「……ったく、頭が痛い」
別に本当に頭痛がするわけじゃない。
昔からの精神的に暗いときの口癖なのだ。
モリヒトはカードと携帯電話を取り出す。
「バレルコネクト・コール『メガネ』」
『ちょっと、人の事をメガネで呼び出すのはやめてくれないかな?』
コール、それはリターン同様に妖精の国に直接繋がる数少ないカードの一つだ。
使用宣言の後に名前を呼び、顔を思い出せばどんな状態でも繋がる。
呼び出したのは妖精共存派の一人であり、現在も妖精の国で研究を続ける学者、通称メガネだ。
『それよりプリキュアのカードが人間界に送られていたけど?』
「ファンシーマが一匹送還されたはずだ、分かるだろ?」
『そっか、ようやく仲間の登場だね?』
メガネは安心したような声を出す。
彼もモリヒトが妖精を愛しているのを知っている。
プリキュアの誕生、それは始末することでしか救えなかった妖精を助けられる事でもある。
しかし、今回の話はその報告だけではない。
「王国会議はどうなった?」
『プリキュアの誕生と共にガルディオの契約解除が出ている』
「ガメット族とジャスティン族か?」
ガメット族は妖精の中でも珍しい金銭や利益に執着する種族であり、ジャスティン族はガルディオの復活以前から王国を守る守護妖精の種族だ。
どちらも王国会議で反対意見を出す代表格だ。
『ガルディオは妖精共存派やルルール族の独占みたいなものだからね、いい気がしないんだろうよ?』
「そうか……ファンシーマは?」
『キミが凶暴化した同族を始末した事かい?それだったら受け入れてるようだよ』
「…………」
『つらい役目を押し付けたって言ってるよ』
「そうか……プリキュアについてはどうなる?」
『ああ、アスハラとか言ったっけ?』
「……なん、だと?」
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結婚が決まったときに一番、気になったこと。
それは相手に年頃の連れ子がいたことだ。
あの年頃の少女は難しい時期らしく、ちょっとした不注意が家庭崩壊に繋がらないか?そんなことを気にしていた。
一緒に暮らしてみてそれが杞憂だと分かった。
亡くなった父のことを気にしているようだが、まっすぐで明るい少女だった。
少しずつ家族になっていけばいい、自分なりのペースでいいんだ。
そう、自分に言い聞かせたのだが……
「……というわけでファンシーマを保護するでコルよ」
本父のイッサクさん、あれはどうすればいいんです?
義父のサクヤは戸惑っていた。
SF(スコシフシギ)な義理の娘が、まさかファンタジーの住人を連れてくるとは思わなかった。
「それで、私たちはどうすればいいの?」
キョウコさん、置いてかないで。
……つーか順応早すぎるよ、みんな。
サクヤがツッコミをいれる暇もなく、話は前へ前へと進んでいく。
「妖精の国は人間の国と交流がないから、協力者も拠点もないコル」
「ああ、ようするに家に住みたい、という事ね?」
ああ、なんか家長の意見をすっ飛ばして話が進んでいる。
別に父親としての権力をかざすつもりはないのだが、ここまで無視されると気分が悪い。
「まかせなさい、事件が解決するまで我が家だと思ってくつろいでくれ」
「多分、止めても止まらないでしょうし、ミライをよろしく頼むわね」
「ありがとう、母さん、パパ!」
あれ、勢いに任せて重大な決断をしてしまった?
