「……ったく、予想以上のスピードだ」
ファンシーマを追いながらモリヒトは愚痴をこぼした。
人間の国から迷い込んだバイクを妖精の国の技術で改造したのがマシンバレラーだ。
加速力や耐久性の強化はもちろん、人工妖精により自動操縦すら可能なのだ。
しかし、前を走るファンシーマとの距離は大して縮まっていない。
「いだってえええええんっ!!」
「仕方ない、何発か撃っておくか?」
『コール・ネクスト』
「…………」
『コール・ネクスト、コール・ネクスト、コール・ネクスト』
妖精産携帯電話に着メロはないのか、呼び出しメッセージが連続で再生される。
「……どうした?」
『あの、私も手伝います!!』
「……どうやって?」
『どこにいるか教えてください!』
「公園の横の大通りを追跡中、追い込める場所はないのか?」
モリヒトが出したヒントはあまりも脆弱。
もっとも、最近来たばかりの男に詳しいヒントを求められても困るのだが。
「……でかい焼肉の看板があるぞ?」
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「焼肉……その道を右に曲がってください!」
『なにかあるのか?』
「川沿いの直線があって、突き当りが森林公園に……」
すべて言い切る前に通信は途切れる。
やはり嫌われているのか、足手まといと思われたのか。
しかし、ここで待っているわけには行かない。
「行くコルか?」
「うん……プリキュア・ネクストコネクト!!」
『Card preparation・For transformation limit 20』
「聖なる未来、キュア・ネクスト!!」
変身したキュアネクストは早速カードを取り出す。
時間に限りがあるから本当なら公園の近くで変身したいが、そんな余裕もない。
森林公園まで車で10分、あのカードを使ったスピードなら車よりも速く着くはずだ。
「ネクストコネクト・ハイテンション……よーい、ドン!!」
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「直線だ。ネルル、つかまれ!」
ジャケットの中にいるネルルに声をかけながらマシンを加速させていく。
市街地では追うのが精一杯だが、直線となれば話は別。
一瞬でファンシーマを追い抜かし、森林公園の柵を飛び越えるようにマシンに命じる。
マシンに命じた自分は何をやるか、そんなのは決まっている。
「ガルディオ・バレルコネクト!!」
『Card registration・For transformation limit 60』
「守護の銃身、ディオ・バレル!!」
上空に跳躍するマシンの上で変身したディオバレルは銃を構える。
一発、二発、ネルバレラーの銃弾はファンシーマの足場を崩していく。
当然、猛スピードで走っていたファンシーマも勢いで直線に転んでいく。
「バレルコネクト・フィールド!」
公園の柵に触れるかどうかの瞬間に無人世界を作り上げる。
盛大に転んで樹木がなぎ倒されていくが、フィールドで作った世界ではなにが壊れても平気だ。
「いだってえええええんっ!!」
「さて、これから、どう、動……く?」
ファンシーマはモリヒトのことなど忘れ、公園の外に出ようとする。
フィールドの外には出られないが、ミシリと嫌な音がする。
「すごいねる、体当たりでフィールドを壊すつもりねる!」
「感心している場合か、バレルコネクト・ループ!」
フィールドの壁にぶつかったファンシーマは消えて、公園の中心から現れる。
ループのカードでフィールドの外壁と公園の中心部を繋いだのだ。
ファンシーマはそれに気付かないのか突撃してはループに消えている。
「……ったく、バカで助かったよ」
「モリヒトさあああああん!!」
「やれやれ、追ってきたのか」
制服姿のミライが走ってやってくる。
いつものクセで飛び出したはいいが、決め手となるカードも浄化の手段もないのだ。
「さっそくで悪いが、変身して浄化するぞ」
「ヤだなあ、変身してますよ?」
「ヤだなあ、プリキュアってのは学生服でもいいのか?」
そう言われてミライは自分の姿を確かめる。
ワインレッドに紺のネクタイ、入学当初より少しだけ痛んだ感じはするが自分の制服だ。
「なんで!?変身して10分もしてないのに」
「コルル、お前はなにをしてるんだ?」
