新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN 作:植村朗
第八使徒戦の終了とともに非常事態宣言は解除され、浅間山の麓にある温泉旅館は営業を再開していた。
だが客足が回復するまでには至っておらず、宿泊客を記入するブラックボードに書かれているのは『歓迎・ネルフご一行様』の文字のみ…実質貸し切り状態だ。
こじんまりとした外観の割に内装はしっかりしていて、それでいて木と畳の穏やかな香りが満ちている。
旅館の女将によると営業は前世期から続いており、セカンドインパクトの際は一時的な避難所として人々の拠り所となっていたこともあるらしく、非常に居心地が良い。
「すいませーん!NERVの人ー、いますかぁー?お届けものでーす!」
「ほいほーい、今いきまーす!」
「もぅミサトってば、どこ行ったのかしら?責任者なら荷物の受け取りぐらい立ち合いなさいよね!」
呼び出されたレイとアスカは旅館の玄関に向かった。
二人ともシャツと短パンという、楽な格好である。
「ではーここにサインを…はい、どうもっ、ありがとうございましたー!」
宅配業者は事前にNERV保安部による入念な荷物検査とボディチェックを受けていて、ようやく荷が下りた事で晴れやかな顔で礼をして立ち去っていく。
「お?送り主は加持一尉みたいだよ、アスカっち」
「加持さんからっ!?なにかしら?」
送り状を確認したレイの言葉に声をはずませ、箱の封に手を掛けるアスカ。
粘着テープをはがそうとした途端…ダンボールは
「クウォウォウォウォウォッ!!」
「っきゃぁぁあ――――っ!?」
視界を埋め尽くすつぶらな黒目と、真っ赤な眉毛のような二筋のトサカ。
至近で聴覚に突き刺さる羽ばたきと、文字通りの
アスカは絹を裂くような悲鳴を上げ、尻もちをついた。
「おぉー?ペンペン来たんだぁー!ほーら高い高ーい!」
アスカは立ち上がれないまま、震える指でペンペンを差した。
「な…なななななんでコイツがここにいるのよっ!?」
「クァーコココッ、クァー♪」
「ペンペン氏いわく『温泉と聞いて、俺、参上』だそうで」
「はァ!?バカナミ、アンタ動物の言葉が解るの!?」
「いや、なんとなく」
「適当かっ!!」
レイにツッコミを入れた後、アスカは改めてペンペンを睨みつけた。
考えてみればこの鳥類…喋れはしないものの、ところどころ人語を解しているように見えたり、生意気にも新聞の経済面なぞを読みふけるような奴である。
おそらくミサトが外出している間、ペンペンの世話を加持に任せていたのだろうが、なにぶんペンギンというには
送り状やらダンボールやらを自前で調達してきて、加持に『俺を送れ』とジェスチャーで伝えて送り状を書かせるぐらいの芸当をやらかしかねない。
「よーし、ペンペン来たし、温泉入ろうかー!アスカっちも一緒に行こー!」
「クァックァー!」
「はぁ…もういいわよ…」
意気揚々と風呂場に向かうレイとペンペン…アスカは考えるのをやめて彼女達に続いた。
「あっはァ~ん♪来たわねぇ~?お肌ピッチピチな
二人と一羽が夕焼け空を望む露天風呂に足を踏み入れた時、葛城ミサト作戦部長は熱燗のお盆を湯に浮かべており、ふやけた表情でくつろいでいた。
道理で、どこにも姿が見えなかった訳だ。
「うわぁ…」
「こりゃまた、ずいぶん
「クァー…」
露骨に顔をしかめるアスカ。苦笑するレイ。
そして、シンジと同居する前によく見ていた『ある意味いつも通り』の主人を平然と眺めるペンペン。
裸の付き合いが基本の社交場、湯に浮いたミサトの胸は遠慮なく曝け出されているが、そのだらしなく色気の欠片もない表情にアスカは呆れた。
「どんだけ飲んでんのよ…
「いやーでも葛城三佐、なかなか立派なモノをお持ちで…ん?」
レイはミサトの豊かな胸元に、周りの肌と違う色の場所を見つけて目を瞬かせた。
「手術の痕?胸の病気だったとか?」
「あぁ、これ?…セカンドインパクトの時、ちょっちね…」
「っ、バカナミ!」
「あ、ご、ごめん!」
酔っていたはずのミサトは、声のトーンを落とす。
意図せずに彼女の辛い過去の記憶に触れてしまったレイは、アスカに咎められ、慌てて頭を下げた。
数秒の沈黙を破り、ミサトは、ふ、と表情を和らげる。
「…やーねぇ、昔の事よ昔の事!
ねーアスカァー?そーんな暗い話題はいいから、女同士のスキンシップと洒落込もうじゃないのーんっふふふぅ
…だが、流石に
サイドスローの投擲モーションのまま、アスカは憤怒の表情を浮かべている。
「あーもうっ!心配して損したわ!エロい手つきのバストマッサージなら、バカナミにやってやりなさい!」
「
「
「あばふっ!?」
カポォン!と良い音を立てて木製の桶に顔面をクリーンヒットされたミサトは、目を回して仰向けにダウン。
その隙にペンペンは、ミサトが飲んでいた熱燗を拝借して
「…
「桶って峰あんの?」
アスカが発した思わぬパワーワードに、珍しくレイの方が突っ込む。
結局はミサトを
ヒグラシがカナカナと鳴く声だけが、オレンジ色に染まった露天風呂に響いていた。
温泉回にはお色気要素が欠かせない。
そう思ってた時期が、ボクにもありました(刃牙並感)