新米パパがそんな事に気付くのは就寝前のホットミルクを飲んでいる時だった。
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「……ったく、現代人ってのは警戒心がないのか?」
モリヒトは林の中で愚痴をこぼした。
彼も現代人といえばそうなのだが、数年近くを妖精の国で過ごしていたために感覚が分からないのだ。
『まさか携帯電話がタッチパネルになってたとは、驚きだねー?』
「うっさいよ……それより俺のカードのストックは何枚ある?」
『全然ないよ、キミがまとめて持って行っただけで最後だってば』
「ガルディオでも使える浄化のカードは?」
『そっちも無理、技術系が違いすぎて流用なんか出来ないよ』
最悪だ、このままでは子供に手助けしてもらう羽目になる。
『まったく、気難しいねキミは?』
「……いいからカードの増産と研究を急げ」
コールを解除して携帯電話をしまう。
状況は悪くなる一方でしかない。
王国と日本の交流がなかった為に資金援助や住居提供もロクにない状態だ。
国庫の宝石をいくらか持ち出してはいるが、妖精にとって価値のある宝石など高が知れている。
『たくさんあって凄い』『キラキラして凄い』『何となく凄い』のどれかだ。
別にそれを怒るつもりはないのだ。
それが妖精の好みとしか言いようがないのだから。
「ネルル、クルル、行っていいぞ」
「行くって、どこねる?」
「ぼくはここでいいくるよ?」
正直に言えば、あの少女に頼りたくない。
だが、このままの生活では妖精が参ってしまうかもしれない。
まさに八方ふさがりだ。
そんなことを考えながら、今夜も林の中で眠りにつく伝説の戦士だった。
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「私って嫌われてるのかなー」
「急にどうしたコル?」
ベッドの中でミライは呟いた。
気になっているのは先輩のディオバレルについてだ。
「……そもそも、どんな人なんだろ」
「羽賀根森人、数年前に妖精の国に迷い込んだ人コル」
数年前、人間たちが妖精の国に迷い込んだ。
未知の世界に迷い込んだ人間は二つの派閥に分かれた。
妖精利用派と妖精共存派である。
妖精利用派は妖精の力を利用し、妖精共存派は王国に伝わる力を使って互いに争った。
「その時に復活したガルディオの力を手に入れたのが……」
「そう、モリヒトコルよ。モリヒトは戦いが終わった後も妖精の国に留まって、みんなを守り続けたコル」
そう、長い間を戦い続けてきた。
様々な国に繋がるコネクティア王国だからこそ、様々な国の悪しき存在が現れるのだ。
守護者のプライド、自分があっさりと並んでいいものだろうか?
「でも、モリヒトは優しいコルよ?」
どこがだろうか?
『あのガキ』とダウナーな目で睨みそうだ。
優しさって何だっけ、と考えたくなる。
さらに悩みながらもミライは目を閉じた。
「でも、ミライと出会えてよかったコル」
「え、なによ恥ずかしい」
「ミライの力があれば凶暴化したファンシーマも救えるコル」
「あ……」
そうだ、プリキュアの力がなければ妖精を救うことはできない。
なら、自分は……
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空気が湿り気を帯びる早朝。
まだ眠りの時間ともいえ、人によっては出勤する時間とも言える、そんな時間帯。
公園の中を走る影があった。
(今度こそ大会に出るんだ!!)
体育会系らしく短く髪をそろえたスポーツ少年だ。
中学指定のトレーニングウェアの色は今年の2年生、来年の3年生にあたる色だ。
次の予選大会がラストチャンスなのだろう、走る姿は本番と同じ気力に溢れていた。
彼の同級生が見たら、こう答えるかもしれない。
熱意を超えている、執念だと。
(あいつにも約束したんだ!)
思い出すのは自分の新しい家族。
突然、我が家に迷い込んだ小動物である。
不思議と悩みを話し出せば、話しただけ気分が楽になるような気がする。
深夜の告白は早朝練習と並ぶ日課となっていた。
(もっと速く、もっと速く……!!)
その願いが大きなことになるとは知らずに。
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「いだってえええええんっ!!」
朝の公園を震わせる巨大な声。
公園の林で野宿をしていたモリヒトにはすぐになにが起きたか分かった。
「……ったく、こんな朝っぱらか」
「近いねるから、早めに終わらせて眠るねるよ」
クルルはまだ眠っている。
大物なのか、先行き不安なのか……
林の中から出てファンシーマを探そうとする一人と一匹。
すると、巨大な何かが彼らの前を通り過ぎた。
「いだってえええええんっ!!」
「……って速えっ!?」
ドドドドと地面を揺らして走り去るファンシーマ。
凶暴化するとファンシーじゃないのは知っているが、あれはムキムキマッチョなランニングマンだった。
「ボーっとしてる場合じゃないか、バレルコネクト・ライド!」
モリヒトは林の奥に隠したバイク、マシンバレラーを召喚する。
ファンシーマと戦う際は結界で無人世界をつくる必要がある。
しかし、ファンシーマを巻き込むには距離が大きすぎるのだ。
仮に結界に巻き込んだとしても、ちょっとした衝撃で結界が破壊されてしまう。
だからこそ、可能な限り距離を縮めなければならない。
「さて、安全運転ですっ飛ばすか」
あかん、もう仮面ライダーだ