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伝説の戦士は戦う際に二つのものを消費する。
変身の力とカードの力だ。
変身の力は変身している間に一定の減り方をし、カードの力はカードを使った時だけ減る。
だが、両方の力を同時に消費するカードがある。
「それが身体強化カードだが、コルル?」
「わ、忘れてましたコル……」
「あの、変身できなければ浄化は……」
ディオバレルは無言で睨む、出来るわけねーだろ、と。
時間が経てば力は回復するが、そうなる前にフィールドの効果が終わってしまう。
ディオバレルはミライに電池式の充電器を渡した。
「型は違うが規格は共通だろう。バイクに乗ってる間に充電しとけ」
「どうするんですか?」
「園内のロングブリッジを使う」
公園の湖にはロングブリッジがある。
ループの設定を変更してファンシーマをそこに移動させるのだ。
「敵は一直線に走ってくる。俺がバイクで突撃して止めるから変身して浄化しろ」
「あの、回復しました……その、1分だけ」
「上等だ、変身したと同時に浄化しろ」
ロングブリッジの中間にミライを置いて岸に向かうディオバレル。
ここから全力で走ればミライのいる場所の近くでファンシーマと激突するはず。
「チャンスは一度、行くぞ!!」
「はい、OKです!!」
「バレルコネクト・ループ『再設定』」
橋の向こう側が光り輝くと同時にファンシーマがあらわれる。
そして、ファンシーマが走り出すと同時にディオバレルもバイクを走らせた。
「行けっ!!」
「プリキュア・ネクストコネクト……ネクストコネクト・フィニッシュ!!」
激突する直前にミライは変身した。
ポーズをとる余裕もない、キュアネクストは即座にフィニッシュのカードを読み込む。
「プリキュア・ネクストダイバー!!」
拮抗するディオバレルの横を抜けて突撃するキュアネクスト。
しかし、敵の防御力は予想以上に高く、すぐに浄化できないでいた。
力をこめ続けるキュアネクストだが時間だけが過ぎていく。
「通れ、通れ、通れ……通りなさいよ!!」
『Battery residual quantity 0』
そんな中、戦いの舞台であるロングブリッジにも異変が起きていた。
踏ん張っているバイクのタイヤがぐら付いているのだ。
「橋が!?」
「いだってえええええんっ!!」
足場が崩れる中、空中に投げ出されるプリキュアとガルディオ。
キュアネクストの腕はファンシーマに伸びてはいるが、届いてはいなかった。
「使え、プリキュア!!」
キュアネクストの手の中に小さな箱が投げられた。
それは携帯電話のカバーを外せば見ることが出来る、バッテリーだった。
しかし、ディオバレルがそんなものを投げてよこすわけがない。
そう、投げた姿はディオバレルではなくモリヒトだった。
『Battery exchange・Transformation limit 20』
「プリキュア・二回目ネクストダイバー!!」
再びフィニッシュのカードで加速するキュアネクスト。
しかし今度は出し惜しみはない、全バッテリーを消費するつもりでぶつかる。
「ネクスト・エンド!!」
「いだってえええええんっ!!」
==========C==========N==========C==========T==========
「げほっ、べっ、べっ」
「大丈夫ですか、モリヒトさん!?」
変身を解除したモリヒトは何とか湖の岸に泳ぎ着いた。
フィニッシュの際に出来た翼を使ったのか、キュアネクストは全く濡れていない。
「平気だ……バレルコネクト・ループ」
ループのカードでバイクを引き上げる。
カードの性質上、大体の場所が分かっていればこんな使い方も出来るのだ。
「今回は助かった。だが浄化のカードが出来次第、お前はプリキュアから……」
「モリヒトさんは優しいんですね?」
「…………」
「私みたいな子供を戦わせたくないから、冷たい態度をとってるんですよね?」
「…………」
「でも、私は大丈夫です。人助けが趣味ですから!!」
満面の笑みを浮かべて胸を張るミライ。
最初のときの勢いとは違う、彼女は自分自身で戦うことを決めていた。
「勝手にしろ……」
濡れた服でバイクを押すモリヒト。
その選択が正しいのか、それは誰にも分からなかった。
仕事がわるいんや全部ゥ