に吸い込まれ、携帯電話は装飾銃へと変化する。
銃から放たれる光はモリトの鎧へと形を変える。
誰もいない街並みで小動物を撃った、揺らめく炎の森で絶望した……
それでも戦うことしか出来ない、戦士へと姿を変えていく。
『Card registration・For transformation limit 60』
さぁ、準備は終わった。
戦いのはじまりだ。
高らかに宣言せよ、戦士の名は……
「守護の銃身、ディオ・バレル!!」
プリキュア以外が出て来たにょろよ